第13話:旅の再開と襲撃

 ロング伯爵タロン殿が全てを教えてくれた。

 必要なら自白魔術を使って全て白状させられるのだが、あれを使うと自分が極悪非道な人間になってしまった気するのだ。

 後で激しい自己嫌悪に陥るので、できるだけ使わないようにしている。

 だから自ら話してくれると精神的に助かるのだ。


 その内容はほぼ予想通りだったので今更とやかくはいわない。

 これから互いの利益を見据えて助け合えればいい。

 それに直接オリビア王女に敵対しろなんて言わない。

 ロング伯爵家程度が王家に逆らったら簡単に潰されてしまう。

 俺がロング伯爵に期待するのは情報を流してくれる事だけだ。


 問題は俺を殺せなかったタロン殿がオリビア王女にどんな処分を受けるかだ。

 オリビア王女の事だから、下手をすれば八つ当たりでタロン殿を殺してしまうかもしれないのだ。

 その心配はタロン殿もしていたようで、失敗の責任をとって隠居するという。

 それどころか自ら国外追放を願い出るとまでいう。


 まさかとは思うが、古代魔術皇国時代のワインが飲みたくてついてくる気なのか。

 そんな鬱陶しい事はいやなので全力で拒否した。

 その代わり大陸連合魔術学院の到着したら直ぐに招待状を送ると約束した。

 一緒に来たらオリビア王女に裏切ったと疑われるぞと脅すことまでして、ようやく一緒に来たいとう気持ちを断念させた。


 ★★★★★★


「ノアお兄様、この辺りは森ばかりですのね」


 馬車の外を流れる風景を見ていたエラが退屈そうに、退屈そうに話しかけたきた。

 旅も長引くと話す事もだんだんなくなってくる。

 エラは常に話しかけてくれるのだが、こちらから話せる面白い事がないのだ。

 だから最近では風景や天気、食べたモノの話になってしまっている。


 今も丁度会話が途切れてしまって、エラが風景に目をやって話を作ろうとしてくれたのだが、そんな時に限って邪魔者が現れる。

 これが原因でエラに嫌われてしまったらどうするんだ。

 責任をってくれるのか、刺客よ。

 今日の俺は機嫌が悪いから手加減してやらんぞ。


「折角エラが話しかけてくれたのに悪いのだが、どうやら刺客が現れたようだ。

 エラを戦いに巻き込むわけにはいかないから、俺が馬車の外に出て刺客を迎え討ち、エラには馬車に残って先に行ってもらうよ」


「まあ、なんてタイミングがいいのでしょう。

 私、とても退屈しておりましたの。

 ノアお兄様がオリビア王女の側近や近衛騎士を叩きのめしたと聞いて、一度ノアお兄様の戦われる雄姿を見てみたいと思っておりましたの。

 私をノアお兄様が戦われるところに連れて行ってくださいませんか」


 エラ、そんなに目をキラキラさせて見つめるんじゃない。

 危険だから駄目だと言い難いじゃないか。

 それに、実際問題、俺が本気になれば全然危険なんてないし……

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