第19話:喧嘩
「舐めやがって、田舎公爵家が何ほどのもんじゃ」
伯爵家の略称をつけた奴が怒鳴りながら殴りかかってきた。
俺から見ればスローモーションのように見える極遅の動きだ。
俺に向かってくるのなら手加減してやったのに、女のエラの方を狙う卑怯下劣な動きに、一瞬で頭が真っ白になってしまった。
グッガッチャ
どこかの伯爵公子なのか、それとも一族の端に連なるだけのモノなのか。
気がつくと卑怯下劣な馬鹿が俺の目に前に倒れていた。
我を忘れていたのは一瞬の事なのだろう。
周りの者達の表情や姿勢に全く変化がない。
どうやら一撃ぶち込んだだけで正気を取り戻せたようだ。
ただ、その一撃にために、無詠唱で身体強化していたようで……
「まあ、流石ノアお兄様ですわ。
女性に殴りかかるような乱心者など相手になりませんわね。
ノアお兄様に決闘を申し込まれるならともなく、家名も名乗らず公爵令嬢に襲い掛かるなんて、どこの礼儀知らずの成り上がり伯爵家なんでしょう。
あら、もしかしたら我がハザートン公爵家やカンリフ王国への宣戦布告のお心算なのかしら、だとしたらお受けしなければいけませんわね、ノアお兄様」
「ああ、そうだね、これは宣戦布告だと思った方がいいね。
サイモン、俺達の護衛以外に直ぐに動員できる傭兵は何人いる」
「直卒のウルフファングで千、ドラゴンクローなどの他の者達が率いる傭兵団が約三千、質を落として傭兵や冒険者を集めていいのでしたら一万以上です」
「伯爵家を潰せるかい」
「お命じ頂けるのでしたら、国を攻め取りノア様を戴冠させてみせます」
いや、いや、国王なんて面倒な役目はいらないよ。
運よく公爵家の家臣領民の命を背負わなくてすんだんだ。
何が哀しくて今更一国の命運を背負わなきゃならない。
そんな事になったら毎日悪夢にうなされて頭禿げるわ。
「お待ちください、どうか、どうかお待ちください。
これは主人の狂気ゆえの事、伯爵家とは全く関係ありません。
我が家にハザートン公爵家に対する敵意など全くありません。
この無礼愚行に対するお詫びは必ずさせていただきますので、どうか、どうか、どうかご寛恕願います、お慈悲でございます」
可哀想に、傅役なのか目付け役なのかは分からないが、愚かな主人を持った家臣は本当に大変だな
当主は多少まともだから、問題児を学院に放り込んだのかな。
それとも王都どころか領地にも残せないくらい多くの問題を引き起こしたのかな。
そんな問題児を押し付けられた家臣か、同情してしまうな。
だけど、エラに僅かでも危険が及ばないように、ここは厳しくしないといけない。
「では殺してもらおうか。
この馬鹿一人の為に、国を巻き込む戦争を始めるか。
それとも本気で詫びている証拠にこの馬鹿を殺すか、好きの方を選べ」
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