第6話:巨人族と大当たり冒険者
巨人族、今では暗黒時代と呼ばれる、魔王の侵攻に始まる魔族と人族の存亡をかけた戦乱の時代に、この世界に現れた魔族の一種族だ。
巨人族にも幾つもの種族がいるが、今回現れたのは大きいだけの連中に見える。
異常に再生能力の高い種族や魔力を持つ種族でないのでまだましだ。
まあ大抵の人間には、普通巨人族でも災厄以外の何物でもないのだけどね。
「俺がやるから下がっていてくれ」
「いえ、ノア様が下がっていてください。
我々も大金で雇われた護衛です、もらった金の分は働かせてもらいます」
大陸連合魔術学院までの護衛という条件で雇った冒険者達が戦おうとする。
魔獣や魔族が相手でも戦って勝てる最優秀の冒険者達だ。
エラの為に連れてきた戦闘侍女や武官家臣とは別に、危険な旅の間だけの臨時に雇ったのだが、どうやら当りを引き当てたようだ。
「気持ちは嬉しいが君達には他にやってもらいたい事がある。
俺が戦っている間に別の何者かにエラが襲われるのを防いでもらいたい。
それに、君達では巨人族の身体に多くの傷をつけてしまうだろうからね。
俺がやった方が巨人族の素材としての価値を下げないくてすむのだよ」
眼の前で大猪を口に加えてバリバリと食っている七メートル級の巨人は、皮が固いので高級硬革鎧や高級軍用テントの素材として高値で売ることができる。
肉は人に似すぎていて一般向けではないのだが、滅多に狩れない高級食材として、自らの権力や財力を誇示したい王侯貴族が高値で買ってくれる。
人と同じ姿の大して美味くもない食材に大金を支払うなんて馬鹿げている。
まあ、公爵公子だった俺がそれを言ってはいけないのだけどね。
それに人族を襲う巨人族は発見したら直ぐに討伐しなければいけない。
それだけではなく、巨人族の素材が手に入るなら、犯罪者ギルドが行っている悪行を邪魔できるので、できるだけ傷を少ない状態で素材を確保したい気持ちがある。
犯罪者ギルドが行っている人体を使った違法治療を止めることができるのだから。
失明した人の目を治すために人の目を使う。
心臓に回復不能な病気やケガを持つ人の治療に人の心臓を使う。
魔術や呪術を使うのか、他の素材と合成して薬を造るのか、それは使用者の能力によるのだが、人を犠牲にして人を癒す邪法があるのだ。
「失礼な事を申し上げますが、私達はノア様が本当の実力者なのか、大言壮語する愚か者なのか、存じあげていないのです。
私達にも冒険者としての誇りや矜持があります。
むざむざと雇い主を目の前で殺させるわけにはいきません。
ノア様が死ぬときは我々全員が死んだ後にしていただきます」
これは本当に大当りを引くことができたようだな。
この冒険者達なら大陸連合魔術学院に到着してからも延長契約したいな。
「分かった、だったら俺はこの場を動かないから、俺の実力を確認しておいてくれ」
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