第232話 デートの旅~野生のラスボス~

 目の前には、現代日本を生きていた俺......いや、ある程度の知識を持った人達にとっては天然記念物よりも保護してみたくなるであろうドリルロリ令嬢。ある意味ロマンの塊だった存在。


 目付きが悪いが可愛いには可愛い。


 けど、一目見て満足した。もういい。


 うん、後はコイツの殺り方をどうするべきか......


 とりあえず脅されたから脅し返そうか。殺り方は今後のドリルの対応によって辛さが変わるよ。


「えーっと、そこで転がってるおっさんに急に肩を掴まれて痛めちゃったからどうにかしてくれない? 早い話が慰謝料と治療費払ってくれないかなーって事だけど、どうかな? 死体から剥ぐのは面倒だからサクッと払ってくれたら楽でいいなーって思うんだ」


 ゲスい表情を意識して話しかけると、これがまぁ結構効いたみたいでドリルロリの表情が引き攣る。取り巻き共も同様。


「ワタクシにそんな事をしてどうなるかわかっていますの? 今すぐ土下座して謝るのなら穏便に済ませてあげてもいいのよ」


「俺にこんな事してどうなるかわからないの? 今すぐ所持金の全てと、家の金全てを払って土下座すれば安らかに死なせてあげるつもりだよ」


「......チッ、アナタ生意気ね、王都でワタクシを知らない輩が居るとは思いもしませんでしたわ。お金を払ってその獣を買ってあげようとしていたのに......もういいですわ、その獣は没収してワタクシのオモチャに、男は不敬罪で死刑になさい」


「畏まりました」

「ハッ! そういう理由だから、大人しく殺されてくれや」

「逆らった相手が悪かったなァガキコラ」


 皆さん見ました? 乙女ゲームの破滅フラグしかないドリル装備の悪役令嬢with三下は、見事に破滅フラグをギンギンにおっ勃てましたわよ。


 それに、娯楽の少ない世界の人間はこういった事が好きなようで、無力な男が高貴なお嬢さん一行にボコれれる未来を楽しみにしている......ぶっちゃけ野次馬がウザすぎる。お前らも巻き込んじゃうぞ☆


 この世間知らずのドリル女郎。お前、それは無いだろ。俺の天使兼今をトキメク王都のアイドルに向かって獣なんて言葉、普通言えるか?


 もういいよ、わかった。惨たらしく、苦しみに苦しみ抜いて死んだ挙句、誰もが顔を顰めるような猟奇的な死体に成り果てるがいい。


ㅤテレテレテレテレテー♪


【野生の 魔王が あらわれた】


 ドリルロリ は ひるんでいる

 手下A は ひるんでいる

 手下B は ひるんでいる

 ......

 ......

 手下P は ひるんでいる▽


 思わず怒りで狂いそうになっちゃった。威圧が漏れ漏れになったみたいだよ。ごめんね、テヘッ。


 王都内でエンカウントするような敵じゃないよね。わかるわー。

 でもね、たまたま王都に来ていて、ショッピングやティータイムを楽しんでいただけの裏ボスに勝手に絡んだ挙句、ソイツの堪忍袋の緒を引きちぎったのは君だからね。


 傍若無人に振る舞うのは勝手だよ。でもね、世の中には権力や金に靡かない異物もいるんだよ。一つ勉強になったね。


 それに......日本で大人気の六文銭の人もこう言っていたじゃない。


「いいかキサマら人間には触れちゃならん傷みがあるんだ!! 其処に触れたら後はもう生命のやり取りしか残らんのだ!!」って。


 いいセリフだよね、惚れ惚れしちゃうよ。激アツ演出が出まくった後にこのリーチに発展したら全ての感情が抜け落ちて真顔に戻るけど。


 というワケで、其処に触れちゃった貴女達とは生命の殺り取りしか残っていません。覚悟はいいかお前らァ!!



「敵を前にして呆けちゃってどうしたの? いつもやってるみたいに大勢で囲んでボコらないの? ほら、この子は手を出さないから一対多数で、今ならお前が圧倒的に有利な状況だよ」


 ここまで言っても全然動かない。それならもう殺っちゃいましょうか。デートの時間は有限なのです。お前ら如きが邪魔していい物ではないのだよ。


「アタァ!」


 転がっている手下Aの眉間に指を刺し、発勁的な力を流し込む。


「アータタタタタタタタタタタタタ」


 発勁的な力を込めて殴る。殴る。殴る。


「ホーアタァ!!」


 発勁的な力を込めて手下Pの脳天をチョップする。


儞已經死了お前はもう死んでいる


 お前らの生命はあと五秒。


 十数人に囲まれた野郎......後はソレがボロ雑巾のようになるまでボコられるのを楽しみにしていたであろう野次馬が静まり返る。


 突然の奇行に奇声。まぁそうなるよね。


 殴られたりした手下A~Pにはきっと、俺の姿はそれはそれはもう、滑稽に映っている事だろう。


「んだよ、驚かせやがって。御大層な事を言った割にはなんともねぇじゃねぇか」


「はははっ、死ねェェェ!!」


 ピキーーーーン!!


 威勢を取り戻したチンピラが俺に殴り掛かろうとして......止まった。


「お嬢さんお嬢さん、よく見ておきな。一子相伝の暗殺拳を食らった者の末路を」


「何してんのよ! 止まってないで早く動きなさ......い......」


 頭部が盛り上がっていく手下Aと手下P、体がボコボコしていく手下B~O。


「な、なによ......これ......」


 唖然とするお嬢さんと若干ヒイている俺。


 リアルで身体がボコボコ盛り上がっていくのを見ると気持ち悪いって、俺わかったよ。


「あべし」

「ひでぶ」

「たわば」

「うわらば」

「お師さん......」


 うん、爆散して死んでいったね。死体が残ったのは手下AとPだけ。百裂拳をしたヤツらは調整を間違えたらしい。ごめんね。


 手下Pも上半身消失しちゃった。


 噎せ返る程の濃厚な血の臭いに包まれたドリルロリお嬢さんの周囲は、十数人分の血と臓物と肉片が散乱している。お嬢さんの自慢のドリルにも、手下の破片がこびりついている。


「......あ、あぁ......なんて事を」


 箱入りお嬢さんには些か刺激が強かったのだろう。このまま俺が現場からフェードアウトすれば、お嬢さんご乱心、凶器は自慢のヘアドリル。無差別殺人か!? って見出しで新聞の一面を飾れそうなビジュアルをしている。


「さぁ、残りは君だけだよ」


「い、いや......」


 ......うむ。つまりこれは、アレをヤれって事かな?

 えーっと、あ、スマホを取り寄せてっと......動画撮影開始。ではイキまーす。




 ●REC


『君、凄いドリルだね。名前と年齢は?』


『ヒッ......プリメラ、〇4歳......です』


『へえっ......若いね。お家は何処にあるのかな?』


『イヤッ......あっ......き、貴族街にあります......』


『やっぱり。そんで、家名は何て言うのかな?』


『......ごめんなさい......ヒイッ......あ、あの、プギャール侯爵家......です』


『ほうほう。家族構成は?』


『......ウゥッ......もうヤダ......ち、父と母、義母二人、祖母、兄が二人と姉が一人です......』


『家紋みたいのは君の首飾りに付いているそのマーク?』


『グスッ......そうです』


『ふんふん、それで......なんで俺とこの子を襲おうとしたのかな?』


『グスッ......さ、最近、王都で人気な人形に......似ている生き物を見つけて......欲しくなっちゃったんです......』


『......ふーん、そっかー。まぁいいや。それで、君......これを見て......どう思う?』


『キャッ......ヤダよォ......何よソレ、黒くて......汚らわしい......』


『ふひひ......ありがとう。あのね、コレが今から君の中を蹂躙するんだよ。君はもう逃げられない......コレが、君のその幼くてちっちゃいお口の中に入っていくんだよ』


『えっ......い、いやっ! いやぁぁぁ!! ごめんなさいっ! 何でも......何でもするから......もうこんな事しないから......助けてよぉ......』


『ほう、何でもと。なら、コレを全部飲み込んで貰わないね。そうしないと終わらないから......はい、あーん』


『い、いやっ! ぐぶっ......おえっ......』


『いい子だね、さぁ、まだまだだよ。コチラは全然満足してないんだから。

ㅤ......おぉぉぉ、ちっちゃく見えてもちゃんと身体は成長しているんだね。ほら、もうこんなに入ったよ。わかる?』


『ぐ......うぶっ......おぶっ』


『......あと少しだよ。がんばれ、がんばれ☆ いいよー、いいよー。......ふぅ』


『はぁっ......はぁっ......うっ......こ、これで終わり......ですか?』


『よしよし、よく頑張ったね。ちゃんと全部飲み込めて偉いよ。うん。はい、お口直しのお水を一口飲んで......そう、吐き出さずにお家に帰るんだよ。もうこんな事しちゃダメだからね』


『ウゥッ......ごめんなさい......ごめんなさい......』



 ......


 ●REC終





 ふぅっ......いやー楽しかった。ゲススマイルで笑いかけたら素直になってくれてよかったよ。


 乾燥わかめを100gの物を十袋分、胃に納めたドリル令嬢。お家に帰ったらたくさんお水を飲めば大丈夫になるよと助言。


 おわかりいただけただろうか。




 俺が作ったのは磯臭い時限爆弾です。ちゃんと喉元からせり上がってきた物に反応する蓋を、闇魔法で作ってあるからリバースは不可。わかめは戻ると大体十倍に膨れ上がるらしいから、人体の不思議を加味しても破裂するでしょう。




 ......あんこをオモチャにするとか言うヤツに慈悲は無し。さぁ慰謝料の為にヤツを追いかけよう。


「ごめんね、もう少し時間が掛かる......」


『大丈夫。さっきのあたーってのかっこよかったよ!』


「あ、ありがとう......じゃあ行こうか」


「わんっ」


 あんこお嬢様は世紀末な感じな物とスプラッタがお好きなのかな? いや、まぁ、かっこよかったと言ってもらたのは嬉しいんだけどね。


 あんな子を育ててしまった親にはしっかりとケジメをつけさせなきゃ。俺からあんこを奪おうとする事がどれほど愚かな事かを来世でも思い出せるよう、しっかり魂に刻み込まなせないとね。

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