第261話 開廷

「裁判なんてまどろっこしい事をする必要は無い」「私の娘が......娘が......」「嫌がる娘を無理矢理......」「ここまで大切に育ててきた娘を、こんな卑怯者に傷物にされてしまうなんて」「私の妻も......こんなヤツに......」


 自分から送り込んだのと、上に命じられて送り込んだのの二種類しか居ないんだろうけどね。ははは。

 マネキンを犯してバージンをロストしたマヌケな娘を持つ親と、マネキンに嫁を寝取られたおっさんが憤りをみせる。当事者なら笑えないよね......真実を知ったらどうなるんでございましょうか。


「あ、そうだ。デボラちゃん、このモコモコを肌身離さず持っててね。命の危機が迫った時はこのモコモコが君を守ってくれるから」


「ありがとうございます......」


「お前っ! 何をコソコソやってるんだ!! 怪しい動きをするな!!」


「暇だから話してただけだよ。やだなぁ」


「罪の意識はないのか!!」


「無いよ。だって無実だし」


「年頃の娘を傷物にした責任から逃げようとしてんじゃねぇよ!!」「そうだそうだ!!」「卑怯者め!!」「責任を取れ!!」「これだから野蛮な下民は嫌いなんだ」


「ははは、好き放題言っちゃって......責任? そんなモンねーから。だって俺のイチモツはまだ異世界こっちでは新品だし」


「バレバレの嘘を吐くな」「年端もいかない少女を散々食い散らかしたクセに」「よくもまぁそんな嘘を......」


 悲しいけど俺、まだ異世界童貞なんだよね。だからそんな強姦魔みたいに言われても困るんですけど。それと謎解きのあとで発狂してナニするかわからん人がいないとも限らないからね、保険を渡しておかないと安心して煽れない。


「......ギャーギャーギャーギャーうるせぇなぁ......おいおっさん。聞きたい事があるんだけどいいか?」


「......遺言としてなら聞くぞ」


「口を開かせるな!」「責任を取らせろ!」「あんな奴に娘が......」「黙れ! 黙って殺されろ!」「今すぐ死刑に」「処刑しろ!!」


「静まれぇ!!」


 ウダウダうるせぇのが静まり返る。あーやだやだ、人の足を引っ張りたい、責任を負いたくないけど他人の事は貶めたいとしか考えていないおっさん共は。

 責任どうこう言うおっさん、大丈夫だよ安心して......仕方ないから俺と天使たちが責任を取ってあげる。


ㅤポチ


「おー、うるせぇのが黙った。じゃあ一応そんな感じで聞くけど......まず強姦はどんな刑罰なんだ?」


「局部を切り落とした後に首を落とし、死体を晒す」


「うーわ怖っ......じゃ次、寝ているヤツ無理矢理強姦するのは?」


「同じだ」


「どんだけ切り落として晒したいのさアンタら。まぁいいか、人を誘拐して殺すのは?」


「死罪だ」


「ふむ、じゃあ誘拐だけは?」


「死罪だ」


「おー、なるほどー。んじゃ無実の人に罪を押し付けるのは?」


「......拷問の後に十年の強制労働だ」


「それらは実行犯だけ? それとも関係者全員芋づる式?」


「チッ......関係者全てだ」


「それは絶対か?」


「......あぁ、絶対だな」


「人を陥れたい側が口裏を合わせれば冤罪作り放題なのに?」


「......そんな事は有り得ない」


 いやー、ね。あのマネキンをレイプした女の子達のアレ並のガバガバ理論。あんなのが挿入るんだから女体の神秘って凄いよね。それと被害者の人権なんて無い裁判って怖い。

 権力の前では全てが等しく無力と思い込んでいるヤツらだからこんな強引な事が出来るんだよなー。アホらし。


「んー、面倒だね。じゃあ最後の質問。証拠さえあれば、既に決まっているようなモンな判決は覆ったりすんの?」


「......そんな物があるのならな」


「何人も無理矢理犯しておいて今更命が惜しくなったのか卑怯者!」「そんな奴の口車に乗る必要は無い!」「即刻処刑しろ!」「人間のクズが!」「卑怯者め!」


「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」

「処刑!」「処刑!」「処刑!」「処刑!」


「......ギャーギャーうるせぇな!! はぁ、訂正しておくよ、一応ね。何人からも無理矢理犯されそうになったってのが真実に一番近いかな。何処の誰が嗾けたかわかんねーけど、死人に口なし、性犯罪者に人権無しみたいなやり方は正直反吐が出る」


「黙れ強姦魔!」「性犯罪者は喋るな!」「人の皮を被った悪魔め!」「人の形をしたオークが!」「オークよりも醜悪よ!」「こっち見た......孕まされるぅ!!」


 ......はぁぁぁ。これだから法整備の整っていない国は嫌なんだよ。

 DNA鑑定みたいなのは頑張れば魔法で再現出来るだろうに......停滞して腐敗しまくった国家なんてこんなもんか。


「じゃあ証拠があるならいいんだね。じゃあとりあえずそこの偉そうなおっさん三人と、勇者くん御一行、それと娘さんを俺に食われたと思っているおっさん達、証拠の品を見せるからこっち来て。他のヤツらも見たきゃ見ろ......裁判の場に出席してるって事は証拠品に目を通す覚悟や、判決が覆る可能性も考慮してるって思っていいよね? まさか、そんな覚悟もなく人に罪を押し付けたりしないよなオイ?」


「そんな事を言ってそちらへ誘き寄せて、私達の誰かを人質にでも取ろうとしているのよっ!!」「犯罪者の言い分は聞く必要無し!!」「見え見えの罠すぎる」


「しねーよ。面倒くさい。じゃあ来なくてもいいからちゃんと見てね。......とりあえず勇者様御一行はコレがなんだかわかるよね?」


ㅤポチ


「そ、それは......なんでお前がそんなモンを持っているんだよ!!」


「ある程度ラノベを読んでりゃなんとなく想像出来るだろう? 巻き込まれた召喚者の扱いを。だから保険を掛けておいたのよ。自分の置かれた状況に気が付いた時点で注意しておくのは当然だからね」


「アンタは無能なんじゃないの?」


「使いパシリにされるのなんてゴメンだから普通にステータスを改竄した。扱いに差をつけられて調子に乗り、イケメンや美女を宛てがわれた時点で脳みそを使うのを止めて、腰を振る事を選んだだけのお前らとは違うんだよ」


「なっ......そんな事ないわよ!! 変態!!」


「清廉潔白な俺を犯罪者に仕立てあげようとしたヤツにそんな事言われるとは......心外だなぁ......まぁいいから見てみろって」


 証拠品その一、ボイレコ担任。

 証拠品その二、ボイレコ副担。

 証拠品その三、定点カメラパイセン。

 証拠品その四............


 取り出したのは定点カメラ八台とボイレコ二台。それに収められていた映像や音声の再生を始める。


 と、共に、隠蔽を掛けたハンディカメラの録画スイッチをオン。


 音量はもちろんMAX。加害者に配慮する必要は無い。

 よかったね、無修正動画見放題だよ! 自分の痴態を他人に見られ放題だよ! 自分の娘や知り合いの痴態も見れるよ! やったね!!


 そのカメラはメイドイン俺だから、周りが薄暗くてもバッチリ鮮明に昼間と変わらない映像が撮れる特別製となっております。


 色んな角度から素晴らしい映像をお届けいたしております。そして、今ならなんと......なんと!! 成作時に使用した魔力以上の魔力を使った攻撃じゃないと破壊できないオプションと、十年間毎日ずっと稼働させていても大丈夫な量の魔力充填サービスのオプション付きでございます!! 皆さん挙ってお買い求めください。


 なんてね。ははは!!


「嘘よ嘘よ嘘よ!! こんなの出鱈目だわっ!!」「私はこんな事してないっ!!」「イヤっ!! 何よコレ!!」


「おぉぉぉ......」「コレは......」「うわっ、エグッ......」


「えっ......あんなの挿入るの?」「あっ......凄っ」「ふわぁぁぁ......」


 阿鼻叫喚......


 勇者様御一行の女の子は意外と初心な反応をし、野郎は食い入るように画面を見ながら鼻息を荒くしている。

 貴族のおっさんはもうね......もっこりさせている。擦ってるヤツもいる。


 偉そうな三バカは顔面蒼白。あ、コイツらの差し金だったんだねー。


「こんなモン捏造だ!!」「卑怯者が小細工しやがって!!」


 まだ上も下も元気なおじさん達。こう......なんて言うのかな? 盤面が詰んでからも醜く汚く足掻いてて、正直見苦しいったらない。


「おっさん達はコレがどういうモンかわかってないでしょ? だから優しい俺が説明してあげるね。これはね............



 カメラなんて知らないおじさん達は、説明+撮りたてホヤホヤの映像を見せられるとわかりやすく青褪めていった。


 高校生達はもう既に諦めていて震えている。諦めが早すぎやしませんかね?

 他人に冤罪をふっ掛けちゃった罪は拷問+強制労働とおっさんが説明してたよね。俺のふっ掛けられた冤罪の釈明に......と使った証拠と違って、この場に生まれたての証拠は俺の手の中&コイツらの味方にはならないのが確定している。


「さて、さっきから犯罪者やら責任やらとギャーギャー騒いでた皆さん......どうやってこの場を切り抜けるのか、見物ですねぇ」


 ニコッではなく、ニチャッとした笑顔を心掛けながら問い詰めていく。隣でメイドちゃんがヒイている気がするけど、きっと気の所為でしょう。

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