第340話 秘密のお部屋
無事に探索メンバーが誰もアヘらずに帰れた。
帰宅した俺はヘカトンくんとワラビを労った後、企てた悪巧みを形にしようと草野ダンジョンへ飛び、傀儡ダンジョンマスターの草野に豪華っぽく見える宝箱を吐き出させている。
いやぁ危なかったよほんと......ちゃんと洗浄消臭して帰ったのに、あんこお嬢様がシャブ桃の残り香を察知して貢ぎ物を強請るキャバ嬢のような顔になって甘えてきたのよ。それは心と顔面の両方から血の涙を流しながら華麗にスルーして抜け出し、今に至る。
俺の倫理観をサイコパス気味にしている以外に全然仕事をしている感のなかった精神耐性パイセンがようやっと
「......この桃、俺が食ってもアヘアヘしてパッキパキのシャブ太郎になるのだろうか? お供に与える品はシャブ桃団子、旅のお供はお注射、パイプ、スプーン......うん、すっげぇ不健全」
頭に過ぎった変な考えを即座に不法投棄し、草野が仕事を終わらせるのを無心でボーッと待つ。
......それにしてもダンジョンマスターって大変そうだよなぁ......ダンジョンに縛られて不老不死、傍には誰も置けず、生み出せるのは傀儡のモンスターのみ。偶にイレギュラーで生まれるピノちゃんのような子が居るけど......テイマー適正が無いと懐柔は不可能で返り討ちにされそう。此処の攻略時、あの時はこうするしかないと思っていたけど他にも出来る事はあったような......
あー、出来ることはないな。うん、殺すかコレしか無かったわ。残念。
死ななかったし俺が居る時以外は自由なんだから許してくれ。ははっ。
「帰るか。その後は梱包して出荷だな」
いつまでも傀儡モードは可哀想だから、貰うもんを貰ったら早々に退散した。じゃあな。
彼の普段の様子は知らないし知りたくもない。ここら辺も精神耐性パイセンが作用してるのかな?
――はい、ただいまソロでシコシコ内職に励んでいるシアンでございます。よくわからん洞窟の中からお届けしていますが、特筆する部分はないので一旦スタジオにお返ししまーす。
「............寂しい」
変なノリをお届けしてしまった。反省はしてるけど後悔はしてない。だって寂しいんだもの。シアヲ。
パッキパキになる天使たち、シャブに群がるジャンキーの様になる天使たちを見たくないから一人でやってるんだけど......なんかね、異常に寂しい。こういう時こそ仕事しろよと思うのですよ、ねぇパイセン。
箱開けて桃を一つ~三つ詰めて閉じる。あと桃だけだとつまんないからなんか特に必要の無い収納の肥やしになってる危ないアイテムもオマケで付けたりと、その繰り返しをひたすら続ける。
寂しい気持ちを誤魔化す為に色々とやってはいるが、それでもやっぱり寂しいモンは寂しい。
「......なんでこんな大量に取ってきちゃったかなぁ。あったらあったで害悪にしかならないからしゃーない処置なんだけど......収納に入れっぱなしも嫌だから頑張りゅ......けどさぁ......はぁ......あ、そうだ」
そうだ!! そうだよ!! こういう時の慰みとしても使えるじゃないか!! むしろこういう時に使わずしていつ使うのか!!
「あんこたん多重影分身!! かーらーのーお色気の術!!」
あんこたんぬいぐるみを大量に出して俺をぐるっと取り囲むように配置していく。ついでに可愛いポーズやヘソ天の様なセクシーポーズをさせるとあら不思議、殺風景すぎて病みそうだった作業部屋があっという間に癒し空間に早替わりだってばよ!!
「......うむ」
一通りあんこたんぬいぐるみを配置し終えたら空いているスペースに追加でウチの天使たちを配置していく。なるほど、エデンはここにもあったのか。普通のぬいぐるみ部屋はあるけど、初期の頃の作品で埋まってもうスペース足りないが足りないからな......
商会で日々続々と新作が出来ていくから俺のぬいぐるみコレクションは現在ヤバい領域にまでなっている。その大量のぬいぐるみコレクションは可愛さで本物には勝つ事は無いが、傍に誰も居ない時には寂しさを紛らわせる一助になる事がわかった。
「そうだ、絶対に一人でやらなきゃいけないような作業専門の部屋を作ろう......そこをついでにぬいぐるみ部屋パートツーに改造すれば一石二鳥じゃん」
あの子たちに触れさせたくない危険物の保管場所や加工場として......丁度いいし此処をそれらしく改造しようと思います。
テーマは
“もしウチの天使たちが野生で生きていたら......”
野生のうちの子......言ってて脳が破壊され胸が爆発四散する位悲しくなるけど、偶然あの子たちと知り合って交流を持ち、真摯に交流を重ねていく事でようやく油断している姿を見せてくれるようになったというテイで。
「この場所に転移石を置いて......後は空間を切り離せば見つかる事はないだろ。後は......」
考え事をしながら梱包作業を進めるシアン。己のやるべき事を定めたらその後は早かった。
イマイチなテンションからぶち上がったテンションになったシアンはスキルをフル活用して猛スピードで作業を終わらせた。モチベーションの上がった人間モドキは最強なのである。
「っっし!! 終わったァ!!」
退屈な作業が終われば後に残るはお楽しみのお時間のみ。邪魔なブツは収納にサクサク詰め込み、いい感じに並べてある天使たちのぬいぐるみを保護するように空間隔離を掛けていく。
「ヒャッハー!! 汚物は消毒だァ!!」
桃を食していないにも関わらず、あたかも桃をキメたようなテンションになりながらエッグい量の魔力を込めた闇ル〇バを四つ解き放った。
「四方を丁寧に削り取って綺麗な正四角形の部屋を作れ!! 床もピカピカにしろ!!」
何故か口頭での命令を聞く魔法へ命令を下すと、待ってましたとばかりに動き出す。それらが通った後はまるで鏡面のように磨きあげられた綺麗な床が残る。
床は今見えてる範囲は全て磨き上げられ、闇ル〇バたちは部屋の拡張を始めていた。ジェバ〇ニもびっくりな仕事の早さだぜ。
「どこで触ったか思い出せないけど、めっちゃ気持ちよかった身体がちょっと埋まるロングシャギーのもっふもふ絨毯をこの部屋の半分が埋まるサイズかもーんぬ!! 残り半分は天然芝かもーんぬ!!」
関心している間に拡張を終わらせた闇ル〇バ。仕事範囲が壁と天井に移っていたので急いで床の改造を行う。想定していた以上に魔力を吸われたので、多分このバカみたいなサイズの絨毯が無かったからいい感じに望み通りの物を作ってくれたんだろう。触り心地は......うーん、気持ちよし。
「やりすぎた。これでは完全に普通に住める場所やんけ......あぁ......ここでゴロゴロしながら皆に押し潰されたい」
先程決めたコンセプトから大幅に脇道に逸れていた。もう手の施しようがないくらいに快適空間になってしまった。ガンギマった変なテンションで突っ走るの良くない。シアン学んだ。
「しゃーない。こうなったらここを癒し施設にしよう。どうせなら......うん、ここはシアンの森美術館兼ドッグラン兼くつろぎスペースとしようではないか」
ここからどうするべきかを考え、大体の案を決めたシアンはやる事を終えて待機しているルンバに作ろうとしている空間のイメージを伝えた後に再び草野ダンジョンへと飛ぶ。
一日に二度はさすがに申し訳無かったのでこっそりと桃を数個お土産に置いてきた。ダンジョンマスターならば状態異常にそこそこ耐性はあるだろうという変な信頼の元の行動。
何はともあれ、これで俺が思い描いていた物が作れるぞ。ふふふふ、一般開放の日を楽しみにしててくれマイエンジェルたちよ。さぁ帰ろっと。
「うせやろ......」
俺がシアンの森美術館(仮)へと戻ると、バカみたいに精巧な壁画と石像、立派な天井、岩盤を削り出して作ったであろうシャンデリアのあるファンタジーな空間になっていた。どーやったんお前ら......
「お前らいい仕事したぜ! みたいな雰囲気出してんじゃねーよ......まぁうん、いい仕事してくれたけどどーやったんホント......」
また呼ぶからよろしくと伝えて魔法を消す。後に残るは呆然とした感覚から抜け出せないシアンと不思議な空間が残された。
「......アイツら絶対に超高性能のAI搭載しとるやろ......おいおいおいおい、精巧な壁画だと思ったらこっち側はエジプトっぽいやんけ......あ、あっちはジ〇リやん......」
こう零してしまったが、これに関しては俺は絶対に間違っていないはず。
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