第331話 

「あの......本当にもう......ぐすっ......ううっ......ゆ、許して......貰えませんか......お願いしモゴッ!?」


 切り札となる特殊モンスター【口先の魔術師リップスマジシャン】、トラップカード【強要される土下座オーワダジョーム】などを発動するも、杏子......いや、あんこたちの発動した【犬なるバリア ミラーフォース】により全てを破壊され、為す術なくサレンダー。

 現在、悪足掻きも土下座状態のまま凍らされ首だけが動かせる状態でみっともなく許しを乞うだけの状態になっていた。そして今......聞き苦しかったのか何かの蔦で口を塞がれた。頑張れば噛み切れるだろうけど、次は余計に頑丈なのが来そう。辛い。


『わたしはもういいや』

『本当に反省したようだしもうよくない?』

『いや、あと半日くらい放置でいいよ。こいつすぐ調子にのるから』

『でも......』

『そんなに気にしなくても目の前でしることウイを遊ばせておけばいいよ。なんならそれに混じってみればいい』

『えぇ......』


 俺の処遇を巡って目の前で会議をしている天使たち。今のこの子たちは天使と言うよりも......うん、堕天使と言った方がしっくりくるかもしれない。基本的に優しくてデレデレなあんことツキミは絆されて許そうとしてくれている......やはり天使!!

 だけど、何かと当たりの強い堕天使の白いヤツらはかなり疑っている。かなり反省してるのに......酷いよォ酷いよォ。ぷるぷる(寒さによる震え)......ぼく、悪いシアンじゃないよ。


『ねぇ、遊んでいい? 遊んでいいの?』

『遊ぼー!! あーそーぼー!!』


 俺の鼻先でソワソワしている無邪気なエンジェルも可愛い。でもちょーっと擽ったいかなぁ。鼻にちょっとだけかかるモコモコ羊毛がキッツイから顔面を埋もれさせてほしい。


『......見て、あの顔。絶対反省してないよ』

『......うん、今アレを自由にしたら絶対に碌な事にならないって』

『そ、そうかなー? なんかキツそうなだけに見えるけど......』


 そうだよ! ツキミちゃん、もっと反論してあげて!! この顔はクシャミを我慢してるだけなんだからッ!! 鬼! 悪魔! ピノダイフク!


『いーや、反省が足りない!!』

『どうせ自由にしたらすぐ反撃してくるって!!』


 何故こんなに一緒にいるのにこの白いのたちからの信頼度は上がらないのだろうか......本当に悲しい......もういいよ......煮るなり焼くなり拷問するなり好きにしてくれ......


 最後はくっ殺さんにでもなってやるさ。へへ......



 あー、もうクシャミ我慢する必要ないかな。したらしたで反省が足らないってなるだろうけど......ごめんねしるこ、おじさんの出すクシャミで汚れるかもしれないから後でちゃんとお風呂に入って綺麗にするんだよ? 猿轡されてるからどんな被害を被るかわからないけどこれはおじさんとの約束ね......


『ねぇ、もう許しt「へぶしっ!!」......あー』


『あっ............』

『......ううっ......うわぁぁぁぁん』


 このご時世にこんな事になってしまうとは......諸行無常なり。この後に起きる事はアレですね。うん、全てがインガオホォォォォォォ!!


 まぁなんて言うか四足獣の後脚での蹴りはエグイよね。ほぼ全身固定されている状態で顎をカチ上げられると流石の俺でもクるものがあったよ......何も悪くないしるこの涙と一緒だと余計に、ね。ハハッ。




 ◇◇◇




『ごめんね......』

『許して......』


 白いのが怒られている。まぁ末っ子を泣かしちゃう原因を作っちゃったからね、これはちかたないよね。うん。

 泣かした元凶は俺ですが、誠心誠意説明をいたした所不可抗力という事で許された。なのでしるこを宥めつつ丸洗いして戻ってきた所です。想定していない場面で汚れ、そのまま継続して遊ぶのが困難になって悲しかったから泣いたそうです。

 決して俺が汚物だから泣いた訳ではないそうです。そこだけは本当によかった......


「ごめんね......くしゃみ我慢できなくて」


『許さない! 今日一日抱っこしてて! クシャミはダメ!』


「イエスユアマジェスティ」


 お風呂でこんなやり取りがあり、俺は土下座マシーンから抱っこマシーンへ華麗にジョブチェンジをした次第でございます。ありがとうしるこ助かったよ、でもマジごめんなしるこ。

 本命のしるこに付随してウイ、ツキミ、あんこもセットになって抱っこをご所望したので抱っこマシーンとしては職務を全身全霊全うするカクゴです。両腕と密着している箇所が喜びに打ち震えております。


「よーしよしよし」


「くぅん」

「くるるるる」

「きゅぅっ」

「メェッ」


 恨めしそうに白いのが睨んでくるが、俺には最強の弁護士が付いているので怖いものは無い。もう何も怖くないっ!!

 ほら、睨んでないで大人しくしるこの泣き声に釣られてきた検事ワラビと裁判長ヘカトンくんに説教されていなさい。直接言ったり、不穏な空気を悟られたりするととばっちりを喰らうと学んでいる俺は思った事を心の中に留める。


「お土産、買ってきたからあっちで出すね。あんこたち......皆ごめんね。大人気なく拗ねちゃって......反省してます。もう怒ってない?」


『もういいの。でももうやめてよね』


 はい、もちろんです。


『次はワタシだけでも連れてってね』

『つれてけー』

『そーだそーだー』

『わたしも!!』


 次のお出掛けはそうします。はい。

 こうして、漸くお許しを得て俺たちの関係は元通りになった。こういうのでいいんだよ、こういうので。

 それにしても......なんであの白いのたちはあんなに辛辣なんだろうか。これは一度腹をカッ捌いて話し合う必要があるな。

 行き過ぎたツンデレや照れ隠しは良くない。モチモチ野郎は俺の性別が変われば態度も変わるだろうけど、俺はこの性別のままがいいから無理。なんであそこまでスケベに育ってしまったのか......


「よしよし、はいこれお土産。多分ピノとダイフクは今俺が話しかけたりなんかしたら拗れると思うから後であんこたちで渡しといてね」


 皆に個別に買って来た物以外は各々好みの物を選んでいった。意外にも木製の小物はかなり好評で、各自魔法やスキルを使ってスプーンやフォークを使って見せてくれた。いつの間に......まさか、俺が居ない間に花見連中に教えてもらったりしたん?

 くっ......もしそうだとしたらかなりの損失である。俺が教えてあげたかったのにィィィィ!!


『ふふん! どう? みておぼえたのー』

『すごいでしょー』


 俺の雰囲気から何かを察知したのか、末っ子姉妹がドヤりながら真相を教えてくれた。ほんとに? 見て覚えたの? しゅごーい!


「まぢで!? ウチの子は天才だなぁ!! よーしよしよしよしよしゃー」


 憑依合体ム〇ゴロウさん。さすがに縁のある品物は無いのでオーバーソ〇ルは不可能でした。シアゴロウで我慢してほしい。


『寂しかったの』

『もっと撫でて』


 肩の上に乗せたあんことツキミちゃんを頬擦りしながら撫でていた。すると末っ子姉妹風に甘えた感じでASMRをしてくれた。

 ぞわぞわして脳が溶けそう。耳が孕む......これ、ヤバいぞぉ......


『なでろー』

『かまえー』


 両太ももに乗っかっていたしることウイも便乗して甘えてくる。あぁっ、もうこれだけでさっきまでの辛かった思いが洗い流されていく。しゅき。

 飢餓状態で禁断症状出まくりの時に可愛ニウムをオーバードーズするとこんなにガンギマりゅのか......知らなかった。


 これは違法でもグレーでもなく、身体に悪くもない素晴らしい成分だから何も問題は無い。ダメゼッタイな物は何一つ無いのだから安心安全。


「やっと帰ってこれた!!」


 やっぱお家って最高だわ。これからもずっと俺はここで天使たち+aと暮らしていく。

 お外はたまに出るくらいでいい。正式に俺の領地として認められたのだから堂々と引き篭れる!!

 余計なのが来たとしても全力で討ち取っても相手の非100%になるし、今まで以上にここを素晴らしい場所にしていこう!!



 ──────────────────────────────


 あけましておめでとうございます。

 今年は完結に向けて頑張りますので、どうか最後までよろしくお願いします。

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