第143話 テンションHIGH & LOW
おっきくなったあんこに押し倒されている絵面からの目覚め。おはようございます。
あんこと同衾する時はもう掛け布団なんていらない。毛布なんていらない。
お嬢様は寒さに強いから敷布団が気持ちよければいいみたいだし、俺はお嬢様に包みこまれて眠る。完璧だ。
最近は寝惚けての冷気お漏らしもなくなり、寝てる途中でヒャンッてなる事もなくなった。
ギュッと抱く力を強めると寝ていても表情が緩むあんこが愛おしい。起きるまでの間はずっと抱きしめながら背中をさすっていた。
途中から寝起きでふわふわしているピノちゃん、ツキミ、ダイフクが乱入してきた。おっきくなったあんこのモフみは皆も気持ちいいと感じるらしい。
ピノちゃんは俺とあんこの間に挟まり、ダイフクはお腹のあたりに収まる。ツキミちゃんはあんこの背中に......
......あわよくば俺の撫でる手が当たればいいなって考えているんだろうな。可愛い。
左手でツキミちゃんも巻き込んで撫でる。俺の位置からは見えないけど、喉を鳴らしているから喜んでくれているんだと思う。
それからは起きたあんこも含めて皆とイチャイチャしてから朝食。
今日もゆったりした朝。ヘカトンくんごめんね。
さて、食後のまったりタイム。思い思いの体勢でダラける小動物たち。実にハートフル。
野生では隙が大きすぎて絶対に有り得ない光景。
へそ天でダラけるわんこ、蛇、オウル。すっげぇ可愛い。
優しく撫でながら、バカなヤツらに奪われることなく無事に回収できたアクセサリーを机の上に並べていく。
黒を基調としたチョーカーの真ん中に煌めく翠色の宝石それが四つ。
▼シルフの涙の原石
エルフの国で王族が好む宝石の原石
風属性との相性が抜群で、威力が増し、消費魔力を抑える効果を持つ▼
という、ウチの子たちには余り恩恵の無い宝石を使ったんだけど、完成したチョーカーは素晴らしい出来栄え。
本当はネックレスにしたかったんだけど、動き回るこの子たちには邪魔になりそうだからチョーカーになった。
ピノちゃん以外はネックレスタイプでも問題は無いんだろうけど、ピノちゃんだけ仲間はずれは嫌だもの。
リボンとかを嫌がらないこの子たちだから多分大丈夫なはず。首輪はオシャレじゃないから初めから除外していた。
収納から出すとすぐに嬉しそうな反応を示してくれたので、嫌じゃないのは確定。よかった。
そして俺用。
ガチモードの時はスーツ姿なので、チョーカーは断念。あのスーツ、ネクタイまできっちり締めないと効果が十全に発揮されなかった。
それでも破格の性能なんだけど、もしもの時にこの子たちを遺して俺だけ殺られるのは避けたい。
お揃いの誘惑を泣く泣く見送った。それでも諦めきれずにチョーカーに最大限似せたブレスレットタイプを作成してもらった。
それで俺の本命はネックレスタイプ。元があまり大きくないので、宝石を使っているがとてもスタイリッシュな仕上がり。大満足。
▼魔王の卵
物騒な名前のブラックサファイア
『何色にも染まらない存在の確立』と云う効果を持ち主に与える▼
よくわからない効果をお持ちなこのベ〇リットみたいな名前の宝石。いつか効果を実感する時はあるのだろうか。因果律って単語が説明に入っていなくて本当に良かったと思う。
「普段からずっと着けてって訳じゃないけど、全員でどこかにお出掛けする時とか、特別な時とかに着けて欲しいなと思って作ってもらったんだけど......どうかな?」
知っていたツキミとダイフクはすぐに了承してくれた。お揃いのモノにテンションが高いあんことピノちゃん。
よし、プレゼント作戦は大成功。皆ウッキウキで可愛い。
もしこのアクセサリーが掠め取られていたらヤバかったな。ハハッ。
皆の姿を写真に収めた後は本日も自由行動と伝える。まったり過ごしてのびのびと育ってほしい。
外に出た俺はヘカトンくんの元へ。
慣れていない事をするから上手く出来るかわからないけど、頑張っている子には報いてあげたい。
俺が近付いてきた事を察知していたらしく、健気に駆け寄ってきたので頭を撫でてあげる。ぶんぶんしっぽが幻視できる......君はほんとにもう......
見回りとかを頼むと、敬礼してから走っていった。
一人になった俺は劇団ウッドを取り出してバラし、板や柱を作っていく。釘等の小物は輸入に頼る。コンクリとかは早く乾くヤツを、と意識して取り寄せた。
さぁこれから建築だ。基礎工事とか大事なんだろうけど、やり方が全然わからない。
地盤を固めるとか、コンクリや鉄筋でアレコレしてる程度の知識しかない。ましてや木造建築なんてわかるはずもない。
しかし、やるしかない。
柱となる部分を地面に突き刺し、巨大なハンマーを取り寄せ、それで地面を叩く。ダメならダメで成功するまで色々試せばいい。時間なんて腐るほどある。
続けていると地面がカッチカチになった。あっているかわからないけど、結果オーライ。人外のパワーがいい感じに作用してくれたんだろう。
そこからは建設予定地の外周に沿ってブロック並べていき、コンクリを流す。漏れたら漏れたでいい。結果的に固まってくれて隙間を埋めてくれる事にだろう。
たぶん。
......ここまでやってから思っても遅いけど、ぶっつけ本番で作る必要はなかったな。ヘカトンくんや俺らなら、もし建物が倒壊しても死ぬ事はないだろうけど......本当に住まわせていいんだろうか。
まぁアレだな。一度完成させてみて、ダメそうなら消滅させよう。これも勉強だ。
乾くまで何しようかなと考えていたけど、みるみるうちに固まっていくコンクリ。アロンア〇ファもびっくりな速乾性。
「パねぇなおい」
ここまで早く乾くとは驚きだ。ありがとう召喚能力、ありがとうご都合主義。
予想外に早く基礎部分の施行を終えられたので、にわか知識満載で床部分を組み、作成していく。
糸を惜しげも無く使って支えながら全力で建てる。建材はそこそこ高級な素材、それらが慣れ親しんだ糸のお陰で綺麗に切り揃えられていく。不格好になるかもしれない。しかし、クオリティはいい物を作りたい。
あっという間にフローリングっぽい床が完成。色々誤魔化す為に畳を敷き詰めた。これで寝るのには問題ないと思う。きっと。
家を建築している現場で見た映像を必死に思い出しながら、屋根や壁を作っていく。壁と壁の間に断熱材を挟んだりした。
こうしてうろ覚え知識をふんだんに盛り込んだワンルームハウスが完成した。
間取りとかは意識していない。ヘカトンくんのお家の予定だから部屋を分ける必要はないかなーって。
もし欠陥があったとしても、一冬くらいはしっかり越す事はできるだろうと思う。
俺も入れる大きさ、ウチの子たちも遊びに来れるように作った。
......ダメだな。こんな不確定な物をすぐに引き渡すべきじゃない。まずは俺が被検体になるべきだろう。
今日一日ここを俺が使ってみて、問題が無さそうならヘカトンくんに引き渡そう。そうしよう。
独り寝になるのは仕方ない。寂しいけど我慢するしかないな。
一つだけ言える事は、床と地盤に関してだけはアホほど頑丈になっている。これだけわかっただけでも充分だろう。
時刻はもう夜になりかけている。
お昼ご飯は作業に集中してたせいであげれていない。本当に申し訳ない。
お腹空かせてると思うので、お詫びに夕飯は皆大好き魚料理にしよう。
急いで拠点に戻り、皆にガチ謝罪。
「ごめんなさい。熱中しすぎてた......その代わり夕飯は期待してくれていいからね!」
おやつ類をちょこちょこつまんでたから大丈夫だよ......と、土下座している俺にフォローをくれた。ダメなパパでごめんなさい。
夕飯を食べてお風呂に入り、皆を寝かしつけた後に拠点から抜け出す。
どんな感じで過ごせるかなーという楽しみ半分、独り寝の寂しさ半分のハイブリッドな気持ちで家に向かった。
「............は!?」
中央付近で折れたと思われる棒が、数本立っているのが見えた。
「うそやろ」
拠点からある程度離れていたから、音とかに気付かなかった事は仕方ないと言えば仕方ない。
ㅤ......まぁうん、お家は倒壊していた。
地面に突き刺してあった柱が悲しい。無駄にカッチカチに作った床部分だけは無事だった模様。
にわか知識満載だったので、どこがどうダメだったのかさっぱりわからない。
自信満々にドヤっていた自分が恥ずかしい。
「なにが一冬は越せるだろうだよ......ヘカトンくんを即入居させなくてよかった......」
建設中は、奇跡的なバランスの上に成り立っていたらしい。
「生産系の才能の無さが悔しい......ダンジョン攻略してスキルクリスタルを乱獲して、それを用いたスキルガチャ無双をするべきなんだろうか......」
初めての建築物を完全に消し去り、重い足取りで拠点に戻って不貞寝した。か、悲しくなんてないんだからね!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます