第219話 夏の終わり
「うーん、そろそろ夏が終わる......」
そろそろ朝晩の空気にひんやりとした物を感じて夏がそろそろ終わる雰囲気......それに対して夏っぽい事があまり出来ていない事に物足りなさを感じる今日この頃。
これは誠に遺憾である!! そう思った俺は緊急の家族会議を開く事を決心した。
「はーいちゅーもぉく!! そろそろこのクッソ暑い時期が過ぎて秋が来ます!! この夏はバカンスに行ったりはしたけど、それ以外にあまり夏っぽい事が出来ていませんでした。なので今から『第一回! チキチキ! 夏が終わる前に夏っぽい事でやり残した事を考えよう選手権!』を開催しようと思います!! はい、拍手ぅぅぅ!!」
............うん、ありがとうヘカトンくん。そうだよね、拍手出来るような体をしてるのは君しかいないよね。助かる。
ワラビは蹄で地面をガツガツしてるけど、怒ってるみたいに見えるから止めようか。
「はい、ありがとう。急に拍手とか言われても無理だよね、ごめんなさい。
まぁ......なんていうの? 今年の夏は夏っぽい事があんまり出来ていないように思えたから、なんか暑いうちにしてみたいことを募集して、それを叶えてあげようかなーって思っている次第でございます。ということで、何か意見がある子はいるかなー?」
去年は夏の思い出と言えばダンジョンでストレス溜め込んだり、宿でグダグダしたり、ギルド絡みでちょっとしたゴタゴタがあったりで良い思い出を作ってあげられなかったからね。今年は家族が増えて比較的穏やかに過ごせていたから楽しかったなーって記憶を残してあげたい。
「おっ、はいピノちゃん! どうぞ!」
しっぽをピーンとさせたピノちゃんが可愛い。何があるのかなー? おじちゃん何でも聞いてあげるよ!!
『夏と言えばコレっていうお野菜とか何があるの?』
おっとぉ......この子、アレかね。アレだね。
身も心も農民になってしまったということでファイナルなアンサーですかね。いや、別にいいんですよ。楽しみ方は人それぞれだし。
でもなぁ......そっかぁ......
「夏と言えばコレっていうのはあるよ。スイカっていうヤツで、カバがそれを凍らせたのが大好物なやーつ。あとはアレかな? トウモロコシとかエダマメとか......」
『スイカ!! それどういうヤツ?』
......ピノちゃんがどんどん独り立ちしていく。その事について親代わりとして嬉しい気持ちがある反面、早すぎる自立に親代わりとして寂しさを感じる......
「スイカ......前に見せた事なかったっけ? でもこの子なら一度見てれば忘れなさそうだし......まぁ俺が見せてなかっただけだろうね。はい、これ。野菜カテゴリか果物カテゴリかどっちか忘れたけど、中の赤い所が可食部位だから冷やして食べるのがオススメ、そんで中の黒い粒が種だからね!」
あんこに頼んで冷やしてもらい、糸で切り分けて皆でスイカタイム。量的にアレだから俺は遠慮してエダマメとトウモロコシの種を準備。
美味しそうに食べてる姿を見て、皆が気に入ったと確信。俺は食えないけど皆用に果物を育ててもらってもいいかな......ははは。
スイカを食べ終わって種を集めたピノちゃんがソワソワしだしたので、他の種も渡して植えてきていいよと伝える。
見た事のないスピードでフェードアウトしていくピノちゃんを見て、誰かが子どもの成長は早いって言ってたのを思い出した。なんか切なくなってきたので会議を再開。
「はい、ピノちゃんがいなくなっちゃったけど、まだ話は終わっていないので会議を続けます。何か意見ある子はいねがぁー?」
「キュゥゥキュゥゥ」
「メェェェメェェェ」
前足? をぺちこんぺちこんさせながら鳴くウイちゃんと、その場をコロコロしながら鳴くしるこ。キュンってした。
けど、何を言ってるのか全然わからん。
チラッとワラビに視線を送ると意図を察したワラビが通訳をしてくれた。ウチの子は皆優秀だなぁ。
『わたあめがきになるっていってる』
実物は見せた事なかった気がする。ふむ......
......ふむ、なるほどー。
「わたあめが気になるのね。それならいっそジャパニーズスタイルでお祭りっぽいのを開催しようか! たこ焼き、イカ焼き、わたあめ、かき氷、お好み焼き、焼きトウモロコシら辺が鉄板かな? 〆は皆で花火とか」
かき氷の所であんこがピクンっと反応したのが可愛かった。そういえば最近全然やってなかったね......ごめんよ。
それと、多分用意だけでギリギリになるからこれ以上は無理そう。くそぅ......親力が足りない......
「発言してない子もいるけど、今回はこれでいいかな? 季節ごとに色々やると思うし、準備している途中でもなんか思った事があれば言ってくれていいからね」
急に招集して唐突に解散......すごく振り回してしまったので、そのお詫びにと皆の好きな物をあげて許しを乞うとすぐにお許しが出た。皆とても優しいなぁ......
パパ頑張って縁日の雰囲気を完全再現出来るようにするから待ってて!!
とりあえず暇潰し用にプールを用意しておくから、ここで涼をとっててくださいませ。
◇◇◇
頑張った。俺、ちょー頑張ったよ。
完成品の屋台を召喚出来て本当によかった。後は調理器具を用意して、具材の下拵えをするだけでいいんだから。
わたあめは初めてだから失敗しまくったけど、数をこなす内になんとか形になった。失敗作は後日
天使たちが食す分は完成品のみでいい。訳アリ商品や試食は結構好きだし。
それと、久々に食べ物以外を召喚したわけなんだけど、家庭用の手持ち花火とか設置型の花火までは出来ると予想出来ていた。けどさ、三尺玉とか打ち上げ用の設備までイけるとは思わなかったよ......
このスキル、どこまでがセーフでどこまでがアウトなのかさっぱりわからん......
アツアツ出来たて料理が出てきてほしい。ほんとマジで。
まぁ色々あったけど、そろそろ夕暮れ。
御神体を入れた神輿を櫓の上に置いて、その周囲には和太鼓や鳥居や提灯で装飾を施し、ちょっとお高級な茶屋みたいな感じにした休憩所も設置。
和太鼓は糸でバチを操ってドンドコやって、休憩所は花火を見る時に使う予定となっている。さぁジャパニーズスタイルのお祭りの雰囲気を味わうがよい!!
◇◇◇
「はい、それではハイパーなんちゃって再現なんだけど、俺の生まれ故郷のお祭り......その雰囲気だけでも味わってくれたらいいなと思って用意しました。やれるのが俺だけだから完全再現とはいかないのは許してください」
簡単に説明をしてサクッと祭りを始めた。
別にちゃんとした神事では無いし、日本でも祭りに参加している人達なんて雰囲気を味わえればいいってヤツらが過半数を占めているんだしね。※個人の感想です
おっと、年少組が動き出した。こっちも準備しないとな。
「キュッキュウ」
「メェェェ」
「キャンッ」
長女のあんこちゃんに連れられて屋台にやってきたウイちゃんとしるこ。
最初に食べるのはお好み焼きがいいらしい。生魚以外も食べるようになって偉いねー。
ピノちゃんとワラビは焼きトウモロコシ、ヘカトンくんはイカ焼き、ツキミちゃんとダイフクはたこ焼きを選んだ。誰も初っ端から甘いものは選ばなかった。
俺は真ん中に陣取って糸を使って料理を仕上げていく。渡す時は超高速反復横跳び。ちゃんと手渡ししたいから頑張ってる。
途中でたこ焼きをつまみ食いして口の中が大惨事になりかけたりもした。
そして天使たちに屋台メシは概ね好評で一安心。口の周りや体をソースなので汚しながらガッついている姿を見るのは嬉しかった。
ある程度腹が膨れてからは太鼓のリズムに合わせてウイちゃんとしるこが鳴いたり、ヘカトンくんとワラビがふしぎなおどりを踊ったり、鳥居の両端にツキミちゃんとダイフクが止まったりと総じて可愛かった。
祭りの〆は花火大会。
デザートをお供にのんびりと眺める。
初めての花火の爆発音に驚く子や、わたあめに顔を突っ込んでべっちょべちょになった子、バケツ一杯のかき氷に頭を突っ込むウイちゃんなどにより、俺のアルバムが潤って幸せだったのは言うまでもないだろう。うん。
初めてのお祭りではしゃいだせいか、手持ち花火とかをやる前に皆が寝ちゃってお開きになったのは残念だけど、キラキラした瞳で楽しんでいる姿を見れたからやってよかったと思っている。
「皆寝ちゃったねー。あんこはまだ眠くないの?」
『うん! またやってほしい!』
ㅤそれで現在、唯一の生き残りのあんことラブラブなお時間。膝の上に乗ったお嬢様から、かき氷をアーンするという大役を任されている。
「そっか......それならよかったよ。また来年もやるからね! それと、家族が増えてあんこが好きな事とかしてあげられる時間が減っちゃったのはゴメンね。かき氷とかすげー久しぶりになっちゃったし、二人きりで居られる時間も減ったし......」
『それはいいの。皆大好きだし、ご主人が私を大事にしてくれてるのわかってるから!!』
「ありがとね。あ、そうだ! 今度二人きりでちょっと遠出とかしよっか。いつも皆を纏めてくれているあんこへの感謝もあるけど、俺があんことお出かけしたいからね」
『いいの!? やったー!!』
「うん! どっか行きたいとこあったら教えてね」
『考えとく!! やった!!』
色々我慢させてたっぽいね......ごめんね、ダメなパパンで。
この日は糸で片付けをしながら、あんこが眠るまで膝の上に乗せて撫でまくった。いつもありがとう。大好きだよ。
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クソほど忙しくて全然時間が取れませんでした。楽しみにしてくれていた皆様、すみません。
ㅤ忙しいと心が荒みます......ifストーリーの魔王ルートを辿ったシアンのお話ばかり頭に浮かんでくる次第でございました......えぇ、癒しが足りない日常を過ごしてまいりました。待っている方がいるかはわかりませんが、この物語が落ち着いたらそっちも書いてみようかなって思っていたりします。
それはさておき、土曜日から再開予定でしたが、地震の影響で色々と遅延して日曜になりました。地震の被害とかは大丈夫でしたでしょうか?
ㅤ私はトイレに篭っている最中に揺れて、もう色々と覚悟しました。風呂やトイレの最中の災害って本当に怖いですね。
えー、時々お休みする日もあると思いますが、これからもお付き合いよろしくお願いします。
それと、気になったのを片っ端から録画して二クール分溜まっているテレビ番組やアニメの消化もしたいし、読みたい漫画や本があるんですが、溜まりすぎてどうしようもなくなってます......
どれから見ればいいのかわからないので、これ面白いからこれから見たらいいよってのがあれば教えてくれたら嬉しいです。
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