第154話 チンコロ
つるんつるんなトカゲが完成し、トカゲに羽は不要ということで羽を捥ぎとってからポーションで傷口を塞いだ。
ちなみにウロコ取りで二匹逝った。最強生物(笑)のクセに根性ねぇな。
枝豆を莢から出す時の方が抵抗感があったと思えるほど、羽を捥ぐのは簡単だった。そしてポーション掛けただけでバランスを崩し、地面に顎や顔面をぶつけて二匹が逝き、羽を捥がれた時の痛みで一匹逝く。たったこれだけで五匹も逝ってしまった......
そろそろ限界っぽいトカゲに強めの威圧をぶつけてみたらショックで逝った。またつまらぬものを逝かせてしまった......
まだだ、まだ残弾はいっぱいある......じっくり殺っていこう。このスペ魔法、0か100かしか出来ないので、いずれ脆さの調整が出来るようにならないと......
ヨワヨワのトカゲを放置し、隠れ潜んでいるトカゲを探しに出掛ける。この洞窟の中も結構な隠蔽がされていて、いつもより集中しないと見つけるのに苦労する。喋るトカゲいないかなー。
一つ一つの穴に呼びかけていく。「今から十分以内に穴から出てこないと苦しんで死ぬ事になるよ」って。
出てこなければスペ魔法を流し込みながらバ〇サンを炊く。そして穴を塞ぐ。
きっと苦しさくらいは感じるだろう。ヤツらが苦しめば苦しんだだけこちらは気が晴れていくから、やり方なんてどうだっていい。
トカゲ共のアジトには別のボスと、隠している箇所か隠しエリアがあるのは何となく理解できる。あんピノ爆弾があれば、いつぞやの狂国でやった戦法ができて楽なんだけど......それに似た戦法を考えればいいか。
......うーん、ここに案内させた羽トカゲはこれ以上知らないっぽいし、もう使用用途は無い。他の場所も知っていれば鉄砲玉に出来たのになぁ......
......ッッ!!
そうか、別に俺が聞き出さなくてもええやんけ!
羽トカゲを使って、這いつくばってる禿トカゲから情報を聞き出させればいいんだ。
コイツ知性も結構あるし、案外役に立てるな。一度戻り指令を出す。
「あの土下寝禿から情報を引き出してきてくれ。特に他のヤツらが隠れてる場所とかを入念に。そして場所がわかったら俺をそこまで案内してくれ......上手くやれたら君だけは生かして逃がしてあげる」
ガクンガクンと首を縦に振った羽トカゲ。頼んだよ。
「アイツらが脅してきたらよく考えるといいよ。俺と他のトカゲ......どっちが怖いかを」
ショック死しない程度に威圧を強めながら話した。きっと賢いこの子は選択を間違えないでしょう。
話し合いをしにいく羽トカゲを見送り、俺は穴を潰しに向かう。
どのトカゲも先程の忠告は無視して引きこもっているからきっと、自重で潰れかけながらバ〇サンを目一杯吸い込みたいと言う意思表示と受け取る。
なので俺はその意思を尊重しようと思っております。
先程よりもスムーズに発現できたスペ魔法を穴に流し込みながらバル〇ンを炊き、穴の入り口をぴったり岩で塞ぐ。それをこの場にある穴が全て塞がるまで繰り返す。
皆が大嫌いな
もし隠れてるヤツにスペ魔法が届かなくて外に出てきたヤツがいたら、その時はその時で対処しよう。
◇◇◇
なんて事を思っていた時期が俺にもありました。
ヤツらは穴から出てくる事は叶わず、バッタバッタ死んでいき、穴の中にいたヤツらの反応は全て無くなった。
脆弱になったボディは殺虫剤の成分に為す術もなく蹂躙されてしまったんだろう。誇り高きドラゴンの正体は実はトカゲで、虫の因子もある種族だった......って解釈にしておこう。
いや嘘だ。前に地竜らしきのを食べちゃったから、虫の因子云々は冗談で言っている。
......実は虫の因子ありとか言わないよね?
よし、この事を考えるのはやめよう。
羽トカゲはどうなったかなーあははははー。
◇◇◇
羽トカゲの元へ戻ると、口が焼け焦げて死んでいるトカゲが十匹、口が凍って死んでいるのが三匹。
羽トカゲを殺そうとしてブレスを吐こうとしたんだと推測。体全体がヨワヨワになっているのに、そんなもの出そうとしたらどうなるのか......
うん、こうなるよね。
情報は聞き出せたのか尋ねると首を横に振った羽トカゲ。
コイツらは何かを隠しているのかと聞くと首を縦に振ったので、後ろに何かいるのは確定。
アイツらに俺の言葉が通じてるか聞くと、答えはイエス。なので、ボスの居る場所の情報を吐いたらギャーギャー騒いでくれと伝えてからトカゲの拷問を開始。
「今から残った君たちを痛めつける。楽に死ねるか、苦しみ抜いてから死ぬかは君達次第だからね。俺が欲しい情報は一つ......お前らのトップの居場所だ」
お馴染みの痛い槍を取り出して一番下っ端そうなトカゲに突き刺す。
今までの叫び声は喘ぎ声だったのかと思えるくらい、真に迫るような叫び声に変化した。
「この槍で刺されると痛みが数倍になる特殊な槍なんだ......凄いでしょ。死にかけたらポーションで治してあげるし、自殺しようとしてもしっかり回復させてあげるから安心してこの槍を味わってくれ」
残ったトカゲは六匹......この集団のボストカゲは後回しにして、部下からガッツリ甚振ろう。
部下をこれ以上苦しめない為に情報を吐くのか......それとも部下のされている拷問を見て怖気付き、自分の身を守る為に情報を吐くのか......
君はどっちのタイプなのかなー?
◆◇◆
――この世界で最強クラスの生物と謳われ、畏れららるモノ達の一角であるドラゴンという種族。
そのドラゴン達は今まで決して一枚岩ではなく、各個自由気ままに行動するのが普通だった。
好き放題暴れていれば当然敵が増えていく。
その結果弱い種族共が寄り集まり、ドラゴンを討伐していったりもするが、それでも好きな時に物を腹が満たされるまで食い、好きな時に寝て、好きな時に起きて暴れる生活が止められないのだ。
自らの親兄弟以外のドラゴンには仲間意識は皆無だ。自分が暴れた結果、自分以外のドラゴンが殺されようとも......自らの身内以外なら誰が死のうがどうでもいい。
そんな種族だった。
しかし今は違う。自分以外が殺されれば悔しく思い、我ら全てで報復を行おうとも考えるまでに意識が変化した。
今から数百年前に、我らドラゴンの前に突如現れて戦いを挑んできた龍がいた。
様々な種類のドラゴン達を圧倒的な強さで捩じ伏せ、それらを統括して国を作り出した龍。我もその時に捩じ伏せられた一体だ。
性別は無いと仰られたその龍。
オスの我から見ればとても美しい黒龍であり、メスのドラゴンから見ればとてもカッコイイドラゴンらしい。
強さこそ正義だった我々が、強さと
我らドラゴンは一つの集団になり、その龍は長となった。その後は長の指示の下、大昔に廃棄されたダンジョンを改造して国を興したのだ。
そんなドラゴン達の中でも特に武闘派だった我らは、力を蓄える時期と言われても理解しないようなヤツの集まり。元々荒くれ者で暴れたいだけのヤツらを部下に付けられ、日々暴れたいと文句を言う単細胞共のお守りをする毎日。
ㅤ攻め込む場合には一番槍として、普段は侵入者が来た場合は好きにやればいいという命令を仰せつかっていた。
......いや、もう違う。仰せつかっていただな。退屈な日々を過ごし、ようやくやってきた侵入者に心を躍らせながら立ちはだかった。
なんだこの人間は......この人間から感じる絶望感は、長と相対した時に感じた絶望感よりも遥かに上。
長から、近いうちに人間が一体ここまでやってくるから殺せと命じられていたが......長よ、こんなのがくるとは聞いていないぞ!!
血の気の多い部下が暴れるも、部下共々我も即座に無効化されて床に転がる。
人間の放ったよくわからぬ魔法で弱らされて拷問された。鱗を全て剥がすとは、この人間は鬼か悪魔だろうか。
その後、人間に寝返った小物を殺そうとした部下は自滅して死んだ。
残った我は身動きすら厳しい状況。人間の説明通りこれから散々甚振られて殺されるのだろう。
情報を吐けば楽に死なせてくれると言っていたから、せめて部下だけでも楽に死なせてあげてほしいのだが......果たして信じても良いのか......現状それを信じるしかないのだが。
長はこの人間が来ると知っていた。
そして、この人間からは激しい怒りが感じられる。
頭が良く、いつも冷静な判断をしてきた長だったのだが、一体この人間に何を仕出かしてしまったのか......
仲間達から裏切り者と罵られるかも知れぬが、この人間ならば自力で見つけ出すのも時間の問題だろうし、我もそろそろ限界。長らく続いているこの苦しみから、早く解放されたい。
長らく好き放題やってきたツケの精算がこの時なんだろう――
覚悟を決めて人間との繋ぎ役になっている小さきドラゴンに情報を話す。話し終わると人間は我らを甚振る手を止めた。
そして禍々しい大鎌を虚空から取り出し......残った我らの首を一振りで切り落とした。
◆◇◆
羽トカゲがギャーギャー騒ぎ出したので手を止め、話していた通り苦しまないよう大鎌でサックり首を落とした。
「情報は手に入ったんだよな......さぁ、お前らのボスの所へ案内しろ」
俺がそう言うと羽トカゲは頷き、洞窟の奥へ進みだした。
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