第285話 閑話~クリスマス~

 本日はクリスマス。


 はい、というわけでですね、今から一緒にクリパの準備をしましょー!!


 って思っていたんですよ。いたんですけどね、あの子たちはどっか言っちゃったんですよ。寂しい......


 悲しみに打ち震えながらツリーを用意し、電飾や飾りを付けた俺はやる事が速攻で無くなってしまった。


 ケーキは作れないから取り寄せるし、料理は作り置きが出来たてホヤホヤ状態でたくさんある。うん、他には俺が赤い衣装に着替えてワラビの牽くソリに乗れば完璧。

 今日の午前中はワラビと本番の打ち合わせしようとしてたのに居ない。何故だ。



「............どうしよ。あ、あのおじさんの所のモノって取り寄せられるのかしら......クリスマスにバーレルってどうしてあんなにも心が躍るんだろつか。一人では食いきれないのがわかっていても買って帰ったなぁ......」


 道頓堀にぶち込まれたおじさんの所のクリスマスバーレルを取り寄せてみる。さぁ来い!!!!


「............き、きた......だが、冷たい......」


 皿、ケーキ、サラダはあの時見たまんま。だが、メインであるフライドチキンパイセンは揚げる前の状態。何故だ!!


「このバーレルから漏れ出る暴力的でありながらも官能的なあの匂いが無いとは......ナメてんのか畜生ッッ!!」


 バーレルを抱えたまま帰るのが楽しかったなぁ......電車に乗った時のテロり具合いは懐かしい。周囲は微笑ましいモノを見るような目で俺を見てきて、お腹が空いてるであろう人は恨みの籠もった目で俺を見てきたなぁ。


「......あの店の揚げ油は何を使っているんだろうか。ラードオンリーか、ラードの他にも〇〇油とか混ぜてるか、それとも特殊な油を使ってんのか......?」


 わからない......普通ならラードだろう。だが、チキンだから鶏油とかも使ってたりするのだろうか。


 ......くっ、わからん。


「......順当に考えればラードだろう。仕方ない......ラードで行こう。あとは......何度で何分揚げればいいんだろう......くっそ、融通の利かないこの能力が恨めしい」


 だがそんなことを悔やんでいるだけじゃどうにもならない。今は手持ちの武器だけで頑張るしかないのだ。

 店舗用の特殊な機材は勿論ない。あるのは中華鍋とか揚げ物用の鍋だけ......しゃーない、頑張ろう。




 ............ダメだ。バーレルの中に居たヤツらを少しづつ揚げ方を変えながら揚げていった。普通に見た目だけなら美味しそうなフライドチキンになった。

 だが、お店のような感じにはなっていない。どうしてもパサる。


「クッソォォォォ!!」


 味は美味い。これは当然だろう。だってあの中毒性のある神スパイスが刷り込まれているんだもの。


「ジュワッとくるあの感じが無い......」




 結局、何度かおかわりしたが納得出来る揚げあがりにはならず、出来が一番よかったモノを食卓にあげる事にした。肉感はどうこう出来ないが、あのゴッドスパイスの素晴らしさを味わってもらいたいからね。


 さて、暇だ。暇になった。


 なら揚げ続けろよと思うかもしれない。俺もそう思う。だがお腹がいっぱいになってしまったんだ......単体を食べ続けるのがキツくて、ビールと一緒にやってしまったんだ。これに関しては俺は悪くないだろう。きっと皆そうなるはず。

 シラフで黙々とあの味だけを味わうなんて成人男性で酒も飲む人なら不可能なハズだ。


 ............なにしようか。


「オンラインとか出来ないからオフラインオンリーになるだろうけど、こっちでもゲーム機でやるゲームって出来そうな気がする。試してみて大丈夫そうなら......よし」


 さぁ来い。プレイ〇テーション2&実況パ〇フルプロ野球11!!

 コレのイレブン工科大学は神シナリオすぎてヤバい。これがやりたいってだけで本体やソフトを買い直したりもしたくらいだ。



「......来ちゃったよ。よし、これで勝つる!」


 早速プレイスタート。やるのは勿論サクセス。最新版を出来ないのは悲しいけど、これは諦めよう。あのチームの補強具合いとか今シーズンの成績とか、個人の成績とかすげー気になるけど......


「......あんこ、と。容姿とかはもしこの子が人になったらこんな感じだろうって感じで頭の中で補完しながらやるしかないか。ガ〇ダーとか、シリーズは違うけどわん公とかいるんだし、わんこの選手とか作れてもいいじゃない......」


 実況アニマルプロ野球とか発売しないかな......しない、よね。ターゲット層がニッチすぎるな。HAHAHA。


 ............


 .........


 ......


『科学ノ発展ニ犠牲ハツキモノデース』


 はいはい、リセットリセット。やり直しデース。


 ............


 .........


 ......


『チュドーン』


 はいはい、爆弾爆発爆発。よくあるよくある。うん、初期パラメーターが高い子に限ってスグ爆弾抱エルヨネ。そしていい感じにイベントこなした後に爆発スルヨネ......


 もう一回デース。


 ............


 .........


 ......


「なんでマイエンジェルあんこたんがこんないっぱい悲しい目に遭わなくちゃいけないのよぉぉぉぉ!!!」


 何度かやり直すも、俺のリアルラックが悪いだけなのか、それとも絶対にあんこを強い子にしたくないっていう何者かの意思なのか......


「......ハハハ、なら酷い目に遭ってもいいヤツの名前で始めよう。シアンっと......」


 HAHAHA、これなら心は痛まなーい!!


 ............


 .........


 ......


『オヤ、気絶シタヨウデース』



 ............


 .........


 ......


「............何故だ。何故、上手くいくのだ。ここは俺の名前を付けられたこの子が散々な目に遭うのがお約束だろうに。何で二回目の博士まで成功してしまうのか......アレか、これも一種の物欲センサーみたいなモンなんだろうか......どうなってもイイヨって思いながらやればいいのか......」


 まだこの頃は金特なんてなかったけど、それにしてもこのキャラ強すぎてヒク。


 シアン


 163km/h

 コントロールA

 スタミナS

 スローカーブ5

 SFF6

 シュート7


 青特は見なくてもいいでしょ。HAHAHA。


 ペナントに放り込んだら24-0-1なんて余裕でぶっちぎれるキャラでしょう。


 ......うん、心ぽっきり折れた。封印しよう......ふふふふふ。




 ◇◇◇




 side~???~


『ねぇ......最近さ、ご主人から何か頼まれたりしなかった?』


『たのまれた』


『......ねぇその頼まれた事さ、わたしにその役目を譲ってくれない?』


『なんで?』


『ご主人の乗り物はわたしが引きたいの!』


『ちょくせつそれをいわないの?』


『......悔しいじゃん』


『いってきてあげるよ』


『だ、だめっ!』



『ねぇ、これ着いてくる必要あった?』


『無いと思う。二人だけで話しても問題ないよね......着いてきてってお願いされたから来たのに......』


『お姉ちゃん、すっごく必死に頼んできたから同行したのに......』


『はぁ......ねぇ、今日どんな事するのかな。あの人張り切ってたでしょ』


『わからないよ。でも楽しみにしておこ』


『そうだね』


『まだ今日やる事終わってないからもう持ち場に戻ってもいい?』


『......もう少し待って終わらなそうならいいと思うよ』




 ◇◇◇




「......まだ帰ってこない。ヘカトンくんだけは牧場に戻ってきてるっぽいけど......はぁ、あんこちゃんたちは何してんだろ。覗き見したらきっと怒られるよなぁ......

 さっき、ワラビのモノと思われる稲光とピノちゃんのモノと思われる白い炎、ツキミちゃんのモノらしき黒い壁とかが遠くに見えたし......本当に何してんだろうか」


 寂しさを持て余して飾り付けを些か過剰に行ってしまったクリスマスツリーを見る。


 些か過剰......ではないな。完全にやりすぎている。ナチュラルな緑が見えなくなっていて、全体的になんか重力に負けている。


「......光ればいいよね。ははは。あ、帰ってきたっぽい!!」


 外に駆け出し、帰ってきた我が子たちを迎え入れる。ちょっと汚れているが無問題。


「おかえり。皆ちょっと汚れているからお風呂入っちゃおっか」


 鼻をピスピス鳴らしながらやけに甘えてくるあんこを抱きしめ、皆を風呂に入れた。ワラビがなんか遠い目をしていたが、それはまぁいつもの事だからスルー。



 風呂の後、最終調整の為にワラビを呼んだ所、あんこたんが離れない。可愛いけど離れない。


「ちょっとパパこれからやる事あるから離れてくれないかな?」


『イヤッ!』


『......はなし、きいてあげて』


「あ、うん。えーと、あんこちゃんどーしたのかなー?」


『......うぅぅぅ』




 ☆★☆




 クリスマス仕様のご馳走を食べ、全員でめいっぱい騒いで楽しんだ我が子たちは、一部を除いてスヤスヤなのは確認済......今からは大人の時間だぜぇ!!



 クリスマスプレゼントは俺の手作りの専用のご飯皿。陶芸家ではないが、糸と指スキルがあればなんでも出来る。


 皆めっちゃ喜んでくれて、早速使ってくれていて泣きそうになったよ。


 あ、そうそう。チキンは美味しそうに食べてくれていたよ。骨ごとボリボリ食ってたのが少し見た目的によろしくなかったけど。


 さて、これより本日のメインイベントでございます。


 赤い衣装と白いもじゃもじゃを装備し、お菓子の詰まった靴下を人数分入れた袋を担いだ俺。トナカイコスをしたあんことほぼトナカイなワラビに繋がれた豪華なソリ。


 立っていた小高い丘から駆け下りていく俺ら、その下にはジャンプ台。



 何がしたかったかって?


 月を背景にしたサンタさんプレイがやりたかったんです。ワラビなら飛べるし万が一は無いだろうと思っていたが、あんこちゃんがソリを引くのはワタシと言って譲らなかったから急遽参戦となった。ごねるあんことやれやれなワラビが可愛かった。


「さぁ行くよ」


『うん!』

『おー!』



「ひゃっほぅぅ!」

「あぉぉぉん!」

「けぇぇぇん!」


 飛んだ。この瞬間を目撃していたモノが居れば、きっと俺の目論見通りの光景を拝めたと思う。やったぜ!


「メリークリスマァァァァス!!」


 さ、ちゃちゃっとプレゼント配っちゃいましょう。


「配り終わったらもう少し外を走ろうね」


 それでは皆様、よい聖夜を。




 ──────────────────────────────


 メリークリスマス!


 寒波が襲来しています。体調管理だけでなく、運転や歩行時も十分にお気を付けください。クリスマスが終わればすぐに大晦日、正月です......一年って早いですわ。


 ちなみにパ〇プロの話は四月頃に本当にあった話です。あんこちゃんだけ毎回毎回不運に見舞われ、無心で不運を望んでいたシアンだけ大成功しました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る