第5話:旅の空
オリビア第一王女が短慮に暴れだす事のないように、急いで王都を離れた。
だがそのために不本意な状況を受け入れることになってしまった。
父上と母上はやはり王家の血を色濃く引き継いでいると思う。
傍系王家同士の結婚の重大な弊害だと思う。
俺も常に気をつけて行動しないと同じことをしてしまうかもしれない。
「ノア兄様、何故難しい顔をされているのですか。
そんな物思いに耽られて黙ってしまわれているのは寂しいですわ。
これからの事をお話しませんか」
これだ、エラと一緒というのが俺の不本意であり不機嫌の元凶だ。
俺はエラと父上と母上の連合軍に負けてしまったのだ。
いや、エラがオリビア第一王女のように我儘を押し切ってしまったのだ。
父上も母上もエラには甘すぎるし、俺に対する愛情も深すぎる。
どちらへの愛情の方が甘く深かったのか想像するのは怖いが、両親がエラの我儘をかなえた上に俺が危険な冒険者になる事も防ごうとして、こうなってしまったのだ。
「ああそうだね、大陸連合魔術学院についてはどれくらい知っているのかな」
「名前しか聞いた事がありませんわ、ノア兄様」
「そうか、だったら一から話そうか。
大陸連合魔術学院は、古代魔術皇国時代にあった魔術研究所が基礎となっている。
魔王の侵攻から大魔王の出現、魔神の召喚という未曽有の戦いで古代魔術皇国が滅んでしまい、戦国乱世の時代を経て多くの魔術が失伝してしまったが、そのなかでも比較的多くの魔術が学院には伝承されていたので、戦国乱世が収束に向かい復興の為の魔術が必要とされた時代に、とても役に立ったことで力を得た組織なのだよ」
「なんとなく力のある組織だという事は分かりましたが、優秀な魔術師である兄上様は入学することができるのでしょうが、凡才の私が入学を許されるのでしょか」
エラは確かに魔術師と名乗れるほど魔術には精通していない。
どう考えても大陸連合魔術学院に入学できるレベルではない。
だが決して魔力が少ないわけではないのだ。
傍系王族の両親から生まれたエラは王族に相応しい魔力を持っている。
いや、王族の中でもかなり多い魔力を持っている。
だが残念な事に、粗雑な性格のせいか魔力の制御が苦手なのだ。
「それは大丈夫だよ、魔術が上手くなくても入学する事はできるよ。
普通よりも多めの寄付金は必要だけどね」
「もう、それは裏口入学という事ではありませんか。
私は別に無理に大陸連合魔術学院に入学したいわけではありませんわ。
兄上様と一緒に学院で生活ができればいいのです。
そうですわ、お兄様の側仕え、侍女になってしまえばいつも一緒にいられますわ」
「ノア様、エラ様、巨人です、巨人がこちらにやってきます」
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