第134話 夢の宴
肉が俺を待っている。
肉が美味しく食べてと囁く声が聴こえてくる......(空耳)
極上のお肉。やっとここまで辿り着く事ができた。長かったッッ!!
楽しそうにお茶会を楽しむ王女さん一行を放置して肉パの準備に取り掛かる。
メイドは積極的に手伝うべきだと思うけど、ポンコツメイドたちwith王女は我が子たちに骨抜きにされている。
一度バーベキューを体験してるから手伝えるはずよね、君たちは。
手伝おうとしてくれているのは敏感メイドちゃんだけだよ。この中でメイドと呼べる存在は、どうやらこの子だけだったらしい。
どうなってるんだよ、王族に仕える万能メイドのクオリティは!!
なんか最近メイドさんもアレな疑惑が濃厚になってきた。「さん」がFAで移籍していくのは時間の問題かもしれない。
ピノちゃんを呼んで、三人で下拵えタイム開始。
野菜類のカットを頼むと張り切りだすホワイトスネイクとメイドちゃん。
慣れた手付きで小気味いいリズムで野菜をカットしていくメイドちゃんと、糸でスパスパしていくピノちゃん。
我が軍の主力であり、ダブルエースの一角であるピノちゃんはやはり流石でございます。
そしてドラフト三位ルーキーのメイドちゃん。
ロマン型だが即戦力にもなり得るユーティリティープレイヤーとの前評判通り、短い期間で一軍に昇格。そして見事スタメンの座を勝ち取った。
役に立たないドラ一、ドラ二を押し退ける活躍。お見事と言いたい。
完全にお任せしていいと確信を得たので、俺は薬味類担当です。
本日予定されているラインナップはこちら。
大根、生ワサビ、ニンニク、ショウガ、柚子胡椒。
大根は言わずもがな、万能すぎる名選手。どの球団も三番か五番を打ってほしいんじゃないだろうか。
生ワサビはクローザーかリリーフとして是非欲しいところだね。ヒリつく試合展開の時に活躍してほしいものだ。
ニンニクは六番ファーストorDH。チャンスで回ってきたらぶん回してほしい。細けぇこたァ言わねぇ......ホームランor三振でいい。
ショウガは是非勝ちパ、七回を投げてほしいほどの安心感と信頼感。これが打たれたら仕方ない。
柚子胡椒......小技タイプの二番か、掻き回すタイプの八番をやってほしい。頼もしいベテラン。
まぁ柚子胡椒は完成品を使うけど。
大根おろしはこの機会に大量に作っておく。いくらあっても問題はない。大根サラダ用に細切りも欲しいので、そちらはカット班にお任せ。
生ワサビもすりおろしていく。爽やかでありつつも、ツンとした香り......好き。
すりたてが一番なんだろうけど、時の止まっている収納があるから問題無し!!
晩秋から冬にかけてが旬なんだって。
ついでにみじん切りにして醤油漬けも作成。
ニンニクはスライスとすりおろし、ショウガはすりおろしと針ショウガ。
ここに名が挙がっていないネギは既にカット班にお任せしている。
薬味の下拵えを終わらせた後は大事な大事な鉄板と網、炭の準備。
タレは市販の物を使う。
タレを作る時はリンゴやらなにやらを使う。もちろん果物なんてものは顔も見たくないレベル。見ないで済むならそれに越したことはない。
すりおろしや果汁を調味料に混ぜる程度なら平気だけど、実の固形や味がハッキリわかるのはNG。
なんか精神疾患レベルで歪んでいる。矛盾も生まれている。言い表せない感情。
加工されていない果物......ムリ、ゼッタイ。
カット班を見ると、大量の野菜類がキレイに切り分けられていて、残りの野菜は少なくなっていた。マジ助かる。
ひと仕事終えた俺らはお茶会会場まで戻り、メイドちゃんに白い目で見られている駄メイドを肉回収の為に送り返した。
王女はもう、アレだ。食いしん坊万歳。
幸せそうだし......うん、放置でいいか。好きにしてくれ。
うちの子たちはいつも通り可愛い。
「メイドちゃんありがとね。これからも色々頼むと思うけどよろしく」
大分俺からの評価が上がっているメイドちゃん。声をかけたら嬉しそうに「はい!」とお返事。
しばらく休んでいてくれていいよーと伝えて、俺はタレの準備にはいった。
◇◇◇
納得のいく味に仕上がりご満悦。肉を取りに行かせていたメイドコンビを喚び戻して肉を受け取り、肉を確認。
まるで肉のジュエルボックスやぁぁぁ!!
美しいお肉、美しいホルモンがお出まし。
内臓も全てキレイに処理されていたので驚いた。食べる文化あったんだね。
前回解体したヤツらの内臓が無かったのは、臭すぎて食えたもんじゃないらしい。
いい気配り助かる。受け取りに向かわせている最中に、もし捨てられていたら......って思って気が気じゃなかった。やるやん解体職人。
普段食べない部位もあるらしいけど、一応全て残しておいてくれたんだって。
解体職人にボーナスあげなきゃ......
ピノちゃんとメイドちゃんに赤身肉のカットを頼む。
前回のを覚えていたみたいでピノちゃんが張り切ってる。可愛い。
俺は内臓を担当。今日は俺の特に好きな部位だけ。内臓は好き嫌いがわかれるし、俺が食べたいのだけにしておく。
まずは大本命のレバーさんから。いや、レバー様だな。
スライスして皿に盛り付ける。今回はレバ刺しオンリー。
次の牛を解体した時は焼きも作る予定。刺しの魔力に負けなければ。
続いてハチノス。丸々見るのは初めてだ......見た目のインパクトがやばい。
後はハツとギアラ。好きな部位の中でも比較的クセの少ないのをチョイス。
残りのホルモンは個人で楽しむ。ウチの子たちがホルモンの味を覚えるにはまだ早いと思うの。うん。
お肉カット班も順調に進んでいた。
......赤身肉を確認して思う。サシがある部分少ねぇけど、肉感がビンビンに伝わってきている。
ローストビーフやしゃぶしゃぶも良さそう。
切り分けたお肉をタレに揉みこんだり、塩コショウしたりと大忙しだった。ふふふ......もうすぐだ!
◇◇◇
「みんなー焼肉パーティーの準備ができたよー!!
ピノちゃんとメイドちゃんがいっぱい手伝ってくれたから、お礼を言ってあげてねー」
気まずそうにしているアラクネたちと、無邪気にお礼をしているエンジェルスwithヘカトンくん。
「最初だけはドンドン焼いて、焼けた物から皿に乗せていくけど、それ以降は自分で焼いていくスタイルでお願いね。メイドたちは王女さんの分やウチの子たちの分も焼いてあげたりするんだよー」
はい。という事で焼き始めマース。
野菜ゾーン、タレ肉のゾーン、塩ダレ肉のゾーン、その他のゾーンがある。
焼きしゃぶ程度の焼き具合でも、問題なく食えそうなキラキラの赤身肉。とてもいい香りが広がっていく。
この赤身肉のステーキ......ワインと一緒にドカ食いしたら銃創がみるみるうちに塞がりそう。
この肉で熟成肉を作ったら、美味しいんだろうなぁと思うもやり方がわからず。悔しい。
焼けた物からドンドン皿に乗せていく。初回サービスはこれで終わりだよ!
次からは本当に焼かないから、個人で食いたいのを焼いてってね。
皆が食べだしたのを見て俺も一口......。
「......ッッ!!」
......ハッ......危ない危ない......服が全て破ける世界観じゃなくてよかった。
サシの少ない赤身肉の美味さは知っていたけど、何コレやばいとしか言えない。
語彙大先生はお亡くなりになりました。大往生です。
皆さん声にならない声をあげていたと思ったら、目付きが急変した。獰猛な肉食動物の目になっている。
あんこだけは、そんな目付きしている場面は見たくなかったなぁ......
一心不乱に肉を食べているのは、とても微笑ましく思うんだけども。
はぁ、しっかり皆で分け合って食べるんだよ。
では、これから本日のメインイベントのお時間となります。
............この様子なら、こっちに意識を移すことは無さそう。もういいよね。
いい加減、我慢の限界だったのよ。
お待たせ致しました。レバ刺し様ァァッ!!
生ビールの残弾よし!
薬味よし!
塩、ゴマ油よし!
覚悟よーし!
では............
全て遠き理想郷へ......いざゆかん!!
―――後日、彼はこう語った。
飛んだ。やばい。無限に食える。むしろ飲める......と。
これから先、火を通したレバーを食べる機会はほとんどないだろう......と。
そして、ちょっとこれから肉牛の繁殖に力を入れるわ......と。
──────────────────────────────
いくら美味しくても、法律でアレなのでダメ、ゼッタイ。
あの頃を思い出して書いてみたけど、食べたい欲求が強くなりすぎたのでカットしました。
あくまでファンタジーですので、本気にしないようお願い致します。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます