第330話 尊厳? 何それ美味しいの?
「ほら......あれだよ。うん、ハブられた感じがして寂しかったからその......抗議......的な?」
なんとか本心を読ませぬように誤魔化す為に言い訳を重ねていく。読心術を会得している子がいなくて良かった。
正確に心を読むのは化け物でしかないからね。人間不信、動物不信に陥って病む未来しか見えないもの。主人公の心情を正確に当ててみたり、心の機微を察するような幼馴染ポジの女や同級生ポジの女、溺愛してくるお姉さんや愛の重いツンデレ妹、クーデレ妹、なんかもう人生何周目? って感じの女教師とかは人外です。ファンタジーです。フィクションです。
......うん、あんなのが近くに居たら絶対に病むもの。平穏な生活なんて出来ないよね、ラブコメ主人公とかよく心壊れないよね......HAHAHA。
「グルルルルル」
まぁこんな変なことが頭を爆走しているかと言うと、マイエンジェルあんこ様の機嫌が物凄く悪いのです......あの、誰か助けてくれませんか?
「シャァァァァア」
はい、ダメなんですね。ホワイトスネイクさんは俺が視線を向けただけで威嚇されてしまいました。
生きていて......いえ、酸素を無駄に浪費し汚物を生産する動く汚染物質で申し訳ありません。僕に味方は......味方はいないのですか?
「ケッ」
ハナっから全く期待していなかったけど、それは余りにも酷くないでしょうか......鳥類ってそんな声出せるのかな? ファンタジー進化でそんな器官が発達していったのかな? そのフワフワモチモチホワイト羽毛がゴワッゴワになってしまえ......グスン。
「ハァ......」
ヤレヤレ的な動きをするブラックバードさん。とても人間臭い行動するのやめてほしいんだけど。ねえ、君はかなりの癒し枠なのよ? 普段はクリックリな綺麗なお目目を半目にして睨まないで欲しい。
「正座」
「............」
元置き物さんとシシガミ様亜種さんも俺に味方しなかった。ホワイトボードに書いた二文字を元置き物さんが掲げ、同意するように頷くシシガミ様亜種。
悲しいなぁ......俺は......とても悲しいよ......
「キュゥゥゥゥ」
「メェェェェェ」
「......ッ!! ......ッ!!」
アザラシちゃんとヒツジちゃんがウサギの頭をコロコロして遊んでいる。頭部と切り離されたウサギさんの胴体が何故か飛び跳ねたりして動き回るというホラー要素的なスパイスを隠し味ときて提供していた。
楽しそうだなー......俺も混ざりたいなぁ。HAHAHA、平和でいいなぁ。平和って素敵だわぁ......
「ガウッ」
余所見をしていたのが悪かったのだろう。天使からかなり高威力なパンチが飛んできた。首の骨がズレかける程の威力、俺じゃなきゃ死んじゃうね☆
「申し訳ございませんっした!!」
一体、何時になったらコレは終わるのだろうか。コレが始まってからずっと鳴き声だけだから何が言いたいのかさっぱりわからないのよアタイ......
んー......なんだろ? 何かもう全体的に理不尽じゃないかなー? イレギュラーだったけど色々と頑張って来たのに......確かに俺が燃え尽き症候群に罹患して不貞寝したのが発端で元凶だけども......
......うん、10:0で俺が悪かったわ。でもそろそろ終わりにしてほしい。
「あのー......この通り私はとても反省しておりますのでそろそろ御勘弁願えませんでしょうか?」
こんなギスった空気嫌っ!! 俺は皆と戯れたいんだよ!! もっと俺を愛して甘やかして!! 構って!! 具体的にはもふもふで溺死or圧死するような感じでお願いします!!
火葬、土葬、花葬、鳥葬......思い付くのはこれくらいかな? これらに加え新しくモフ葬を追加しようじゃないか。寧ろ我が魔王領(仮)の葬儀は全てそうするべきであろう。うん。
因みに魔王領(仮)と言ったのは、王との
当然抵抗したが、俺に思いついている案は無く、逆に民衆や貴族に威を示す良い呼び方だと言い包められた結果だ。スイーツ領、もふもこ領とかを思い付くままに口に出したが他所に舐められると言われ渋々(仮)にする事に......くそぅ。
話が逸れたな。まぁ何が言いたいかと言うと、ちょっと頑張ってきたからご褒美ください。いい加減あんこニウムやピノミン、ダイフク質、ツキミん酸、その他諸々の必須栄養素が枯渇寸前だから補給させて欲しいんです。切実に。
「グルルルルルルル......」
あ゛!? 何言ってんのお前、反省してる雰囲気微塵も感じねぇヨ!! とでも言いたげな皆様の視線や唸り声は華麗にスルー。
だが、ここで畳み掛けないと今日はもうチャンスは来ない気がしている。ガチ説教的な雰囲気の中突飛な言動を始めた俺に戸惑う今が最大の好機だろう。
某眼鏡も言っていた。攻撃は最大の防御也、と。
「俺が全部悪かったのは知ってるよぉぉぉぉ!! ごめんなさいぃぃぃぃぃぃ!! でもね、俺だってちゃんとした事をしてきたんだよ? ね? 聞いて。聞いて。聞いてくださいよぉぉぉぉ!! どうかっお願いし゛ま゛す゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ」
ドン引きされようが、ゴミを見るような目で見られようが、あからさまに距離を取られようが......そ、そんな、ううっ......そんな些細なこ、こ、事は......気にならないのさ俺は......
冷静に考える暇を無くさせている内にこちらの意見を押し付ける。それさえ出来れば後はもう話し合うだけの簡単なお仕事に成り果てるのさ(震え声)。なるべくみっともなくクレイジーに、そして惨めに見えるよう意識するのがコツよ♡
「............」
「......チッ」
その反動がコレ。だけどこの程度は覚悟の上な俺なのさ......ほら、これまでのように何を言っても暖簾にドスコイ状態では無くなっているのよ。
「あのですね......そのぉ―――」
俺のターン!! ドロー!!
シアンの尊厳を生贄にし、魔法カード【ネゴシエート】を発動ッ!! 更にカードを場に伏せてターンエンド!!
さぁ、デュエルのお時間デース!!
―――シアンの孤独な戦いは始まったばかりだ。
◆◇◆
「忙しい中時間を作って貰って感謝する。大至急国のトップ同士、意識の共有をしなければならない事態に陥った故の緊急会談なのだ」
王国の王はシアンが去ってすぐ行動に移った。
世界で六つしか確認されていないリモート会議の出来る魔道具を用いて三大国の残り二国の長へ緊急会談を要請。
所謂スタンピードや大災害、天災、天災級モンスターの襲撃、謎の病の感染爆発等、国家の危機レベルの出来事に対してのみ使える符号を使用しての要請だったのですんなりと場は整えられた。
詳しく知っている人......例えば商会員等が居れば、上記した国家危機レベルの出来事はヌルく見えたと思われる。きっと世界崩壊の序章、伝説のラグナロクの再来等の言葉を使ったであろう。
『構わぬ、それで......何が起きた、若しくは起こるのか説明願おう』
『うむ、無駄に時間を浪費する場面では無い。面倒な形式とかは無視していいから本題を』
普段はメンツや何やらを意識してたっぷりと時間を使って無駄な会話をするのだが、危険が危ないから緊急会談をしましょうなのでスムーズに進行する。
「先ずは......そちらでも噂くらいは聞いた事があると思うが、先程、我が王城に『魔の山の魔王』が襲来した」
『『......ッッ』』
普段は腹の内など絶対に晒さない狸共が揃って息を飲み、元から少なかった弛んだ空気は完全に排除されていった。
“真の魔王”
新種と思しき獣を多数従え、貴族を何の躊躇もなく殺害し、例え国が相手になろうとも敵対し返り討ちにする暴君、自然災害のようにフラッと現れ、まるで呼吸をするように大国を滅ぼしていく、と。
これまで確認されてきた魔王を名乗る存在の噂と掛け離れ過ぎていた。大国二つを数刻で堕とした等聞けば聞くほど信じられない内容と目撃情報が少なく、ここまで本当に存在しているのかを信じ切れず半信半疑の状態でいた。噂は城内でも拡散されており名前を聴かない日は少ない程であったが、内容のあまりの非常識さに背鰭尾鰭が発達しすぎた子どもへ聞かせる御伽噺の類と思い込みたかったのだ。
何か別の恐ろしい存在を魔王と呼称し、解り易くしているのでは無いか......なんて思ったりもしていた。
『まさか本当に存在していたのか......だが、王国は堕とされておらぬのだろう? アレは暴れなかったのか? もしや――上手く懐柔したのか?』
魔王の襲来――しかし、その様な大事件を経ても何故この王は生きているのだろうか。
「懐柔? その様な事が出来る相手などでは無かった......」
目に見えて青くなりガタガタ震え始める王。
「魔王は、巨人と龍を使役し城を難なく破壊した......挙句、近衛を含む兵を皆殺しにして......それから―――」
衝撃的な事実を王国の王は暴露していく。
余裕で堕とす事が出来たのにそれをせず、見た事も無い術を使い城を改装。その際城内に居た者は外に出る事が叶わない事態に陥っているという。
「最後に......魔王は―――」
魔王の残していった要求が王から伝えられる。
それと遠隔でも国を堕とす方法を持っているらしい事も......
『......俄には信じ難いが、この様な状況で嘘を吐いても何の得にもならぬな。相分かった、あの山脈一帯を魔王領として認め不可侵を誓おう。勝手に行った馬鹿はその時点で逆賊に認定......これでよいだろ?
......ハァ......私も冗長する馬鹿共をこれを期に粛清しておかないといけないだろうな』
『此方も同じだ。あの山脈一帯を不可侵領域、そして魔王領と認め周知させる。粛清についても実行しようではないか......最近の馬鹿共にはほとほと呆れておるしの』
「済まぬ......ありがとう......」
この会談は後に【三賢会談】と呼ばれ、英断した各国の王を民は讃える事となる。
最初期は魔王領を認めるなど狂ったか!! と反発もあったが、命知らず共の暴走、三国の粛清対象者共が結託して行った背水の陣的な大暴走を経て、この時の決断が正解だったと認められた。
共和国、皇国は馬鹿共の暴走を抑えられなかった結果、双方共に城の一部が不思議な鏡張りにされるも国はそれを利用。以降、国家機密含む事以外の会議は民衆も見られるよう解放した事で民からの信頼も厚くなり、永く栄える事となった。
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今年一年、拙作をお読み頂き誠にありがとうございます。沢山読んで頂けて本当に嬉しかったです。
今年一年大変お世話になりました。来年もまたよろしくお願い致します。それではコロナやインフル等にお気をつけて良いお年をお過ごしくださいませ。
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