第165話 流血掛け流し
翌朝、胸のムカムカに襲われながら目を覚ます。
昨日はあの後、動こうという気力が最後まで湧かなかったので、結局そのままヘカトンくんとワラビのお家に泊めてもらった。宿泊費として飴ちゃんとわらび餅を支払った。
......で、目覚めたばかりの今の俺は、御神体のある方向に向かってお祈りを捧げています。
暴飲暴食してしまったツケを払わせられる、いつもお馴染みの懺悔のお時間。腹痛とか頭痛はしないのに、何故胸焼けとかき氷でキーンのダメージは喰らってしまうのか。
マイボディ七不思議の一つであり、死ぬまで解明されない謎だと思っている。
七大罪とはよく言ったもので、暴食は確かによくありませんね。ははは。大罪指定される訳も納得でございます。
いずれ知覚過敏とか魔女の一撃とか、自分の意思ではどうにもならない厄介な通り魔みたいなヤツも発現してしまうのだろうか。
死ぬほど嫌だから絶対にそんな機会が訪れることの無いようにしてもらいたい。よろしくお願いします。
それと、そろそろ私の罪をお許しを頂けると嬉しいのですが......
アツアツで渋めの緑茶を飲むことで多少マシになった体にムチを打ち、皆の分の朝飯を用意していく。
今まで食べたことの無い量の甘味を食べたエンジェルたちなので、今回ばかりは俺と同じように胸焼けとかがあるかもしれない。
とりあえず普段通りなら食べるであろう皆の好物を用意。それと、もしダメだった時用にコンソメスープも。ドーピング効果の無い普通のコンソメスープ。
準備が終わろうかという頃、飯の匂いに誘われて起きてきたワラビ、続いてヘカトンくん。君たちは規則正しい生活を心掛けてくれているんだね。
「おはよう。あんこたちはまだ起きないだろうから朝ごはん食べちゃっていいよ。それと体調が悪くなってたりはしない?」
『大丈夫』
『ネテオキテモ、クウフク、カンジテイナイ、フシギ』
ヘカトンくんは体調ばっちり。ワラビはお腹があまり減ってないらしい。野生だとこんなん体験する事ないだろうからね。
「気持ち悪いとかじゃないなら食べちゃいな。食べ終わったら牛のお世話だけよろしくね」
『任せて』
『モチロン』
その後のお二人さんはあっという間に朝飯を食べ終えて牛の方へ向かっていった。頼もしい限りでございます。
スープとパンの簡単な食事を済ませた俺は書き置きを残してお風呂場へ向かう。
甘味を食べすぎてぐったりしながら話し合った結果、この場所に永住する事が正式に決まった。
御神体パワーを目の当たりにしたあの子たちは、ここの安全性と、面倒事が起きる可能性がほぼ無い事を理解してくれたおかげで案が可決された。
なので今日の俺は、この場に温泉を設置しようと思っている。
見た目は完全に血の池地獄になるらしいけど、効果はえげつないと鑑定さんが言ってたから信じる。
▼血の池地獄の掘削機
これで地面を掘ると血にそっくりな色の温泉が湧き出す
見た目は地獄のようだが泉質、効能共に極上
疲労回復、肌質向上、各種病に効果があり、傷を少しずつ癒す
この魔道具は一度使えば消滅する
魔樹の木材で大きな湯船を作るのがオススメ▼
湯船は後で作ります。とりあえず今は岩風呂みたいな物で我慢。色々作ってDIYスキルが上達するまでは本番行為は我慢だ。
サクッと本物のスキルが生えてきてくれてもいいんだよ。うふふ。
............さて、早速問題が発生した。コイツの使い方がさっぱりわからん。
掘削機と言いつつも、見た目は完全に腕に付けるタイプの筒。腕を嵌める方では無いだろうサイドはやや広くなっており、ライフリングのような細工がある。
蛇の名前をしたダンディなおっさんが付けてるようなアレの改造版。本物を見た事はないけど、小学生の頃くらいにプリン〇ルスの筒を使って真似をした事があるなぁ......
「使えば壊れるから呪いの装備じゃないんだろうけど、付けるのを躊躇わせる雰囲気があるぞコレ......付けて魔力を流せば、筒からドリルが出て......って感じなのかな?」
......ここで躊躇って時間を浪費しているうちに天使たちが起きてきた、このサイコガン付けている所を目撃してしまうなんて事になったら目も当てられない。
よし、さっさとやってしまおう。童心に帰ってご乱心してると思われたら死ねる。
掘りたいと思う場所で止まり、恐る恐る筒を腕に嵌めて魔力を流すと、起動したらしく血圧計みたいに腕がキュッと締まる。
そして不穏な音が流れ始めた。
「......血が止まってるけど大丈夫なんコレ......それとカリカリと音がしてて怖い」
疑問に思いながらも銃口? を地面に向けながら魔力を追加していく。
今までの魔道具ってだいたいは魔力流せばどうにかなってきたからいいんだけど、使い切りタイプの物にはわかりやすい取扱説明書を同封しておいてほしいんだよなぁ......
「あっ......」
魔道具と鑑定への文句を頭の中で言っていると、魔力がリミットまで達した筒が点滅するように光り出す。
「やだ怖い......コレ、装着する向きを間違えていたら......装着者の体を掘削して血を流して温泉に変換するって道具じゃないよね?」
よく見るような時限爆弾の爆発前のように、点滅の間隔が短くなっていく。
Dead or Alive。
二択が正解した場合には温泉が湧いて天国、外していた場合には愛と哀しみの人血風呂が完成、使用者は死ぬ。
嫌な汗が流れ、呼吸が乱れる。
「ヒッヒッフー......ヒッヒッフー......」
テンパって変な呼吸になっていると、遂に審判の刻が訪れた......
筒が一際強い光を発した後、工事現場でよく聞く音と振動が身体にダイレクトアタック。
驚きで身体を逸らそうとするも、筒が地面に固定されてして動かす事が出来ない。もちろん腕も抜けない。
「あー......これは心を無にして掘削が終わるのを待つしか道はないみたいだね。振動が辛いわー」
腕が中途半端な位置にあるから寝転がる事も難しいし、中腰でも座ってもキツい。
もうやだ......何これ、罰ゲームかなんかですか?
性能や効果は抜群なのにクソみたいな使用感って、流石クソジジイのダンジョン物品やで。攻略してからも俺の精神に攻撃してきやがる......
すんごい窮屈な体勢のまま放置される俺なのでしたー。
◇◇◇
「あんのクソジジィィィィイ!!! 地獄の底か天国から舞い戻ってきやがれ!!! もう一度ぶっ殺してやる!!!」
えー......こちら現場のげきオコスティックファイナリアリティぷんぷんドリームなシアンでございます。
現在の山の天気は、血の雨の時々黒レーザーとなっております。
山の風景はとても壮観でして、血の噴水が噴き出しており、周囲の雪原を真っ赤に染めております。
「腕が固定されたままなのに、間欠泉のように湯が噴き出しやがって......手はクソ熱かったし、筒が壊れてからは打ち上げられたぞ。常人ならアレで死んでるからなクソジジィこらァ!!」
このどうしようもない気持ちを、天に昇ったと思われるクソジジイに向けてあの時のレーザーを極太にして撃つ。天まで届け☆この
三分程撃ち続けてようやくクールダウン。
「完全にB級スプラッタ映画の事件現場だわこれ......犯人役はもちろん俺です」
噴き上がる真っ赤な噴水から目を逸らせば、憤怒の形相で荒い呼吸をし、未だに降り止まない血の雨を浴びて真っ赤になりながら、惨殺現場の血の海に佇むサイコキラー。
いやー......本当なんだこれ......
止まずに体を打ち付けてくる血の雨を、召喚したビニール傘を使ってブロック。ビニール傘にしない方がよかったと後悔しながらタバコに火をつける。
「ふぅぅぅぅ......あー......この聖域を隠蔽してからでよかったわぁ......真っ赤な噴水が湧いてるのを見られたら面倒事が押し寄せてくる所だったわ」
タバコを吸いながら噴水を眺めていると、ようやく噴き上がる血の水柱の勢いが弱くなってきた。
噴き出している穴の所を見てみると、先程まで無かったバルブとパイプが生成されていた。
「あのサイコガンが壊れて変質したんだろうか......ファンタジーだなぁ」
どうなってるか全く理解できない中でバルブを閉めて噴水を止め、感想を呟く。
「あー......見た目は血だけど、臭いは温泉だぁ......ふっしぎー。なんか朝起きてそんなに経ってないのに凄い疲れちゃった......」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます