第128話 牛を求めて......2
ㅤ“生”
人間はその一文字にとても固執する。
生きる事、生食、交尾などなど......
人類の中でも特に日本人は、尋常ではない拘りを見せつける。生食や食文化に対しては。
刺身が代表格であるが、最近は寿司などは海外の人にも認められているので、そこはもう企業努力お疲れ様だ。
しかし、生卵を食うのは今でも狂っていると思われるらしいけど......SUKIYAKIには必須なんだから、ジャパニーズ生卵はもう認めようぜ。
これを聞いてわかるように、日本人の食への拘りはある意味異常とも言える。カルチャーは色々あるから、日本人から見た外人の食文化で、おかしいと思えるのもあるけど......
テトロドトキシンを含むあの魚の毒たっぷりの部位を、何故か毒が消える加工方法を生み出し、メカニズムも説明できていないのに食べるとかヤバい。
ゲテモノほど美味い、死んでもいいから食いたい、海外だとデビルフィッシュなんて呼ばれてんの?まぁ食うんだけど、藁に入れて運んでたら糸を引く腐った豆になったけどとりあえず食べよう......など、最初に口にした人はヤバい。
かなりの数の先人たちの好奇心と犠牲の上に成り立っているんだと思うのよ。
ㅤなのに近年になって規制するとかちゃんちゃらおかしいな!政府よ!
テンションがおかしいって?
知ってる。生レバーが食いたいねん。
偽ユッケが美味しかったから、余計にその気持ちが強くなってる。
最高に美味い牛肉を作って食べたいんや。
ぷるっぷるの新鮮なレバ刺しを、ごま油と塩、薬味を添えてズルッと......
幸いこの体に毒は効かない。腐った物を食いたいとは思わないけど、生で食う......それくらいは許されるだろう。異世界だし。(※絶対に真似しないでください)
よし、今日も牛を探すぞ!!
◇◇◇
素材ツアー二日目、今日のオトモア〇ルー......もとい、お供はあんことツキミ。
昨日探索した場所からもっと東寄りにある場所へと向かいましょう。
久しぶりにローブを着てフードにあんこを入れると、ツキミちゃんも一緒にフードに入っていった。
結構いっぱいいっぱいな雰囲気だけど、キツくないのかね。それでいいなら俺は何も言わんけど。
俺は狭い場所であんことツキミにサンドされたいと思っている。もし入れるなら入りたい。
楽しそうにフードの中でじゃれ合っているように感じられる、甘えんぼさんたちの鳴き声をBGMに走りまくって本日最初のポイントへ到着。
六箇所目、拠点からほぼ東に位置する林以上森未満の、木が生い茂った場所。
うん......こんな場所に牛は居なそう。
その予想は正しく、この前の狩り勝負で俺が狩ったイノシシの群れがいた。
キノコ狩りをしている人を襲うイノシシ。迷惑極まりないよね。
次いってみよー!
◇◇◇
正直ハズレだと思っているけど、可能性がゼロではないなら向かうのがローラー作戦の悲しいところ。
七箇所目、さらに東へ進んだ位置にある森っぽい場所。
ツキミちゃんは俺の周りをクルクル飛びながら着いてきている。可愛い。
そんな中見つけたのは、大家族のクマさん。
▼オセロベア
オスは黒白黒、メスは白黒白の体毛のクマ
メスの手は高級食材▼
挟まれても真ん中の色は変わらないんだね。
毛の処理とかめんどいらしいし、クマの手は食べようとも思わない。仲睦まじく暮らしてね。毛皮を絨毯にしてみたいって少し思ってしまったけど。
ピノちゃんとダイフクでツキミをサンドすると、白くなった......とかできたら面白そう。まぁ無理だよな。
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
◇◇◇ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
八箇所目、俺を乗せれるほどの大きさになったあんこに乗せてもらって目的地まで向かった。極上の毛並みのあんこに、体全体でしがみついて至福の時間を味わった。
ギュッとされて嬉しかったみたいで、途中からスピードがヤバかった。
目的地に居たのは、いやに清潔感のあるゴブリンっぽい緑色のヤツ。
............お前、ゴブリンであってるよな?
▼ゴブリンジェントル
ゴブリンの突然変異種
冒険者やクソみたいな貴族なんかよりもよっぽど紳士だが、月に二回ほど本能に負ける▼
▼ゴブリンレディ
ゴブリンの突然変異種
貴族教育のお手本になりそうな程に立派な淑女だが、月一ペースで本能に負ける▼
......見てはいけない物を見てしまったような気分。
ヤンキーの良いことをしてる場面や、自称清楚がヌコの皮を脱ぎ捨てているシーンみたいな。
城で執事やメイドとしても働けるよね......デメリットを無視すれば。言葉はゴブゴブ言ってるだけだった。
さぁ次行こう。次だ、次。
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
◇◇◇ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
所詮ゴブリンはゴブリンだったな。疲れマラと生理前みたいな感じと思っておこう。
定位置にあんことツキミを入れながら進んで行った。チーム甘えんぼの仲が良くて大変よろしい。
一粒で二度も三度もおいしい。これが役得というヤツだな!
そんなこんなで九箇所目、もうそろそろヒットしてくれてもいいと思うの。
クジ運の悪さは変わらない。ピノちゃんの抜け殻持っているのに......
拠点から真西に位置する場所で、ガチの崖。そこに居たのは......
昨日見たタカだった。死ね!
いつまでもタカの天下だと思うなよ!
......見晴らしがいいしここで飯を食べようか。
胡座をかいた俺の足の間にチョコンと乗ってくるあんことツキミ。
一口大にカットしたホットドッグを可愛いお口に運んであげる。
どちらもルンルンで食べていく姿がとても愛らしく癒される。
俺の手はこの子たちを可愛がる為にあるので、自分用の食事は糸で。これは常識。
お腹いっぱいになったらしく、寝そべるあんことツキミ。もう夕暮れまでこのままグダグダしてもいいかなと思える。
足にかかる重さ、滑らかな手触り、暖かい体温を味わいながらダラダラと昼休みを消化。
あかん......本当に動きたくない。
......この子たちが動き始めるまでまったりするのが最良の選択だな。お留守番組の皆......すまんな。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
◇◇◇ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ
それから二時間ほどまったりした。昨日もそうだったけど、悔いはない。
これは必要経費というヤツだ。絆を深め、お互い幸せになり、しっかり休める......いい事しかない!
穏やかな昼下がりにウトウトしてる時はとてもいい時間。社会人になってしまうとあまり味わえない感覚だろう。
異世界ニート最強説。......これだとフリーターの方がいいのかな?
まぁいいか。寝起きでまだふわふわしている可愛すぎる生き物を抱っこしながら素材ツアーを再開。
この日は他に三箇所回ったが、どこもハズレ。
......昨日のように収穫があった訳でもない素材ツアーだった。でも探索するポイントが減ったってのはいい事か。
頑張れば明日にでも全てのポイントを回れそうだ。今日みたいにダラけるのはNGだろうけど。
そこらへんは明日の参加メンバーによるな。
「今日は一日付き合ってくれてありがとう」
腕の中でダラけるあんことツキミを、感謝と労いの意味を込めて撫でながら拠点へ戻っていく。
明日もし牛が見つからなかったらどうしようという不安もあるが、その時はその時で探索範囲を広げればいいと、自分自身を無理矢理納得させる。
「ただいまー。お留守番ありがとね」
いつもと変わらないやり取りをしながら一日が終わっていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます