第231話 デートの旅~喫茶店デート~
良い買い物が出来て御満悦なあんこを抱っこして御満悦な俺は、再びあんこナビの誘導の下歩き出す。
「わうわう~♪」
ぺちぺちと腕を叩いて俺を操縦しながらお歌を歌っている。何この可愛すぎる生き物は......あ、ただのクソみたいな世界に降臨してきてくれた天使だったわ。尊い......
「わふーん♪」
あんこのお歌がフィニッシュした。
それとほぼ同時に次の目的地へと到着した。
まさかタイミングを合わせたと言うのだろうか......何この子......賢すぎりゅ!
「......ウチの子は天才。さて、あんこお嬢様の行きたいお店二軒目だね」
看板には紅茶専門店と書かれていた。
......こ、紅茶!?
「あんこちゃん、まさか、あんこちゃんって紅茶が好きだったの......かな? かな?」
『あのね、いい匂いがするから気になったのー♪』
「そうだったんだね......俺がコーヒー党なせいで、あんこちゃんが紅茶を好きな可能性を見い出せていなかった可能性が......辛い......死んで詫びるべきだろうか......」
「うぅぅ......」
唸り声を上げるあんこから肉球ビンタを頂戴してしまった。そんな事気にしないでいいから早く入るよ......らしい。
皆の可能性を狭めていたかもしれないのに......何て寛大な御心をお持ちなのだろうか。やはりこの子は天使なんだろう。
「ごめん、少し取り乱した。じゃあ入ろうか。気になったのは全て買うし、取り寄せもしてあげるからね」
「わふっ」
和解したので入店。結構格式高そうなお店なのに、店先ではしゃいでしまって申し訳ない。
取り乱した時の独り言でも言ったが、俺はコーヒー党だ。紅茶は飲むとしても午後のミルクティーしか飲まない。
アレは紅茶じゃなくて紅茶フレーバーの甘い飲み物だって? 知ってる。
コーヒーはブラックで飲めるクセに、なんで紅茶はストレートが飲めないんだと何度馬鹿にされた事やら。
本当に美味しい紅茶を飲めば世界が変わると言われていたけど、それをするくらいならお高いコーヒーを飲めばいいと自分の中で結論が出ていたから、結局そのまま美味しい紅茶に出会う事はなかった。
紅茶のシフォンケーキや紅茶のケーキ、紅茶風味のアイスやチョコなどは好きだった。
それでもやっぱり紅茶が苦手なのは、一番飲む機会の多いティーパックのあの味が合わなかった故の食わず嫌い......いや、飲まず嫌いだったんだね。
うん、長々と言い訳をしてしまって申し訳ございません。
俺氏、異世界にまで来てようやく紅茶の美味しさに気付く。
俺にソレを気付かせてくれるとは......やはりあんこは俺を導く天使だったんだ。
ちなみにあんこは今、店員さんが出してくれた紅茶を使ったクッキーに夢中になっている。
店内は紅茶を売るだけではなく、イートインスペースも備わっていた。
店内に入ると最初に襲ってきたのは暴力的なまでの紅茶の香り......この時点で俺は少し後悔しだした。
店に入った俺が圧倒されている隙に、マイエンジェルあんこの可愛さは瞬く間に店員を魅力し、あれよあれよと俺らはイートインスペースの席に座らされてもてなされた。
強引すぎないか? とは思ったけど、出てくる物は苦手意識を持つ俺でも美味いと感じる物だった。
あっちで飲んだ紅茶は、紅茶っぽい雰囲気の草から抽出した紅茶っぽい雰囲気の液体でしかなかったんだな......と。いや、別に安物を貶している訳ではない。お高くて良い物は苦手な人でもイケるんだなって思っただけです。
嗜好品とは生涯を通じて追い求めていく物だったんだね。
お高いティーセット、茶葉、淹れ方、お茶請け、雰囲気......追い求めたらキリがない。
嗜好品があっちよりも少ない分、紅茶特化で進化していったんだね。砂糖や甘味にまつわる物がくっそ高いのによくやったものだ。
ほんのりと甘いクッキーと香り高い紅茶に、落ち着いた店内。ちょーっとだけ高貴なマダムやレディが多くて落ち着かないけど、店内の雰囲気はグッド。
そんなお店なのにどうやら従魔も歓迎ってスタイルなのか、特注と思われるカップに注がれて紅茶が出された時は感心したよ。
なによりも、紅茶をぺろぺろするあんこが可愛い。本当にありがとう。
余計な面倒を起こさない、他には絶対に渡さない、商品開発を頑張ると約束してくれるのならば、このお店に砂糖を大量に安く提供する事も吝かではないと思えてきている。
「ふふふ......良い店に連れてきてくれてありがとね。紅茶美味しい? クッキーもっと食べる?」
「わふっ」
「可愛い......はい、あーん」
「くぅーん」
バカップルみたいな事をしてるけどこれはね、仕方ないんだよ。わんこが嫌いな人じゃなければ誰だってこうなる。
砂糖を吐きそうな光景を目にしても誰も咎めない処か、いいぞもっとやれって顔で見てくる。俺の傍で控える従業員を筆頭に、お客さんや他の従業員も。
ふふふ、あ、そうだ。折角こんなオサレスポットに来たのなら、お嬢様もオサレしないとダメだよね。失念していたよ。
「あんこちゃん、お楽しみ中にごめんね。ちょっとこっちに来てくれるかな?」
「くぅん?」
どったの? って感じのあんこが俺の膝に乗っかってくる。
あまり時間を取らせるワケにはいかないので急いでお嬢様のお色直しを実行。
お嬢様お気に入りのリボンを付けてあげると、それだけで天使度が極大アップ。周囲のギャラリーも一様にデレッと表情を見せている。エンジェルフォルムは見せない。アレは俺、俺の家族、プロジェクトチームのみにしか見せる気は無い。
商会のメンツのスキルが上がればそちらに頼むし、アラクネに反省の色が見えたらまたそちらに頼むかもしれない。まぁ今後次第ということで。
それにしても、あんこは罪な女の子だなぁ。行く先々でファンを大量生産しちゃってもう。可愛いは正義。
「はい、おっけー。可愛さの中にエレガントさが加わってとっても素敵だよ」
「くぅーん」
この後すっごくぺろぺろされた。
◇◇◇
カフェに併設されてるショップって卑怯だと思うの。それに、あんこ姫をあんなに喜ばせた商品を買わないなんて選択肢ある訳ないじゃないか!
これからというか、お家に帰ってからもお嬢様に満足してもらえる紅茶を淹れてあげたいんだもの。そりゃ買うさ、一番良い物を。
「ティーセットやその他諸々お買い上げして現金が心許なくなってしまった......くそぅ、あの商売上手め」
以前貴族とかからかっぱらった金とかは商会にほとんど投資してしまった。残りの金はお嬢様や家族への貢ぎ物に使ってしまった。
「うん、しゃーない......しゃーないな。あんこちゃんごめんね、ちょっと現金が減ってきちゃったから良さそうな貴金属店や宝石店を探してもらってもいいかな?」
「わふっ」
「情けない野郎でごめんね。お願いします」
「くぅーん」
肉球でほっぺをポムポムして慰めてくれた。優しい。好き。愛してる。
「元気出た。じゃ行こっか」
「待ちなさいっ!」
......あぁん!? 誰だよ、大通りで騒いでんじゃねぇよ。うるせぇから。
「金塊とかレアな鉱石とかだと面倒な事になりそうだしやっぱ適当に宝石かな? いや、宝石も面倒かも......うーん......」
「無視してんじゃないわよっ! 止まりなさいっ!」
「あんこはどっちがいいと思う? どっちの方が面倒臭くならなそうかな」
『宝石かなー?』
「そっかー。なら良さそうなお店を早く見つけないとね。頼んだよ」
「わふっ!」
リード付きのお散歩をしてから、あんこは喋る事が少なくなった気がする。わんこになりきりたいお年頃なのかなー? そんなあんこちゃんも可愛い!!
どっちのお嬢様でも私めは貴女を愛しております。
「無視してんじゃないわよっ! 貴方達っ、早くアイツを取り押さえなさいっ!」
......うるせぇのはどうやら俺に話し掛けていたらしい。肩を掴まないでほしい。生意気ドリルロリとイカついおっさんは誰や。
本当にドリル令嬢っているんだね、おじさんびっくりだよ。
「いやぁぁぁ! か弱い一般人を囲って脅すとか野蛮すぎてこわーい」
「お嬢の命令だ、悪く思うなよ」
......チッ、あんこの表情が曇ってきたじゃねぇか。つか誰か助けようとしろよ。生意気なロリの相手とかめんどくせぇんだよ。
「邪魔(きゃー、誰か助けてー! 怖いおじさんに襲われるー)」
肩を掴んできた手を振り払う。振り払った手から、ちょっとだけ胡麻を擂る時のような音がしたような気がするけど、きっと気のせいだろう。
「......きゃーこわーい、だれかたすけてー」
イラッとしすぎて対応間違えたかもしれない。くそぅ、どこまでも俺の邪魔をしやがって。
てか本当に何だよコレ。この生意気ロリは誰やねん。
......あ、まさかコレって、このドリルロリから慰謝料をせしめろって言う天使のお告げかな?
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ワクチン接種後がそこまでキツくなかったんでできました。でもジワジワダルくなってきてるんで、多分この後死んでると思います。
カクヨムってグロ描写やエロ系の描写はどれくらいでアウトになるんでしょうね。気になります。
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