第310話 もうすぐ〇ですね
サキュバス拷問事件から穏やかに月日が流れていき、我が楽園にもようやく春の訪れを感じられるようになった。何も特殊な事が起きない時間はとても貴重で素晴らしいので、ずっと何も起きないで欲しい。切実に。
まだ雪は残っているが温かさを感じられるようになり、家の自慢である枝垂れ桜がポツポツと開花。雪国の春ってわかりずらいけど、なんちゃって暦的には3月半ばでもう春だし、桜がちゃんと開花していればそれはもう春ってことでいいでしょう。
「ワンッ!!」
「ハハッ、まだ雪があるけど春がきたってわかるのかな? 寒い地方のわんこがモチーフだけどそんなん関係ないっぽいな」
雪が残っていても春なんだと感じたのか、とても元気にピノちゃんを頭に乗せたまま俺の足元をクルクル回って嬉しそうになあんこちゃん。見ててとても和む。永遠に見ていたいくらいだ。
あんこの頭の上にいるピノちゃんも、寒さが和らいだお陰か心做し元気が増しているような気がする。
それはそれとして、あと半月であんこちゃんも二歳になるのかー......こっちに来てもう二年も経ったなんて信じられない。
この世の煩わしさから解放された山奥でのなのに、家電あり、美味しい食料あり、天使あり。生活水準は既にあっちよりも上な生活は最高すぎるとだけ言っておこう。
「雪を見ながら桜も見れるなんて......というか、まだ寒いのになんで咲いてるんだろうか。まぁあっちの常識とか通じないし......気にするだけ無駄か」
ウチには植物を自由自在に操れるとんでもないヘビもいるから考えるだけ無駄だね。早い時期から見れてラッキーとか良かったとでも思っておこう。
他の子たちもすくすく成長していてパパとしてはとても嬉しい限りですね。
さて、我々の近況はこんな感じである。ん? まだ報告すべき某アラクネたちがいるじゃないかって?
そこは......ほら。察しろ。
ただいま絶賛特訓中でございやす。
『なにしてんのー!』
『へたくそー!』
ここ一ヶ月程なんちゃってシューティングゲームをやらせているが、成長具合はご覧の通り末っ子姉妹から罵倒されるレベルです。
中級レベルでこれなのでまだまだ先は長そう。改めてウチの子たちの優秀さが際立ちますね......そこ! 親バカって言わない!!
「よーしよしよし、これが終わったらお散歩行こうねー。だからもう少しお利口さんにして待っててね」
まぁこんな感じですこぶる平和に過ごしていましたよ。ええ。
まぁなんて言うか......相変わらずウチの子たちはつよつよかわいい天使ですね!! ←親バカ
◇◇◇
枝垂れ桜が開花してから三日、シューティングゲームの腕が一向に上がる気配を見せないアラクネ王女たちに業を煮やした俺が難易度ルナティックを嗾けて泣かれたり、謝罪の後に中級をやらせると騙してもう一度ルナティックをやらせて泣かれたりとかしたが、概ね平和に過ごせた。
今日もシューティングやるよーって言ったらビクッとされたのが悲しかったので、普通のルナティックの倍の敵を嗾けてやろうと思う。女の人が泣きながらも困難に挑む姿ってなんかいいと思わない? 俺だけ?
俺もシューティングの運営に慣れてきて遠隔でも操作出来るようになった。なので今はあんこたちと遊びながらでも出来る。今日は観戦者はいないけどがんばってくれたまえ。HAHAHA。
暖かくなってきたら需要が減るため、その前にガッツリ食べ納めをしとこうという理由で、この日はおしるこを大量に作った。飽きたら収納に入れて来シーズンまで取っておけばいい。
そう思っていた俺が少し前まではいました。
作っていたら興がノッてしまい、こしあんバージョンとつぶあんバージョン、こて甘、甘さ控えめの四パターン作ってしまったのは反省すべき点だ。確実に来シーズンに持ち越す事が確定した。
夏までに飽きてなかったら冷やししるこもチャレンジしてみようと思いました。
「はーい、じゃあ今日もシューティングゲームもどきを頑張ってくださいねー」
イヤァァァァとか聞こえた気がするけど、これは空耳だから気にしたらまけほー。ちょっとお化け類増やしておこう。
◇◇◇
それからまた時は経ち、あんこの誕生日まであと一週間となった。去年の事を覚えているのかあんこちゃんがソワソワしている時間が増えた。
そこはかとなくどうしたのか聞いてみても、なんでもないの一点張りで何も教えてくれない。可愛すぎて誕生日プレゼントに世界の半分をあげたくなる。
その事をピノちゃんに相談したら『馬ッ鹿じゃないの!?』って言われた。馬鹿なのかもしれないけどさ、それはさすがにちょっと言い過ぎだと思うの。
『仮に世界の半分をあげたとして......その先はどうするの?』
「......ほら、超広大なドッグラン的な物を作ってあげたりするとか?」
『今の環境で充分なのに、それ以上のバカみたいに広い土地をどうするのさ? ここでさえも持て余し気味なのに......』
「グギギギ......」
『何でもノリと勢いだけで発言したり行動するのは止めなさい!』
ウチのピノちゃんは知的生命体として軽く俺の上を行くらしい。二年も経ったのに相変わらずダメダメな野郎でごめんなさい。
いや待てよ......俺はまだこっちで二歳にもなっていないんだよな......ならセーフだ。セーフでしょう。審判の威厳ということで判定は覆りません。
「ぴのせんせーごめんなさいっ!!」
『死ね』
「ぬわーーーーーーっ!! ぶったなっ!! 親父にもぶたれたことないかもしれないのにっ!!」
割とガチめの尻尾ビンタが飛んできた。教育的指導という名の体罰とか暴力はダメゼッタイ!! 喰らったのが俺じゃなきゃ首飛んでたぞ。んもう。
『凄くイラッとした』
「ごめんなさい」
尻尾を地面に叩きつけながらシャーシャーしてたので速攻で謝る。プライド? そんなもんはハナっから持ち合わせていない。
「じゃあここから真面目に話すけど......あんこの誕生日プレゼントどうしたらいいと思う? あの子が喜びそうなモノとか知らない?」
『......急に真面目になられるとなんかゾワゾワする。うーん、何をあげても喜ぶと思うけど......』
「それでもさ欲しいと思ってる物あげたいじゃない? ピノちゃんがあんこにそこはかとなく欲しい物をリサーチかけてみたりしてくれたりとか......ダメかな?」
えぇぇーっとでも言いたそうに嫌そうな顔をするピノちゃんだったが、がんばってお願いを続ける事三分ちょい。ようやく折れてくれた。
「頼み申した」
『普通に喋れ』
そんなやり取りを終えるとピノちゃんはそそくさと去っていった。デレが足りないのでこの後はツキミちゃんを戯れてデレを補給しよう。
あんこへのプレゼントの件はこれでなんとかなったでしょう。うん。
どうしても決まらなかったら最悪ミステリアス商会に行ってオーダーメイドでなんか作ってもらうか、店の中から商品を選ぶかしよう。
◇◇◇
『ねぇ、今ヒマある?』
『え? なになに? 急にどうしたの?』
見るからに落ち着きのない姉を見て、安請け合いしてしまった事を激しく後悔する。
『えーっと、いつもよくしてくれる姉の為に何かプレゼントしようかなと思ってるんだけど......何か欲しいモノとかってある?』
落ち着きのない態度に拍車がかかり、最早挙動不審になるあんこ。何かを悟ったのだろう。
『と、特にないかなー? ほんと急にそんなこと言ってどうしたのさ』
『ふふっ......なんでもないよ。特にないんだね、わかったよ』
『むー......』
笑われたあんこはバカにされたと思ったのか、むくれながら抗議するもニヤニヤされるだけに終わる。
『怒らないで。薄々気付いてるんでしょ? 多分そっちが想像してる通りだから大人しく待ってな』
泣いても笑っても残り一週間。彼女の誕生日プレゼントはどうなるのだろうか......
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