第189話 サバチャン

 リッチ戦の戦利品は......なんかよくわからない螺旋状の黒い杖、シンプルだけど綺麗なナイフと大きめなフォークがたくさん、それと宝箱が一つ。


 ▼■■■■■の杖

 とある儀式で触媒として使用する▼


 ▼必中の銀ナイフ

 投げつければ絶対に対象に刺さる

 武器なので普段使いには向かない

 吸血鬼と人狼には大ダメージを与え、弱い相手なら一撃で殺せる▼


 ▼デビルフォーク

 天使や天使に属する者に異常な強さを発揮する悪魔の力が宿ったフォーク

 武器なので普段使いには向かない

 中位の天使程度なら一度突き刺せば余裕で殺せる▼


 またしても怪しいモノが御降臨......前にも出た呪物とかに続いて、儀式に使う触媒とか何やねん......


 悪魔とかそれらしいヤバいモノを喚び出せや!! って事なのかな?


 んー......よくわからん。


 よくわからないブツはこの際置いておいて......次はこのフォークとナイフだ。これも当然おかしい。食事とかには使えない、ただの武器。

 吸血鬼と人狼に特攻のあるモノって杭や弾丸じゃないんかい!! 悪魔で執事なアレみたいにナイフを投げつけるプレイをすればいいんですかね。

 フォークはミニデーモンとかベビーサタンが持ったら丁度良さそうなサイズだね。天使系統のモノに特攻付きだしピッタリだろう。


「あんこを二足歩行させて紫色の布を被せる......そんで舌を出してもらいながらフォークを持たせれば......可愛いな」


 テヘペロしたあんこがフォークを持ちながら立つ姿......イイ!! 実にイイぞ!!


 ............ただ、残念ながらあんこは天使に属している。


 フォークを持ったらダメージを受けないとは限らない......これはあんこだけじゃなく、ウチの子......小動物組全員に言える事だけど。


 ふむ、そうなると......このフォークとナイフはヘカトンくんに持たせた方がいいだろうか。ウチの子で唯一天使属性じゃないのがヘカトンくんとワラビだ。


 用心棒とお馬さんだし多分イケる。

 ......うん、このナイフとフォークは投擲キャラのヘカトンくんに丁度いいモノだな。帰ったらコイツらはヘカトンくんにあげよう。


 いや、コレらにもデメリットがあるかもしれないから安易に渡すのもダメかもしれない......鑑定が進化して詳細がわかるまでは放置しなきゃダメかなぁ......


「はぁ......めんどくせぇ......じゃあ次、宝箱いってみようか」


 宝箱の中に入っていたのは......何だこれ? 蹄鉄?


 ▼■■■■の蹄

 ■■■■の蹄と言われている▼


 なるほど......うん、全くわからん。


 怪しいアイテム三個目ゲットじゃ。


 次はどんな怪しいアイテムが手に入るのかな......HAHAHAHAHAHA!!



 俺の為にボス戦を頑張ってくれた皆を撫で回してから次の階層へと向かった。





 はい、そんな訳でやって参りました!! 86階層デース。


 どうやらここからサバンナのようです。



「ナーーーーーンチィゴニャーーーー!! ババギーーーーチババーーーー!!」


 特に意味は無い。何となく叫びたくなっただけだ。特に意味は無い。


 意味は無いからね、残念なモノを見るような目でこちらを見ないでほしい。

 急に大声出してびっくりさせた事は謝るから。


 こんなザ・サバンナな景色を見てしまったら、これは一度はやらなきゃいけない。そんな気持ちにさせられたんだから仕方ないじゃないか。


 それにしてもここ......テンプレのようなサバンナです。

 ライオン、ゴリラ、ダチョウ、ゾウとかが居そうだよね。



 アホな事を考えまくっていた俺だったけど、ようやく落ち着いてきたのでサバンナに降り立ってからずっとソワソワしているワラビに声をかける。


「ソワソワしてどうしたのかな? 何かしたい事があるんなら好きに行動していいよ。ワラビだけじゃなくて皆も」


『はしったり、とんだりしてもいい?』


 ワラビはどうやら動き回りたかったらしい。草原とかよりもサバンナ的な場所の方が好みなんだねー。


「いいよ。俺はワラビが走り回っている間に階段とか探してるから。満足したら俺の所まで戻ってきてね」


『わかった』


 許可を出した途端に走り出すワラビ。好きに楽しんでおいで。


 ......ワラビに乗ってサバンナ爆走とか気持ちいいんだろうな。ちょっとやってみたいかも。


「アレでも本気の走りじゃなさそう......ワラビは走るのが早いんだねー。さて、俺らも動こっか......ん? どうしたの?」


 動き出そうとした俺のズボンの裾を甘噛みしてクイクイ引っ張るあんこがいた。可愛い。


『わたしも走る!! だから乗って!!』


 そう言いながらおっきくなって伏せをするあんこちゃん。まさか俺がワラビにライドしてみたいなーって考えていた事が筒抜けだったんだろうか......ワラビにジェラっちゃったと思われるあんこ可愛い。


「いいの? 乗せてくれるんなら俺は嬉しいな。じゃあお願いするね。ツキミちゃんとダイフクはどうする? 飛ぶ?」


『疲れるまでは飛ぶ』

『抱っこ』


「わかった。じゃあ階段の方に向かって進もんでね」


 ツキミちゃんとウイちゃんを抱っこしてあんこのもっふもふな背中に乗る。何度か乗せてもらったけど、やっぱりとても気持ちいい......幸せぇ......


『行くよー!!』


 俺が乗ったのを確認して立ち上がったあんこが、勢いよく走り出す。ハスキーはやっぱり凛々しくてカッコぃぃeeeee!!


 テンションが上がりまくっていたあんこだけど、ダイフクでも追いつけるスピードに抑えているあんこは偉い。全力で走ったあんこに追いつけるのは、多分ワラビだけだろう......俺はきっと置いていかれる気がする。

 そんな俺らの後ろを、羽根を頑張ってパタパタさせながら追ってくるダイフク......かなり必死な形相なのは見なかった事にしておいてあげる。


「キュウキュウキュウ♪」


 そんなダイフクを後目に、あんこの勇姿を見て俺の腹に尻尾をビタンビタンと打ち付けるウイちゃんが、ご機嫌そうにキュウキュウ鳴いている。


「ウイちゃんとってもご機嫌そうだね。あんこに乗れて楽しいかい?」


「キュゥゥゥゥ!!」


 うん、無邪気可愛い。まだこの子がなんて言っているのかハッキリとはわからないけど、喜怒哀楽の感情はバッチリわかる。

 とても楽しんでくれているのがわかるので、俺も嬉しくなる。


 ツキミちゃんは景色そっちのけで俺の胸に顔を擦り付けている。甘えんぼさん好きだよ。


 俺はそんな皆にデレデレしながらも、アホほど使い易くなった探知を使って出てくる敵を鑑定、即射殺を繰り返している。あんこはこのまま走る事だけに集中してていいんだからね。




 そのまま三十分くらい走り続けた。


 今、俺の左肩には息の荒いモチモチが止まっている。


 自分の出せる限界ギリギリのスピードで飛び続けたダイフクは、遂に力尽きたようだ。


「ホー......ホーーーー......」


 多分、待って......お願い待ってーーーー...... って言っているんだろう。あんこに離されていくダイフクを糸を使って回収し、今に至る。


「フラフラしてるけど大丈夫? 抱っこしようか?」


 肩の上でフラついてるから心配してそう聞いても、肩から離れないモチモチ。今回は悪ふざけなど無く、普通に優しく抱っこしてあげようと思っていたのに......こんな時くらい無駄な意地を張らなくてもいいのに......ダイフクを甘やかすチャンスだったのに残念だ。




 この日......夕陽が沈むまであんこは走り続け、階段のすぐ近くで一泊する事になった。夜のステージや日中のステージなどは今まであったけど、夜になる演出は初めてかも......アレ? 前にもあったっけ?


 まぁいいや。ダンジョン七不思議の一つだね。


 ダンジョン内でも一日があるのなら、生活リズムも崩しにくいからいいかもね。



 俺を乗せて走り回ったあんこは、ご飯を食べてお風呂に入ったらすぐ寝ちゃった。

 いつも皆のお姉ちゃんをしてくれているあんこだから、今日みたいに無心になれる時間を作ってあげないとなって反省。


 ワラビも全力で楽しんできたみたいでこちらもすやすや。今はダイフクとウイちゃんの枕になっていて羨ましい。


 久しぶりに満足するまで動いたり、限界ギリギリまで飛んだりしたあんこ、ワラビ、ダイフクが筋肉痛とかにならない事を祈りながら眠りについた。

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