第33-4話 な阪関無
不意に訪れた浮遊感と重さで意識が浮上する。
ちょっと色々あったせいで思考が物騒になっていた俺は瞬時に覚醒し、敵襲に備える。まぁ偉そうに言ったけど、襲ってきたのが本当に敵で既にここまでされてたらもう手遅れではあるが......
「............うぼぁっ......ぐえっ」
そのまま体勢を立て直す暇はなく、無常にも重力に導かれて地面に熱烈な歓迎を受けた。
まぁなんと言うか......ハンモックで寝ていた俺とツキミちゃんを見て、帰ってきたエンジェルたちが羨ましがり全員ライドオン。悪ノリした白い連中がウチの子たちの中で最重量なワラビも乗せた事で無事ハンモックが過積載となり崩壊して今に至る。
腰から落ちた後、続いて上に乗った皆の全てが俺を押し潰したので踏み潰されたカエルのような声を出す情けない姿を晒してしまった。
「......お帰り。とりあえず一度退いてくれるかな?」
幸せな掛け布団がたくさんなこの状況は喜ぶべき所だろうが、なんせ敷布団が大自然、しかも普通の地面という残念さだから悲しくなる。せめて芝生とかならばこのまま寝るのも吝かではないのだけれども。
チョコチョコと俺の上から退いていく天使たち。名残惜しい気持ちがエグい......くっ、この後ふかふかのおふとぅんの中でイチャイチャするんだからね!!
......順々に降りていくのはいいんだけどさ、ワラビが一番最初に退いてくれないかな? なんでそのクソデカ図体で最後まで居座ろうとしてるのかな君は。あのね、どっちかというと君は乗られる方で輝くと思うんだよ僕ァ。
「......ちょっと後でお話しようかワラビきゅん。痛みは無くとも重みはちゃんと感じるんだよ?」
一番最後にゆっくりと降りていくワラビにニッコリ微笑みながらそう伝える。そんなに怯えなくてもいいんだよ......ちょーっとお話するだけだから。
......あーなるほどねー。そっかそっかー。
「嫌がらせじゃないんならいいんだ。いやごめんねー、まさかワラビがそんな事思ってたとは......クソ野郎でごめん......」
皆で飯を食べて風呂に入りまったりした後ワラビとお話をしたら衝撃的な事を聞かされた。
なんていうか......うん、ワラビも甘えてみたかったらしいのですよ。どうしても体躯的に受け身になるしかないから今までは控えていたけど、今回俺が爆睡していてチャンスだと思ってやってしまった、と。ワラビ以外のウチの子たちも理由を承知済みで最後に降りれるよう調整したらしい。
「ヘカトンくんもそうだけど、ワラビも案外しっかりしていて甘える素振り見せないからそんな風に思ってたとは全然気付けなかったよ。なんていうか......うん、マジでごめんよぉぉぉぉぉぉぉ」
もっとコミュニケーションを取らねばならんなぁ。
ついついあの白いのたちと同様に考えてしまっていたのは反省しなきゃ......うーん、ダメ親だわ......
そうワラビのもっさもさの首毛? に顔を埋めながら考えているが......なんかもうどうでもよくなってきた。ウチの子は皆天使、この天使たちは皆ウチの子だから可愛がればいいんだ......
ハピネスしかない寝室で回らなくなった頭を頑張って動かしていたが、ハピネスの洪水に溺れ俺はいつの間にか寝てしまった。
◇◇◇
翌朝、もこふわ布団で目を覚ます。体調は万全、ハイパーすっきりしている。
やっぱ一人で寝るよりもこの子たちと寝るのが一番だ。特効薬マイエンジェル。
幸せの過剰摂取はよくないので、お裾分け的な思考で個別に頭を撫でていく。撫で撫では皆大好きだからね。照れ隠しで白いのが嫌いって言いそうだけど、もしそう言われたのなら好きになったと言うまで撫で回すつもりである。
五分、十分と時間が経過していく。これはもうやばいね......永遠にしていられる......あっコレはあかんわ、コレ俺の方が幸せだ......撫でられていない子が寝ながらも撫で撫でを求めて俺に身体をこすり付けてくるのが堪らん可愛い。しゅき。
自分のターンが来るとフニャッとした寝顔に変わり、自分のターンが終わると顔が戻るのが楽しい。そろそろ起きて構ってほしくもあるし、まだまだ寝ていてほしくもある。
だいたい三十分程寝ている子をもふもふなでなですりすりして楽しんでいると、ここで漸くお目覚め第一号が現れる。
「......くぁぁぁぁ」
「ふふっ、おはようお嬢様」
『......ん? んんんんっ! おはようっ』
微睡んだ瞳で可愛いアクビを披露している天使を優しく撫でながら朝の挨拶をすると、徐々に覚醒してきた頭で状況を理解した天使が尻尾をパタパタさせながら抱きついてくる。可愛い。
一人起きたらそこからは芋ずる式に起きていく。ウチの子たちはまるでリンクしているかのように一緒に起きてくるのだ。
「皆もおはよう。よく寝れたかな? いつも早起きなヘカトンくんやワラビも今日はゆっくりしてたね」
『......おはよう』
コクコク!
照れてるっぽいワラビが恥ずかしそうに挨拶を返し、寝起きでボードの無いヘカトンくんは頷いて挨拶をしてくる。癒されるわぁ。
まだポヤポヤしている末っ子姉妹の顔に水の球を当てて強制顔洗いを敢行するあんこお姉ちゃん、袖の裾から侵入して俺の身体で暖を取るピノちゃん、移動の為なのかしらんけどワラビの背に飛び乗って再び寝るダイフク、あんこの定位置にモゾモゾ入って甘えてくるツキミちゃん。ウチの子たちは今日も最強に可愛い!
「さて、甘えんぼさんや寝ぼすけさんはこのまま連れて行こっかね」
このままでもいいけど飯を用意しないとあかん。
数日やらなかったけど、やっぱ俺はこの時間が好きだ。この子たちの成長を見守る為に生きているって感じが堪らない。
「張り切って飯作るか」
ワラビの首毛の影響かふわふわのモノが食べたい。パンケーキな気分じゃないしオムレツでも作ろうかな。チーズ入れてトロットロな奴。
◇◇◇
『『『『『ごちそうさまー!!』』』』』
皆、揃いも揃ってお腹がぽんぽこしている。特殊性癖の人にぶっ刺さりそうな食後の風景。
思い付いたとろふわチーズオムレツを、折角ならとクソ巨大なフライパンで作った結果、これがまぁ大好評で皆バクバク食ってくれて満足。
体積的にワラビサイズのチーズオムレツがあったのに、それが綺麗に全員の腹に納まったのだ。......きっと皆の胃袋は宇宙なんだろう。なおカロリーなんてものは胃袋に納まると同時に夢幻の彼方へと消え去ったらしい。
浜辺に打ち上げられたフグのような......イカめしのような......なんかとても張ったお腹を天に向けて寝転がる皆の口元を拭い終え、丁寧に座布団やクッションの上に祀る大仕事を無事やり遂げた俺は食後のコーヒータイムと洒落こんでいる。
まんまるお腹のヘカトンくんは激レア。ヘソ天も同じく激レア。なのでカメラに収める。でもそれだけじゃ物足りないから追加で全員分の妊婦姿を盗撮して、と。
「へへっ、フォルダが潤うぜ......」
相変わらずコーヒーを淹れる腕は上がらないが、豆と水さえ美味ければ美味いのは出来る。拘っている人に言わせれば冒涜しているかもしれないけど支持できる人とかおらんから現状で満足するしかないんや。
さて、皆の今日の予定は何時もとそう変わらずらしいし......俺が今日やる事は、あの宝玉を使って俺の生命線を鑑定する予定だ。
とりあえず宝玉に一つ物申したい。一個と言わずに三個まで鑑定させてくれよ。
一つならば使い切りじゃなくて一年のクールタイムを設けるとかしてくれたっていいじゃないか......ケチくせぇな畜生この野郎。無理を押して使い倒してなんか変な力が溜まって変なのが出てきても、俺なら苦もなく倒せる気がするから......ね。
「これ作った神かナニかよ、俺の願いを叶え給え」
DANDAN心魅かれる雲を突き抜けてFLY AWAYして騒ぐ元気ボールがSparkingさせてくれよ。
............チッ、何もねぇのかケチくせぇ神っぽいナニかめ。こちとら今でこそ過分な力を宿した化け物に成り果てたけどサポート無く放り出したんだからせめて謎な力の詳細を教えるくらいのアフターケアはしやがれや。
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