第214話 魔王(嘘)と魔王(笑)の争い
いくら敵では無いと言えどもコックローチの群れを見てしまうと精神がゴリゴリ削られていくのは仕方のないことだと思うの。
だけどそれだけではどうしようもないもないので、早めに処理する事に全力を注ごうと思う。心臓の弱い人なら多分停止するぞコレ......気持ち悪い......
「ゴキキングさんは自分の眷属が消滅していく様子を低みの見物していてくださいませ。シアン一家のお・も・て・な・し......心ゆくまでお楽しみあれ」
宙にふわふわ浮いているゴキ王にスペ魔法を喰らわせて叩き落とし、糸で強制的に姿勢を整える。この時に極力優しく扱ったつもりだったけど、脚が取れたりしたのは俺の所為じゃないよ。テメェが脆すぎるだけだから喚くなゴキブリ野郎。
高みの見物気分からジャパニーズ土下座スタイルでの観戦を強要。落下した衝撃で既に全身がボロボロだけど慈悲は無い。正座しているだけで下半身が潰れていく様を楽しんでください。
眷属召喚で喚び出された眷属ゴキブリ共。主人の命令を嬉々として遂行しようとしていたんだけど、駆け出そうとした途端主人が撃墜されて困惑していた。命令に従うか、命令を無視して助けようとしているのか......
「まぁ戦場で動きを止めるのは完全に悪手なんだけどね。指揮する個体がいなくなるだけで総崩れとか......やっぱお前ら虫だわ。ありがとう、俺の土地の被害が少なくなったよ」
闇魔法でバキュームル〇バを大量に作り出してボス以外のゴキブリの掃除を命令。半分はこの山の中にいる全てのゴキブリを掃除してくるまで帰ってくるなと指示。行ってらっしゃい!
仲間が吸い込まれていく事に恐怖したゴキブリ共、いち早く正気に戻ったゴキブリから空を飛んで回避行動に移る。
そりゃあ地面を這い回る掃除機から逃れる為にはお空を飛ぶしかないよね......でもさ、飛んでどうするの? 空を飛んでるゴキ王が開幕直後に撃墜されていたのは忘れてしまったんだね......
では飛んだ個体は俺が片そう......そう思って骨喰さんを取り出し、斬撃を飛ばそうと準備をする。だが、そんな俺を嘲笑うかのようにル〇バがゴキブリ共に襲い掛かる。
「......えぇぇぇぇ」
飛んだゴキブリ共を撃ち落としだしてびっくりしたよ。マジで。
意志を持って動くやつを作っておいて今更言うなだけど、ちょっとハイスペックすぎやしませんかね......
「まぁいいや、楽だし。骨喰さんはごめんね......最後はゴキ王を斬らせてあげるから今は我慢してほしい」
いっぱい敵を斬らせてもらえると思っていた骨喰さんがカタカタしながら不満を訴えてきたのでそれを宥め、ゴキブリの蹂躙を見守る。この場にいるゴキブリ共は瞬く間に吸い込まれて消え去り、跡地には土下座スタイルのゴキ王だけが残った。
「あっ......ほんのちょっと前は俺を見下ろしながら自信満々に『殺して奪い取るまでよ!!』って言ってたゴキ王さんちーす。どう? 自分の眷属が瞬殺されていくのを地面に這いつくばりながら見ていた気分は」
「ぁぁ......ぐぅぅぅ......」
自重と重力、紙防御での落下ダメージでもう虫の息のゴキ王。呻くことしか出来ない土下座野郎でいい気味だ。
......そういえばスペ魔法って掛けた後に解除した事無かったな。よし、解除してみよう。ズタズタになった身体は元に戻らないだろうけど、これ以上潰れそうにはならないだろ......多分、きっと。
......えーっと、解除解除......お、出来そう。よかったぁ。
「とりあえず解除してみたけど今の気分はどうかな? まだゴキブリ共を呼べるなら呼んでいいよ。見た目は気持ち悪いけど、ガンガン数を減らしていくのはスカッとしたから限界ギリギリまで呼んでどうぞ」
「羽虫共が調子に乗るなよ......魔王に手を出したんだ......これから先、貴様らは魔王の軍勢に怯えながら過ごすことになるのだ!!」
「......いや、お前程度のヤツらがさっきのゴキブリの群れの数百倍来てもこっちは全然全くこれっぽっちも驚異に思わないからね。とりあえずお前みたいな魔王(笑)は後何体いるの? それを教えてくれたら逃がしてあげてもいいよ。ただし!! これ以上こちらに関わらないように、この山にお前が再度侵入してきたら爆発するっていう魔道具を常時身に付けてもらうけど」
「............ぐっ」
毎度お馴染みあんピノ爆弾、狂国を爆散させたのと同じ威力の物を複数個ヤツの身体に埋め込む予定。さっきは頭に血が上っててアレだったけど、コイツに似たヤツらが他にも色々居そうだし......ほら、ゴキブリって巣ごと死滅させないとダメってなんかのCMで見た気がするからね。こちらから出向くのは面倒だから、手間が省けていいと思わない?
「別に此処で始末してもいいんだけど、優しい優しい俺ちゃんはみっともなくて愚かな魔王を今回に限って見逃してあげようとしてるんだよ。地面に這いつくばっても偉そうにしてて何か可哀想に思えてきちゃったからさ......ほら、早くどっちにするか決めて決めて。お前らの情報を吐いて見逃してもらうか、惨めに殺されて消滅するか」
◇◇◇
普段から権力や暴力を傘に着て威張っているヤツって大体、それ以上の力を目にした時は脆いよね。
いやー......根性が全く無かったよゴキブリキング。まだまだおもてなししたりなかったんだけど、SM嬢を出したら十分ももたなかった。折角三時間コースを予約してあげたのに......暇と時間を持て余した女王様が手持ち無沙汰になって鞭をビタンビタンしててちょっとこわい。......嘘、だいぶ怖い。
あのゴキ虫がゲロった事はまぁ、なんとなくこれまでの情報から想像出来ていた通りの事だった。HAHAHA......
傲慢のカエル
色欲のウサギ
暴食のネズミ
強欲のゴキブリ
怠惰のハシビロコウ
憤怒のカメムシ
嫉妬のダークエルフ
七大罪モチーフの魔王七体の存在が明らかになりました。
どれもこれもなんか、イメージと違う。もっと禍々しい存在ちゃうんか!? なんかすっごいファンシーなんだけど!!
動物や虫が進化して魔人になり、いつの間にか七大罪系のスキルを得たんだって。この中で大罪イメージにぴったりなのは、ハシビロコウとウサギくらいだよ......なんだコレ。ほんとなんだコレ。
序列は下に行く程高く、現在みすぼらしく地に伏せっているゴキブリはなんと序列四位らしい。ウケる。
その上になんか七大罪動物園の園長がいるらしいけど、序列三位までしか会えないらしくてコイツ使えねぇって思ったのは内緒だ。
七大罪同士連絡取れるだろうから、四の五の言わずにヤツらを呼び出せって女王様を使って脅したけど、そんな手段は無く、定例会みたいので四ヶ月に一度集まって意見交換や方針を決めるらしい。これならハイエルフの方が使えるよね......
ヤツらの能力について詳しく聞こうとしたけど、大体の戦闘は物量によるゴリ押しらしくてこちらの情報についても役に立たなかった。このゴキブリ本当に使えねぇ......
怠惰のハシビロコウと戦うと何もする気が起きなくなるらしいって事と、カメムシを怒らせるとカメムシの周囲数キロが酷いことになるという情報だけ。
気を使って怒らせないようにしても、カメムシは些細な事で噴火するからとっても困るって愚痴りやがった。俺に言うなアホ。
聞きたい事は聞けたので、動けないヤツの身体にあんピノ爆弾を埋め込み、上級ポーションをぶっ掛けて傷を治してから解放。
いやー、めでたしめでたし。後は帰宅したアホを爆殺すればハッピーエンドだ。
さっ、早く帰って楽しかった時間の続きだ。全く......時間の無駄だったぜ......
◇◆◇
「はぁっはぁっ......なんなんだアイツは......クソっ!! 折角魔力の豊富な土地を見つけたのに......クソっ!! こうなったら分体を使ってあそこを再度攻めつつ、埋め込まれた魔道具をどうにかしないと......絶対赦さねぇからなあの羽虫めが!!」
魔王としてのプライドはズタズタにされ、身体に爆破物を仕込まれるという屈辱を味あわされた。
一度引いて力を溜めつつ、ヤツの前で大事な物や土地を無残な姿にしてやるという決意を固めながら住居に帰還した。
「クソっ!! 怒りが治まらねぇ......オイ、酒だ!! 酒を持ってk......」
――この日、世界を揺るがす光の柱が再び立ち上った。
教国から湧き上がった光の柱よりも、太く、大きな光の柱。
人間の領域からもハッキリと伺えたその光の柱は『神の怒り、再び』と恐れられ、再度山を調査しようと計画していた四国は急遽計画を中止し、魔国では強欲の領地が消滅し、その周辺も多大な被害を受けた事に恐れ慄いた。
そして、当事者のボマーはといえば......
「......おー、これなら二つでよかったな......オーバーキルにも程がある」
と、だけ言葉を残した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます