第247話 釣りと悪企み

 完全に冬が到来したある日の昼食後、俺は前日に突き付けられた不名誉な現実を払拭する為に......頑張ってそれっぽい事を練習していた。


「君こそー僕の天使ぃ戦いの日々の中でー突然ん僕の目の前に現ぁれたぁー♪」


 大根役者という汚名を返上したい。その一心で、この日は演技の練習っぽい事に精を出していた。


「偶然んじゃなーいのーきっと神様のお計らい......」


『......何してんのー?』


「......あっ」


 突然僕の目の前に現れた。若干呆れ気味な黒い羽根を羽ばたかせた天使が。


『楽しい?』


「......そうでもないかなー。ははは」


 天使に奇行種と思われたっぽい。悲しい。


『ワタシもなにかやった方がいい?』


「ううん、大丈夫。ちょっとした気の迷いだから気にしないで」


『そうなの? じゃあ構って』


「おっけー」


 この遊びに巻き込んだら、フィナーレにはこの可愛い可愛い天使たんが、おっさんにフォルムチェンジしてしまうからね。視聴者として大人しくしていてほしい。

 余計な事をしてこの子たちがネタ魔法しか使えない金髪キノコや、ネタ魔法を真っ先に使われる貧乳になる可能性を消したい。


「ツキミちゃんは可愛いなぁ。悪い魔法使いに捕まっちゃダメだからね」


 そんな事を考えながら翼の生えたエンジェルと戯れていたら、もう一体エンジェルが合流した。

 君たちは今後、悪い魔法使いとは一切接点を持ってはいけませんよ。パパとの約束だからね。


 この後はツキミちゃんとダイフクを連れて釣りをした。冬だから釣れないかなと心配したけど、そこそこの数が釣れた。さすがファンタジーということなのかな。


 冬になる前から食い溜めでもしていたのか、今回釣れた魚は脂がのっていて美味しかった。こんな事をしていたらタラ鍋が食べたくなったので、夕飯はタラ鍋にする事に決める。タラの身や白子をもみじおろしを入れたポン酢で食べるは至福だからね。


「それにしても......足と羽根を使って器用に魚釣りをするとは。やっぱりウチの子は天才だなぁ」


 自分で釣った魚を焼いて食べたのが嬉しかったのか、食後にまた釣りを始めるダイフクとツキミちゃんが微笑ましい。


 少しだけピリついているのが気になったので話し掛けたら、『今いい所だから黙ってて!』とツキミちゃんとダイフクの両名に怒られてしまった。きっと対決をしていたんだろう。邪魔者と思っていないと信じたい。


 怒られてからは大人しく鳥ちゃんズの釣った魚の下処理に励んだ。ほっとかれて寂しいとか思ってないからね。邪険にされたくらいで拗ねるほど大人気なくないんだからね!


「ふふふ......お前は釣られて絶望してるのかい? どうしたのかな? 死んだ魚のような目になっているじゃないか。くくく......魚語はわからないけど、くっ殺せって言っているのかな」


 そんなアホな事をブツブツと言いながら、次々に魚を締めて内臓を出していく。日本で見かけたら即通報モノのヤベー奴だね。


 HAHAHA!


 それにしても、あの子たち......釣り上手になりすぎじゃないかな? 天才型は何をしてもすぐ上達しやがる。ずっちーなぁ。



 日が傾き始めるまでの三時間足らずで計92匹の魚を釣り上げた鳥ちゃんズ。

 結果はダイフク44匹、ツキミちゃん48匹の白熱した対決だった。モチモチは悔しそうにしていたのが面白かった。


「ねぇねぇ、結局その釣り対決の景品はなんだったのかな? 結構熱くなってたみたいだし、気になるんだけど」


『何も賭けてないよ』

『強いて言えば同族対決の意地』


「お、おう......そっか」


 鳥類の意地と誇りを賭けて魚釣り対決をしていたらしい。それならば鳥類らしく釣竿を使わないで川に飛び込めば......と思ったけど、魔法のある世界だから環境破壊に発展しかねないな。


「そろそろ真っ暗になるから早く帰ろう。今日は寒い日にぴったりなお魚の鍋にするからねー。今日君たちが釣った魚は明日以降に少しずつ出すよ」


『......うん』

『わかった』


 勝者と敗者のテンションの差がエグい。左肩でドヤるツキミちゃんと、右肩でしょんぼりしているモチモチ。可愛すぎる。


「ほらダイフク元気出せ。勝負に負けても死ぬワケじゃないんだし、次回リベンジに燃えればいいんだよ。ツキミちゃんはディフェンディングチャンピオンとしての余裕を持ってチャレンジャーを迎えればいい」


 ワンクールに一回、釣り対決を開催する事を急遽決定すると目に見えてヤル気を出したダイフク。子供っぽい一面が見れて俺は嬉しいよ。

 初代冬の女王であるツキミちゃんは、春も返り討ちにしてやる! と、モチモチを煽っていて微笑ましいけど、モチモチがプルプルしてきている。まだまだこの子たちは子ども。殴り合いとかに発展しないようにキツめに注意はしておいた。


「口喧嘩とかはしてもいいけど、そこから暴力とかにまで発展するのは絶対にダメだからね。君たちが大怪我してしまったり、死んじゃったら俺は生きていけないから。

 いい? 君たちは簡単に敵を殺せるし、山も吹っ飛ばせるんだから気をつけるんだよ」


『はい......』

『うん......』


「なら良し。俺は此処が無くなったり、家族の誰かが大怪我したら悲しいからね。もちろんダイフクとツキミもだよ」


 大人っぽく見えてもまだ子ども。ここら辺は反省しないとだね。


「喧嘩するほど仲が良いとも言うから、まぁ気にせず普通に過ごしながら、ヒートアップした時に思い出す程度でいいよ。さ、帰って美味しいご飯を食べてぐっすり寝よう」


 タラたっぷりの鍋と、追加で食べたくなって作った湯豆腐を食べてゆっくり休んだモチモチとツキミちゃんは、寝る前にはいつも通り仲の良い鳥ちゃんズに戻っていた。


 他の子たちに釣りの自慢をして、次はこっそりやらないで自分たちも誘えと脅されたりしたけど、実に平和な家族団欒になった。


 反省したのか甘えたかったのかわからないけど、この日の就寝時はリアル羽毛布団が俺の体に掛かった。幸せ。




 ◆◆◆




 side~???~


「よく集まってくれた。感謝するぞ。さて、お主等をここに呼んだ理由はな、短期間で強欲に続いて憤怒も殺された事についてだ。強欲は配下ごと根こそぎ殺られ、憤怒はヤツ自身とその有力な配下の大半が殺られて後継者を選出出来そうにない......これは我らにとって実に由々しき事態だ」


「勝手にしてほしい。我ら怠惰勢は何があろうともソイツに手は出さない。交渉、配下の貸し出しはもちろん、共闘の要請なども絶対に受付けないから」


「強欲と憤怒を殺したヤツっていい男だったりするぅ? 女なら私はパスよぉ」


「あぁぁ......妬ましい妬ましい。そんなに強い人物ならさぞかし苦労なく生きていけるでしょうねぇ」


「儂は......そうだな、儂と臣下の食料を三ヶ月分寄越せば請け負ってやる」


 立て続けに七大罪の二人を殺され、五大罪に減ってしまった彼ら。ようやく下手人を脅威に思ったのか、彼等のまとめ役である傲慢が残った大罪を呼び出したのだ。


「怠惰の、お主はどうあっても動かないのか? ならば我がお主と事を構えるぞ」


「どうぞご勝手に。勝ち目の無い戦よりも勝率五割に挑む方が楽だからね」


「貴様ァ!!」


「怒鳴らないでよ......はぁ、どう足掻いても無理だよ。もし全員が揃っていたとしても、弄ばれて飽きたら殺されるだけだから。一応忠告はしたからね、後はどうぞご勝手に」


「儂は対価さえあればやるぞ」


「やるやらないの前にまず男か女か言いなさいよぉ」


「きひひ......そんなに強いのかぁ......妬ましいなぁ」


「義理は果たしたし、もう帰るねー。協力しないのが気に食わないのなら、罷免してくれていいからね......と言うかしてくれた方が楽できるか、じゃあもう辞めるね! バイバイ」


「オイ!!」



 はじまりの街周辺のモンスターによる魔王対策会議が熱を帯びていく――




 ──────────────────────────────


 無事に鷲の死体二羽目が爆誕するのを見届けてきました。えぇ、今年の鷲を体現したような試合でとても楽しかったです。

 前日に中継で見た物のリプレイのような試合でした。ハハッ......きっと規定でコールドにならなかったら、鴎にグッバイされていたでしょう。


 一言言いたい、使える外人さんは卑怯だよ畜生! あと、なんでポテト頭をトレードに出しちゃったんだよバーカ!


 ......はぁ、今年のポストシーズンは腹違いの兄弟と勝手に思っている檻牛と、畜ペンの球団を全力で応援しようと思います。セカンドステージも、日本シリーズも、縺れに縺れて最終戦まで行って楽しませてほしいです。



 はい、愚痴ばかりでしたが、今日からまた頑張ります。よろしくお願いします。

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