第258話 舐め腐った対応

 ふぅ......余りにもくだらなさすぎて寝てしまったぜ。俺以外のヤツらがノリノリになってたからよかったじゃん。あはは。


 さて、今のコユーザさんは宛てがわれたお部屋まで連れていかれています。他の勇者様方(笑)は先に部屋まで帰っているそうです。もう俺セルフ戦力外でもよくない?


「なぁ、メイドさんやい。俺が城に留まる理由ある? モノホンの勇者様(笑)がいるんだし、俺いらなくない? 扱いも酷いしさ、強引に拉致しといて扱いに差をつける、自由意志を奪うなんてさ、はっきり言ってクソだと思わない?」


「私の業務は貴方様をお部屋までお連れする事なので、そのような事を仰られても困ります」


「俺は強制的に拉致られた挙句、腫れ物扱いで困ってますよ」


「申し訳ございません。私はただのメイドですので......」


「俺はただの主夫ですけど。実家には子どもたちが待ってるんですが」


「申し訳ございません......」


「......ふぅん、じゃあさ、メイドとか関係無しに答えてくれるかな? 違う世界から年端もいかないガキや、ただの一般人を強引に連れてきてその世界のヤツらの尻拭いをさせられる事についてはどう考えてるの? もしアンタやその知人がその立場になったらどう思う?」


「............御勘弁頂けないでしょうか」


「お前らが返答に困るような事を選択肢無しにやらされてるんだよ。まぁ当事者じゃないからそう振る舞えんだよね......まぁいいや。そんでさ、アンタは今どんな指示を受けてんのかな? のメイドさん」


「何を仰られているかわかりません」


 ▼ビアンカ

 人族ㅤ29歳

 職業:拷問官▼


 これよ。か弱い一般人は泣いちゃうよ。

 鑑定結果を三度見くらいしちゃったよね。大卒一年目みたいな見た目や雰囲気なのにアラサーだったって事にも驚いたし。


「まぁいいけどさ、自衛くらいは普通にするから変な気は起こさないでね。一応忠告しておくけどさ、これ以上舐め腐った態度取ってるとお前ら全員殺すからね。この忠告を聞いても『お前みたいなのが何を馬鹿な事を言ってんのか』と思ったのならばいつでもかかってきていいですよ」


「申し訳ございませんが私はただのメイドですので......」


「はぁ......忠告はもうしたからね。この忠告を上に伝えるかどうかの判断はご自由に。んでまだ部屋に着かないの?」


「......もうすぐでございます」


「わかった」


 それから五分程歩かされた後、ノーマル宿屋よりも少しだけグレードアップしたお部屋にご案内された。やっぱりコイツらは俺を舐め腐ってるようです。

 勇者様一行(笑)のお部屋とはかなり離れた場所に案内するとは......やってくれますね。


「伝承では召喚されるのは六人と言われていましたので、お部屋の用意が間に合いませんでした。パーティーが終わる頃にはいいお部屋をご用意いたしますので、今はこの部屋でお願いいたします」


 物は言いよう。言葉って難しいよね。

 ちょっとだけ豪華と言ったのはこの部屋の広さと置かれた家具の事。物置を急遽部屋に改造したようなお部屋。妙に広いだけ。


 でもね、広かったのは僥倖かな......ありがとうございます。広さに免じてこの場でお前を殺すのは止めておいてあげる。


「ふーん、帝国ってイレギュラーな事が起きても直ぐに対応できないレベルの国なんだね。おっけーわかった。今からパーティーが始まるまでの間は自由時間だよね? 一人になりたいからそれまで部屋には誰も通さないでね。入ってきたのは殺すから」


「......畏まりました」


「それじゃ下がっていいよ」


 拷問官メイドを追い払い、ベッドに寝っ転がる。舐め腐ってるのは理解したからそのツケを払ってもらいます。侵入者には遠慮なく死を与えよう。


「骨喰さん聞こえる? 龍さんに伝えてくれないかな? 龍さんが頑張ればギリギリ収まるこの部屋の中で呼び出すから心の準備をしておいてって事と、呼び出された後はその部屋に詰まって待機していてほしいって。俺は一旦お家に戻って、皆に説明をしてくるからさ......」


 カタカタカタカタ......


 あー久しぶりの骨喰さんのカタカタ。懐かしいなぁ......初期の頃はかなりカタってたね。

 無駄に大きくて邪魔なベッドだけを収納にしまって準備完了。


「今度広い所で呼び出すから許してね......龍さんかもーんぬ」


 みっちり。パツンパツン。


 かなり嫌そうな顔をした龍さんが部屋に顕現されました。申し訳ございません。


「本当に......ごめんね......うぐっ......部屋に、入り込んだヤツは......おぅ......殺して、いいから......お留守番......よろしく......難しい、と思うけど......ギリギリ、原型が残るように、殺......してね......」


 喋るのが難しい程にギチギチな部屋の中、龍さんに司令を伝えた後、部屋の中に転移ポイントを設置して拠点まで飛んだ。




「はぁー......はぁー......」


 やっとマトモな呼吸が出来た。いやー......うん、あんな場所に閉じ込めてごめんね。


 なるべく早く解放してあげりゅからね。


「さ......皆の所へ行って説明しよ」


 息を整えながら家へと戻る。今はこの雪山の寒さが心地よかった。


 家へ入る頃には寒すぎて手足の感覚が消えていたが。




 ◇◇◇




 ガッツリ詰問された。それはもうガッツリと。


『滅ぼそう!』

『許さない!』

『手伝う!』

『一気にやろう!』

『ジワジワとやるの!』

「キュウ!」「メェェ!」


 説明が終わる頃には皆様物騒な事を言い出していた。声を聞かないようにすればとってもチャーミングな光景。


「殺る時は喚ぶから皆は待っててほしいの。アイツらには色々と聞きたいこととかもあるから......ね。夜は帰ってくるからさ」


『むぅぅぅ......』

『うーーー......』

「キュゥゥ......」

「メェェェ......」


 チーム甘えんぼがグズった。可愛い。


「よしよしよーし、夜は一緒に過ごそうね。後は俺からの宿題を一つ......国相手に戦うからそれ用の技......そうだけ、対個人用と対軍用の技を各自一つ編み出すこと。いざその時になったら俺をその技でアッと驚かせてほしいな」


 夜のイチャイチャを約束し、技の開発を課した所でようやく納得してくれた。

 さっきまでグズッていたのに今ではどんな技にしようかと目をキラッキラさせながら話し合っている。可愛い。


「よしよし、夜以外は一緒に居れないけど気持ちはいつも君たちと一緒だからね。いい子にして待ってて」


『『『『うん!』』』』


 元気に返事する甘えんぼさんたちと、頷くだけのクールぶってる子たち。

 今日の夕飯に食べてねと料理長の肉を手渡してから帰還。もうちょっとグズってくれてもいいのにと思いながら宛てがわれた部屋に飛んだ。



「......ただ、いま」


 部屋の中がパツンパツンな事を忘れていた俺は危うく圧死しかける。いしのなかにいるがリアルで起こったらこんな感じになるのかなって思った。アレ怖いよね。


 龍さんに殺されかけながら謝罪して骨喰さんに戻ってもらい、ベッドを元の位置に戻してからその上に寝転がる。


 忘れかけていた自身の設定を思い出し、着流しの色を幻影で誤魔化す。苦しいかな? と思うけど、裏地が青のリバーシブル仕様だったって事にしておく。



 しばらくボーッとしていると部屋の外から叫び声が聞こえてきた。そして声の主はノックもせずに部屋の中に泣きながら飛び込んできやがった。


「キャァァァァ!! あの、あの、無事でございますかぁぁぁぁ!?」


 ......誰? 何事?


「......この国のメイドってレベル低すぎじゃないかな。それで、君は何しに来たの? 死にに来たのかな?」


「いえ、あの......違います......パーティーの時間がもうすぐですので、支度とご案内の為にやってきました......」


「それと君が無粋にもこの部屋に奇声を上げながら飛び込んでくたのには、何か関係があったりするのかな?」


 ビクッとするメイドさん。本当に何この状況、帝国ってクソすぎやしませんかね。


「......グスッ......あの、部屋の外にあった死体......あれは、何なんですか? 私はただ、貴方様を連れてきてと言われただけなんですが......」


「ん? あ、あー......そう言えばそうだったね。アレは侵入者だと思うよ。一人になりたいから時間が来るまで誰も部屋に入れないようにって言っておいたのを無視したヤツじゃないかな。それを無視したどっかのお馬鹿さんがトラップに引っかかっただけだよ」


「......えっ......えっ!?」


「まぁそんなのどうでもいいじゃん。俺は誘拐犯共の事を信用してなかったから罠を仕掛けておいた。誘拐犯は俺の言う事を無視して何かしようとして罠に掛かって死んだ。それだけの事だよ......さ、俺は何をすればいい? 服装とかはこのままでいいのかな?」


「......は、はい。お召し物はそのままで、身嗜みだけ少し整えさせて頂きます」


 怯えながらも職務を遂行していくメイドさん。この子は普通のメイドだったので大人しくしておく。



 髪をセットされた俺はメイドさんに連れられて部屋を出る。部屋の外で赤い花を咲かせている三つの死体にビクッとしたが、そのままドナドナされていった。


 辛うじて残った半分になった頭が三つ、その内の一つはさっきの拷問官だった。

 まぁアレだね、人を舐めまくって行動した代償だよ。ドンマイ。

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