第296話 胡麻と雫とおめかし
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ちょっとアレな表現があります。
苦手な方はご注意くださいませ。
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ピチョン......ピチョン......
キリキリキリキリ......
キチチチチチッ......
うぅぅ......うぐっ......うぁぁぁ......
絶え間なく一定の間隔で額に垂れてくる水滴が意識を飛ばす事を許さない。気絶してしまえれば楽になれるのに......それすら許してもらえない。
寝たいのに眠ることを許されない......水の音と仲間の呻き声が耳にこびりついて離れない......身体は完全に固定されていて微動だにできない。
その他の二つの音は何なのだろう。怖い......怖い......怖い......
現在の私......いえ、私たちに許されているのは、「呼吸」「瞬き」「排泄」の三つのみ。
口にも何か噛まされていて聞き取れる声を出せないので仲間に呼びかけられない。
あれからどれくらいの時間が経ったのか、今が朝なのか昼なのか夜なのかもわからない。
夢なら早く醒めて
◆◇◆
少しずつ少しずつ、身体が引き伸ばされている。
その事に気付いたのはほんの少し前。例の如くどれくらい時間が経ったのかわからない。
私たちに気付かせない程度のスピードで身体がゆっくりと引き伸ばされている。気付いた瞬間に冷たいモノが身体中駆け巡っていった。
相変わらず仲間の呻き声が聞こえる。もう嫌だ。誰か助けて。
久しぶりに人間での食事が出来ると思ってちょっとハメを外しすぎてしまっただけなのです。
あの人間は一週間と言っていた。あと何日残っているんだろうか。下僕でも奴隷でも何でもなるから許してください。
もう水滴は嫌......仲間のこんな声は聞きたくない......
◆◇◆
どの子かはわからないくぐもった笑い声のようなものが聞こえてくる。他にも「殺して」と言っているようなのも聞こえてくる。
固定されたままなので必死で眼球を動かし「殺して」と言っている声の方を見ると、その子の下半身しか見えなかった。
だが、その子の下半身は全て黒いゴマのようなモノに覆われており、その黒いゴマはキチキチと嫌な音を立てている。
何よアレ......は......ッッッ!!!!
――そして彼女はそのゴマらしきモノの正体に気付いてしまう。
認識すると同時に全身が粟立つ。なんでこんな非道な行いが出来るのか!! その思いで頭が埋め尽くされる。
「んんんんんーーっ!!! んんんんんーーっ!!!」
この部屋を支配する四つの音、その全てを理解した彼女は......絶対に逃れられない拷問台の上で、どうにかして逃れようと醜く足掻く事しか出来なかった。
◆◇◆
「......――ッッッ!!」
どの子かは知らないけど誰かが叫んでいるな......ハハハ......
やけに切羽詰まった感じに聞こえるが、もしかしたらこの声の主の元にアリが群がり始めたのかな。ハハハハハハ......
ハハハ......今は五秒ほど寝れた。ウフフフフ......ハハハハハハ......
◆◇◆
もう誰も声を発していない。
喉がやられたか、気力が尽きたか......はたまた死んでしまったのか。
もちろん私も声を出していない。否、もう出せないと言った方がいいのかもしれない。
喉が乾いた......垂れてくる水滴が口に入ればいいのに......ハハハハハハ......
◆◇◆
何かが足を這う感触がある。
そうか......遂に私にも来てしまったか。
「............」
擽ったい......痛い......擽ったい......痛い......
気持ち悪い......悍ましい......
どれくらいで飽きていなくなるかな......ハハハハハハ......ハハハ......
◆◇◆
やめろ!!
見るな!!
助けられるものならばもう助けている!!
やめろ!! やめろ!! 無理だ!! 私を見るな!! 無理なんだよ!!
アァァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァァァァァ!!!
◆◇◆
アハ......アハハハハ......
恨めしそうな目線を向けてくるあの子たちにもう何も感じない
それにしても......なんであの子たちは動けるんだろうな......見てないで私を解放しておくれよ......
アハハハハ......
「ん゛ん゛ん゛んんんーッ!!!」
アハハ......あなたたち、口塞がれてないのに、何でそんな声を出してるのかな? ちゃんと喋ればいいのに......アハハハハ......ワタしの真似をしてるの? 全然似てないよ............アハアハアハハハハ......
アリが穴カら体内に侵入しテきてる............誰か助けて............
◆◇◆
ナんでわたシは拘束サれていルンだろウ......アハハ、アハハハハ、アハハハハハハハ......
アノ子が男ヲ狙オうトカ言うカらコうなってイルんだ......
アハハアハハアハアハ......アリに群がらレてあの子が見えナクなっテいル......イイ気味ダ!!
アノ子ッテ誰だったッケ?
◆◇◆
ウフフ......
ウフフフフフフ......
アリさン、モう少し右ヲ......ソコ痒かっタの......腕が伸ビテ変な音してル......痛痒イなァ......
アハハアハアハアハハハハ......
◇◇◇
さて、あれから三日が経った。
危惧していたあんことピノの記憶保持だが完全にトランスしていたようで、神妙な面持ち風味で起きるのを待っていると、目を覚ましたあんこに『どうしたの? 何かあったの?』と、ピノちゃんには『え? なになに? どうしたの? 気持ち悪い顔してる』と寝起きのあの子たちに心配されてしまった。
......ピノちゃんのは心配してくれていたのか少しだけ疑問に思うが。ただ罵倒されたのではない。そこに愛があるから大丈夫。愛が一番。最後に愛がWIN。
それでもふとした時にフラッシュバックしてしまうかもしれないから合計三日、大自然の中でリフレッシュ休暇を取ったわけだけど、どうやらそれも無さそうなんで今日はお家に帰る予定だ。あの子たちにもそれは伝えてある。
サキュバス? とりあえずもう少し反省しておけ。まだ折り返しにもなっていないからな。
「......そういえば水滴拷問って水滴の落下が不規則じゃないといけないんだっけ? かなりうろ覚えだから正直怪しいけど............まぁ保険もかけてきたし大丈夫だと思おう。うん!
さ、あんこちゃーん! ピノちゃーん帰る前におめかしとブラッシングしてから帰ろうねー。俺が君たちを美ワンとイケスネークにしてあげるからね!!」
『わーい!!』
『余計な事はしないでね』
食後にグダグダしていたあんことピノちゃんが俺のところに駆けてくる。
あんこはいつも通り幸せオーラ全開でマジキュート!! ピノちゃんはなんかグダグダ言いながらも軽い......足取り? ヘビウォークでこちらへやってくる。何だかんだ言いつつも好きなんだね! このツンデレさんめ!
「今日も美人さんだね。この毛並み、触り心地、まるで輝いているようなツヤ......これを梳けるなんて、俺は幸せ者だなぁ。ピノちゃんもそう思うでしょ?」
『まぁ、うん』
あんこをブラッシングし始めると俺の頭に上り、そこに鎮座しているピノちゃんに話しかける。この三日間適度に構い続けた結果、いつもよりかなり距離間が近くなっている。それに全く気付いてない雰囲気なピノちゃんがアルティメットかわいい。
「あんこちゃんが終わったらすぐにやってあげるからもう少し待っててね。他のヘビが見たら思わず目が半田付けされちゃうくらいの仕上がりに俺がしてあげるからねー」
『何それ......まぁ楽しみにしとく』
「おうよ。それにしても......なんでウチの子って、親の贔屓目なしに見ても全員ビューティフルでキュートでラブリーなんだろうね。不思議だなぁ」
「くぅーん」
ブラッシング時は絶対に大型犬サイズになるあんこちゃんが甘えた声を出した。良いとこを触ったからなのか集中しろということかはわからないけど、とりあえずこんな声出されたら死ねるよね。
「よーしよしよし、ここか? ここがええのんか?」
クリティカルしたと思われる箇所を重点的に攻めていくとすぐに蕩けていく。
そこから五分くらいブラッシングを続けたら満足したのか小さくなって定位置に入っていった。おめかしがまだだけど......まぁいいか。しっぽ様が荒ぶるくらいいい気分な所にウォーターを差してはいけない。
「お待たせ! ピノちゃんの番ですよー」
「シャァァァア」
至福の時間パート1は終わってしまったけど、至福の時間パート2がインターバル無しで始まった。
「ふふふふ......すぐに伸びて可愛い。ツヤツヤスベスベで今日もビューティホー!!」
『黙ってやれ』
「あっはい」
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三回目の摂取、アレ本当に凶器......できれば平日に打たせて欲しかったです。連休が見事に全て潰されました。畜生。
打たれた方、副反応軽かった人います? いたら死ぬほど羨ましいですね。
さて、今日からプロ野球が開幕します。連載を始めてから二度目のシーズン開幕。今後もどうぞよろしくお願いします。
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