第257話 プロローグでありがちな話
『......あっ』
『どーしたのー?』
『なになにー?』
素直になれないモチモチは、いつも通り某変態を監視していた。彼の傍らに居る末っ子姉妹のお守りをしながら......
『今すぐお姉ちゃんたちを呼んできて!』
『わかったー』
『いってくるー』
ふんわりとしながらもモチモチが普段と違う雰囲気を発しているのを察知し、彼の指示に素直に従う末っ子姉妹。その原因を作った元凶がこのやり取りを見ていたら、きっとだらしない顔を晒していたであろう。
シアン拉致事件、音速でバレるの巻。
◇◇◇
......んー、逃げ損ねたのは失態だね。大失態だわ。どーしよ?
先人たちはどうしてたっけ?
............あ、そうだ。無能を装ってたな。俺の隠蔽がステータスにも関与できるかわからないけど、やれるだけやっておこうか。無理な場合は俺の他人にお見せできないステータスが白日の元に晒されるor誰にも俺のステータスが見えなくて問題になるの二択だ。
別にコイツら全員虐殺して堂々と脱出出来るけど、それは最後の手段にしておきたい。
一応同郷と思われるヤツらがいるから、初手から関係者皆殺しは控えたい。自分の意思で来てるらしいけど、もし来ていないのならトラウマ案件になるだろうし。
別世界だった場合の問題点、同一世界だった場合もあるから色々と聞き出しておきたいからね。
「隠蔽隠蔽隠蔽隠蔽......ステータス隠蔽......ステータス改竄......ぐぬぬぬぬ(小声)」
出来そうで出来ない、でも少し出来そうにも思える隠蔽。イケるか? なんかもうちょっとでイケ............た!!
おっけーい!!
他人からコレがどう見えるかは謎だけど、とりあえず隠蔽は出来た。これでどうにかなーれ☆
▼コユーザ・サンユーテー
人族ㅤ22歳
レベル1
職業:主夫
スキル:【闇魔法】【家事】▼
こんなもんでいいでしょ。うん。
名前は青をイメージした時に一番最初に思い付いた人物をそのまま流用。アラン・ドロンとかマサハル・フクヤマとか座布団と幸せを運ぶ赤い人の名前のどれかで迷ったのは内緒。
............あ、そうだ。今のうちに高校生の名前くらいは確認しておこうか。
▼
人族ㅤ17歳
職業:剣聖▼
セミロングの茶髪、目付きがキツい、全体的にスレンダーで高身長。可愛いとは思う。
▼
人族ㅤ16歳
職業:聖女▼
黒髪ロング、ちょいぽちゃおっとり、尻が大きく他は普通。スパンキングしたい。
▼
人族ㅤ17歳
職業:拳聖▼
黒髪ショート、スポーティ、三人の中では一番胸部装甲がある。好みではない。
▼
人族ㅤ17歳
職業:聖騎士▼
金髪の坊主、身長は高め、ヤンキーっぽい。
▼
人族ㅤ17歳
職業:聖弓士▼
茶髪のチャラメガネ、細い、インテリヤンキーっぽい。
▼
人族ㅤ16歳
職業:勇者▼
ガチムチの黒髪短髪、見る人が見たらウホりそうな雰囲気、部活とかだけは真面目系のヤンキーと予想。
女の子からみてしまったのは仕方ない事だろう。真っ先に野郎から見るほど俺は腐っていない。
ふーむ......それにしても、見事なテンプレ職業のオンパレードっすわ。この結果を踏まえて、さっき設定した偽ステータスをもう一度改竄......はしなくてもいいか。テンプレな迫害、追放になるかもしれないし、このアホな茶番を楽しもう。
......んー、高校生は全員起きたね。そんで仲良さそうにしている。仲良しグループで集まってなんかしてる最中に呼ばれたのかな? ドンマイ。
俺が気にする事ではないですからこれだけにしておこう......こいつらは所詮レッドな他人だし、俺が気にしないといけないなんて謂れはない。
......まぁうん。それはさておき、このメンツの中で明らかに俺だけが浮いている件について考えていこう。居心地がハイパー悪い。
なんで俺は今日スーツを着て出掛けなかったのか。貴族、学生と統一性のある服装をしている中に混じる異物こと俺さん。
貴族共も学生共も、明らかに混入しちゃっていた異物な俺をどう扱っていいのか悩んでいらっしゃる。ほらそこ! お前ちょっと話しかけて来いよ、嫌だよって懐かしいやり取りしてんなよバーカ!!
......もうなんか疲れた。さっさと話を聞いて今後の事について考えよう。
早いとこお前らがギルティ、若しくは超ギルティかの判断をしなくては。
「なぁ、どうでもいいけどこの状態でいるのに疲れたからどうにかしてくれよ」
「あっ......申し訳ない。直ぐに部屋へとご案内致します。こちらへどうぞ」
「あぁ」
最後尾を歩きながらこっそり【千里眼】を発動してみる。短時間で荒んだ心に癒しを。
............あっ! 天使会議しとるやんけ!!
可愛いなぁ......いつもは見せないキリッとしたお顔をしてりゅチーム甘えんぼ+末っ子姉妹がしゅてき。
......俺が居ない所で楽しそうにしてるな。パパ寂しいよ。ハブは寂しい。俺が見ている所でもソレやってよ。
とりあえず【千里眼】であの子たちの事が見れるってわかったのは僥倖だなぁ。私物は持ってこれたりするかな?
うん、寂しい。寂しいから俺にも味方をプリーズ。こういう時こそ骨喰さんの出番だと俺は思うの。
見られてても何したかわからないように手元を最強にボヤかせて......と、これでおーけーかな。骨喰さんかもーんぬ。
ド派手な演出も無く、まるでずっとそこにあったかのような自然さで俺の手元にヌルッと現れた骨喰さん。初めてこういう事試してみたけど、ちゃんと出来てよかった。
この調子なら皆も呼べるかもしれないけど、他人に家族を紹介する必要はないし、あの子たちで色んな実験をする程俺はマッドではない。骨喰さん......は、アレだ。寂しさ故に何も考えずに試しちゃったけど武器が無くて心細かったんだよ。うん。
前から見ても気付かれないよう腰に骨喰さんをソッと忍ばせ、ヤツらの後を着いていく。どんだけ歩くんだよ。面倒くせぇ。
十分くらい歩き回らせられ、ようやく辿り着いた部屋に通される。何度か方向転換しながら歩いていたのがムカつく。警戒してんのか知らねぇが最短距離で案内しろ。
こういう時は下っ端じゃなくて初手から王族や王女的なポジションの奴がド平民に下げたくもない頭を下げてお願いor見下しながら説明をするのがテンプレだけど、コイツらは普通にある程度の地位にいるだけの木っ端貴族だよね。勇者一行(笑)をナメてんのかクソ王族、死ね。
案内された先に居たのは、案内貴族よりもゴー☆ジャスな服装の貴族と、コスプレイヤーが二人の計三人。
宰相、近衛のトップ、宮廷魔導師トップだってよ。
なんかクソ偉そうに長ったらしい名前を言っていたけど覚える気は無い。こんな事に脳の容量を割くなんて愚かにも程がある。マイエンジェルの姿を脳に焼き付けるからお前の入り込むスペースなどない。
・此処は五大国の一つのクレイド帝国
・八体居ると言われる魔王の動きが活発になり、人族がヤバい
・教国が滅ぼされてヤバい
・残った四カ国で合従軍を興したが壊滅して手の打ちようがなくてヤバい
・どうしようなくなって伝説と言われている勇者召喚を敢行しなくてはならない所まで追い詰められている
・どうか我らを救ってください、断られると自分ら全員クビ切られる(物理)
・皇帝とその家族は公務でお忙しいらしく、俺ら如きをお迎えする時間は無くてごめんなさいだってさ
あ、ここ別世界じゃないと教国の話が出た時点で気付いた。よかった、いつでも帰れるなら安心だ。
それにしても言い方が卑怯だよね、壊滅したって話の時にはブルッて声を荒らげていた勇者一行(笑)だったけど、今はなんかもう使命感(笑)で燃えているもん。
......あ、勝手に自己紹介を始めやがった。めっちゃ自己アピールしてる。実は情に厚い系だったヤンキーを見ている気分。
お前ら今後の人生で捨て犬は絶対に保護しろよ。むしろ犬を捨てるヤツは積極的に殺して回れよ。
流れに乗って俺も自己紹介したけど誰も笑わなかった。コイツらとは別世界線から飛んできた人と思われたらしい。
知らないってマジかよ!? とツッコみかけるが堪える。ジェネレーションギャップって怖いよ。普通一度は見た事あるだろ?
一気に冷めた俺はそれ以降全てを聞き流した。もうどうでもいい。俺はお前らと同郷に見せかけたモドキ野郎らしいからね。
帰還方法はあります! ってなんかの細胞を見つけた人みたいな事を言ってたけど嘘だよソレ。頑張って使い倒されてね。
なんで嘘って断言したかって?
茶番に飽きたから色々探ってたんだけど......皇帝一家らしき反応は城の中にバッチリあった。そこまで糸を伸ばして糸電話スタイルで会話を盗聴したから間違いない。
今後各国でトラブルが起きた時にパシリとして派遣され、今後ガッツリ使い倒されるらしいよ。がんばえー。
その代わりと言うかなんていうか、イケメンと美少女抱き放題&辺境伯待遇を約束するらしい。オタ文化に免疫なさそうだからいい感じに使われそう。頑張れ。
この後は部屋を宛てがわれ、少し休んだ後に貴族の子どもや独身の有力者が入り乱れる選り取りみどりの婚活パーティーが開催されるってよ!! よかったね☆
はぁ......くだらね。誰が最初に言い出したのかわかんないけど、テンプレってやっぱ偉大だわ。まるで実際に体験してきたかのように人間の汚い部分を予測できるよな。すげーよ......やっぱ人間ってクソだわ............
............
......
「あのー......起きてください」
..................ハッ!? え?
あ、説明終わったのね。了解。部屋に連れていく? わかった、案内よろしくね。
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