第268話 壊滅
ㅤえーっと......これは一体なにが起きたん? 仲間割れが起きたのか知らんけど、目を離した隙に勇者の仲間が死んどる。畜生、勇者御一行は死なない程度に痛めつけた後に【下痢魔法】をぶち込んでやりたかったのに。
見た感じヤツらの死因は刃物で斬られた事によるホニャララ。まぁ要するに斬殺。
極限状態の兵士に喧嘩売って斬り捨て御免されたのか? と一瞬思ったけど、違うみたいだ......殺っちゃえバーサーカー! みたいな感じでロリっ娘に応援されて張り切っちゃったのか、勇者がバーサクモードに入ってらっしゃるのを確認。俺が天使たちに目を奪われてる間に何かがあったらしい。
異世界くんだりまで連れてこられて、最期は仲間の勇者様に斬り殺されるとか......浮かばれないなぁ......なんまんだぶだぶ。
「うーむ......勇者御一行を保護して絶望させようと思ったけど、御一行では無くなっちゃってるし、勇者はビーストしてバーサクしてウォォォンしてるから保護しないほうがいいかもしれない。ねぇ、あんこたん。どうすればいいと思う?」
『殺せば......いいと思うよ』
「うーん、とってもドライ」
正直もうどうでもいい感がハンパないってのが素直な俺の気持ち。クソガキの癇癪で俺のプランが崩れちゃったから、気持ちはなんかもう萎えまくってる。
......ん? なんか勇者に相応しくないとっても禍々しい剣を持ってるな......アホな貴族とかが、ガキにヤベー物を渡して『力が欲しいか......?』ごっこをしたか、勇者の闇堕ちフラグでも踏んだりしたんだろう。
もうね、アホかと。アホだね。
「......バーサクしてとっても楽しそうだからこのまま死なせちゃってもいいか。正気でアレなのか、何か要因があって暴走してんのかは知らんけどな......ははは」
『そんな事より私たちの事を見てて!』
「......ッ!! そうだね、あんなゴミよりも今大事なのはこっちだもんね!!」
優先順位を間違えてはいけない。今は俺の大事な天使の発表会なのに、あんなのに意識を割く必要はないのだ。嗚呼、俺はなんて愚かなのだろうか......
ウチの最高権力者に窘められて反省していると、皆の起こした神の怒りが帝国の地に降り注いだ。
かなり高い位置に発生させたからか、動き出しから着弾までかなりの時間を擁した。
その光景がとても綺麗だったので、何も問題は無い......寧ろ長い時間綺麗な物を見れて嬉しかったと言うのが本音。
「なんとか座流星群とかオーロラはあっちで映像とかを見た事あるけど、生で......しかも特等席で拝むとマジハンパねぇな。めっちゃ綺麗でヤバい......」
語彙が死んだ。俺のスペラ〇カーよりも貧弱で脆弱な語彙さんはそれはそれはもうアレですよ。一瞬でお亡くなりになりましたでございましたよ。
オーロラが降り注いだ部分は凍り付き......全ての生物が生きる事を諦めたかの如く鼓動を止め、太陽が堕ちた部分は一瞬で蒸発した。生き物も自然も無機物も......
雷が降り注ぐと直撃した者は即死し、運良く当たらなかった者は感電して動きを止めた。そこに追い討ちを掛けるように降り注ぐ巨大な十文字槍と流星群。
感電した者、凍り付いた者、怪音波で体内をシェイクされて動けなくなった者、既に死んでいた者、熱波でドロドロになった者や灰になった者......その全てが堕ちてくる凶器に殺られていく。
受付嬢さん聞こえますか......? 遅くなったけど、コレがオレ達からあなたへの鎮魂曲です......
叫び声すら上がっていないけど、心が震えるような光景と鼓膜が震える音でしょ。
王国に加えて帝国のアホな権力者を死なせまくったから弔いとしては最上級でしょ? そろそろ輪廻転生して新しく生まれ変わってください。
十何年後とかにまた俺がギルドに顔を出した時に、俺の精神を破壊するようなスマイルとテンションを振り撒いてくださいな。
うん、変なテンションになった。全て団長のせいだね。ははは。まさか未だにアレが心に刺さった棘になっているとは......俺も女々しいなぁ......
「凄かったね......うん、俺とっても感動したよ!!」
しんみりはおしまい。とりあえず頑張ってくれた天使たちに相変わらず死んだままの語彙で感動を伝えてから一人ずつ装備から外して撫で回してまた装着した。
撫でくり回しながら戦場だったモノを確認したが、生きている物はゼロ。地面の中の微生物すら探知範囲内におらず、全ての生命が死滅していた。
残ったのは俺が創り出した隔離壁と、天変地異により変質してよくわからない物質になった抉れた地面のみ。
「勇者君とその仲間はキレイさっぱり痕跡も残さずお亡くなりになった、か............おぉ勇者よ、死んでしまうとは情けない」
定番のお悔やみの言葉を申し上げ、このクソみたいな出来事を引き起こしたクソカス皇帝の元へと戦後処理のアレコレを行いに向かった。
「......ふふふ、皆がベッタリで嬉しいなぁ......うふふふふふ。あ、俺はワラビから降りる気無いから、通れなさそうな場所はぶっ壊して進んでね☆」
カッポカッポとワラビが人の気配がほとんど無くなった寂しい帝城を歩いていく。
人が居るのは二カ所だけ。そこそこ広い部屋と、そこに隣接するもう一つ広いホールのような......あ、コレは謁見する場所かな? と思われる二カ所。
うん、イイネ。捜索範囲が少なくて面倒が少なくてとてもいい。
「クネクネしてる入り組んだ道を進むのは面倒だよね? ワラビ一旦止まって俺が指差す方向に体を向けて......そう、そこでストップ。うん、じゃあそのまま真っ直ぐ、壁を壊しながら進もっか」
『わかった』
いつもよりもテンションが高いワラビが、目の前に立ち塞がる壁をプラズマかなんかで溶かしながら歩いて進んでいく。カッポカッポパッカパッカと蹄の音を鳴らしながら。
「キュゥゥ!!」
「メェェェ!!」
そんな楽しいワラビ散歩に待ったをかけたのは、我が家のアイドルである末っ子姉妹。
「どしたーん?」
......キュウキュウメェメェと説明をされる。
ふむふむ、なるほどーそうですか。......最終決戦を前に皆でご飯を食べようですか。
腹が減っては戦が出来ぬ? うんうん、なんでそんな言葉知ってるのかなー? まぁそれはいいよ、よく勉強してるんだね。
「正直に言えばご飯にしてあげる。ウイちゃんとしるこがお腹空いちゃったんでしょ?」
「キュッ」
「メェェ」
バレたんなら仕方ねぇとばかりにキメ顔で白状する末っ子姉妹。それを見てあんこが溜め息吐いた......可愛い。
「んー、そんじゃ一旦オヤツ休憩にしよっか。頭も力もいっぱい使ったもんね。んー、何かイイもんあったかな......」
皆もハイになってただけで実はちょっとお疲れだったらしく、オヤツ休憩と言ったら目をキラキラさせながら早く早くとせがんでくる。ウイちゃんとしるこたん、お腹空いたアピールをありがとう。
「あ、ホットケーキでいいかな? トッピングは好きなのをオーダーしてくれたらそれを乗せるからねー。床に直座りははしたないから、この絨毯の上に乗りなさーい」
はーい! と、とても元気なお返事をする天使たち。お皿の上に五段ホットケーキを乗せ、長女から順にオーダーを聞いて回る。
「発表会、お披露目会お疲れ様でした。皆とってもすごかったよ!! 残りは俺がやるから皆はパパの発表会を見ててね。じゃ食べよう」
いただきまーすと元気よく言ってから食べ始める天使たち。メープル&バター、はちみつ&バターのシンプルなのが天使たちには人気で、俺が大好きな抹茶アイス&小豆ホイップは俺だけだった。
こういう発表会みたいのは皆で一緒にご飯が定番だよね......あぁ、俺は何故こんな大事なことを忘れていたんだろう。
「おかわりもあるから食べたい子は言うんだよ!! でも、お腹いっぱいで眠いってならないように気をつけるんだよー」
わかった!! と大変いいお返事。でもきっと末っ子姉妹は途中で寝てしまうだろうね。ははははは。
あっ、一口食べたい? いいよー、はいあーん♡
......あ、そうですか......抹茶味の美味さはまだ君たちには早かったですか......残念。
◆◆◆
「......勇者は間違いなくあの剣を抜いたんじゃな?」
「ハッ! 死の間際に連絡をしてきたので間違いないかと」
「正直アレでどうにかなると思えぬが、暗部を瞬殺できる力を以てすればあの化け物といい戦いくらいは出来るじゃろう......それで、アレに対抗できそうな呪物や宝物は見繕えたのか?」
「ハッ! “縛魔の鎖”、“反射のフルプレート”、“サキュバスの淫液”......それと“隷属の首飾り”を持って参りました」
「よくやってくれた。今はもう滅びを待つだけな状況じゃ......副作用や代償などと細かい事は言ってられぬ。ヤツがここまでやって来たら......頼むぞ!」
「ハッ!!」
この会話の後すぐ、皇帝の持つ戦力のほとんどが殲滅された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます