第251話 襲撃の後
異世界害虫・害獣駆除業者にジョブチェンジしました。代表取締役のシアンです。
大量のネズミは一匹ずつ潰していくのが異世界式でございます。
異世界のネズミはですね、とても大きいんですよ。日本でよく見るようなサイズから人間よりも大きいサイズまで居るのです。
戦闘能力もそこそこあるので、一般的な成人男性でも余裕で死亡する可能性もございます。ですから、ネズミを駆除したいなーとお考えの皆様、ぜひとも安心安全がモットーの我が社へご依頼を。
......はい、魔力でコーティングした拳や足で、モチベーションが下がるほど居るネズミをプチプチ潰して回っていた私です。
社員の皆も、とても頑張ってネズミ駆除をしてくださいました。
おかげで大した時間も掛からずに全てのネズミの駆除が終わりました。感謝しかありません。
さて、そんな我が社の二大エースであるピノさんですが、大事にしているモノをネズミに荒らされそうになった事で大変憤慨しておりまして、駆除現場がモザイク必須な状態になっております。
千切りですね、ボスだったネズミが、末端からキャベツのように切られておりました。断面は速攻で焼かれているので失血死はしません。気絶した瞬間に細長い火の針を目に突き刺していました。
それほどまでやってもまだ怒りが収まらないようで、纏めて消そうと思って一箇所に集めておいたネズミの死体の山をヤバい目付きで見ております。どうすればいいのでしょうか。
「ヘカえもーん、こんな時僕はどうすればいいと思うー?」
『好きなだけやらせておけばいいと思う』
......The無難な回答。アレに介入できないよね。怖いもん。
あ、今ピノちゃんが無造作に振ったヘビしっぽの一撃でネズミの山が割れました。ネズミ本体も割れています。
凄いですねー。どうやったのと訊ねたら
『骨喰さんの技を見て真似した』
そう返答がありました。真似して出来るモノなんですね。天才って凄い。
それを見ていた期待の新人のワラビが、狂ったようにヘッドバンキングを始めました。怖いですよ。ウチはブラック企業じゃないつもりなのでストレスからの発狂ではないと信じたいです。
............
..................
「ふぁっ!?」
数分後......
ワラビのヘドバンが進化しました。
そう、ワラビも飛ぶ斬撃を会得したようで、ネズミ山を切り裂きました。気が狂った訳じゃなさそうなので一安心。
切り傷がパチパチしているので、きっとアレは雷属性の斬撃のようです。
その光景に感化されたのか、ダイフクとツキミちゃんも面白い動きを始めました。
......が、こちらは上手く行きません。ただ、羽根をブンブン振っていて可愛いです。
全く斬撃が飛ぶ気配はありません。可愛いだ......けど......
可愛いだけではありませんでした。はい。
羽根を振り振りして抜けた羽根が弾丸のように飛んでいき、ネズミの死体に風穴をあけました。マグナムをぶち込んだ感じです。
......ほっ。
ヘカトンくんは参戦しないようです。よかったぁ......
......変なテンションにも疲れてきたからテンションを元に戻そう。深夜のせいだ。
「はーい、じゃあ俺が散らばったネズミのパーツをまた集めるから、皆の合体技で消滅させてねー!! やりたくない『やる!』......なら俺が......うん、頼んだ」
食い気味に言われた。おっけー!
まだ怒り心頭なピノちゃん。他の子も頷いてるね、じゃよろしくお願いします。
ピノちゃんが真っ白な炎の玉を出し、ワラビが雷の玉を、ダイフクは光、ツキミちゃんは闇、最期にヘカトンくんが鉱石の玉を。
天使たちの力を合わせた天使玉、それがネズミの死体へ......やばいね、アレ。
「あんピノ玉でも大概アレなのに......よし、隔離して......と、どうせなら俺も何かしようか、うん。こっそり大樽爆弾を置いて......完成」
着弾寸前に大樽爆弾を追加された天使玉はそれはそれはもう、笑っちゃう程の爆発を引き起こした。どんな威力なのか見たいから、あの時同様天井部分を外したんだけど......
三尺玉やそれ以上を保管している倉庫が爆発したらあんな感じになるんだろうなって感想しか出てきませんでした。
「うわぁ......めっちゃ綺麗だねぇ......ん?」
「シャァァァ」
「おー、お疲れ様。よしよし」
頑張ったねー。ピノちゃんが可愛い。珍しく人目も憚らずに甘えてくる。
あの頃いつも入っていたポケットが無い服装をしているからか、あんこの特等席だった場所へ入り込んできた。あの頃は入るか聞いても全然来てくれなかったのに......
「おーよしよしよしよし......頑張ったね」
可愛い。残りの子もそれぞれ両肩、抱っこと続き、最後は皆を装備した俺を乗せてお家の方へと歩き出した。ワラビが俺を乗せて運ぶ事がご褒美になるならもっと乗ってあげないとね。
短い時間と距離だったけど、嬉しそうにカポカポ歩くワラビが可愛かった。
お家に入る前に病原菌とかが心配なので温泉で濡らしたタオルで皆を拭き、再びお布団の中へイン。よく頑張ったね。
こうして夜中に来訪するお馬鹿さん第二弾を退けた俺らは起きる前よりも強固なモフ布団に包まれて眠りに就いた。
◇◇◇
「......モゴッ、モゴォ」
息苦しい。上手く呼吸が出来ない。
だが、呼吸なんてどうでも良くなるほどに気持ち良い感触。そう、最愛のあんこお嬢様のお腹が俺の顔面に張り付いていた。
見えていないけど間違いはない。俺のもふマイスターっぷりをナメるな。
「もーごもごもご......」
顔面を覆う俺に幸せをくれる存在を撫で回す。よーしよしよしと言いたかったけど喋れないかったのは残念だ。
「わふぅ」
少し高くなった声が漏れてきた。気持ちいいんだね。ここか? ここがええのんか?
「もごごごご......」
わしゃわしゃもふもふわしゃわしゃもふもふ......寝起きから特大のご褒美ありがとうございます。
『あふっ......ねぇ、変な臭いがするんだけど、寝てる内に何か変な事でもしてきたの?』
......おっふ。なんか浮気を疑われている夫のような気分になってしまう。ウチの嫁さんは可愛いなぁ。俺の顔面から幸せな温もりが遠ざかって寂しい。
ガッツリもふもふされて、聞きたかった事を忘れかけてたんだろうね。
「......ふぅ、変な事なんてしてないよ。夜中に不届き者が攻めてきたのを処理しただけ」
『むっ......むー......』
「ほらほらむくれないの。そんな事しても可愛いだけだよ」
『......うー、ガブッ』
「あははは、よしよし。あんこがぐっすり寝てたから起こすの可哀想だっただけだよ。決して仲間はずれにしたとかそんなんじゃないからね」
俺の首をハムハムするあんこを宥める。
『ふーん......ピノを私の場所に入れてあげたみたいだけど、本当に変な事してない?』
拗ねたようにそんな事を言う。あんこと一緒にいる時は絶対入らなかったもんね。ナワバリ意識かな?
「昨日はドテラ着てたからピノちゃんのポケットが無かったんだよ。それでね、昨日はピノちゃんがめちゃくちゃ怒っちゃってたから全部終わった後にそこへ入ってきたの。
あんこからその場所を奪おうとかそんなんじゃないと思うから、ね」
『......たまにならいいけど、頻繁に入れちゃダメだからね』
「うんうん、わかってるよ。あんこは同じ事しようとしてもポケットに入れないもんね。あ、もしかして俺とあんことピノちゃんだけだった時に、ポジションについて話し合ったりしてたの?」
『......うん』
なんでこの子はここまで俺のハートをぶち抜く事に特化しているんでしょうか。ロマンティックが止まらない。
「じゃあ今日はずっとここに入る? 今から皆のご飯作りに行くけど......どうする?」
『............』
モゾモゾと定位置に入っていくあんこお嬢様。頭ではわかっていても感情が追い付かないのかな? ちょっとだけ拗ねた顔で胸元から顔を出している。
「いつもありがとね。ごめんね、我慢させちゃって」
『......いいの。でもここは私の場所だから、頻繁に入れちゃダメだよ』
「うん、ありがとう。皆のお姉ちゃんは優しいね」
大分落ち着いた雰囲気になったけど、まだ若干むくれていますよってポーズは崩していない。可愛い。
「あーよしよし、ほらあーんして。ジャーキーだよ」
『......あーん』
ちょっと拗ねるあんこ、それを宥める俺。カップルの痴話喧嘩みたいで楽しいと思ってしまったのは心に秘めておく。
「いつもより豪華な朝ごはん作るからね」
ネズミ駆除を頑張った皆へのご褒美と、あんこへの贖罪の気持ちを込めた朝ごはんを作った。
さ、今日も皆で楽しく過ごそうね!!
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最近減っていた数字が、また少しずつ数字が増えてきたのが嬉しくて昨日寝る前に終わらせました。モチベーションって何かするのにとても大事ですね。
コロナ二回目がどうなるかわからないので明日はわかりません。
元気だったらまた明日、ダメそうなら明日以降になります。再開したらまたお付き合いください。よろしくお願いします。
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