第20話:裏交渉
「ノア殿、エラ嬢、ここは穏便にできませんかな」
またしても理事長のベネディクトと執行導師のオーランドがしゃしゃりでてきた。
金の臭いに敏感な守銭奴なのだろう。
極悪臭が強いので無視したかったのだが、今はまだそうもいかない。
大陸連合魔術学院は魔境を領地に持っているので、狩りが楽しみなのだ。
エラに負担のかからない日帰り狩りの拠点に最適なのだ。
「穏当とは具体的に何を申されておりますの、理事長。
まさか公爵家に伯爵家の無礼を許せと強制されるのですか。
それは理事長と執行導師が公爵家に喧嘩を売っておられるのですか。
だとしたら買わしていただきましょうよ、ノアお兄様」
表面では楽しそうに笑っているが、エラが本気で怒っている。
公爵家が馬鹿にされたと感じているのか、それとも単に二人が嫌いなのか。
俺の事を大切に想って怒ってくれているのならうれしいな。
「待って、待ってくれ、待ってください、ノア殿、エラ嬢。
これは私や理事長の考えではなく学院の総意なのだ。
私や理事長はこんな事は言いたくないのだが……」
サイモンをはじめとした護衛が剣に手をやったので急に謝りだした。
貴級傭兵に評価されているサイモンが殺す気で殺気を放ったのだ。
本気で命の危険を感じたのだろうな。
この距離で貴級傭兵に剣で襲われたら、学院の執行導師であろうと魔術を発動する前に絶命させられるのは確実だからな。
「黙ってください。
そのような言い訳が私達に通用すると本気で思っておられるのですか。
貴男方が理事会や執行導師会で何を言われたのか知っているのですよ。
あのような事を公式の会議で発言されて、タダですむと思っておられるの。
それにハザートン公爵家は学院に喧嘩を売る気はありません。
貴男方二人を不敬罪で殺すだけですわ」
エラを護る五人の戦闘侍女が対魔術用の臨戦態勢をとってる。
万が一執行導師のオーランドが事前情報以上に強かった場合に備えている。
あまりにも鮮やかな反応だから、事前に準備していた可能性がある。
エラは最初からここで争いにする心算だったようだ。
揉め事は嫌いなのだが、エラがどうしても許せないというのなら仕方がないな、
「そうだね、エラ。
学院長や他の理事や執行導師には後で詫びを入れるとして。
公爵家の名誉は護らなければいけないね」
「ヒィィィィ、おまちを、どうかお待ちを。
命は、命ばかりはお助け下さい。
必ず、必ず理事長として責任を持って対処させていただきます」
さて、どうするのがこの守銭奴を一番苦しめることができるのかな。
どう考えても金だよな。
「だったら詫びを入れてもらおうか。
学院長達には理事長に裏金を渡した事を話すことにした。
それが嫌なら、黙っていて欲しいなら私が渡した三倍の賠償金を払ってもらおう。
お前の命の代金だ、高くはあるまい」
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