第262話 仲良くお喋り
裁判は閉廷となったわけだけど、即時刑罰執行とはならないんだよなぁ......
どうしよ、天使たちの準備期間が終わるまでまだ今日も含めて六日もある。
「もう全滅させちゃいたいのになぁ......ねぇ、デボラちゃん、どうすればいいと思う? 俺の仲間がコイツらの処刑の為に張り切ってるんだけど......六日間何してればいいかな?」
「物騒な事言わないでください......それよりも、いつお仲間さんと連絡取ったんですかぁ......」
「えっと、普通に転移してお家帰ったんだけど。ほら、さっきの証拠映像の時に俺がベッドの下に押し込まれてセルフエロ本プレイした時だよ」
「......ベッドの下に一晩中居たんじゃないんですね......そのまま戻って来なければよかったんじゃないですか?」
「............殺る気に火が灯っちゃったウチの子たちに追い出されたの。泣いていい?」
「やる気のニュアンスが違う気がしたんですけど......あ!? だから一週間以内に逃げ出せって言ったんですね?」
「正解。帝国の生命はあと六日だよー......あ、そうそう。デボラちゃんは再就職先や行く宛てがあったりするん?」
「......説得、頑張ります! 行く宛てとか再就職先とかは全然ありませんね」
「そっかー、行く宛てが無いなら王国に行くといいよ。そんで......えーと、王都内にある『ミステリアス商会』って所で働けるように口を利いておいてあげるからさ」
「えっ!? ありがとうございます。そこって今一番勢いのある商会ですよね? なんでそんな所にコネがあるんですか......確かあそこは女の人だけしか居ないはずですが」
「......なんか俺、いつの間にかあそこの商会のお偉いさんになってたらしいのよ。名誉職みたいな感じだけど。俺がどんな無茶ぶりをしたしても即対応しますってさ......」
「..................」
「おっと、胡散臭くなりすぎたかな? でもね、残念ながら本当なんだよ。お前ら全員死ねよって言ったら、五秒以内に本当に笑顔で首をカッ切って死んでそうなくらいになんか狂信されてんねん......」
「行きたくなくなりました。なんでそんな不安になるような話を今私に聞かせたのでしょうか」
「......いや、なんでこんな事言ったんだろうね、わからん。再就職先は大丈夫だよって言いたかっただけなのに」
「そうですか......それで、一ついいでしょうか?」
「なんだい、デボ太くん」
「こんなに敵意剥き出しにした人達に囲まれている現状が嫌です。全然落ち着けないんですけど助けてください。私たち......と言うか貴方様の無実は証明されたハズなのに、さっきよりも圧が強くなってるのですが」
「そう、だから最初のアレなのよ。殺していいかなもうって思うの......なんかね、もう考えるって作業がすっごいめんどくさいんだよ。何コイツら? 加害者が調子乗ってんじゃねぇよ」
俺が提出した証拠映像を見たおっさんズwith勇者様御一行が毒にも薬にもならないような話し合いを続けている。当事者のあたちたちは何故か蚊帳の外。
「......あっ......そうだ......この世界に居る自称魔王共って俺のスキルで喚べたりすんのかな? 喚べるんなら勇者様と自称魔王様の強制エンカウントできるやんけ!!」
「......なんか今物凄く聞いちゃいけない事が聞こえてきた気がしたのですが。魔王共って......魔王はまさか複数居るんですか!?」
「......ん? 知らなかったの? 魔王を名乗っているアホクソカス共は七人+元締め一人の計八体居るらしいよ。攻めてきた本人から聞き出したから間違いない」
「............はい?」
「なんかヤツらは七大罪を名乗ってたよ。俺がぶち殺したのは強欲、暴食、憤怒の魔王を気取る三匹で、そいつらをボコしてから直接聞き出した。ちなみに、この勇者召喚の切欠になった連合軍全滅は強欲のゴキブリ共の所為だよ。アイツらの大移動に巻き込まれて全滅したってだけ............おん?」
今までギャーギャー騒いだり、俺らを取り囲んで威圧モドキをしていたヤツらが、梅干しを口一杯に頬張ったような顔をしながら黙って俺らの話を聞いていた。
え、うそ......まさかコイツら何も知らなかったの!? それなのに勇者召喚(笑)とかしてくれやがったんですか!?
「......ねぇ、まさかコイツらとか、中途半端な地位の連中ってさ、魔王が八匹居るって所から知らなかったワケ? 連合軍全滅の理由とかも」
「......そうみたいですね。私たちみたいな下々の者に情報が来ないのは仕方ないのですが......」
「......もうさ、この国終わりだよ。滅ぼした方が世のため人のためになる気しかしていないんですけど......こんな状態なのにお偉いさん方は人を嵌めたり蹴落とそうとしたり......情けないなぁ......」
ねー、と頷き合う。マトモな思考回路の人ってすっごく貴重。異世界だとこうした人たちから死んでいくからなぁ......正に絶滅危惧種やでぇ。
「ちょっといいかしら!!」
クソカス共がやっと黙り、束の間の平穏な時間が......と思ったが、すぐに平穏は逃げ去っていった。
エンカウント→敵先制→初手逃げるのメタル系のアレくらいの逃げ足。
「もう面倒事はお腹いっぱいなんでお引取りください。お帰りはあちらです」
「ふざけないで!! アンタの所為でお嫁に行けなくなっちゃったじゃない!!責任取りなさいよ!!」
典型的なご令嬢の群れがあらわれた▽
「......わかりました。それではこちらが貴女方の純血を啜ったモノになります。ソレを持ってお帰りください。今後は彼が寂しい夜を慰めてくれますよ。ディルド姉妹同士、仲睦まじくこれからをお過ごしくださいませ」
さきっちょクロマティ君、略してさきマティ君を彼女達にプレゼント。全部黒いけどそれでいいよね。いやぁいい事をしたぜ。
ご令嬢方は喜びのあまり真っ赤になって震えているご様子。デボラちゃんはお口をあんぐりさせている。お口を閉じなさい、はしたないですわよ。
「ふざけないで!! 異世界人の血を取り込めと命令されて、捧げたくもない相手に捧げたと思ったら......こんな扱いをされるなんてあんまりよ......」
「......だから何? 貴女は性犯罪者、俺は被害者。命令されたんだろうがなんだろうが、最終的にソレを実行したのはお前の意思だからさ。宛がハズレて焦ってるんだかなんなのかは知らないけど、俺がお前らに責任を持つ必要も、責任を取る必要もない」
「そんなのあんまりよっ!」
「知らん。お前らが考え無しの無能だっただけだろ。勝手に人の寝室に押しかけて押し倒すような淫乱が普通に嫁に行けるような世の中になったら怖いわ。誰かの子を仕込まれてる女が寝室に飛び込んできて、強引に押し倒されて......その何ヶ月後かに貴方の子よって言われても信じられるか? 俺は無理だ」
「誰ともした事無かったわよ!!」
「それを証明出来るか? 膜はもう無いだろ? 映像で流血してたのは見れたけど、あのエッグいサイズのを自分の意思で突っ込めるのは処女とは言い切れないし、生理や拡張時の流血ってのも有り得る。それならば突っ込む前にカメラに向かって膜アピールクパァで証明すれば良かったんだよ」
「へ、変態ッッ!!」
「お前らに言われても......ほら、もうお前らの中に挿入り込んだ下手人は引渡しただろ? ソイツを持ってもう帰りな。後......は、男のアレはデリケートだから歯を立てちゃダメだよ。わかったかな?」
「......ッ!! 死んじゃえッ!!」
「もう二度と来ないでくださいねー」
「......ドン引きです」
「どっちに?」
「両方です」
押しかけ強姦令嬢と同列に扱われるとは屈辱以外のナニモノデモナイ......チッ、しっかり持って帰ったさきマティ君にあんピノ玉を仕込んどけばよかった......くそがっ!
「酷くない? 純然たる被害者だよ、俺」
「被害者でも女の敵です」
「......チッ、これだからリメイク版で出てきたポッと出と同じ名前が......」
「何ですかソレは」
「金髪と青髪の争いに乱入する黒髪はギルティ」
「だから何ですかソレは!!」
「モウイイ、オレ、ツカレタ。コイツラ、ゼンイン、シバッテ、オウチ、カエル」
「......あっ、はい」
「絶対に解けない縄で縛ったからこのゴミはこの中に放置しておいていいよ。殺さない、殺させない、死なないように管理だけしておいて。それと渡したモコモコは肌身離さず持っててね。それじゃあまた明日」
「待ってくだ......」
◇◇◇
山に着いた。けどまだ暗くなるまでは時間があるからどっかで時間を潰さないといけない。雪山で一人......寂しい。
「呼び出せたらいいなってくらいの心持ちで、では参りましょう。怠惰のハシビロコウさんかもーんぬ!!」
そう口にした瞬間、真っ白な雪原に真っ黒な魔法陣が展開された。
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