第278話 実況プレイ

 それにしても、真剣な表情でカートを運転する皆は麗しい......


 一周約10分くらいのコースを三周するのが今回のレースの全容である。どんな素晴らしいレースを見せてくれるのだろうか。


 ちなみに今回のレースは全員予習一切無しのぶっつけ本番レース。皆がどんな運転スタイルを見せるのか楽しみで仕方ない。

 運転させちゃダメなタイプとかの判別も出来るだろう。ハンドルを握ると別人格を憑依させてしまうような子は居ないと信じたい。


 さて、皆に目を向けていこう。


 アクセルもブレーキもハンドル操作も、一体どうやってるのか皆目見当もつかないマシーンだが、しっかりと操作出来ている様なので今の所は気にする必要はないだろう。


 どんな感じで操作してるのかはレースが終わった後に詳しく聞こうとは思う。本当にどうやってるの?


「第一コーナーを目前に控えてトップはウイちゃん、二番手はワラビ、三番手はダイフク......ラスはピノちゃんか。うむ、全然最終順位が予想できないな」


 まだまだ最序盤だしスタートダッシュさえキメられれば簡単にトップになれる。ここからはドラテクが物を言う......ふふふ、どうなるか楽しみだなぁ。


「おぉーっと!!! トップのウイちゃんがスピンしてしまったぁぁぁぁ!!!」


 アウトインアウトやドリフトなんてモンは初めて運転する子が知ってるハズもなく、ベタ踏みのままにコーナーに突入したウイちゃんがスピンしてコースアウトした。

 キュゥゥゥ!? って悲鳴が聞こえてきて少しだけキュンとした。可愛い。


「うぉぉぉぉ!!! 二番手のワラビも曲がり切れないぃぃぃぃ!!! 外から捲ろうとしていたダイフクを巻き込んで大大大クラッシュゥゥゥゥ!!!」


 インを攻めに攻めたワラビだったが、曲がりきれずにカートの制御を失いコースから逸れていく。外側からカーブに突入していたダイフクに接触し、そのまま仲良く一緒に吹き飛んでいった。


 むち打ちとかにならないよね?


「......大丈夫かな? おっと、何もせずに四番手からトップに躍り出たのは甘えんぼな次女のツキミちゃーん!! 普段から甘えるべき時を見誤らないその慧眼で虎視眈々と機を狙っていたはずだが、棚ぼた的にトップにぃぃぃぃ!! カーブも堅実に曲がって行きましたぁぁぁぁ!!!」


 第一コーナー初制覇はツキミちゃん。先に行った三名が自爆したのを見て、確実に曲がることを優先したらしく、ドヤりながら危なげなく曲がりきった。可愛い。


「五番手から二番手になったヘカトンくんも確実に曲がりきることを優先んんん!! でも先を行くツキミちゃんのコーナリングを見ていたからか、少しだけ攻めた感じを見せました!!!」


 この子は本当に頭いいなぁ......初めてなのにドリフトっぽい挙動をしてみせた。何この子、センス○やんけ。

 あ、スピンしていたウイちゃんが復帰しましたね。ちょっとだけ目を回してる感じがあるけど、問題は無さそう。この子はゴン攻めタイプらしい。脳筋可愛い!!


「六番手のあんこ、七番手のしるこ、八番手ピノちゃんの三選手はあまり差がなく、皆で仲良くカーブに突入ッッ!!! そこにコース復帰したウイちゃんを加えた四つ巴のレース展開となっています!!!

 ............お、オォォォォォ!!! あんこたんが見事なドリフトを魅せたぁぁぁぁ!!!」


 普段から氷を使っているからか滑る感覚には慣れているのだろうってのと、前を行くヘカトンくんのドリフトっぽいのを見ていたからだろう。あんこが素晴らしいドリフトを見せてくれた。魅せてくれるじゃねぇか。


「俺よりも絶対に上手いドリフトを魅せたあんこ選手が二番手のヘカトンくんに迫るぅぅぅぅ!!! しるこはフワッとしたコーナリングですね、こちらも上手い!!! 可愛い!!! ピノちゃんはまだ操作に慣れないか......ぎこちないコーナリング!!!」


 あんこに続けとばかりにしるこがとても滑らかなコーナリングを見せた。何この子......しゅごい......鼻歌っぽいのを歌いながら余裕で曲がりきった。

 対してピノちゃんは悪戦苦闘している。なんでも卒なくこなしていくタイプかと思っていたが、苦手なものもあるみたいだ。

 それでも大きな失敗はしないその姿勢、とても偉いと思います!


「復帰したばかりのウイちゃん、一度コースアウトした所為でスピードが出てないのが功を奏したか......ベタ踏みしながらもコースを曲がりきったァァァ!!! でもそのままだとまた次のコーナーで同じ事をしてしまう未来しか見えないぞぉぉぉ!!!」


 クラッシュしたダイフクとワラビはまだ復帰出来なさそう......残念だがこの子たちはここで脱落かな?

 平常時ならばこれくらいは何ともない彼らだろうけど、残念ながら今回はいつもとは違うカートの中......その中でシェイクされたいるからね。初めての体験に体が追いついてきていないだろう。


「......おっと、ウイちゃん選手......目がキラキラしてますね。もしかしたらアレか? スピンするのが楽しくなっちゃったんでしょうかねぇ......」


 ははははは、展開の読めないレース展開となって参りました。可愛い可愛いエンジェルズの白熱したレース。


「......直線はウイちゃんの独壇場で、コーナリングはあんことしるこ。堅実さのツキミちゃんと機を読むのが上手そうなヘカトンくん......そして一生懸命なピノちゃん」


 これからどうなるんだろう......


 あぁぁぁ、考え事をしてる間に動きが!!


 ピノちゃんがアクセルを踏んだぁぁぁ!!


 それと、ダイフクとワラビがレースに復帰してきたぁぁぁ!! かなり遅れてしまっているが、ここからどうなるんでしょうか......目が離せない展開となってきております。


 ......あ、ウイちゃんがまたスピンした。今回は直線で前を走るピノちゃんを追い越そうとして制御不能に陥ったらしいです。最初のスピンの時と鳴き声の質が違いますねー。実に楽しそうな声を出してます。


 まさか、コレを狙ってアクセルを踏んだのでしょうか......ピノちゃんやりよる。


 運転の難しさと楽しみは理解したらしいマイエンジェルズ......一進一退のレースは続いていく......


 一位、ツキミちゃん

 二位、ヘカトンくん

 三位、あんこ

 四位、しるこ

 五位、ピノちゃん

 六位、ウイちゃん

 七位、ワラビ

 八位、ダイフク


 現在の順位はこうなっております。今後の展開から目が離せませんね!!


 さぁ、意地とプライドと景品を賭けたスーパーシアンカートも二周目に突入デス!




 ◇◆◇




 side~どっかの王女と従者~


「山脈で観測した強大な魔力に謎の黒の柱、謎の光の華、あの方が住んでいたのは何処かの山中、特産品はミートブル......やはり間違いはないのですね?」


「九割九分あの山脈にお住まいがあると思われます。光の柱が立ち上ったあの日から約一年......ようやく出立の許可が出ましたね」


「えぇ、お父様やお母様、兄姉弟妹、口だけは達者な貴族を丸め込んだり、仕事を片付けたりで一年近く要してしまいました......でも、心置き無く王族が旅に出る為の事ですので良しとします......貴女たち、準備はしっかりと出来ていますか?」


「はい、水や食料は贅沢をしても丸々五年は安泰な量を確保できましたし、各種許可証や身分証や旅費、着替えや武器、それとあの方へお渡しするお詫びの品など......全て抜かりなく揃えております」


「......あのバカお父様が転移石の使用を最後まで認めなかった所為で移動は徒歩か、何処かで足の調達をしなければならないのが憎たらしいですが......」


「怯えていましたからね......もっと時間を置いて欲しかったんだと思います。一国の王としては最悪の対応としか言えません」


「家臣達や貴族達も面識のある私たちに丸投げですからね......その分旅費や物資面でかなり吐き出させましたから、我慢してください。王族の皆様については......ノーコメントでお願い致します」


「私たちが居ない間に謀反とかが起きないといいですが......もし、そうなったとしても私たちは関与しませんよ。自らの撒いた種ですから。その時に私の身分がどうなろうと構いません」


「姫様......」


「どうでもいいです。さ、行きましょう」


 保身に命を賭けた身内に、愛想を尽かした某王女とその従者。

 その三人の求める人物は誰なのか......何処に向かおうとしているのか......


 自らの身分さえどうでもいいと言い張る覚悟で思い人の元へ向かって進み出す



 ──────────────────────────────


 最近Wi-Fi先輩の調子がくそ悪いです。誰か助けてください(切実)


 えーっと、どうでもいいかもしれませんが、このレースの話はめちゃくちゃ安産でした。はい、それだけです。もう少しだけレース話にお付き合いください。

 エンジェルステークスの勝者は誰になるのでしょうか。払い戻しはありませんが、三着までの結果を予想したりとか......ベットが無いとつまらないですね。すみません。

 ここまでお読みいただきありがとうございます。今後もよろしくお願いします。

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