第125話 個獣面談

 買い物を終えた俺らは城まで戻り、軽くお茶をしてから解散となった。

 王女さんの甘味袋に羊羹をこれでもかと詰め込み、「もう出処もバレちゃったんだし、皆で仲良くシェアして食べるんだよー」と一言を添えた。

 目を逸らしやがったけど、しっかり管理して自制とかもしろよ。王女vsメイド隊なんて争いとかに発展させんなよ。マジで。



「シアン様方、お願いですから......あと、もう一ヶ月くらい滞在する事を検討してくださいませんか......せっかく生あんこ様や生ピノ様に出会えましたのに......私たちも、あんこ様たちと触れ合いたかったですぅぅぅぅ」


ㅤ......メイド隊が泣きながらそうほざいて、半狂乱になりながら引き止めてきた。やだよ、ちょっと恐怖を感じるもん。


 なんか最初の頃のパーフェクトな万能メイドってイメージが消えて、仕事だけはできる残念メイドの群れって印象になった。


「あ、あの......召喚能力?を使用する時や、こちらへお越し頂いた時などは、真っ先に私をお呼びください。貴方様専用メイドとして待機しております!」


 了解だよ。ちょこちょこ来ると思うからよろしくね。事後のピロートークみたいな時間に、実はパスが繋がっていた敏感メイドちゃん。

ㅤ残念なアレらを見た後って事もあるけど、この子......なんだろ?凄く癒される。普通が一番だよなぁ。


 後は王族の方々からも一言ずつお言葉を頂いてから、ワープポータルを使って山の拠点へと戻った。

 実の実食イベントの時にいなかった王子からだけは、なんか悪意とまではいかないけど......負の感情が込もった視線を向けられていたのが気になった。




 ◇◇◇




 さて、拠点に無事に帰ってきた俺は、マッサージチェアを起動させて上半身を揉みほぐされています。アラクネ用のマッサージチェアなので、これがまぁサイズがデカい。


 上半身だけマッサージするコースや、下半身だけコース、全身コースなどがある。ゆったりできる大きいサイズ、最高の座り心地、コースを好きに選べる自由さに惹かれて購入。

 普段はリクライニングチェアとしても使えるので本当に買ってよかった!


 ......それにしても色々と疲れたわ。十年分くらいは働いた気がする。


 自分へのご褒美として、今日は思い出の骨付き肉で宴会をしよう。こういう時に食べるのが一番いい選択な気がする。



 リラックスしながら外を眺める......草原で走り回るあんこと、飛び回る鳥ちゃんズの楽しそうな姿が見えて眼福。そして、俺の傍でのんびりしているピノちゃん。


 日常が戻ってきてくれて嬉しいよ。

 アラクネたちのおかげでワイワイしてるのも悪くはないと思えてきたけど、それは裏表の無い彼らだからだろう。



 うん、それでもやっぱりソロが一番気楽でいいな。ソロといっても人型の生物が居ないだけで、理想のハーレムみたいになっている素晴らしい現状。

 人間や人間タイプなんて、最初から必要なかったんや!


 よし、今日はこのまままったり休もう。そして明日から頑張って肉牛探しをしよう。そうしよう。



 ......あ、ちょっと待って何それヤバい。ピノちゃん!!それめっちゃ可愛い!!

 物思いに耽っていたので、油断していた。最初の方を見逃してしまって悔しいッッ!!


 床に放置しておいた魔導ル〇バに、ピノちゃんが魔力を流して起動、その上に乗って移動しているピノちゃんがやばい可愛い。


 もっとル〇バを動きを活発にさせる為に床を汚していく。トリオのサーカス団のあの人のように紙吹雪を周囲に撒いていく。


 予想通り紙吹雪をゴミと判断したらしく、あちこち忙しなく動き回るル〇バ。

 その上で楽しそうにしているピノちゃんにほっこり。不規則な動きをしてるル〇バの上でも酔わないみたいでよかった。


「ねぇピノちゃん、人間の国にいた時に食べた肉の事覚えてる?」


 ル〇バに集中しながらも頷いてくれたので続ける。


「あの肉を夜に食べようと思っているんだけど......ツキミとダイフクは鳥っぽいお肉は食べても平気なのかな?」


 わかんなーい。と雑なお返事されてしまった。うん、お楽しみの最中でしたね......ごめんなさい......


 床に残りの紙吹雪を全部ブチ撒けて、汚しに汚してから外に出る。もうこの際、本鳥に直接聞いてみた方が早い気がしたので。




 外に出ると案外近くツキミがいたので、早速呼び寄せて疑問に思っていた事を聞いてみる。


 同種族じゃなきゃ大丈夫......といった返答が返ってきた。


 うーむ......その返答だとオウル種と言う事なのか、ツキミちゃんと全く同じ種なのかがハッキリしない。なので更に聞いてみた。


 結果、オウルって名前が付いていない鳥肉ならば大丈夫らしい。同じ鳥類でも種族が違えば別物なんだって。


 そんなもんなのかと納得して、ダイフクの方に向かっていく。ツキミと考え方が違ったら怖いし。


 ツキミはそのまま肩に乗っている。

 俺と一緒に居たいらしくて、すっげぇ可愛いし嬉しい。


 ダイフクを呼ぶと、こっちへゆっくり向かってきた。

 同じ質問をしてみた所、ツキミとほぼ同じ回答が返ってきた。


「なるほど......無いとは思うけど、そうとは知らずにオウル肉を出しちゃったらどうなる?」


 この質問に対する返答は、なんとなく直感でわかるからダメそうなのは食べないとの事。うーんハイテク。


 ......そっか。それなら例えハンバーグにされてても解るね。

 あ、そうそう。これも聞いておかなきゃな。


「ねぇ、ダイフクはアラクネのメイドが好きでしょ?

 あの子たちと一緒に居たいと思っていたりするんならそうしてくれてもいいよ。その場合、俺は寂しいけど、会おうと思えばすぐ会えるし。

 ......すっげぇ寂しいけど」


 本気でそう思ってるなら俺は涙を飲んで送り出すつもり。悔しいけど、俺と一緒にいる時より嬉しそうにしてんだもん......


 あぁ......返答を聞くのが怖い......


 そう思って俯いた瞬間、脳天に衝撃があった。

 俯いてなかったら多分眉間辺りに喰らっていた気がする。


 顔をあげたらもう一度、今度はしっかり眉間に一撃。


 なぜもう一度攻撃したんだろうか?


 ダイフクからの返答は......


『女の人から触られる方が嬉しいけど、あんたと一緒に居る事を選んだのは自分だからそんな事気にする必要はない』


 と、男前な事を言われた。このむっつりオウルめ!

 でも嬉しいから許しちゃう!!


 こっそりおっぱいマウスパッドを取り寄せて、それをダイフク専用にカスタマイズしてくれるようにアラクネメイドたちに頼んどいてやるよ。それを今度あげるから、巣穴の中で思う存分ムニムニしやがれ。

 しかし、それでも俺は君をしっかり触るから覚悟しとけや!



 ダイフクとの面談を終えたので、今度はあんこの元へ向かう。ツキミちゃんがよかったねーと励ましてくれて嬉しい。好き。

 いい機会なので、ツキミちゃんは俺に要望とかあるのか聞いてみた。


 野生で生きていた頃よりも今が楽しいから問題無いだって。シンプルだけど、すげぇ嬉しかったです。



 あんこの元へ到着した俺ら。

 走り回っているお嬢様を呼び止めて要望を聞いてみると、今から遊んで!だってさ。可愛すぎて生きるのが辛い。嘘です、幸せです。


 あんことツキミのチーム甘えんぼとたっぷりと遊び、満足したのかどっちもべったりくっ付いてきた。それに合わせたようにちょうどいいタイミングで暗くなったのでタイムアップ。

 抱きしめながら拠点まで戻り、異世界の飯の中で最高に美味しかった骨付き肉でパーティと洒落込む。


 あの味を知っていたあんことピノちゃんは喜んで食べ始め、鳥ちゃんズは鳥肉でも気にせず食べ始め、器用に肉を啄んでいった。


 このジャンクな味付けの肉にはビールが最強に合う。


 焼酎なのか............否!

 サワーなのか............否!

 ビールなのか............鉄板!


 とても悲しいお知らせだが、残りの骨付き肉は一本しかない。あの料理人のおっさんにだけはまた会いたいなぁと思う。


 でもアレだな。気後れしてちまちまと食うなんてこの肉に失礼だろう......

 俺がこの肉の味付けを再現すればいいだけの話だろう。よし、これも目標の一つに設定だ!!


 もう遠慮しないでカッ食らおう。ガッつこう。暴飲暴食万歳ッ!


 骨付き肉!滴る脂!キンッキンに冷えたビール!この三種の神器が悪魔的に素晴らしい!!最高すぎる!!


 明日からまた楽しく生きていく為に、しっかり飯で英気を養わないといけない。

 皆美味しそうに食べている姿を見れて目が幸せだ。おっちゃんマジでありがとう!


 ちなみにピノちゃんにも要望を聞いた結果、この前と同じでまた料理したいとの事でしたー。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る