第327話 リフォーム&大清掃
わたしシアンさん。今、おっさんが密密してる所に押し込められているの。助けて。
「さて、貴様は我が国の貴族を数名殺害、貴族屋敷の破壊行為、ギルドでの大量虐殺など様々な容疑が掛かっておるが相違は無いな?」
「何を今更。全部解ってるんだろ? 逆に解ってなかったらとんだ無能だ」
今更そんな事掘り返されてもなぁ......
話を聞いてみようとはしたけど、コイツが何をしたいのかさっぱり理解できない。つか王が無礼講でええ言うてんのにギャーギャー騒ぐなモブ共。
「んで......俺がそれをするに至った理由は知ってんの? 容疑者の俺をどうしたいんだ? 俺を裁いてみる? それとも国対俺の構図で戦ってみる?」
無能ってトコで王は額に青筋立ててたけど表情は崩していないのは評価してしんぜよう。そんな王に続けてこう言ってみる。なんかもう問答無用で清掃業者兼リフォーム業者になっていい気がしてきているから早く本題に入ってほしい。
「いや......それは遠慮したいのォ。さて、回りくどいやり取りはお気に召さぬようじゃから単刀直入に言おう。貴様の罪を赦す対価に儂に仕えよ!」
「お断リックス」
はい、これで話は終わりですね。いやー僕ァもう疲れちゃったよあんこラッシュ......ウチの天使全員でお迎えに来てほしい。切実に。
「......ッ!? 何故じゃっ!! 給金は言い値で払うぞ? 爵位や屋敷も用意しよう!!」
焦る王とリピート機能を搭載した騒ぐクソ貴族。うるせぇよ......まだファ〇ビーの方が静かで可愛げがあるよ。ブルスコファー。
「いや、要らんし。家は立派なのがあるし、貴族とか殺した方がいいと思うモンになりたくねェ。以上」
「不敬にも程があるぞ貴様ァ゛ァ゛ァ゛」
え? 即決で断るの!? って呆ける王を尻目に、王の脇で突っ立ってたモブデブが口から汚い声と飛沫を撒き散らし騒ぎ立て始める。王の命令に従ってないアンタらの方が不敬ちゃうん?
「......この話に乗らないのであれば、貴様を捕えなければならんの。良いのか?」
「HAHAHA、全面戦争だね! おっけ!」
どうも王を舐め腐った態度に業を煮やしきっていたらしく、近衛っぽいのとエリート兵っぽいのの殺気が膨れ上がる。王が号令を出せば今すぐにでも俺に向かってカミカゼアタックを繰り出してくるだろう。
「......そうか」
「懐柔させたかったのなら相手が欲しいモノを用意するか理解してから交渉しないと。
権力や立場は金で買え、司法も金で如何様にも出来、暴力も金で買えるor買い慣らせる......ってのがお前らにはこれまで常識だったんだろう。
でもね、そのどれもが本物の暴力の前では無力。これまで振るっていた権力や己の立場は純粋な暴力で簒奪され、司法などはゴミの役にも立たず、自慢の暴力はただのガキンチョの飯事遊びに成り下がる」
ははっ、兵の怒りが限界突破してマジで暴発する五秒前みたいになっている。でも、まだだよ。まだ暴発しちゃダメ。ステイ!!
「ってワケで俺が望むのはお前らの死、没落、首の挿げ替えのどれかでーす。人様に迷惑しか掛けない貴族の手綱を握れない王、声の大きい者に便乗して騒ぎ立てるしか脳の無い貴族、悪じを取り締まらない兵士なんているだけで害悪だ」
目を閉じ天を仰ぎながら俺の話を聞いていた王は、覚悟決めたらしくこちらへ鋭い視線を向けた。
「その者を捕らえろッッ!!」
「「「「ハッ!」」」」
最後の最後で選択を誤ったというかなんて言うか......アンタが本当に国を思っているのなら、しなきゃいけなかったのは俺と王国間の相互不可侵条約っぽいモノを提案して、それを締結させる事だっただろう。
色々と引けなくなって覚悟を決めてる点だけは評価するけど......
「俺や俺の天使たちの力量ってわかりにくいのかしら......ここまで言ったのに王以外は侮辱されたとしか思っていないようだ。まったくもう......さて、この城は後でMMキャッスルにリフォームしないとだから外壁の他はあまり破壊したくない......って事で一旦表に行こうっと。オラ!! 場所を移すから追って来やがれゴミ共!!」
某警部から逃げる三世大泥棒の如く華麗に離脱し、豪奢なだけでウチの庭よりも品の無い庭園っぽい場所へと降り立つ。近年はかなり和洋折衷化が進んだ......というか洋の侵食が著しい日本なので見慣れてはいるのだが、やはり日本人の感性を持つ者として洋風おんりーの庭園などは性に合わない。ジャパニーズワビサビって本当凄いよね。
「絶対にヤツを逃がすな! 囲え!!」
枯山水とか立派な松が植えてある庭って憧れるけど、ああいうのは安易に個人が手を出していいモノじゃないんだよなぁ......なんて考えていると、先程見た時よりもゴッテゴテな本気装備に切り替わった兵士が俺を取り囲む。いや、賊を取り逃しそうな時に悠長に着替えてるんじゃないよ......
「......まぁこの量ならば久しぶりに暴れさせてあげられるね。骨喰さんかもーんぬ」
自室にある骨喰さんを取り寄せる。ここ最近の骨喰さんは妖刀のクセに日本式家屋の床の間に飾られるスローライフを楽しんでいた。手入れは欠かさず時たま振るったりもするが、斬りたいって感情はいつの間にか向けて来なくなっていた不思議。
龍さんと明王さんもたまに顕現させるが、骨喰さんを振るう俺を孫を見守るような目線でまったり眺めるだけで終わっている。多分ウチのメンツの中で一番血の気が少ないのが骨喰さん一行だろう......すんげー納得がいかないが。
「ヒッ......」
取り寄せ時の演出として、無駄に禍々しくなんちゃって黒炎を出してみたが......どうやらその試みは成功したらしく一部の兵が怯えた声を発した。
こうなるとちょーーーっとだけだけど気分がアガってしまうのが男の子というモノ。ポン刀を手に、お城で王相手に悪役ムーブをかまし、敵対する......倍満くらいの厨二っぷりだろう。
「さぁ、いつでも掛かってくるがいい......それとも死に物狂いになるにはまだお前らに危機感が足りないのかな? ならば見せてやろう......顕現せよ!」
しゃーない。ウラが乗って三倍満になっちゃったのは予想しようがない故にしゃーないんだ。
魔王ムーブっぽい事をするとテンション上がるのは相変わらずなようで、龍さんと明王さんが威圧感たっぷりにノリノリで出てきた。骨喰さんもとってもカタカタしております。
「龍さんは上空から城の周辺の破壊と増援の駆除、明王さんは城の外壁と天井を剥がすのと中に居るヤツらを逃がさないようにこの鏡っぽいのをこの向きで剥がした箇所に付けてってね。よろしく」
顕現の最後にゴウッと力の奔流っぽい演出をして目眩し&音声の遮断をしながら指示を出す。魔王ムーブのままもっと仰々しく敵に聞こえる様に言え......ってこちらを責める視線をぶつけてきたが華麗にスルーをし、早く行けと視線を返す。
飛び立つ龍さんに溜め息を吐かれた。解せぬ。
「......どうした? 掛かって来ないのか? 我が愛刀が早く骨を砕かせろと煩いんでな。こちらから行くぞ!」
ンな事ァ言ってねぇよ! とカタカタして抗議してくるが、こちらも同様に華麗にスルー。妖刀なんだからええやんけそれくらい! ほら、相手さんがカタカタしてる骨喰さんを見て、ヤベェよヤベェよって感じで顔を青くしていらっしゃるよ!!
怒りの積載量が超過してるキレっぷりでの登場するだったのに冷めるのはえーよホセ。......あー、大怪獣の環境破壊も一役買ってるのね......でもさ、拳を一度振り上げた事実は消えないのよ。
「戦意喪失甚だしいけど、殺ろうか骨喰さん」
居合の構えからの神速の抜刀――
勿論技術なんてほぼないただの身体能力によるゴリ押し抜刀術。こちらが構えたのを見て慌てて剣を構えた敵兵だが、間合いの大外からただ大袈裟に抜刀した様に見えたらしくホッと息を吐く。
「儞已經死了」
――俺に剣を振らせた。うん、それだけの事なんだけどウチの骨喰さんは甘くないのよ。
不可視の【空断】は鎌鼬に襲われた様なモノ。多分痛みはほぼ無いはずだ。
だけどウチの骨喰さんは鎌鼬のように甘くなく、傷は治してくれない。寧ろデスソースとキャロライナリーパーを塗り込むんだ。斬られた傷口を黒いナニかが蠢きだしたのを確認すれば、ハイ! 致命傷~!
間髪入れずに危機感の足らないクソ兵士に向けて【空断】を乱れ打つ。数に任せた甘っちょろい戦闘しかしていないんだろう。
「断末魔や悲鳴が心地良いねぇ。そう思わない?」
既に囲んでいた兵士の殆どは斬った。数人は斬撃から逃れているだろうけど、逃げれば龍さん、立ち向かえば骨喰さんが襲うから詰み。
城の方も順調に壁を剥がされ風通しと日当たりは抜群の優良物件に早替わり。絶対住みたくない。
兵士の悲鳴に加えゴキゴキ、ベキベキ、バキバキアルティメッ......バキバキと骨が鳴り続ける中、久々に骨を食んで鳴りを潜めていた妖刀の血が騒いだ骨喰さんが上機嫌にカタカタしている。
「さぁ、後は龍さんと明王さんに任せて王の所へ行こっか」
俺の言にキィィン――と鍔を鳴らして了承の意を示す骨喰さん。なんかバリエーション増えたね......楽しそうでなりよりです。
あ、そうだ。これ伝えるの忘れてたわ。
「明王さぁぁぁん!! 全部剥がし終わったら城門とかも全て潰して辺りを更地にしておいてー!! 龍さぁぁぁん!! 龍さんは全力ブレスを真上に一発、四方にも一発ずつ打って武威を示しといてぇぇぇ!!」
明王さんは幼めな容姿のヒロインが気合いを入れる時のようなフンスって感じのリアクション、龍さんはコクリと一度頷く。伝わってよかった。
さぁ、骨喰さん。王に引導を渡しに行くどー!!
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