第27話:ファイターウルフ
「ギャアアアアア、うでが、俺の腕が」
「いたい、いたい、痛い、足が、俺の足が喰われちまった」
「いや、いや、いた、私を食べないで、近づかないで」
「しね、しね、死んでしまえ」
「あきらめちゃダメ、最後まで戦って、火炎弾、風殺斬、土槍」
リリーは一度の戦いで格段に強くなったな。
他の連中は期待薄だな。
貧乏だと聞いていたから、もっと頑張るかと期待していたんだけどな。
「身体を喰い千切られた者はこっちに運んできなさい。
俺が身体再生魔術をかけて元通りにしてやるから」
苦学院生に実戦経験をさせるために支援に徹している傭兵団員が、次々と負傷した学院生を俺の前に連れてくる。
本当は遠くからでも身体再生魔術をかけられるのだが、自分の実力を全てみせるのは、これからも次々と来るであろう刺客の事を考えると賢いやり方じゃないからね。
「お前らしっかりしろ、もっと仲間を信じろ。
仲間の実力を知り、誰が何をできるのかしっかり覚えておけ。
それにノア様がどれほどの重傷でも治してくれると分かっているだろ。
確実に一匹ずつ殺していくんだよ」
今日は同じ魔獣を殺すのでも、狩りではなく刺客を迎え討つ実戦練習だから、サイモンが指揮を執っている。
冒険者のニコラスなら確実に生きて帰るのが大前提で、その上で利を手に入れる事を考えるのだが、サイモンは違うからな。
俺とエラを護るためなら最後は死ねと命じる誇り高い傭兵だから、まだ覚悟の定まっていない学院生には厳しいな。
「サイモン、敵は俺を殺すまで何度も襲ってくる気だ。
なにも今日が最後の実戦練習という訳ではない。
あとは傭兵団でファイターウルフとテイマーを始末してくれ。
いや、テイマーは逃がしてまた襲わせた方が練習になるな。
ファイターウルフだけを殺して素材にしてくれればいい」
「承りました、ノア様。
前衛、テイマーは殺さずファイターウルフだけを殺せ」
さすがサイモン率いるウルフファング傭兵団だ。
ファイターウルフくらいなら誰一人ケガすることなくサクサクと殺していく。
狼の肉は臭くて美味しくないが、貧民はよく食べるらしいから、学院生に持ち帰らせてやるか、いや、前回のファイアーアントの身がまだ残っているからいらないか。
「ノアお兄様、今日の狩りはチョッと退屈ですわ。
ノアお兄様の雄姿を見られないのでは、狩りにきた意味がございません。
もっと強い魔獣を狩る所を見せてください」
やれ、やら、あまり目立つのは嫌なのだが、エラがそういうならしかたがないな。
近くに適当な魔獣がいればいいのだが。
索敵魔術で強そうな魔獣がいないか探してみるか。
「サイモン、近くに貴級の魔獣がいる。
最後にそいつを狩ってから帰るぞ」
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