第163話 御神体

 翌日、起きてきた怠惰なエンジェルたちに事情聴取。俺の居ない間は予想通り、とても乱れた生活を送っていたと供述。そろそろ正午なのに朝だよと言い張るのはやめようか。


 生活リズムが乱れた理由を聞いたんだけど、その理由がとても可愛くて叱れなかった。くそぅ。

 俺の行動をダイフクに実況してもらっていて、ヤメ時がわからなくなったとかさぁ......何も言えないやんけ......



 せめて、今は朝では無い事だけは説明しておく。


「もう昼だよ。朝と言い張るのは無理がある」


「何言ってるのかな、午前中だから朝だよ」


 俺もこんな言い訳をした事があるから強く言えないし、一日半寝続けたばっかりだから説得力もない。なのでとても優しく言い聞かせた。


「あまり生活リズムを崩さないようにしてね。俺、君たちと一緒にいる時間が減るのは悲しいからね」


 しょぼーんとする姿を見て反省していると理解。もう許したから、これからは気をつけていこうね!!


「お昼ご飯を食べたら家族会議をしようと思います。寝すぎた罰として会議の場に着くまで抱っこさせなさい」


『『はーい』』


 いいお返事の甘えんぼちゃんたちと、頷くだけの辛辣な子たち。さ、飯だ飯。



 お昼ご飯は簡単な物を。それらを食べ終えたので会議を予定している場所に移動を開始。

 ここでやってもいいんだけど、この子たちを抱っこして歩きたいからヘカトンくんたちの所まで歩いて向かう。


「俺にしてほしい事は決めた?」


『決まったー』


 あんこが代表してお返事。


 今日の予定が全部終わったら聞くからねーと伝えて抱っこする力を強めた。あ、もう着いちゃう......会議が終わるまで抱っこさせてと言っておけばよかった。無念......




 会議室予定地であるワラビとヘカトンくんのコンテナまで到着すると、俺らの接近に気付いていたお二方がお出迎えしてくれた。


「ヘカトンくんとワラビはいつもありがとうね。ほら、名前も決まった事だし改めて自己紹介よろしく」


『キメラ、ワラビ、ヨロシク』


 相変わらずのカタコトで自己紹介した。その後は天使たちも自己紹介。

 鳴き声がとても可愛かったです。ついでに俺も自己紹介をした。


「ドーモ。ジュウマノミナ=サン。シアンです」


 すっごい冷めた目で見られたけど悔いはない。悲しくなんてないやい。


「ゴホンッ......さて、それではこの拠点に関する事で数点、皆にお話ししたい事や相談したい事があります。わからない事や質問についてはその都度受け付けますので、思った事があったら意見してください」


 可愛く首を振る皆に癒される。お返事してくれるのも嬉しいけど、素直に聞いてくれるのもいいな。


「では一つ目、これは質問だね。皆がこの場所についてどう思ってるのか聞きたい。良いとこ、悪いとこ、不満なとこ、ここはこうしてほしいとか......ではあんこからお願いします」




 全員から意見を聞いた。


 皆がこの場所を相当気に入っているのがわかり、不満な点は全然出なかった。

 そんか彼女たちの意見はコチラです。


 ・川みたいのが欲しい

 ・牧場の柵を高くして欲しい

 ・実の味はどうにかならないのか

 ・前に言っていた温泉ってのに入ってみたい

 ・大っきい木が一本でいいから欲しい


 三個目の意見以外はどうにかなると思います。貴重なご意見ありがとうございました。


 では二つ目の質問。


「皆はこれからも旅をしたいと思う?」


 思わないが三票、たまにお出かけをしたいが三票。


「お出かけしてもっといい場所が見つかった場合、お引越ししたいと思う?」


 そんな場所がもし見つかったのならしたいと思うかもしれないが二票、ここが好きだから別に......が四票。


 皆もここに愛着があるのを確認出来て嬉しいですね。皆意外とテリトリーから出たくない派なのかもしれない。


「えー、では次に、さっき意見で上がっていた事を説明するね。まずは温泉なんだけど、温泉を作れる魔道具を持ってて......それは一度しか使えないんだよね。だから皆がずっとここに住みたいって思える場所で使おうと思ってるから、生涯の棲み家となる場所が決まるまでは待っててね」


 ちょっと温泉に入りたいという欲を刺激しちゃう言い方になった。ごめんね、実は俺......今めっちゃ温泉に入りたい気分なの。


「川や柵は一日あれば作れると思う。おっきい木もどうにか出来ると思う。ただあの実の味だけはどうにもならないのだよ......力になれなくて済まんな」


 先程の要望に対しての返答に嬉しそうにする子どもたちと、絶望した顔をする子のコントラストが美しい。

 アレの味の改善はね、どうにもならないからインキュ〇ーターに願ってくれ。


 願望器に願えばアレの味変換器とか出てきそうだけど、必要なのは結界か隠蔽なんだ。


「それでもう一つ、ダンジョンに篭もっていた時に見つけたアイテムで結界or隠蔽の機能が付いたモノを入手できるんだけど、どっちがいいと思う?」


 結界一票、隠蔽五票。

 一票だった結界に入れた子はしょぼーんとしていて、撫でくりまわして慰めてあげたくなるが堪える。


 ......会議中じゃなかったら全力で撫で回すのに。


「隠蔽が圧倒的だけどそれはどうしてかな?」


 ・結界だと中にいい物があると思われそうで面倒

 ・入れないとわかるとなんとかして入ろうとするだろうから面倒

 ・偶然迷い込んだ生き物を外に導く役をやってみたい

 ・見つかっちゃうと問題になるけど、隠蔽して見つからなければ問題にならないから

 ・結界とか脆そう


 ・中で迷って帰ってこれなくなりそうで怖い


 そんな意見を頂きました。

 可愛い意見や脳筋な意見もあって楽しいですね。


「じゃあ隠蔽に決まりかなぁ。自分らで仕掛けた隠蔽で迷うなんて事は起こらないようにしようと思ってますのでご安心を。ここまでで何か言いたい事がある子はいる?」


 フルフルと首を横に振る天使たちが可愛い。


「じゃあ会議は一旦中断ね。俺は隠蔽の道具を用意してくるから、俺が戻ってくるまでは自由にしてていいからね。ついでにおやつも置いておくよ」


 話を切り上げて外に出る。コイツの説明を誤魔化したから一人でやるしかない。あんことピノちゃんは俺が使おうとしているモノに気付いていただろうけどね。


 さて、ここで取り出しますはオカモチサイズの願いを叶える箱でございます。

 適当に試して変な物が出ちゃったとかなったら洒落にならないので、慎重に行動したいと思います。


 ▼願望の器

 この箱サイズの物なら望んだ物を手に入れられる

 どのような物を望んだとしても、願った通りの物が出現する

 1度使うと消失する▼


 これさぁ......ってやばいよね。俺よりも地頭が良い人間ならこれを使って凄いことを考えられるんだろうけど、俺には無理だ。失敗したくないし。


 ・魔力で充電可能

 ・神をも欺ける隠蔽機能

 ・効果は目的地が認識できなくなり、偶然侵入してきてしまったモノは任意で拒絶できる

 ・一度設置した後でも移動させる事ができる

 ・効果範囲は任意で設定可能

 ・味方には隠蔽が機能しない


 望む物はこれでいいかな?


 ......どうせならもう一つくらい機能を追加しようか。


 ・味方以外のモノからの攻撃を反射する


 これでいいかな。俺の頭ではもう思いつかないし。

 では、お願いをしながら魔力を流していこう......これの使い方......これであってるかなぁ。



 チン!



 魔力を流し始めて数秒後、パンが焼けたような音がしたので願望器をオープン。


 お座りしたわんこの頭にとぐろを巻いた小さいヘビが象られたオブジェが出てきた。


 ......かわヨ。


 ニヤニヤしながらオブジェを眺めている横で、オカモチが音もなく崩れ去っていった。お勤めご苦労様でした。


 それにしても......すっげぇクオリティだわ。材質はパッと見大理石っぽいけど、どうせこれも希少なファンタジー素材を使ってるんだろうな。


 それでは鑑定さんお願いします。


 ▼神欺の犬蛇像

 スキル【完全隠蔽】【悪意反射】【永遠の迷子】を兼ね備えた像

 設定した範囲内にあるモノの存在を完全に隠蔽する

 主が認めたモノ以外が発する悪意のある攻撃を術者の身に反射する

 侵入者してきたモノを隔絶された空間内に閉じ込め、その中を永遠に彷徨わせる

 侵入者を外に追い出すか、閉じ込めるかを持ち主が選ぶ事ができる

 魔力がある限り劣化はせず、残存魔力が少なくなると警告音を発する▼


 よし、望んだ通りの物が出てきた。完璧だな。材料とかは見れなかった。

 恐ろしいスキルを内包してるけど、この像は俺の宝物とさせて頂きます。


 うちの子たちの事は皆大好きなんだけど、あんことピノちゃんは俺の中で別格の扱いなんだろう。

 この像の事は、祠か神棚みたいな物を建ててその中に祀ろうと思う。完成までは俺の部屋に置いておきます。寝る前と起きた後に拝もう。


 うし、皆のとこへ戻って報告しなきゃ。

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