第137話 緊急会議
気持ちいい感触で荒みかけていた心が癒されていく。
ウチの子たちは世界一なんやぁぁぁぁ!!
もこもこともちもちをギュッと抱きしめながら【千里眼】を発動させて、先程の職人を覗いてみる。残念ながら特に何も無く、移動している最中のようだった。
ダイフクに全て任せていたら、いつまでたっても【千里眼】が成長する事が無いから、なんとか上手に扱えていますよーってくらいにはなりたいと思い、このまま【千里眼】の特訓。
一度確認した事のあるヤツが、どこにいたとしても見る事ができるってのはすっげぇ強力なんだけど、無防備になるってデメリットはどうにかならないかねぇ......
ツキミと一緒に居たことによって、ダイフクがこの能力を安全に使えていたのはよかったと思うよ。
【多重思考】さんを発動させて体の制御をもう一つの思考に任せ、【千里眼】を使用しながら動けないかを確認。
......意識は戻ったけど、体は動かせない。二窓視聴している気分になっただけ。
一応安全さは増したな。うん。
四つ程意識を増やして体を動かしてみようと考える。
......が、ダメッッ!
電池の切れたコントローラーでラジコンを動かそうと頑張っている。そんか気分。
スキルのデメリットって強力ぅぅぅ......
目を閉じて全集中......計十個の思考まで増やしてみたけれど、体は動かせないので諦める。増やせる思考は今の所、十が限界らしくてそれ以上をやろうとしたら鼻から液体が漏れている感覚......脳もなんか熱い。
【千里眼】と【多重思考】を解除して戻ってくる。鼻の液体を拭うと、手が赤い。鼻水ではなく鼻血だった模様。
鼻血を出している俺を心配してくれたのか、ダイフクとツキミが綺麗な羽根を惜しげも無く使って、鼻血を拭き取ってくれていたから急いで処置をする。
そんなばっちぃのを、君たちの美しい御身体で触ってはいけませんっ!!
嬉しいんだよ。嬉しいんだけど、君たちの羽根は国宝なんて目じゃないほどの貴重さなのよっ!!
俺如きの血を拭く為なんかに使って穢さないでっ......
「心配してくれたんだよね。ごめんね」
ウェットティッシュでキレイキレイする。真っ白な羽根に血痕が残らなくてよかった......血はなかなか落ちないからね。
ツキミちゃんもキレイキレイしてから、自分の顔の血を拭き取る。
脳を酷使して鼻血を出す描写はたまに見るけど、本当にこんな事になるんだねぇ......驚きですよ......
えぇ、脳の限界や肉体の耐久値を見定めるのは大事。外的な攻撃には無類の強さを発揮するマイボディだけど、調子にノッて内部から崩壊する系はあかん。
特に愛しの我が子たちの前でそうなるのだけはダメ。いらん心配をかけちゃうのもそうだし、目の前で死亡とかしたらトラウマを与えてしまう。そして......孤児になんかさせんっ!!
【千里眼】使いにくいなぁ......ダイフクと違って俺はデカいから、使用しながら移動させて貰うのは難しい。あんこに乗せてもらいながらとかではないと、普段使いは無理そう。
......もうこれの検証は今はいいや。
ダイフクにちょこちょこ覗いてもらって、誰かが接触してきた時に教えてくれと頼むと即オッケーしてくれる。最近優しくなってくれて嬉しいよ。
観光する気も無くなっちゃったのでもう帰ると王女に伝えた。一週間程で品物は完成するらしいので、次回来訪はまた一週間後となった。
アレだけ派手にヤッたのを見た癖に、俺に対して何か企んでいると思われるアホ王子。
ㅤバカ貴族とかに担ぎ上げられてるのか知らんけど、何かしてくんならやってみなさい。
◇◇◇
拠点に戻るとすぐにあんことピノちゃんがこちらへやってきて、ツキミとダイフクに詰め寄った。ちょっとピリピリしてる......のか?
でもね、パパンの事スルーしないでほしいの......寂しいじゃないか。おかえりって言って欲しいのよっ!
............。
........................。
悲しい。もういいもん。
脳みそヤバいくらい使って疲れたし、不貞寝してやるぅぅぅ......
◆◇◆
一方その頃......
『ねぇ......なんで......なんで君たちの羽根にご主人の血の匂いがついてるの?』
『アラクネに攻撃されたの? それともお前たちが攻撃して血を出させたの?』
あんことピノがピリピリしていたのは、シアンの血の匂いに反応した為。
彼女らでも一度嗅いだ事があるかってくらい、血を流さないシアン。
そんな彼の血の匂いがベッタリ羽根に付いていたので、少し怒っている。
『【千里眼】を使って何かしていたと思ったら、急に鼻から血を出した』
『いっぱい出てたのに動こうとしないから、ワタシたちの羽根で拭いたの』
いつもの優しい雰囲気と違うあんことピノに気圧されるも、その時の状況をしっかり説明した。
基本的に彼女らは嘘は吐かない。吐く必要もない。
説明がなされた事により、先程までの重苦しい雰囲気は無くなった。
まだ新入りのツキミとダイフクにとって、生物としてまさに雲の上の存在であるあんことピノ。
彼女らの怒気を孕んだ空気を浴び、生きた心地がしなかったであろう。
ちなみにこの会話は訳されたものであり、実際には可愛い鳴き声を出している小動物たちが輪になっている光景。
彼が不貞寝をしていなければ、また鼻血を噴き出していたであろう光景だ。
『疑ってごめん。兄さんに血を出させるほどの威力をだせる訳ないもんね......ちょっと取り乱した』
『今まで血の一滴くらいしか出していなかったのに、べったりと血の匂いがついていたから......ごめんなさい』
彼が今よりも脆かった時に、少しだけそんな機会があった。それ以来全然そんな機会が無かったせいで、そこまでになってしまう事態が起きたのかと心配になった。
帰還後、即飛びつかなかったのはシアンが元気そうだったのと、血の匂いの濃いツキミとダイフクが、彼に何かしたのか問い詰める為であり、シアンを心配していなかったわけではない。
子の心、親知らず。
『血を出したのは、ご主人がまた変な事を試したから......なのかな?
でもアラクネさんの所にいったはずなのに、どうしてそうなったのか詳しく教えて?』
『あっちに行ったらずっと見られていたの。監視されている感じで、いつも見られている雰囲気じゃなかったの』
『あの人が警戒してたから城の中ではずっと一緒にいた。それで対象っぽいのと接触した後に、僕とツキミを抱きしめたまま【千里眼】を使用した』
『しばらく動かなかったんだけど、急に鼻血を噴き出して......心配になったから私たちで血を拭って......それで動き出した後に、ワタシたちを拭いてから帰ってきたの』
『ふーん......そっか。兄さんを狙うようなヤツらがアラクネの中にいたんだね......』
『わたしも血を拭いてあげたかった......むぅ。それで、ダイフクはご主人が警戒していたヤツを監視できるんだよね?』
また剣呑な雰囲気に戻るあんことピノ。今回は自分らが責められていないので、ツキミとダイフクは先程のように怯んでいない。
『見たよ。だからあの人が起きるまで監視する。僕とピノで相談とかしてるから、あんことツキミはあの人の側にいてあげて』
『......わかった。でも、話し合った結果は後でしっかり教えてもらうからね』
『お願い。お姉ちゃん行きましょう』
あんことツキミが去っていく。起きた時に一人だと拗ねるのをわかっている。
起き抜けに甘えるのも、甘えられるのも大好きなので、シアン、あんこ、ツキミ......全員役得。
残ったピノとダイフクは作戦を練り始める。
とは言っても、付いて行った時のポジショニングやら、怪しそうなヤツらのマークをどうするかなど。
ダイフクは【千里眼】を昔から使っており、監視をしながらでも喋る程度の事はできるようになっている。
シアンも使い続けていけば、今後それくらいはできるようになる。
従魔会議が終わってしばらくしてらシアンは目覚め、目覚めた時に傍にあんことツキミがいたので無事に御機嫌となりましたとさ。めでたしめでたし。
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なんだかんだ皆仲良し。
おまけ:呼び方一覧
あんこ→わたし
シアン→ご主人
ピノ→ピノ
ツキミ→ツキミ
ダイフク→ダイフク
ピノ→自分
シアン→兄さん
あんこ→姉さん
ツキミ→ツキミ
ダイフク→ダイフク
ツキミ→ワタシ
シアン→主
あんこ→お姉ちゃん
ピノ→ピノさん
ダイフク→ダイフク
ダイフク→僕
シアン→あの人
あんこ→あんこ
ピノ→ピノ
ツキミ→ツキミ
シアン→俺
ピノ→ピノちゃん
ツキミ→ツキミちゃん
ダイフク→ダイフク
あんこ→あんこ、お嬢様、お姫様、エンジェル等
全員→ウチの子、天使たち等
ㅤダイフクのみ、皆呼び捨て(笑)
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