第170話 彫刻
ツキミちゃんのべったり甘々に妬いたっぽいあんこが、寝る時に乱入してきて幸せな夜を過ごせた。これでもかってくらいにべったりだった。
朝になっても未だにべったり張り付いて寝ていたな甘えんぼさんたちにほっこり。ラブい感情が抑えきれずにチュッチュしてから朝ごはんの用意......
......は多少遅れても問題ないとセルフジャッジし、起こさないよう気を付けながらモフる。寝ていても撫でられているのがわかるのか、顔が緩んでいるのがとても可愛らしい。
そーらあんこちゃーんモフモフのお時間ですよーもふもふもふもふもふもふ......
ツキミちゃんも一緒にもーふもふもふもふもふもふ......
◇◇◇
......まぁアレだね。ほんの少しだけやりすぎてしまったかもしれない。
朝の濃厚な絡みの最中に一度目が覚めたあんことツキミちゃんだったが、今は再び眠りについてしまっている。
仕方ないよね。
寝ているのに撫でれば撫でるほど嬉しそうにしてくれるんだもの。そりゃ撫でる手が止まることを拒否しますよ。
あんことツキミちゃんの目が覚め、寝起きなのにテンションMAXでじゃれてきたらもう......我慢なんてできるはずがない。少なくとも、俺はそんな自制心は持ち合わせていないのだ!!
はい、今は落ち着いたのでしっかり寝かせてあります。寝顔めっちゃ可愛いわぁ......朝から疲れさせちゃってごめんね。幸せだったよ。
朝ごはんを準備し、今日も先に食べて行動を開始。
先ずはアレだね。昨日スルーしてしまったワラビの確認。
「おはよー。今日も寒い中、牛共のお世話ありがとね」
早起きして色々やってくれているお二人さんに挨拶。
いつものように敬礼するヘカトンくんと、最近覚えたお辞儀をするワラビ。
「おーおー......立派になったね......脚や角が。ちょっと鑑定させてねー」
太さが増し、イカつく、そして黒光りするようになった角。
コウモリっぽさが薄れ、悪魔っぽさとトカゲっぽさが合わさった羽。
昨日はスルーしてしまったけど、何故か二本増えている脚に、スパイクのようなものが増えた蹄。
精悍な顔付きにフワフワそうなシカ毛......全体的にカッコいい雰囲気になったはずなのに、そのバランスをぶち壊すピュアッピュアなおめめ。
......なーんでお前はそんなに目だけ純粋なのよぉ。どうせならシ〇神さまみたいな目でもよかったやろがい。
あっと......なんか静止してくれているから、早いとこ鑑定しないと。
▼ワラビ
馬型合成雷獣ㅤ73歳ㅤ
レベル84ㅤ魔力99,879,520/99,879,520
スキル:【溶解液生成】【雷魔法】【帯電】【消化吸収】【変質】
特殊進化を果たしたキメラ
未だ最終形態ではなく、これからどのような進化を遂げるのか未知数
食べた生き物の特徴を取り込めるが、適応していない生物の特徴は取り込めない
この個体は馬の部分以外食すのには向かないが、馬の部分の肉はとても美味▼
魔力の部分に数字がある事に何故か感動。そして、まさかの一番の年長者でした。
なんで魔力が表示されているんだろう......
......あ、なるほど。仲間にはしていたけど、まだテイムしていなかったからか。
なんとなく面白そうだから最終形態になるまでは、このまま劇物を食わせ続けていこう。テイムもそれまでは見送り。決して私怨とかじゃないよ。ほんとほんと。
だって俺と繋がると世の理から外れてしまって、最終形態になる前に生物として終わりそうじゃん?
どうせなら最終形態になるのを見たくなるのが男の子だと思うの。
漢のロマンシリーズだ。漢の漢のロッマッンッ!!
ゴホンッ......まぁそれはさておき、この子......やばくね?
飛べて溶かせて走れて、更には雷撃もぶち込める。体は色々と食べていればいつの間にか超強化されている。RPGのラスボスクラスのキメラでしょう。
魔力の初期値は見てなかったからわからないけど、もうすぐ大台に乗る事から順調に育っているのはわかった。
その調子で頑張ってくれたまえ。ただし、うちのお嬢様の寵愛を独占するのは許さないからな!!
おやつをあげてから別れた俺は、昨日途中で放棄してしまっていたオブジェの制作を再開させる為に温泉へと来ていた。
なんとか今日中に完成させてこの血の池温泉を形にしたいと思っている。
さぁレッツ彫刻。
◇◇◇
昨日作ったリアルなヤツから少しずつリアルさを減らしたのを作っていき、最終形態はデフォルメされた姿になった。
どう足掻こうが愛らしさが表現できずに心が折れた結果だ。
どうしてもオカモチから出てきたオブジェのクオリティを基準にしてしまうので、リアルさを含んでいたら勝ち目は無い。アレは本当にずるい。
俺の願望から生まれた物だから仕方ないけど、真の芸術品の前では全てが霞んでしまうものなのだと痛感した......
とまぁ言い訳はさておき、あのオブジェと見比べられないように可愛さに特化したデフォルメで落ち着いた訳です。
うん、素晴らしい。愛らしさと可愛さは完璧に表現出来ている。多分。
コタツから緩んだ顔を出し、口から血の滝を吐き出すダイフクオブジェ。
右側の羽根を突き出してバキューンてしているポーズのツキミちゃんオブジェ。お湯は羽根の先から吹き出す仕組みになっている。
どちらもお湯を出さなきゃイケないのでサイズは大きい......いつかはこのサイズでリアルそっくりな可愛らしいのを作りたいものである。
今日の入浴タイムでお披露目するから布を被せておこう。今回はいいリアクションを取ってくれたらいいなぁ。
日暮れまでまだ時間はある。練習を兼ねて皆のデフォルメチビフィギュアでも作ってあげよう。
いや、やめよう。ヘカトンくんを今から作ったら日が暮れても終わらない。
うん、今度いつかきっと作ろう。
この際だからこの温泉をもう少し温泉っぽく改造しようか。
......ふむ。今一番必要なのは砂利と道とカポーンとするアレだな。名前なんだっけ?
はい、それではこれから岩の道作りと玉砂利を撒いて行こうと思います。こういう時に使用する玉砂利は白い石が定番だよね。
見分けやすくする為に道にするのは黒い岩。ソレをスライスして地面に等間隔で埋めていく。これだけの事でなんとなく和風になる不思議。
後は温泉の敷地内いっぱいに玉砂利を敷き詰めるだけの簡単なお仕事。
面倒な単純作業の繰り返しだけど、頑張って玉砂利をばら撒き続けた。ちょー頑張った。
腰がブロークンしそうだったけど、強化されているマイボディのおかげでどうにか無事に仕事を終える事ができた。
うん......いいね。だいぶ温泉地っぽくなった。やったぜ!
カポーンてするヤツはまたの機会に。
◇◇◇
腰をトントンしながらお家に戻る。お家の扉を開けると、昨日からずっと甘々モードなあんことツキミちゃんの熱烈なお出迎えがあった。
これだけでパパはこれからもお仕事を頑張れそうでしゅ。もっとギュッてしてほしいねん。もっと癒して!!
うっ......ふぅ............気持ちよかったァ......
「はい、ただいまー。ご飯にする? お風呂にする? それともわ・た・し?」
『『『ご飯』』』
『お風呂』
「......かーらーのー?」
『『『『..................(ジィィィィィィィ)』』』』
「アッハイ。すぐ準備するから待っててね」
無言の圧力って怖いよね。傍から見ると小動物にガン見されているだけなのに、当事者はほっこりできないのは何でだろう。
夕飯を食べた後は皆で血の池温泉。毎日温泉に浸かれるって贅沢すぎるわぁ......
玉砂利を敷き詰めて雰囲気の変わった道でテンションの上がった天使たち。そのままの流れで俺が頑張って作ったお湯を出すオブジェの除幕式を行った。
口から血を吐き出すダイフクオブジェと、羽根から血液を飛ばすツキミちゃんオブジェ。
ダイフクオブジェは......まぁ酷い絵面だったけど、不具合は起きてないので概ね成功と言えるだろう。
オブジェを見たツキミちゃんは喜び、ダイフクは不満そうにしていた。
あんことピノちゃんは今度自分たちの分も作ってとおねだりし、ヘカトンくんとワラビは無言で見つめてくる。
「......わかった。明日、明日やるから。そんな目で見ないでください」
またもや圧力に負けた俺は、翌日......一体一体心を込めてフィギュアを作らせてもらった。
可愛いポーズや決めポーズを取るウチの子たちに癒されたのは言うまでもないが、ヘカトンくんの顔が一つ一つ微妙に違い、それだけが露骨に難易度が高くて疲れました。
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