第304話 トラップを仕掛けよう!
はーい! 良い子のみんなー! こーんにーちわー! 犬のお兄さんだよー!
というわけで、今日はウチの近辺にトラップを仕掛けて行こうと思いまーす。はい拍手ぅ。
「......うん、とっても痛い人だ、やめよう。気を取り直して......早速やっていこうか」
用意するのは大自然の中のトラップといったらコレ! と言えるレベルのポピュラーな近代兵器を取り寄せようと思います。
近代兵器は取り寄せた記憶が無いから多分初めての近代兵器でしょう。きっと。
「......こんな感じのアレで......細かい設定はこんなん......あ、よっしゃ。イケるな。さぁ、かもーんぬ!!」
目の前に現れたのは押しボタンがちょっとデカくなった感じのモノ。......うん、そうアレだ。地雷だ。
▼地雷
設定された魔力を持つ者、一定の大きさ以上の二足歩行の生き物が踏むと起爆する
地雷の威力は下半身を吹き飛ばす程度のモノ▼
ちゃんと狙った通りのモノが出てきてくれた。やっぱりすげぇなぁ、召喚さん。ありがとうございます、いつも大変お世話になっております。
人型の生き物には慈悲はない......が、四足歩行のモノまで設定してしまうと、激カワなモフモフが俺の預かり知らぬ所で爆死してしまう恐れがえるからだ。例外でアラクネとかラミアのような者は掛からないだろうけど......どうせソイツらは地雷地帯を抜けたとしても隠蔽空間にナイナイされてしまうのだ。
「さて、コレを大量にお取り寄せして......っと。埋めていきますか......」
偶然踏まずにここら一帯を抜ける程の豪運を持っているモノならば仕方ないから一度面談して、逃がすか殺るか歓待するかをしてあげよう。
忘れかけていたけどあのクソサキュバスのようにウチの子を誑かすようなクソがこの先現れないとも限らないからね......まだ一週間経ってないから、その時に忘れてなかったら会いに行こう。
「............」
まぁそんな事よりも......だ。魔法でどうにかできるからまだマシだと言えど、このただでさえクソ広い敷地をグルッと囲むように地雷を設置して回るのはアルティメット面倒臭い。鬱になりそう。
確か、穴を掘って埋めるだけをずっとやらせると精神が崩壊するという拷問かなんかあったよな......今度ここを抜けてこれた豪運の持ち主が出てきた時に、ソイツらの中身がクソ野郎だった場合にやらせてみようと思う。あとは鏡に向かって「お前は誰だ」と、ずっと話しかけるってのもやらせてみよう。
事の真偽は気になるモノの、自分では絶対に試そうと思えないヤツ。クソ野郎相手ならば例え精神が崩壊しようとも心は痛まないし。
......俺、この作業が無事に終わったら......あんこちゃんをたくさんモフってやるんだ!!
◇◇◇
「............あはははは、お、終わったァ」
それから約半日以上を掛けてウチの敷地をグルッと囲むように地雷を設置していった。終わる頃には真っ暗になっていた。精神? 崩壊寸前ですが何か?
単純作業の繰り返しというモノはどうしてこんなに精神的にクるんでしょうか。
俺らの楽園を守る為、ウチの子たちの笑顔を守る為という名目が無ければ、確実に俺の精神はイっていたと思う。辛く、孤独な戦いだったぜ......
「......帰ろう」
マイエンジェルたちが恋しい。今の俺には癒しが足りなさすぎる......
走る気力も無くなるほどに消耗した俺はとぼとぼと歩き出した。本当にちゃんと設定出来ているのか疑問だったが、爆死するリスクもあるのを理解した上で真っ直ぐ歩いてマイハウスまで向かう。
どうせもし爆発しても俺のチートボディの防御力を超えるはずが無いという根拠の無い信頼感も、地雷原を突き進むという行為を助長した。
「......埋めたのを無駄にしなくて済んだな。よかったよかった」
この後、家に帰った俺は目に飛び込んできたマイエンジェルたちを片っ端から愛でた。モフった。撫でくりまわした。
きっと消耗しすぎていたから、俺の無敵メンタルを突破されてチャームにでも掛かっていたんだろう......やり過ぎたのか、ピノちゃんにはガチ噛み、ダイフクにはドリルくちばしをされてしまったが、チートボディには傷一つ付かなかった。
なんか最後の方は黒いモノに包まれたような記憶はあるが、正直曖昧すぎてよく覚えていない。
正気に戻ったのは翌朝。いつの間に入ったのかわからない布団の中で目が覚め、皆の飯を用意しようとキッチンへと歩いていた所でマイエンジェルたちに捕まって正座を強要された。
ガチ説教を受けた後に事の真相を聞いた。
もうなんか、俺の事大好きでダダ甘なあんことツキミちゃんの二大巨頭ですら疲弊し、ぐったりしてしまう程にモフったらしい。口から漏れる音声は笑い声オンリー。目は完全にイッちゃってたそうだ。
制御不能に陥ってしまった一人で世界を滅ぼせる兵器はその後どうなったか......
あんことツキミちゃんは俺の気を惹きつけるタンク役、ピノちゃんとダイフクは指示を出し、ワラビとヘカトンくんは俺が予想外の行動をしそうになった時の保険......そして、残った末っ子姉妹は俺にトドメを刺す役割りだったそうだ。
皆の力を合わせて俺を押さえつけた後は超巨大毛玉と化したしるこで俺を絡め取り、ウイちゃんのエンジェルデスボイスで意識を刈り取ったんだって。
......ウチの子は最強。異論は認めない。
対俺の最終兵器マイエンジェルズ。そして、余裕で世界を手中に収められる強さにまで成長してくれたマイエンジェルズ。状態異常特化の敵が来さえしなければどうにでもなるだろう。
今のこの子たちならあのクソジジイですらどうにか出来ると思われる。いやー怖いわー。
「お手数をお掛けしてしまい、大変申し訳ございませんでした。今後はこのような事が無いよう、誠心誠意勤めて参ります」
土下座してそう伝えると、ドヤ顔でふんぞり返った後、『うむ、くるしゅーない』と言いながら末っ子姉妹が俺の土下座ヘッドの上に乗ってきた。
これ、もしかしなくてもアレか? この体勢を維持してろっていう無言の圧力なのだろう。まぁ罪人に人権無し......即断罪なこの世界でこの仕打ちならまだ生温い方だろう。ぶっちゃけクッソ偉そうにしている末っ子姉妹が可愛くて仕方ないから問題はない。
......あ、その羊あんよのフミフミとアザラシヒレのペチペチ気持ちいい......もっとおねしゃす!!
土下座で皆の御姿が見れないのは悲しいが、俺には奥の手の千里眼がある。反省している姿を皆に見せる事が出来て従魔ズも納得、反省している風を装いながら皆の御姿を見てデレデレできて俺も幸せ。
これこそ正にウィンウィンというヤツの完全体と言える姿だろう。
『皆は納得してるの? もうこの人を許してもいいと......本気で思ってる?』
土下座スタイルになってから十分程が経過した所で、皆がもうそろそろ良いだろうという雰囲気を出し始めた時に、モチモチが余計な事を言い出しやがった。
オイ、止めろ。それ以上口を開いてはいけませんよ!! 失念していたッ......千里眼が使えるのは俺だけじゃないという事を......ッ!!
『もうそろそろよくない?』
『もう許してあげよーよ』
『どっちでもいーよー』
『乗り心地ばつぐんー』
あんこ、ツキミちゃん、ウイちゃん、しるこの言である。もう許してもいいと思ってくれているエンジェルが三体御降臨なされた。好き。
『畑見に行きたい』
『牧場のお世話が......』
『眠たい......』
俺よりも優先したい事があるんですね。パパは悲しいよ......
『じゃあ終わらせていいんだ。この人、反省しているフリをしてニヤニヤしていたんだけど......まぁ皆の優しさに感謝しなきゃだねー』
『『『は?』』』
こ、こンのモチモチ野郎ぅぅぅぅぅ!!
今度絶対にお前を怪鳥と呼ばれるように躾てやるからなァァァ!! 鳴き声は「アァァァァァァァイ」しか許さんからな!! 覚悟しとけや!!
『......予定が無い子は残ってお仕置きしておいて』
ホワイトスネイクさんから実刑判決が告げられてしまった。
「ごめんなさい......お手柔らかにお願いします......」
この後どうなったかはご想像にお任せします。
◇◆◇
「......なぁ? ここからもっと奥の方に行かねぇといけねぇが、今バカデカい魔力の反応があったぞ」
「俺も感じた。アレが上が調査対象に挙げてたヤツって訳かぁ......しゃーねぇ、遠いが行かねぇとなァ」
「無理じゃね? あんなん勝てねぇし、偵察が目的だとしても見つかったら逃げ切れる自信ねェよ」
「......ならアレか? 元凶は見つけたが、手に負えないと判断してビビって尻尾巻いて逃げてきましたッて報告すんのか!? あ゛ぁ゛!!」
「......ここで逃げ帰ったらいい笑い物だ。抜けたきゃ抜けていい。俺は行くぞ」
上の立場に一度でも立つと水準を下げられなくなる。生活水準もそうだが、一度上がってしまった水準を下げるのは難しい。
もともとはゴロツキ予備軍だったようなヤツらだ。生命の危険よりもメンツを優先してしまう。立場が悪くなれば今までのようには振る舞えなくなる......それは死ぬよりも嫌な事だ......彼らは本気でそう思っているのだろう。
「俺も行くぜ」
「俺らが逃げ帰るなんて許せねぇよなァ」
彼は突き進んでいく。シアンが作ったばかりのトラップエリアに向かって......
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