第205話 ヒツジのイメージ

 ヒツジちゃん可愛い。ピョコンと生えている角も、ちっちゃくて可愛い蹄も、モコモコの毛も。

 手が沈み込むこの感じが特にやばい。黒い毛なのもいいね。


 この子の股間にアレは......無いな......この子は女の子なのね。という事は成長すればお乳が貰えるのか。我が子から乳を貰うとか背徳感たっぷりだけど仕方ないよね。

 あれ? そういえばヒツジって乳飲めたっけ? 飲めるのはヤギ?


 ......わからん。昔どっかで食べたヤギかヒツジかのチーズが美味しかった記憶が......


 まぁいいか。出るようになったら考えよう。嫌がる可能性もあるから無理強いはしないけど。


 とりあえずヒツジ可愛い。めぇーめぇー言ってて可愛い。

 牧場だと落ちているう〇こが気になって集中出来なかったし、衛生面が気にならないのは嬉しい。この機会に触りまくろう。



 わさわさもふもふ......うふふふふ......




 ◇◇◇




 はぁ......気持ちよかったぁぁぁ......

 クセになりそう。まぁこれはウチの子皆に言える事なんだけど。飽きる事は絶対にないけど、たまにはいつもと違う触り心地も欲しくなる。もふもふ気持ちいい。


 さて、この子の名前考えなきゃなぁ......早いとこ考えないと皆に紹介出来ないや。



 ラムと言えば......なんだろ?


 ラムレーズン......安直すぎるしレーズンってあんま可愛くない。却下。

 他にラムと言えば......酒、肉、電気出す女の子、双子の鬼っ娘メイドの片割れ。これくらいしか思い浮かばない......うん、わからん。



 さて、どうしよう。



 うーん......


 ......ぐぬぬぬぬぬ。ネーミングセンスの無さが辛い。



 ~三十分後~


 ......よし、決めた。これで行こう。

 ヒツジちゃんも嫌がらなかったからよかったよ。これがダメだったら次案が無かったし。


 ▼しるこ


 アストラルシープㅤ0歳ㅤ


 レベル1ㅤ魔力---/---


 スキル:【毛量操作】【無限増殖】【生贄羊】【実体化】【闇魔法】


 現世とは異なる位相に住む羊

 クセが少なく、タンパクな味▼


 生まれたてだから? 説明がさっきと変わらない。今後増えたりするのかな?

 それと......0歳児の説明文に味の事を書くなし。確かに子羊とか子牛とか美味しいらしいけど、なかなか猟奇的な鑑定ですねぇ。


 ......ふぅ、スキル見ていこうか。


 ▼毛量操作

 毛の量、長さを自由自在に操る▼


 とてもシンプルだけど奥深い説明をありがとうございます。ちなみにこの子からはこのスキルを貰いました。もし万が一、将来不測の事態に陥った時に絶望しなくて済みます......本当にありがとうございました!!


 ▼無限増殖

 分体を霊体、実体問わず思うままに生み出せる▼


 これもドシンプルな説明。ふむ......これは俺が死ぬ時は羊葬してくれるというのも可能なのかな......ヒツジの実体を伴った分体を無数に生み出して圧殺して欲しいです。もふもふに押し潰されて死にたい。しるこだけじゃなくてウチの子全員でお願いしよう。


 ......さて、話がズレた。分体は自由に生んで自由に消せるのか、万が一分体が死んだ場合はどうなるのか、分体にはガチの命があるのか、それらが知りたい......気軽に実験できそうにないですねぇ。そう考えると結構怖いなこのスキル。


 ▼生贄羊

 本体が死にそうになった時、瞬時に分体と入れ替わる▼


 忍法変わり身の術、但し変わり身で使用するのは丸太ではなく己の分体......多分これオートで発動するだろうなぁ......絶対に死にそうになるような時なんて来させないからね。


 ▼実体化

 実体になれる▼


 なんかこの子のスキルってわかりやすいのばっかだね。名前見れば殆ど理解できるし、なんかもうファンタジーのザコじゃないヒツジのイメージそのまんま。


 うん、とりあえず今度モッサモサのフルモッコになってもらおう。さ、皆の所に帰ろう。


「これから君の姉弟たちと会うから楽しみにしててね。じゃあ行くよー」


 スキルを見ながら撫でていたら寝ちゃったしるこに語りかける。そのまま抱っこして隔離空間から脱出した。



 ......したんだけどさぁ......これはマズいですよ。この子、俺が歩く度に羊毛が上下するのよ。ワサッワサッて......これ、とても気持ちがいい。なんだこれはっ!! 俺をダメにする羊毛という言葉がぴったりだ......あぁ、この子に顔を埋めたい......




 欲望と戦いながらも、なんとか勝利して屋敷に帰ると、ウチの子たちが俺を出迎えてくれた。嬉しいです。


 実際は......俺が知らない匂いのする生き物を連れて帰ってきたって言われたから、その警戒の為に出てきたんですけどね。



ㅤ......ハッ!! これは、毎回帰る度に知らない匂いを付けて帰れば......




 ......うん、日めくりカレンダーの如く女をとっかえひっかえする浮気性のクソ野郎みたいな思考は止めよう。なんでああいうヤツに限って早々に家庭を持つんだろうね。


「ピノちゃんとヘカトンくん以外は見た事あるかもしれないけど、この子はあのダンジョンで戦った魔法陣ヒツジくんの生まれ変わりです。名前は“しるこ”だよ。生まれたばっかりだから、皆優しくしてあげてねー」


 知らない気配を感じて目を覚ましたしるこちゃん。天使たちに向けてめぇーめぇー言ってるからきっと挨拶でもしてるんだろう。可愛いなぁ......あ、ワラビを見てビクッてした。どんまいワラビ......


 顔合わせしている皆を見ながらしるこのスペースを作成していく。正真正銘ガチの生まれたての子なので、なんとなくベビーベッドを用意。ガラガラとかも。


 赤ちゃんという要素に加え、ヒツジだから寝るのが好きかなーってイメージだけで揃えた。とても似合いそうだから問題はないよね。寝るのが好きなイメージは、羊が一匹、羊が二匹......ってアレだけなんだけど、なんで寝るのに羊数えるんだろう。



 挨拶をし終えてウトウトしているしるこをベビーベッドに移す。音速で寝付いたしるこを覗き込む皆が、年の離れた姉弟が初めて赤ちゃんを見る様子そのもの。俺? 俺は初孫を見るおじいちゃん目線です。


 この子、多分ウイちゃん同様、今後はめっちゃ甘やかされるんだろうなーって思う。皆仲良く、健やかに育ってください。




 ◇◇◇




 同じようにウトウトしだしたウイちゃんをしるこの横に寝かせ、起きた時の対応を見守り隊の皆に伝えた俺はピノちゃんを連れてピノ農園に向かった。


 ここに何しに来たかって?


 そりゃーもうアレよ。レタス栽培。あとは野菜とかも何種類か植えたいかなーって。

 何かを育てる事にハマったピノちゃんにその事を相談してみたら、即採用。善は急げという事で早速畑予定地にご案内されました。



 ピノ農園は、自然豊かな田舎に神聖さがプラスされたような場所になっていた。まぁアレだね。ちょっとだけごちゃごちゃしてるけど、全く問題はないでしょう。ピノちゃん凄いねー。頑張ったんだねー。


 まずは果樹園ゾーン。

 デデーンと聳え立つ魔樹が目を引きます......とてもご立派です。えぇ。いつか劇物をもりもり付けるんでしょう。


 その隣には枝垂れ桜が今も花をつけている。聞いた所、一年中咲きっぱなしに出来るんだって。原理は不明。

 俺が好きなモノだから色々頑張ったらこうなったんだって。理を歪める程の俺への愛情......んもう、ピノちゃん大好きっ!!


 梅と桃は変わらなかったらしい。なんでだろう。今は青々とした葉っぱが綺麗です。いつか身を付けたりするのかな?



 次に竹林ゾーン。

 えぇ、竹がヤバい事になってます。パンダが居たら狂喜乱舞しそうですよ。中から光を放つ竹とか誕生させないでね。

 いつかここで採れたタケノコを食べたいな。タケノコご飯、焼きタケノコ、天ぷらなどなど......


 意識が逸れた。次、花壇ゾーン。

 これはね、もうよくわからない。知らない花がいっぱいです。ミツバチを放ったらハチミツ採れたりしないかな。


 とても嬉しそうに俺を案内するピノちゃんが可愛すぎてやばい。褒めるとドヤるのもキュート。


 最後に畑っぽい場所に案内された。よくわからない草が生えてる以外に何も無い場所。どうやらここを野菜の畑にしようと思っているらしい。

 とりあえず取り寄せた種をピノちゃんに渡し、それの他にも色々な種を渡す。


 種を貰って興奮したピノちゃんは、糸を器用に使って畑に撒いていく。俺の事なんかもう眼中にないご様子。


 ......た、種に負けたとか思っていないんだからね!!


 どう育てるかはピノちゃんに丸投げ。お手伝いはいつでもするからね。

 今度腐葉土とか貝殻を粉にした物とかを渡してあげよう。


 この日はピノちゃんが満足するまでピノ農園に入り浸った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る