第264話 帝国入りした天使たち

 天使たちを抱きしめてぺろぺろしたい。嗚呼、どうして君たちはそんなにエンジェニウムたっぷりなんだろうか。最後までたっぷり詰まってらっしゃる。


 君たちは俺にとってのかっぱえ〇せん......いや、ワンチュ〇ルだ。だがチ〇ール、てめぇはダメだ。一度開封すれば憎き猫科の動物が狂ったように舐め続けるアレではなく、普段は賢いわんこですらただのラブリーなわんこに変貌してしまうアレなのだ。


 猫用もなんか危ない成分が入ってるらしいけど、アレがポテンシャルを存分に発揮しやがるのは他人限定だ!! 友人の飼い猫は俺の手を引っ掻いてチュー〇を手放させ、落ちたチ〇ールを強奪して逃げ出すからな。壷焼きにすると美味しいあの貝の名を冠するあの人が裸足で追い掛ける猫くらいの暴挙だ。畜生!!


 俺からチュー〇を奪った猫は、避難先で狂ったように舐め続けやがったからな......許し難い暴挙だ。CMは誇大広告だ......あのフィクション動画みたいに、アレを持つ手をからペロったりしない。


 ......ただし、ワン〇ュールだけは本物だった。最近代替わりをした動物園でよくやっていた寝転がってわんこに群がられるあのエデンを再現できた。だから一応あの会社の評価はプラスだ、マイナスのままならば......俺は確実に、夢を見せるだけ見せた後、盛大に裏切りやがったあの会社にクレームを入れていたと思う。


 おっと......幸せの真っ只中なのに、心奥底に封印していた憎悪がこんにちはしてしまった。今そんな事考えてるのは不敬だわ。


「よーしよしよし、君たちはいつでもマックス可愛いでちゅねー。もうね、食べちゃいたいくらい好き」


 発表会&お披露目会当日......いつもより早く起きて愛でる。愛でる愛でる愛でる愛でる愛でる愛でる愛でる愛でる愛でる愛でる愛でる愛でる愛でる愛でる。


 視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚......など、人体のありとあらゆる感覚に加え、第六感などのファンタジー要素の強い感覚も使いながら文字通り全身全霊で愛しい天使たちを愛でていく。


 特にダイレクトで愛を感じられる視覚と触覚の暴走が止まらない。愛で続ける手と視姦する勢いで天使を見る目の熱量が一向に収まる気配を見せない。



 俺にプリティなお尻を向けて眠るあんこちゃん、ふっさふさのしっぽとプリプリむっちりなお尻がエロい。無防備なしっぽを撫でると擽ったいのか手から逃げていく......あぁ、超高クオリティな人じゃらしやでぇ......


 俺の顔を挟んで、仰向け以外許さないという意志を感じるくらいに顔面を固定してくる末っ子姉妹。両耳から絶えず聞こえてくる可愛い寝息と、呼吸で動くモフいボディが堪らない。愛しい......


 ピノちゃんとダイフクとツキミちゃんは、俺の胸の上と腹に陣取ってスヤスヤ眠っている。右胸の鏡餅の下の段、左胸のコーンなしソフトクリーム、腹の上のおはぎ。さしずめ俺は、それらの超高級品を映えさせる為のただの大皿。もう、いつになったら“よし”と言ってくれるのかな......“待て”の時間長すぎるわよ。


 ヘカトンくんは腕枕でスヤスヤ、ワラビは俺の枕になってくれている。幸せすぎていつ死んでも悔いはないと思っている。


 実際死に直面したらみっともなく生きようとするだろうけど。まぁ、あれだ。


「辛かった日々も今日で終わりだ。早く終わらせて怠惰な日々に戻りたい......」


 ほんと、余計な事しかしないな人族共は。




 結局、俺に寄り添いながらお腹丸出しでスヤスヤ眠る姿が愛おしすぎて起こせなかったので、皆が起きたのは昼頃になっていた。


「さ、皆ぁ!! 準備はいーいー? 俺を拉致していいように使おうとしていたクソ帝国を滅ぼしにいくよー」


『『『『『おー!!』』』』』


「俺に舐め腐った真似をしてくれやがった帝国の貴族を滅ぼしたいかー」


『『『『『おー!!』』』』』


「ニューヨークへ行きたいかー」


『『『『『お、おー?』』』』』


「ぶち殺したいかー」


『『『『『おー!!』』』』』


「帝都はなるべく破壊しないように気をつけながら、帝城をぶっ壊せー」


『『『『『おー!!』』』』』


「貴族や皇族は皆殺しぃぃぃ」


『『『『『おー!!』』』』』


「行くぞー!!」


 なんとなく、そう......なんとなく。


 なんとなーくやってみたかった一昔前のような暑苦しいノリ。それに対してノリノリで返事をしてくれた天使たちに感謝を捧げつつ、決着をつけに帝国まで飛んだ。




 ◇◇◇




 一応俺の部屋という扱いの部屋。


 そこに飛んだ瞬間から、ウチの子たちがピリピリし始めた。本番はまだだよ、今から気を張ってたら疲れちゃうよ?

 俺は気付いていてもスルーしてきたけど、この子たちは監視されているのがとても嫌なのかもしれない。


「そんなにプリプリしないの! 可愛いお顔が台無しだよ。こういう時はニコニコしながらぶっ殺すのが正解だよ」


『そうなの?』


「そうそう、普段からずっと不機嫌なヤツが虫を殺そうとしてるのを見るのと、普段から絶えず笑顔を振り撒いているようなヤツが突然殺意満々で虫を殺し始めるのを見るの......どっちが怖い?」


『笑顔の方......』


「でしょ? それに、君たちはもうラーの鏡に映したら、そこに映る姿は天使なんじゃないかってくらい可愛いんだから、その超絶プリティな容姿を有効活用するべきさ......

 ものっすごく愛想をぶち撒きながら相手に近付いていって、相手がデレッとした瞬間に真顔で死ねって言うながら殺すといいよ」


『そうなんだねー』

『あとでやってみるー』


「あ、でもソレを俺にやると死ぬから絶対にやらないでね。フリとかじゃなくてガチのマジでやらないでね。おにーさんとの約束だよ」


『......ふーん』


「はいそこ、ニヤニヤすんなー。間違えちゃダメだよ、君たちがこれから戦うべき敵は俺じゃないんだからねー」


 わかってるくせにさっきの例えを聞いてニヤニヤしだす白い子たち。俺に向けてそれやったら簡単に致命傷を負えちゃいますからね、ダメ、ゼッタイ。


 ニッコニコしながら視認できない攻撃を監視員に飛ばしていくエンジェルたち。


 慈悲? なにそれおいしいの?


 そう言わんばかりに淡々と処理し、キルポイントを稼いでいく。



 俺らが城に来て五分、監視員から報告が来ない事に業を煮やしたのか、城内が騒がしくなったからなのかわからないが、そこそこ偉い立場にいそうなおっさんが俺らの所に来て決戦場に案内すると言い始めた。


「ふーん......もし本当に案内人ならば、プンプン五月蝿い飛び回る蝿を全部追い払ってくれない? ウチの子たちがお怒りなのよ」


 俺の気を逸らす為なのか、監視してるヤツらの手助けか、ソイツらが俺らから逃げる隙を作ろうという意味で来たのか、本当にマジのガチで案内しろと言われて来たのかはわからない。

 ソイツは意外と権限があったらしく、右手を一度上にあげると蜘蛛の子を散らすようにヤツらは逃げ出していった。


「おぉ......消えたね、最初からそうして欲しかったけど......まぁいいよ、早く行こうか」


『......ねぇ、これ過剰戦力すぎない? こんなヤツらしかいないんなら、しるこだけでも事足りるよ。雑魚過ぎてつまんないから早く城を壊さない?』


「......ア、アハハハ」


 ピノちゃんがイライラしながら言った言葉を聞いて、この無駄な城を問答無用でぶち壊しながら進みたくなってきた......でも我慢だ、我慢しろ、俺。今日の主役は俺じゃないんだ。


「まぁ仕方ないよ。今日のメインイベントは君たちの練習の成果を見る事だもん。相手の強さとかは二の次だよ」


『......あっ......そうだったね、イライラしすぎて忘れてた。そうだよね、ごめん』


「大丈夫だよ、多分皆同じ気持ちだから。でも珍しいね、そんなにピノちゃんがイライラするなんて。何か引っかかる事でもあったりするの?」


 ......なんか思ってたよりも皆がピリピリしている。発表会を前にして緊張しているのかと思ったけど、なんか違う事でピリッてるみたいだ。


『なんかわかんないけど、この国すっごいイライラするの......』


「......ふーん、まだこの国にはなんか隠してる事とかあるのかな? ねぇ、案内人さん。君はその理由を知ってたりするのかな?」


「......え、いや、その......わからないです」


 怪しい......けど、まぁ知らないなら仕方ない。クソみたいな手段を使って俺らを嵌めようとしてるかもしれない。


「気を引き締めながら進もうか。何かイレギュラーな事が起きても慌てないでね。まぁ何が起ころうとも君たちの発表会の場は俺が守るから安心してね」


『うん......』


 そうこうしているウチに、発表会の会場に辿り着いた。小細工、悪足掻きなんでも来やがれ、俺が何としてでもウチの子たちの晴れ舞台を邪魔はさせないよ。

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