第283話 墜落から見つけたモノ

 超ハイジャンプをキメたシアン


 ノリノリでシアンをターボさせ、墜落させるピノ


 ノリノリだったあんこ


 彼等の運命や如何に......




「ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 このままじゃ刺さるけど、前後左右が曖昧な状態でこの子たちをパージできない。


 やばいやばいやばいやばいッッ......



 ヤバイと思い、どうにかしてこの状況に抵抗しようとするもどうにもならず、頭と肩を糸で保護して後はどうにでもなれという結論にしかならなかった。


 迫り来る地面。不規則な回転をしながら激突に備え......


 そのまま地面に激突した。


 しかし降り積もっただけの柔らかい雪は絶望的なまでに勢いを殺さず、落下するスピードにプラスしたピノターボで呆気なく雪ゾーンを突き抜け......更に地面までをも貫通して進んでいった。



 轟音と衝撃で目が回る......いや、そんな事はどうでもいい、あんことピノちゃんはどうなった!?


「くぅーん」

「シャァァァ」


 俺の傍に転がっていた黒い繭から鳴き声とカリカリガリガリといった音が聞こえてくる。よかった、無事だったみたいだ。


 うん、よかった。んで、ここは......あー、なんか変な所にぶち込まれたみたいっすね。どこだここ?


「......ピノちゃんはちょっとその中で反省してなさい。あんこは出ておいで」


「わふっ」


 自由になったあんこと梱包されたままのピノちゃんを抱えて歩き出す。山の地下にこんなとこがあったなんて知らなかったよ。


 あのスライム洞窟と一緒でここもミミズが掘った場所なのかなぁ......


「ぶち抜いて外に出るか、このままこの洞窟を探索するか......どっちがいい?」


『探検しよ!!』


「シャァァァ」


 食い気味に探検を選ぶあんこと、はよここから出せとでも言いたげなピノちゃん。こら、ガンガンするな。暴れると持ちにくいでしょうが。


「おーけー。じゃあこのまま地下洞窟を探索してみようねー。ピノちゃんはもう少し大人しくしてなさいねー。コレ持ちにくいから暴れると落としそうになるから気をつけてくださいねー。あんこはナビよろしくぅ」


 俺の手から脱出して、任せなさいとばかりに前を歩き出すあんこ。可愛い。


『こっち!』


「大丈夫だと思うけど気をつけて進むんだよ」


『もちろん!!』


 こうして俺らのプチお出かけは、突発的な洞窟探検に予定を変更した。ここには何があるんだろうか......




『ごめんなさい......反省した。反省したからもう出して......』


 一時間程歩くと、悲しそうな声が黒繭から聞こえてきた。


「......本当にぃ? あんこはどう思う?」


『出してあげていいと思うよ......』


「......うーん、しゃーない。あんこに免じて今回はコレで許すけど、これからは俺以外を危険に晒すような真似はしちゃダメだからね。わかった?」


『うん、ごめんなさい......』


「ならよし、はい、出ておいで」


 黒繭を解くとしゅるしゅる這い出してきて俺の胸元に申し訳なさそうに入ってきた。うん、十分反省しているみたいだね。


「ちゃんと謝れて偉いね。もう怒ってないから安心していいよ」


 しおらしくなったピノちゃんはこのまま胸ポケットに入ったままを選択。先導するあんこに続いて歩きながら頭を撫でてあげる。


『......ここどこ?』


「わかんない。地面を突き抜けたらこんな場所だったから。まぁあんこが先導してくれてるし大丈夫でしょ......もしダメだったのなら転移石使ったり、俺が天井をぶち抜けばいいだけだからね」


『そっか......うん、そうだね』


「だからもう気にしないでいいよ。危ない事をしなきゃいいよ。うん、大丈夫だからこの状況を楽しもうか」


『うん!』


 元気を取り戻したピノちゃんを撫でてあんこの後を追った。




 ◇◇◇




『この先になんかいるよー!!』


 お散歩と同じペースで進む事二時間ちょい、あんこたんから一報が入る。


『なんか変な臭いがする......臭い......』


「マジかァ......臭いのやだなぁ......あ、本当だ。なんか居るね。どうする? このまま進む?」


 すかさず探知で確認すると二つの大きめな反応と千は余裕で超える反応を確認。


『何が居ても大丈夫。行こう!』


 ヤル気満々なピノちゃんが先に進むことを促してくる。あんこはちょっと嫌そうにしっぽを下げている。


「じゃあ先導するのはピノちゃんに頼むね。あんこは......どうする? 定位置に入ってる?」


『そうする......うぅ、臭い......』


『任せて!!』


 胸ポケットから飛び出していったピノちゃんと交代するように、胸元に収まるあんこ。外を向くいつもの体勢じゃなくて俺の体に顔を押し付けてくるから本当に臭いんだろう。俺はこの体勢での抱っこが嬉しいからなんの問題ない。


 レッツゴー!



 しゅるしゅると滑らかに滑るピノちゃんの後ろを着いていく。なんとなくでも敵の位置を把握出来ているようで動きに淀みがない。

 あんこは俺の胸の匂いをくんかくんかしていて呼吸が暖かくてこそばゆい。可愛い。俺、臭くないよね?

 わんこは靴下の臭いとか靴の臭いとかパンツとかの特殊なモノを嗅ぐのが好きな子もいるから、それに似たアレでちょっと臭くて落ち着く的な事を思っていないことを祈りたい。


「おっと、そろそろ着くみたいだから一応注意だけはしておいてね。臭すぎたらそのまま潜ってていいから」


 さぁ、この先には何がいるんだろうか。鬼が出るか蛇が出るか。何が出るかな何が出るかなそれはサイコロ任せよ。


『進むよ』


「うーい。だけど油断は禁物だよ」


『大丈夫、行くよ』


 三叉路があり、人間の鼻でも感じられる腐臭に似た臭いが目的地がすぐ側と教えてくれている。そこをピノちゃんを先頭に臭いが呼ぶ方へと進んでいった。


「......なに、この先、バイオハザードでも起きたのかな......うぅ......ゾンビがいるかもしれないから様式美としてチャカでも装備しなきゃね......」


 ゾンビと言えば銃なので召喚する。取り寄せたのはショットガンとマグナム。反動の強い物が好きだからという理由。

 ついでに様式美その二として久しぶりにバールのようなものも出しておく。ゾンビ相手に使うものではないが、ジャンル的には変わらないから問題はない。


『着いたよ......あ、うん』


「どう......あぁぁぁ......」


『くさぁぁい』


 目の前には大量のアンデッド、スケルトンやらゾンビやらグールやらスケルトントカゲやらゾンビトカゲやら......まぁファンタジー世界のお化け屋敷みたいな光景が広がっておられた。


『ワガヤヘヨウコソ、マネカレザルキャクジンタチヨ』


『ホンジツハドノヨウナゴヨウケンデコチラヘイラッシャッタノデショウカ』


 大きな反応だった二つが俺らへと話しかけてきた。歓迎はしてないけど、とりあえず来ちゃったんならしゃーないって雰囲気を隠そうともしていない。


「..................」


 勝手に来たのは俺だけど、ここまであからさまな態度取られるとイラッとする。

 ......まぁ俺も家に誰か来たらそんな態度するからアレだけど、狙って来たヤツと偶然来ちゃったヤツの区別はつけるよ。


 ▼リッチエンペラー

 アンデッドを統べるモノ▼


 ▼リッチエンプレス

 アンデッドを統べるモノ▼


 ......うん、そっか。アンデッド地下帝国を建設している最中だったんだねきっと。


『ナゼダマッテイル、ワガツマノトイヲムシスルデナイ』


『アラアラ、ヒトハトテモモロイイキモノナノヨ。ソノオーラヲシマッテアゲナサイ』


『フハハハハハ、カトウセイブツニハコノオーラハドクデアルナ』


 上位生物による高貴な漫才が突然始まった。ところで奥さん、旦那にあるというオーラってなんでしょうか。臭気の間違いではないでしょうか。


「ねぇ、俺らは何を見せられてるん? アイツらが喋りはじめたらゾンビ共が一斉に跪いてるのはなんのパフォーマンス?」


『くちゃい......』


『オーラってどう出すの? やってみたい』


「おーよしよし、なんか援軍も来て囲まれちゃったねぇ......余計に臭いよ。あんこは大丈夫? お家まで送ろうか?」


『いや、一緒にいる』


「そっかー。なら俺に......そう、俺にね、ガッツリと......フヒッ、くっ付いていればいいんだよ」


『う、うん』


「よし、んでピノちゃん。オーラって俺もよくわからないんよ。威圧とかそっち系なのかな? ......んー、なんちゃって黒炎でも纏ってみる?」


『オイ、ナニヲコソコソシャベテイル。フザケルナヨキサマラ......』ゴゴゴゴゴゴ・・・


 俺とピノちゃんのお喋りが邪魔された。ふざけんなよはこっちの台詞じゃ......い......


「ピノちゃんピノちゃん!! 見てみ、あのリッチを!! なんかオーラっての出してるよ!!」


『......くちゃい』


『お、おー。アレどうやってるのかな』


 睨んでる地下帝国軍と、オーラに興味津々な迷子。一触即発な雰囲気の彼等はこの後どうなるのだろうか......

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