第199話 ダンジョン終了
それではこれより、ダンジョンマスターとの話し合いを始めようと思います。
「じゃあ草野さん。まず聞きたいんだけど、こっちに飛ばされて何年くらい?」
「何か聞きたいなら床に転がしたままにすんのやめろよ! この訳のわからない拘束を解いて回復させろ!! 話はそれからだ!!」
うるさいですねぇ......あ、手枷を嵌めれば解決だね。そうすれば糸の拘束はいらないもんね。回復? するわけないやん。
「しゃーないから拘束は解いてやる。回復はしねぇよ。あんだけイキっておいて回復してもらえると思う? そう思うんならお前の頭ん中脱法おハーブ生え散らかしてんな」
とりあえずうるせぇから手枷を嵌めちゃおうか。クソジジイにも効いたから、コイツにも効くだろ。
▼拘束の手枷
コレを付けられた者は体の自由を全て奪われる
手枷に付いている鎖を引かないと動けない
人の形をしているモノで手があれば効果を発揮する
付けられた者が死ぬか、外すかすると壊れる▼
コレが効かなかったら縛って逆さに吊るしておけばいいか。ヨシ、嵌めたぞ。じゃあ糸解きますねー。
お、動けないみたいですね。あ、口も動かせないみたいだけど呼吸はできてるっぽいからこのままでも問題はない。
んー......弱るまで放置してもいいけど、時間かかりそう......しゃーない。喋っていいよ。
鎖をクイッと引っ張って命令。思った通りだ。行動の全てを支配できるとか、首枷よりもヤバ......いや、同じくらいか。
「俺をどうしよってんだよ!! やめろ!! 助けろよ!!」
はぁ......ダンジョンマスターともあろう者が情けない姿を晒しますね。まだ聞きたい事があるからちゃんと生かしておきますよ。
「あんこさん、まだ自分の立場が理解出来ていないみたいなので、コイツの足を膝まで凍らせちゃってください。まだ喚くならどんどん氷が上にあがってきますよ」
上手く出来たでしょって感じで得意気にしてるあんこが可愛い。久々のドヤ顔モード素敵だよ!!
「わかった......わかったから動けなくするの止めてくれよ。その様子を見る限りお前も転移者か召喚されたんだろ? 仲間じゃんか」
いいえ、俺の仲間はこの子たちとお留守番してくれている子たちだけです。
「その転移者である仲間を、デバフを盛った挙げ句殺すとかほざいていた人は仲間ではありません。て言うか、いい加減面倒になってきたから質問に答えて欲しい。お前の処遇に関する選択肢が殺す一択になる前に」
「お前も日本人だろうが!! 異世界人と同じノリで同郷の者を殺そうとすんなよ!!」
「頭の中に違法薬物でも詰め込んでんの? 会話をしたくないなら最初からそう言ってほしかったよ。俺はただ初めて会う転移者だったから話を聞いてみたいと思っていただけだから。
あと、異世界人だろうが日本人だろうが、人カテゴリなのは変わらない。上位種でもないから優遇措置とかありえんし、ダンジョンマスターなんて人類の敵だから積極的に殺すべきなんじゃない?」
「好き勝手言いやがって......ふざけんな!! そもそもお前、勝手に俺の城へ侵入してきてんじゃねぇか!! 不法侵入だ!!」
だったら誰も侵入できないように設定しましょう。ダンジョンマスターなんてやってるヤツのセリフじゃないよね。
「ダンジョンってそういうモンじゃないの? ......うーん、めんどくせぇなコイツ。あ!! コレ使えば一発で解決できんじゃん。使い途無かったし、もしコイツが使えなかったら処分すりゃいいから楽でいいや」
「なにゴチャゴチャ気持ち悪い事言ってるんだよ!! いいから俺を自由にしろ!!」
「もういい、煩いから喋るな。聞きたい事は後で勝手に聞くから。......あった。右手を前に出せ」
クイックイッと鎖を二回引っ張って命令。
「沈黙は金って言うけど、本当だね。静かでいいよ。じゃあ説明するね。指輪つける、お前、傀儡になる。じゃあいくよー」
▼傀儡の指輪
一見凄く綺麗な指輪だがこれを嵌めてしまうと、指輪の所有者の傀儡になる
解呪不可、鑑定でも認識不能の世に出してはならない類のアイテム
この指輪が誰かの所有物になると隠蔽され高価な指輪としか認識出来なくなる
現所有者:シアン▼
......男に指輪嵌めるとか難易度高いな。気持ち悪いぞ。
「傀儡一号の完成。これから質問をするから答えてね。口だけは動かしていいよ」
「わかりました」
落差が凄くて気持ち悪い......じゃあサクサク行こうか。あんこたちは......お眠かな? クマに乗って寝てる姿がヤバい可愛い。
◇◇◇
さて、聞きたい事は大体聞けたし、欲しいものはもらった。
手枷はもう必要無いし、破壊して動けるようにした。俺がここに来ていない間は元の人格そのままで、今まで通り自由にしていいとカスタマイズ。
ただし、フジエリアと海エリアの流氷フロアは釣りが出来るようになる以外には絶対に弄らない事と、最初の海フロアはバカンス用に改造する事を約束させた。
もっと別荘地みたいにしたかったけど、一度設定したエリアは別物に出来ないと言われて断念。闘技場エリアや時計塔エリアを別物にしたかったのに......
さて、ダンジョンマスターを取り調べしてわかった事。
・ヤツは俺がこっちに来る五年前にいきなり転移したが、時間の流れが違うらしくこちらで1000年は過ごしている
・どうやら俺の居た世界とは違う世界、俺の居た世界に似たパラレルワールド出身らしい
・有名なネズミの国や国民的アニメが全くの別物だった事で判明し、偉人も少しだけ名前が違った
・ダンジョンはマスターが死亡してもコアが無事な場合には、コアの性格と一致する人物を呼びよせる事ができる
・コアと同化した場合は不老となり、他人に殺されるか不慮の事故以外では死亡することが無く、ダンジョン外に出られなくなっている
・結構自由度が高く、ある程度望んだ通りにカスタマイズ出来るが、別世界の物はコストが高い
・ギミックや敵の強さは階層毎に使えるポイントの上限が存在しており、最下層に近付く程上限が上がる
・上の階層を楽にすればするほど、条件付きで下の階層にポイントを回せる
・攻略や難易度に全く関係無い要素ならば、余ったポイントで自由に出来る
・ドロップ等は完全に運であり、ダンジョンマスターでも何が出るかわからず、ダンジョンマスターはそれを手に出来ない
・五十年に一回、余ったポイントをコアを通して何処かに献上すればダンジョンが少しだけグレードアップする
・コアとマスターが消滅すればダンジョンは枯渇しただの地下空間になるが、特殊な方法を用いれば再利用可能
脳が疲れたけど一応聞きたい事は聞けたと思う。
クソジジイダンジョンであった不思議な現象は、コアとの親和性が高すぎた為にコアが俺を取り込もうとしていたらしい。
危うくダンジョンマスターにされる所だったらしくて、対応を間違えなくてよかったと心から思った。
それからは傀儡くんを操って戦利品を得た。コアに生き物の死体やドロップアイテムを飲み込ませればポイントが溜まるらしくて、必要な量の物をぶち込んで欲しいものをゲット。過剰にポイントをぶち込んだら正気に戻った草野くんが調子に乗りそうなのでやめておいた。
それと素材を渡せば、渡した素材を使ってカスタムしてくれるらしいのでお願いした。
・魔樹で作った武家屋敷(草野邸コピー)
・フジエリア、流氷エリア、バカンスエリアのフリーパス転移石
・五箇所まで登録出来る無限に使用可能な転移石
・アイテム限定の看破のオラクル
・スキルクリスタル8個
これらを手に入れ、これ以上は監査が入るかもしれないからと言われて断念。次に同じような事をする場合には100年はあけて欲しいらしい。
バレないと思うけど、監査とか言われたら怖いので今回作成した物のデータや痕跡は念入りに消去した。
魔樹を使った武家屋敷のカスタムがかなり負担になったらしい。......残念だ。
だけど、移動不可だが工事不要で置くだけ簡単設置のオプションを付けられたから良しとしよう。
まさかの屋敷ゲットと、アイテム限定の完全鑑定アイテムゲットで俺はもう満足した。
100年経てばまた欲しいものを手に入れられる可能性があるらしいし、旅行先確保の為に草野くんはこのまま生かしておく。
予想以上に便利だったから俺が来ていない時だけは傀儡化はしないであげる。
さて、やる事やったし帰ろうか。
ワラビだけを起こして皆を乗せ、ダンジョンを後にした。
「んんんー!! 久々の外だー!! ワラビだけ起こしてごめんね。帰りは転移する? されとも飛んで帰る?」
『ねむいけどだいじょうぶ。とびたいからのって』
「わかった。じゃあ帰りはワラビに任せるよ。まだ明るいし、皆を起こさないようにゆっくり飛んで帰ろう」
『ながくとんでいいの? やった!』
俺を乗せて長く飛べる事を喜ぶワラビを撫でてから騎乗し、ゆっくりとした空の旅を楽しみながら久しぶりな我が家へ帰宅した。
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