第201話 確認と報告
幸せな二度寝をしていたら、いつの間にか深い眠りになっていたようで、目覚ましが鳴り出す。
我らが末っ子ウイちゃんのプリティ目覚ましである。
出会った頃よりも電子音感が減って、可愛さが増した鳴き声+進化&レベルが上がったおかげで力強くなった前足ぺちぺちの目覚ましだ。
「キュウッキュウゥゥゥ」
ぺちこんぺちこんキュウキュウキュウキュウと何セットか繰り返された所で、今起きましたよ感を前面に押し出しながら目を覚ます。
これ以上起きるのを渋ると、焦れたウイちゃんのエコーボイスで内臓シェイクされるし、何よりも手っ取り早く起こそうとして、今後は初手からエコられる可能性が出てきてしまう。
「......んー、おはよう。ご飯が欲しいんだよね、今から用意するからもうちょっとだけ待っててね」
のそのそと起き、軽くウイちゃんを撫でる。それから下処理済みのアジをバケツに流し込む。
バケツ一杯のアジを差し出すと、待ってましたとばかりに飛び込んでいく。可愛いからいいんけど、女の子なんだからもう少し優雅さを身につけようね。可愛いからいいけど。
その後は、皆の朝ごはんも用意してから俺も食事を摂る。満腹になったウイちゃんが、バケツの縁に顎を乗せてまったりしているのを眺めながらの朝ごはんが、最近の俺の朝食時のデフォになっている。
そして俺が朝ごはんを食べ終わったら、新しいバケツに温泉を流し込んでそちらに移動させて、ウイちゃんの生臭さを除去......ここまでが俺の朝ごはんのルーティン。
さて、ウイちゃんは温泉でまったりしてる事だし......手に入れた鑑定道具を使って、入手したアイテム類の鑑定でもしていきましょうか。
まずはあの羊の毛から。
▼豊穣の黒羊の幽幻毛
この世とは別の位相に住まう羊の毛
呪いの儀式の触媒としてとても優秀▼
またあの変な儀式に使わないといけないのかなー......
あー、これ、もしかしてアレでアレすれば、アレできるかもしれないな......フフフフフ......楽しみになってきたぞぉ。
▼不可視の東屋
持ち運び可能な東屋
魔力を込めた者、許可された者以外には認識できず、侵入もできない
発動には魔力を注入、解除するには魔力を抜く必要がある
発動させれば大きくなり、解除すれば元の大きさに戻る
怠惰の呪いがかかっており、呪いで無気力になった対象を吸収する▼
怠惰の呪い......完全に七大罪だよなぁ......そりゃあ強力な訳ですわ。俺にも結構効いたから......七大罪持ちはいるんだろうね。ソレと出会ったらガチる必要があるかも......気ィつけよ。
▼セイジセージ
別名賢者の草
知識が詰まっている
香辛料にもなる
生のまま食べれば、知識レベルを一段階あげる事が出来る
人工栽培不可、入手経路不明の幻の植物▼
......ほほぅ。知識レベルですか。駄洒落みたいな名前のクセに優秀やんけ。
もしかして、これは食べるだけで脳をバージョンアップさせられるチート植物なんでしょうか。俺が使うか、うちの子の誰かに食べさせるか......迷うな。
▼絶縁包帯
絶縁体になっている包帯
嫌いな人の指に巻けば、その人との縁を切る事にも使える
自身の指に巻きつけると、これまで紡いできた全ての縁が切れるので注意が必要▼
......ふむ、これは俺の最終兵器として取っておこうか。皆が俺の元から巣立った時か、全てが面倒になった時に使うべき物だろう。
他にも気になる物を日ょいひょい鑑定していったけど、隠れた効果でそこまで気になる物が付いてる物は無かった。
草野ダンジョンの物だけは厄介な追加効果があるのはわかった。ダンジョンの適性的にそうなってんのか?
クソジジイは精神的に追い込むタイプの嫌がらせダンジョン、草野は......なんだろ? 人がナチュラルに嫌がる事、面倒に思う事特化?
うん、まぁどう考えても碌なモンじゃねぇのはわかった。
あ......それと、何故かあの劇物一派だけは鑑定しても追加情報は出てこなかった。
......なぜ劇物だけは最初から全部開示されてんだろう。全くわからん。
あ、おはよう。今日も皆は美しいね!!
俺が鑑定をしながらウンウン唸っていると、ねぼすけさんたちが起きてきた。ご飯できてるから好きな時に食べてねー。
ピノちゃんとヘカトンくんは食後にちょっと残ってほしい。あ、別に怒るとかじゃないから心配しないでいいよ。
......なんでそんなに警戒すんのさ!! 何か疚しい事でもあるんですかねー?
日頃の行いを思い出せ......だと......?
ごめん、全然心当たりないわ。
◇◇◇
「警戒しないでって言ってんのに......ピノちゃんどいひー」
ここは抗議させてもらいますよ。えぇ。
素直に謝るか、俺の膝の上に乗るか......どちらか選びなさい。
「時間切れデース。膝の上にごあんなーい」
大人気なくガチで動いてピノちゃんを確保。ちょっと暴れていたけど、やさしーく頭を撫で撫でしていたら大人しくなってきたので、本題に入るとしましょう。
「まずは、お留守番してくれてありがとうね。こっちは無事にダンジョンの最下層まで行ってこれたよ。それで、ピノちゃんとヘカトンくんは何か変わった事あった?」
......ふんふん。にゃるほど。
そっちは?
......おーけー。ありがとう。
ヘカトンくんからの報告は......
・牛が数頭挑んできて返り討ちにした
・俺が居ない事を勝機と感じたらしい
・隠蔽結界に侵入した人型の生き物が数体、周辺にも近付いてきたヤツら二十体くらいいた
・山の下の方で戦闘音あり
ピノちゃんからの報告は......
・植えてもらった木は、魔樹以外は完全に成長させた
・魔法のレベルが上がって、植物の寿命が伸びた
・その辺に生えている木や草でもある程度操れるようになったから、お願いされたら罠とか張るよ
・魔樹が成長したら、そのうちの一本に穴をあけたい
なるほどぉ......ピノちゃんの頑張りは見たし、ずっと植物弄ってたんだろうね。ガーデニングしたりするピノちゃん可愛い。
木に穴を開けたいという要望は、川辺の御神木みたいな木の洞が欲しいかららしい。全然おっけーなので許可。
あ、まだダメだよ。ヘカトンくんとのお話が終わるまでは待ってなさい。
そして、ヘカトンくん。
まぁなんて言うか......だいぶ面倒くさそうな報告ですこと......
挑んできた牛は俺が居なければ大丈夫とでも思ったんだろう。やれやれだぜ。
牛肉は収納に入れてあるから後で回収してねと言われた。今度バーベキューしようね。
そんで、まぁ......山に誰か来てるらしいね。
下の方は数が多そうだし、隠蔽空間に飲み込まれてたのは少数。多分下の方に居る連中とは別なのかな?
飲み込まれた連中は、飲み込まれてから半月くらいは経ってるらしい。
俺がここに居ない時に、色々と面倒な事が起こってたんだねぇ......お疲れ様ですぅ。
ヘカトンくんの事も撫で撫でしながら他に報告は無いのか聞いてみたけど、特に思い浮かばないと言われた。
もう少し撫でていたかったから、アレコレと理由を付けて時間を引き延ばそうとするも、流石はしっかり者たち......呆気なく見抜かれて幸せな時間は終わった。悲しい。
隠蔽空間の弄り方はわからないから早く対処してきてと言われて追い出された。また夜辺りに撫でちゃるから待ってなさいよ。
◇◇◇
追い出された俺は隠蔽を張る御神木の元へと向かう。設定しておいてどうかと思うけど、俺......これからどうすればいいかわからないのよね。
追い出された時の勢いが凄すぎて、言い訳をする暇を与えずに追い払われた。
......うん、これからどうしようか。
侵入者が六人という表示が出ている。
どうすればいいかわからないなら適当に触っていれば......いずれそれらしい項目がでてくるよね。きっと。
生粋のアナログ人間による、とりあえず叩けば治るでしょ理論で魔道具に挑んでいく。
格闘する事十分ちょい......ようやくやり方が判明したので、侵入者の元へ向かった。
「んー......エルフかぁ......」
トカゲの巣で見たエルフよりも透明感がある。まぁ、あんな所に長い事閉じ込められて汚くなってるのとは別モンだよね......
んー......いくら綺麗でも、俺の中でのエルフのイメージは女王様に調教されて、ビクンビクンしながらも股間をおっ勃ててるイメージが抜けない。
そのイメージなんだよって聞いたら猛烈に怒りそうな綺麗さを持つ男2、女4のエルフ達が、フラフラになりながら出口を求めて彷徨い歩いていた。
トカゲの巣に居たエルフよりもマトモな人種でありますように......
そんな祈りを御神体に捧げながら、さまようえるふに近付き声を掛けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます