第307話 思い出す
ウサギのポロリをお迎えしてから、今日で一週間が経過した。
劇物を食わせたり、拘束して劇物を食わせたり、首の断面の異空間に劇物突っ込んだり、すりおろした劇物を飲ませてみたり、全力で逃げ出すポロリに変化球大先生を投げる要領で劇物を投げて目の前に落としてみたり、うさぎさんカットにした劇物の首を落としてから食わせてみたり、寝ているあの子の周囲を劇物で猫水みたいに囲ってみたり、劇物猫水に体当たりをカマして強行突破しようとするポロリを空間隔離して絶対に逃げられなくしたり......とか、まぁ、うん。色々やってた。
本当にこの一週間は楽s......ゲフンゲフン! あの手この手で劇物から逃れようとするポロリに、どうにかして摂取してもらおうと必死に過ごしていたから忙しかったのだ。
いやー、ね? 聞いてわかる通りにね、ほんとーにいそがしかったんですわー(棒)いそがしすぎてーわすれちゃってたわー(棒)
......そう、一週間が経過していた。
一週間が......
「あーうん、いっしゅーかんはとっくにすぎちゃってたかー。......やべぇな、完ッ全に忘れてたっ!!」
多分だけど十日は確実に経ってる。拷問的なアレをカマしてから大体三日くらいは休んでから戻ってきたような記憶あるもん。
やばいよやばいよー。
「......まぁアレだ。ロスタイムや延長戦、納期に間に合わない、締め切りを守らない漫画家などなど......この世にはそんな感じのアレが色々あるからね、たかだか数日程度オーバーして放置しちゃってたなんて事があってもいいんだよ......HAHAHA」
とりあえず今からでも行ってこよう。幸い、今は冬場だから遺体が腐っていたなんて事はないと思う。一応俺はこれでも忘れていなければ約束は守るタイプの男だ......でも、もしアイツらが死んでなかったらフル回復させて逃げてこよう。
夏場に孤独死してドロッドロになるまで気付かれずに放置されてたご老人みたいな不幸な事故にはならないはずだ。今が夏場とか梅雨の時期だったら現場をブラックホールして無かったことにしていただろう。
「さぁて......あんこお嬢様に外出の許可を頂いてこなければならぬのぅ......」
普通に甘えてくれるようになったものの、未だにペナルティは継続中......時折鋭い視線を投げかけてくるマイエンジェルたち。それに加えて先日行ったポロリとの戯れは、エンジェルたちに忌々しいネコとのムツ〇ロウごっこの時を彷彿とさせたらしく、無断での外出、外泊の禁止、一人での行動の禁止を言い渡されてしまったのも、今回のド忘れ事件に多大な影響を与えたのは言うまでもない。オレ、トテモ悲シイ。
あ、そうそう。ポロリに劇物を食わせるついでに王女御一行も牛に完敗したらしいから巻き添えにしてあげた。ここで活動したりするならある程度育ってもらわないと、ちょっとした余波や行き違いで死にかねないからね。HAHAHA。
監視として大先輩のヘカトンくん様とワラビ様が付いていたから、このアレからは絶対に逃げられない。情けは期待するだけ無駄だ。
『任せて!!』
『おなじく!!』
看守の役を打診してみたら、すっごく嬉しそうにノータイムで......寧ろ食い気味にそう言い放った御二方。あんなにテンションの高くなったヘカトンくんとワラビは今後そうそう見れないモンと思われる。
「あ、いた。あんこたーん!! ピノちゃーん!!」
起きた事を振り返っていたら直ぐに着いてしまった。語り忘れはきっと多分無いだろう。さて、すんなりと外出の許可が出るといいな。
◇◇◇
......はい、という訳でですね。
まぁアレですよ。外出許可は無事に貰うことができました。
それは目論見通りだったんですが......
あんことピノちゃんの事情知ってる組が同行拒否をしやがりまして......ソロで行こうとしたんですよ。
まぁね、それでもそれはポーズだけで、「やっぱり着いてきて欲しいなー」ってゴリ押せばマイエンジェルあんこは『着いてく!』って言ってくれると信じていたんだよ俺は......
第二の矢として悲しそうな雰囲気を醸し出しまくれば絆されてくれるかなーっても思ってた。
第三の矢として食べ物で釣ろうともした。
でもね、そう、そうなんだよ。俺の浅はかな算段は全てあっさりと躱されてしまったんだ......なんだよ......行ってらっしゃいの一言だけって。これまでのあんこを見るに、相当チョロインの系譜を引き継いでいたはずだったのにぃ......
その癖、ソロプレイは許可できないと言われてお目付け役を付けられました。
場所が場所だけに、事情を知らない他の我が子たちには見せたくなかったのである。あんまり情操教育によろしくない場面は、ね。
まず行く場所が拷問現場って時点で、はい。既にこれだけで役満でごぜぇやす。
次いでその拷問されている相手がサキュバスという点。W役満じゃけぇ。
最後にそのサキュバスの拷問が完全に事後な件。拷問序盤、或いは中盤ならばまだ倍満くらいで済んだだろうけど......もう完全に役満。全部合わせてトリプル役満です。親番の人鬼に御無礼されちゃいますよ。
「......ねぇ、本当に来るの? あんまりそういう系の事は見せたくないなぁって思ってるんだけど......特に君たちのようなピュアい子たちには」
今回の後処理に着いて来たのはツキミちゃんとしるこ。ツキミちゃんは......まぁ初期メンツだから荒事にも多少は慣れてるから百歩譲って連れて行けると、ギリッギリ思えるけど、問題はしるこ。
えぇ、皆様ご存知の通りこの子はまだ幼い。幼さ故の残虐性が変に知識を蓄えた結果フルバーストしない事を祈りたいっすわ。
拷問系の知識を得たしるこがお家に帰り、その知識をウイちゃんと共有し、この無邪気な小悪魔たちがケミストリーを起こしてしまう危険性。最悪の結果に導かれた場合、俺を余裕で殺せる......かもしれない存在になってしまう可能性もある。
『とーぜん着いてくよ!!』
「メェッメキュッ!!」
親の心子知らずとはよく言ったモンだ。
俺の体に自分の体を擦り付けながら、超絶上機嫌でそう言い切るツキミちゃん。
とりあえず、俺とツキミちゃんに着いてくことで遠出ができるってんでテンションがブチ上がってるっぽいしるこ。どうやって今の声出したのかな?
「俺の気も知らないではしゃぎやがってくれてますねぇ......まぁ可愛いからいいんだけどさ」
困ったら撫でる。
撫でて心を落ち着かせる。
沈んだ心には、このモフみがとってもよくキく。
止められない、止まらない。
もうどうにでもなーれ☆
「ほないくどー」
『どー』
『どー』
この子たちのノリが良くて、少しだけ......そう、少しだけだがテンションが持ち直した。でもやっぱりあんこにも着いてきてほしかった。女々しい? 知ってる。でもね、それでもやっぱり俺はあんこが大好きなので、ずっと一緒に居たいんですよ。
「サッと行ってサッと片付けて、その後はゆっくりお留守番組の子たちがハンカチを噛んで悔しがるくらいの事をしながら帰ってやりましょうねー」
『ゆっくり帰ろー!!』
『どんなことするのー?』
言った瞬間から目をキラッキラさせて嬉しそうにするツキミちゃんとしるこが可愛い。すっごい可愛い。
あんこの事を言えないくらい俺がチョロインでした。申し訳ございません。
「一緒に考えようね。やりたい事、やってみたい事、俺の能力値の限界を超えなければ何でもさせてあげるよー!!」
『やった!! なにがいいかなー?』
『ウイをくやしがらせるのー!』
俺の腕から抜け出して肩に止まり、羽根をパタパタさせながら考え込むツキミちゃん。俺の胸に角をグリグリさせながら悪巧みをするしるこを見て確信する。
「これ、この子たちが考え込んでる隙にブラックホールで無い無いしちゃえば解決だ」......と。
そうと決まれば善は急げ。マッハで終わらす以外の選択肢など無いのだ!!
「ヒャッハァァァァァァ!!」
『集中してるんだから邪魔しないで!!』
『うるさい!!』
怒られた。
「ごめんなさい......」
普段のこの子たちからは想像も出来ない剣幕で怒られたので黙って雪山を走っていく。ジェットコースターに乗ってないのに涙が横に流れていった。
◇◇◇
――ヤツはいなくなった。決行するのならば今をおいて他にないッ!
右、左、もう一度右左、左右確認は本来ならばいらないが、相手取るのは正真正銘の化け物。しかし、ここ数日立て続けに行われた拷問でポロリには逃げるしか選択肢は現れなかった。
ウサギはほぼ360度見渡せる視界を持つが、絶対に失敗できない逃走がここにはある! 念には念を入れて左右確認、それにプラスしてウサギの聴力をフルに使って確認。
よし、イケる!!
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にげる
にげる
にげる
→にげる
にげる
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「モキュゥゥゥ!!」
『残念、そこはワラビ』
『だめ』
――何故そこにいるッ!!
そう思うも、「あぁ、無理だった」と即座に理解し、化け物にはどう足掻いても敵わないと諦め、感情を消し去る。
――この後に起きる惨劇を思い浮かべたら、感情など捨て去ってしまっておいた方がよかったのだ。
ポロリ は にげだした▽
しかし まわりこまれて しまった▽
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たたかう
まほう
→とくぎ
どうぐ
にげる
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→におうだち
そらをとぶ
とっしん
でんこうせっか
しんそく
らいでいん
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ワラビ の におうだち▽
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たたかう
まほう
とくぎ
→どうぐ
にげる
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→まじゅのみ×∞
やくそう×∞
まじゅのは×∞
まじゅのえだ×∞
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ヘカトンくん は まじゅのみ を つかった▽
「モキュゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
ポロリ の こえが むなしくひびきわたった▽
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