第212話 真相やいかに

 イノシシ一家をお迎えしてから一週間が経ち、その短い時間でイノシシ一家は見事にウチに馴染んだ。

 来た当初はおっかなびっくり過ごしていたイノシシ一家だけど、二日目からはウリ坊は普通になっていて、五日目には父イノシシと母イノシシも慣れていた。今では農作業中のピノちゃんから指示を受けて農作業のお手伝いも出来ている。子どもの順応性ってすっごいよね。



 これだけなら五日で馴染んだ......でいいだろうけど、一週間にしたのは理由がある。

 そう、残りの二日間でも色々あったのよ。


 六日目で、「ん? あれ? やけに毛皮が綺麗になってね?」となり、七日目で、「まじかよ......これ、確実に身体に変化が起きてるだろ」ってなって、ここに来てからの過ごし方を根掘り葉掘り聞いた。


 その結果、ここ最近俺らに起きた数々の変化の原因が判明した。そう思っていいだろう。寧ろこれ以外であれば何が原因なんだよってくらいだ。


 先ずはだいたいわかっていた原因その一。俺のマッサージだね。HAHAHA!

 もうなんやかんや色々整えられたらしいね。リンパ的なアレとか、骨盤的なアレとか、筋肉的なアレとかが。

 気持ち良くなりながら体内のアレコレもスッキリする一石二鳥なマッサージ。もうコレはお金取れるレベルだろう......セルフマッサージでも効果があるのかはわからないから今日辺り寝る前に試してみようと思っている。



 そして、全然わからなかった原因その二。


 ......それはッ!! ......なんとッ!!


 ピノちゃんの野菜でしたー。


 イノシシ一家が此処に住み着くようになってから食べたモノは、バイト代のどんぐりとピノ農園から採れた野菜や抜いた雑草。


 俺がお取り寄せしてした商品は今まで物凄い量になり、ウチの子たち+俺はほぼ毎日、それ等を三食食べている。よって、俺のお取り寄せ商品では変化は何も起こらない......はずだ。もし起こるとしてもこんな短期間で変化するのなら、既にワラビで起こっているからコレはほぼ無いと言える。


 それで大本命のピノちゃん野菜。

 俺はお肌にツヤとハリが出ていて、なんか体調もいい気がする。これは俺のスキルの影響で体調はほぼ万全になっているんだけど、それをも上回る何かがピノちゃん野菜から齎されているんだろう。

 ウチの子たちも、まぁ色々あった。その変化は最初はマッサージの所為だと思っていたけど、野生動物での実験......野生動物への施術では毛並みは改善されたが、ここまで劇的に変わらなかった。


 だがウチに来てほぼ毎日ピノちゃん農園産の作物を食べていたイノシシ一家、彼らが急激に変化したのはもうピノちゃん野菜を食べたからでFA。こっちに来てから俺はイノシシ一家にマッサージしていないからね。もう確定だね。



 ......あまり認めたくないけど、ピノちゃん野菜+俺のマッサージの可能性はあるけど、さすがにこれは無いだろう。......無いよね?

 てな理由で、ちょっと今からピノちゃん農園に保健所の立入検査を行おうと思います。


 それでは、これより謎の農園の謎を解いて参ります。




 ◇◇◇




「ピノちゃん、今日も畑仕事に精が出るねー。楽しんでるかなー? ちょっと気になる事があるからお邪魔させてもらうね。変な事はしないから安心していいよー」


『............』


「ちょっと待とうか。何かなその目は。え? 俺ってそんなに信用無いの!? 何かやらかすと思ってんの?」


『............』


「泣くぞ!? いいのかい? 恥も外聞もなく、みっともなく、プライドも全て捨てて泣くよ。うふふふふふ」


『............チッ』


「............」


 心折れました。大人しく気になる箇所を鑑定して帰ります。もうやだ辛い。会話すらしてくれなくて、ラストは舌打ちとか......


「お邪魔しました......」


『............』


 チッとしか言われなかった......うわぁぁぁん!!



 逃げ出した俺は最初に果樹エリアに向かい、落ちている葉や枝、土、生えている雑草を採取。

 続いて、お花畑エリアで花びら、土、雑草を採取。

 続けてピノちゃんがお世話を終えた畑から、土、雑草、葉っぱを採取し、ピノちゃんから作物の一つを貰った。


 作物を貰う許可を得ようとした時も、一言も話してくれなかったのはなんでだろう。アレコレ注文されてのびのびと土弄りさせてくれなくなるとでも思ったのかな......悲しい......



 うん、欲しいものは手に入れた。後はこれらを鑑定して真相を暴くだけだ。か、悲しくなんてないんだからね!!




 調査の為とはいえ、心にそう浅くない傷を負った俺は、癒しを求めて天使たちを探し歩き、草の上で眠るしるこを見つけて確保した。このモコモコが気持ち良い......


 さて、しるこはお膝の上で寝かせた。アイテム鑑定のアレを付けてブツを見ていきましょう。


 ▼果樹園の土

 魔力を多く含んだ栄養たっぷりの土

 この土で育つ植物は成長が早くなる▼


 ▼魔梅の枝

 魔力を取り込んだ梅の木の枝

 この枝を使った杖で風魔法を使用すると、風に爽やかさが追加される▼


 ▼魔梅の落ち葉

 魔力を取り込んだ梅の木から落ちた葉

 乾燥して磨り潰せば酔い止めとなる▼


 ▼果樹園の雑草

 多少だが魔力で変質した雑草

 特殊な効果は無いが、生命力が普通の雑草よりも強い▼


 ▼ヒマワリの花びら

 向日葵が魔力を蓄え変質した物の花弁▼


 ▼花畑の土

 魔力を多く含んだ栄養たっぷりの土

 この土で育つ植物は成長が早くなる▼


 ▼花畑の雑草

 多少だが魔力で変質した雑草

 害虫が嫌がる臭いを微量だが発する▼


 ▼菜園の土

 魔力を多く含んだ栄養たっぷりの土

 この土で育つ植物は成長が早くなり、味も良くなる▼


 ▼菜園の雑草

 多少だが魔力で変質した雑草

 放置しておけば周囲の栄養を根こそぎ奪い、無限に増えていく▼


 ▼ミニトマトの葉

 魔力を多く取り込み、ミニトマトとは言えなくなった物の葉▼


 ▼ミニトマト

 魔力を多く取り込んで成長したミニトマト

 とても身体に良く、食べていれば病気とは無縁になれるとも言われている▼



 ......おけー。

 これはアレか。ピノ農園の物が魔樹みたいになっていってるって事だよね。


 ピノちゃんの使う【木魔法】が、俺の与えた植物の種や植物とケミストリーした結果、此処が魔改造されて魔樹の森みたいになってしまったという事か。ははは。


 どの野菜がどのような影響を与えるかわからないけど、マイナス効果は無さそうだし別にいいか。


 ............ん? ちょっと待てよ。

 この魔改造された農園を見られたくなくてピノちゃんは不機嫌になってたのかな? 俺があの子の楽しみを奪うなんてマネをする訳ないのにー。もっとパパンを信じて欲しいものですよ。

 まぁガチでヤバいモンを育てていたのなら行政指導が入るかもしれないけど......うん、一言だけ伝えておくか。


 すやすやと眠るしるこを抱っこしてピノちゃんの元へと向かう。


「ピノちゃんさんやーい。さっきから不機嫌だったのは俺がここを規制するからとか思ってたからかな? 大方育てた物に変な効果が付いちゃってたから気不味かったんでしょ。特に悪いモノを育ててるんじゃなければ何も言わないから堂々としてらっしゃい。いいね」


『うん......』


「よろしい。ヤバいのが出来上がっちゃった場合は相談する事。それ以外は特に何も言わないから好きにしていいよ。それだけ! 楽しみにしてるから、これからも皆の為に美味しい野菜育ててね」


 よかった......反抗期とかじゃなくて。おもちゃが取り上げられそうで拗ねてただけだった。達観してるようで可愛いとこあるじゃん。


 皆の体内がピノちゃん野菜で整えられるんだから文句は無いよ。原因さえ判明すればええんや。


 さて、今日もピノちゃんの野菜で美味しいご飯を作ってあげよう。この調子で皆がイケメンさん美人さんになってくれれば俺も嬉しいからwin-winだ。


 スッキリしたら眠くなってきた。


 しるこ抱き枕を抱いてお昼寝しよう。おやすみなさい。

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