第146話 鬼畜ゲー

 これからピノちゃんと二人っきりで密室デート。デートと言うには色気が全くないんだけどね。


「初めての試みだからあんまり自信は無いけど、やってみて思った事があったらその都度俺に言ってね」


 ピノちゃんが頷いたので隔離空間を今出せる最大の大きさに展開。


 FPSと言うには自由さが足りない。動き回れない。

 今の俺では動いてる子に合わせて風景を移動させられないからだ......うん、悔しい。

 FPSっぽい雰囲気の皮を被ったスクロールしないTPSのような感じ。今後は要改善だろう。


 脳と多重思考のスペック、幻影のクオリティとスペックの強化が課題。やり始めてすぐだけど、もう既に挫折してしまいそう。


 でも、固定砲台の育成、訓練としては優秀と言えるんだよなぁ。


「ごめん......動いたら全てが台無しになるから、その場に留まって撃ってください......その代わり、360度+空中の映像は保証します。じゃあ敵を出していくね」


 同じ幻影使いだからだろうか、すぐに納得してくれたピノちゃん。

 空間はそこまで広くないので、敵は遠近法で近付いてきているように見せる。


 距離感は鍛えられるかもしれないけど、力加減は鍛えられない......悔しいなぁ......

 全力で攻撃をぶち込んでも、どこも壊す事はないってのだけは救い。


 敵に当たった判定と、撃墜のカウントは問題なく行えた。

 ピノちゃんは敵に対して熱線をビュンビュン打ちまくっている。


 打っちゃえば狙いは結構正確だけど、気配が感じられないからか索敵と照準合わせに苦労している様子。


 頑張って撃っている姿にほっこり。真面目な性格で素晴らしい。


 最後は増やしすぎた敵に全方向から囲まれ、一斉に襲いかかられたところでゲームオーバーになった。まぁうん......なんていうか、クソゲーすぎてごめんね。


 あんな敵は見たことない、何あれ怖いと言われた。

 ティ〇レックスとフ〇フル亜種が嫌だったみたいだ。モンスターの種類が思い浮かばないから、特別出演してもらったスペシャルゲストさんたち。



 さて、一段落着いたところで反省会。初めての試みは反省点がいっぱいだった。ピノちゃんと話し合って問題点をあげていった。


 ・弾が当たって敵を倒してから、敵が消えるまでのタイムラグ

 ・一箇所に留まっての防衛戦しかできない

 ・俺の脳味噌やスキルがアップデートされない限りこの残念クオリティが続く

 ・敵に気配が無い

 ・力加減とコントロールが本番と違う

 ・難易度調整必須

 ・複数人プレイ推奨


 とりあえず初回プレイの反省点はコレ。

 お次は良かった点。


 ・山や地形のクオリティはそっくり

 ・遠くから敵が近付いてくる光景はリアル

 ・最後の絶望感はやばかった


 ......無理矢理褒められそうな点をひり出してくれたピノちゃん。気を使ってくれてありがとう。

 三つ目は褒める点じゃないだろと思ったけど、俺らと居ると絶対に味わえないから一度全員に経験させた方がいいと熱弁された。


 そう言われてみて納得。絶対にそんな状況にさせる気はないけど、未経験と経験者では、いざという時の心持ちが変わってくる。

 焦るピノちゃんめっちゃ可愛かったし、他の子でも見てみたいな......ゲスくてごめんなさい。


 どうせ冬の間はやれる事少ないし、俺ら全員の成長を目指そう。

 個別で難易度ルナティックをクリア、エンジェルス全員で難易度シアンをクリア。これでいいよね?

 そう伝えたらピノちゃんが露骨に嫌そうな顔をしたけど、それは見なかった事にした。



 もう一度、さっきよりも露骨に難易度を落としたもの......ノーマルくらいの難易度をプレイしてもらったら、難なくクリアしたピノちゃん。加減が難しいと思いました。


 バイト代として醤油を塗って焼いた白玉を献上した。ご協力ありがとうございました。




 ◇◇◇




 テストを終えて外に出るとあんこ教員が見守る中、射撃訓練に勤しむツキミとダイフクがいた。

 天才型の指導がどのようなものだったかは知る由もないけど、真面目にやっていて偉いぞ。

 俺に会う前はステルス特化のお二人さん。戦闘はそんなにしてなかったみたいでたどたどしい射撃。それでも頑張ってる姿がプリティだから満点をあげちゃう!


 別行動をする事も多いから自衛、もしくは応援が駆けつけるまでの時間稼ぎくらいは出来るようになってほしい。だから頑張って。



 初めての授業参観で我が子を見守る父親&教育実習に来ている実習生の授業を見守る担任の先生目線になりながら、モフい授業を眺めた。


 ピノちゃんと一緒に見守る事一時間弱。ようやく本日の授業が終了した。

 お手本として弾を打ち出した後にめちゃくちゃドヤってるあんこが可愛かった。

 うまく撃つことができた事に喜ぶ鳥ちゃんズもたまらんかった。



 授業の後は全員で昼飯を食べてまったり。


 頑張った事を褒めてほしいらしく甘えてくる甘えんぼさんが左右の手を独占している。

 両手が幸せで脳が溶けそう。甘えんぼさんたちを撫でながら午後の予定を説明。


 皆に一度体験版をプレイしてもらうから順番を決めておいてほしいと伝えると、もふもふ会議が始まった。エモいわぁ。

 ピノちゃんは俺のポケットから顔を出しながら会議の様子を眺めている。その時の顔がこれまたいつもの悪そうな顔......これから先はもう、こういう時にはこの悪どい顔がデフォルトになるんだろう。


 難易度は、自分が最初にやった時と同じのにしろってピノちゃんに厳命された。もちろん手抜きはしないよ。

 鬼畜難易度のクソゲーに絶望する顔、見てみたいもん。


 ふむ、興奮してきたな。




 ◇◇◇




 結論から言おう。


 最高だった。


 あんこ、ダイフク、ツキミちゃんの順番で挑んでもらったんだけど、あんことツキミは今俺に抱かれている。ダイフクも珍しく俺にベッタリくっついている。


 あんこはピノちゃんと同じくらいのところまで進み、モン〇ンの敵オールスタースタンピードでゲームオーバー。


 ダイフクが一番下手くそで、バブルヘッ〇ナース、リッ〇ーとゾンビ犬ゾーンでゲームオーバー。


 ツキミちゃんはタイ〇ント、シザ〇マン、レッドピラミッ〇シングの三大有名ホラゲボスゾーンでやられていた。


 怯えも見せずに淡々と襲ってくるモンスター共が怖かったらしい。

 最序盤は倒す毎にドヤってたけど、段々と敵が増えてきて、こっちじゃお目にかかれないヤツらが出てくる頃には必死になっていた。


 ゲームオーバー寸前、涙目で魔法を乱射している姿を見た時は新しい性癖が開きそうだった。ピノちゃんも満足そうにしていた。


 で、現在......震えている天使たちを慰めている最中です。


 これからは楽しんでスキルアップできる難易度を見極めてやっていこうと思います。クソゲーでごめんなさい。



 その後、落ち着いた皆と二周目のプレイ。


 一度絶望を味わったからか、油断も隙も見せない堅実なプレイでノーマル、ハードと順調にクリアしていった。ダイフクとツキミはギリッギリでのクリア。


 あんことピノちゃんはヘルモードに挑み、ダイフクとツキミはハードモードを周回して射撃の腕を磨いている。


 これ、もうFPSって言える雰囲気じゃないよね。知ってる。

 俺の知識とスペックだと、移動不可のガンシューティングサバイバルホラーアクションにしかならなかった。最新のゲームみたいなのは再現できねぇっすよ......

 でも、もっともっと頑張って、最高のゲームを作れるようになるから、それまで待っていてください。



 皆の休憩中に俺もやってみたけど、脳の処理が追いつかなくて序盤でゲームオーバーになった。悔しい。

 いいとこを見せたくて、ピノちゃんに似たようなモノを作れないか聞いて、試してもらった。


 とっても悪どい笑みを浮かべながら『やってみるよ!』と言ったピノちゃん。

ㅤ碌でもないモノが完成するんだろうなぁ......と思っていたけど、案の定碌でもないモノを作ってきた。


 敵モンスターとして出てくるのが、敵意を剥き出しにしながら襲いかかってくるあんこ、ダイフク、ツキミちゃん、ピノちゃんと時々ヘカトンくん。


「鬼! 悪魔! ピノちゃん!」


 逃げ惑う俺に襲いかかる幻影の天使たち。

 ゲームオーバーは存在せず、時々本物のピノちゃんに噛みつかれながら、精神攻撃を受け続けていった。


 いつもの可愛い天使たちならご褒美な案件だったけど、敵意剥き出しで来られると心が抉れた。

 ピノちゃんがすっごい笑顔だったから、それをわかっていてやってきていたんだと思う......くそぅ......


 ちなみにこのゲーム、一番上手だったのはヘカトンくん。

 百の腕と五十の頭で岩をぶん投げ、迫り来る敵をドンドン撃ち倒していった。ヘルモードを一発クリアとは恐れ入りました。


 ルナティックモードでは為す術なく敗れ去ったが、俺の中で拠点防衛のスペシャリストとしてヘカトンくんの評価がぐーんとあがった。


 彼女らの今後の成長に期待しよう。

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