第123話 戦後のアレコレ

 これで人間社会との完全な決別が済んだと、清々しい気持ちになる。逃げ果せたヤツはいないだろうし、俺の事を目撃したヤツもいないから、戻ろうと思えば人間社会に戻れはするだろうけどどうでもいい。

 逆にアラクネの方......って言うか、魔族サイドに行くのを躊躇ってしまうような結果になった気がしています。色んな意味でやりすぎたわ。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 今考えると別にアラクネに変装する必要無かったような気がするけど......まぁこれは今更か。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ひっそり静かに生きていこうとしても、人畜無害だと思われれば搾取されるし、余計な悪意にも晒される。

 どこかで力や、徹底的にやるって事を示さないと一方的に不利益を被るから、仕方の無い行動と俺は思っている。他の人がどう思ったり考えるかは知らない。

 全ての人や魔族がそうではないとは言えるけど、どこの世界にもそんな輩は一定数存在している。そう俺は思っている。それでも平伏して欲しいとは思っていないから、バランス調整が難しくて盛大に失敗した。


 うん、今回は完全に失敗。気軽に接して欲しいんだけど......まぁ無理そうだよね。ほとぼりが冷めるまではしばらく山奥に引きこもらなきゃな。ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

 ......よし。もう脳内言い訳は終わり!

 そんな事に意識を割いているのは実にもったいない。今は俺が求めて止まなかった触れ合いのお時間だ。ゆーっくり王女さんらの元へ戻ればいい。



 それにしても悪魔的だなァ!


 手触りも肌触りも完璧。可愛すぎるし、いくらでも触り続けられるッ!

 ダイフクもちょっとは俺の事を見直してくれたみたいで、モチモチ触感をたっぷり味あわせてくれている。


 ウチの子たちは人をダメにする肌触りだ。気持ちよさがオーバーフロウしている。ピノちゃんは労うように俺の頭を撫でてくれていて幸せ。


 両ほっぺが気持ちいい。肩と頭と腕にかかる軽すぎる重さが幸せ。

 めっちゃ好き。愛してるよ。

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 ◇◇◇ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤ

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 時は経ち、王族が待機している場所に戻ってきた。

 やっぱりちょっとアレだね。怯えが見られる。


「シアン殿......貴方のおかげでこの国は救われた。ありがとう......」


 王族の威厳もへったくれもない感謝をされた。ド直球すぎて少し面食らってしまったけど、余計な言葉がない分素直に受け取れる。

 言葉を選んでごちゃごちゃ言う文化なんてなくていいと思う。


「家臣とかが見てるけど、そんなにド直球に頭とか下げていいの?俺にはとても好意的に映ったからそっちの方がいいんだけど」


「構わない。その程度で反抗してくる奴ならどうとでもできるし、不穏分子が炙りだせれば尚良いからな」


 そんなもんか。やっぱり国ともなると一枚岩とはいかないんだろうね......王から苦労が滲み出てるよ。


 国を纏めるって面倒そうだよなぁ......ならアレを貸しとこうかな。トゥルーオアライ、デッドオアアライブな強制裁判装置。


「国の内部を洗浄しようとしてるのかな?

 ならコレを貸してあげる。使い方は......魔力を込めてから、羽根の置いていない方に相手の体毛を乗せて質問していけばいいよ。曖昧な答えや無回答は許されないし、嘘をつけば乗ってる毛が相手の心臓に変換されるから」


「............」


 ポカーンとしてる王様。アホ面晒してんじゃないわよ!


「やり方としては、質問をして答えさせてから、ソレを使用して再度同じ質問をさせればいいんじゃないかな。めっちゃ慌てふためくと思うよ」


古代の遺物アーティファクトとか、太古の失われた遺産オーパーツと呼ばれるような代物ではないか......何故持っているかは......聞くだけ無駄だろうな。

 借りられるのなら有難く。しっかりと国を綺麗にしてみせようぞ」


 ......そんな仰々しい呼ばれ方してんのかコイツ。いやでも、エジプトの神話とかにあったしあながち間違ってないのかな。


「まぁ返却はいつでもいいけど悪用はされないようにね。そっちも悪用しないと信用してるから」


「恩に着る。それと、今日は城に泊まっていってくれないだろうか。話したい事もあるのでな」


 帰りたいㅤ嗚呼帰りたいㅤ帰りたいㅤしあん


「......い、一週間後とかではダメ?ちょっとゆっくりしたいんだけど。ほら、事後処理とか色々あるでしょ?ね?」


「家を立てる為の土地の選定とかイメージの話を詰めたいし、恩人をそのまま帰してしまうと下が煩いのでな......悪いが付き合ってくれると助かる」


 放っておいたらアホみたいな豪邸建てられてそうだな......俺は庶民的な感覚の持ち主だから、デカい家とかは慣れられる気がしない。


「はぁ、わかりましたよ。じゃあ一晩世話になります」


 そう俺が答えたら「助かる!ではまた後でな」と言い残して家臣と共に去っていった。

 慌ただしいおっさんって思ったけど、これからやる事いっぱいなんだろう。頑張って。


 残された王女さんや王妃さんたちとお茶をしながら、他愛もない話をして時間を過ごした。あんこがずっと俺にべったりで、メイドさんたちが悔しそうにしていた。

 そんな顔してもダメだぞ。しつこいと空間を隔離しちゃうからな。

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 アラクネのおもてなしを受けて楽しい時間を過ごした。甘味文化が乏しいだけで飯のクオリティは普通に高かった。

 羊羹等でインスパイアされた甘味欲が、甘味文化の向上へと昇華される事を祈っています。



 そして食後、しばらくしてから、つい先程まで家予定の候補地、間取りや土地の質問、要望等を聞かれていました。


 無駄に広い土地、アホほど広い家にしようってこっちが引くほど推してきたんだけど、持て余すっちゅーねん!残って正解だったわ。ありがとう賢王!




 話し合いの結果、場所は城からある程度離れていて静かな場所、二階建ての一軒家、広めの風呂とトイレ付き、家の五倍くらいのサイズの庭で落ち着いた。

 建設様式はアラクネの国に合わせてもらう事に決まる。国の中で浮いた外観の家屋があり、それがあの大暴れしてた人間の家でしたとかでネタになったりって考えると......うん、俺のメンタルが耐えれそうにない。

 被害妄想かもしれないが、現実になるかもしれないもの。


 俺が居ない時には敏感メイドちゃんといつものメイド二人が管理、たまに王女さんが息抜きに訪れる......なんて事が話し合いで勝手に決まっていた。

 そこにツッコミを入れると、気分転換は必要なんです!!って力説されてしまったのだけど、それでいいのかい?王様や王妃様よ......


 王も既に開き直っていて、「好きにやっちゃっていいよ。でも護衛は付けろよ」と王女を援護していたので、諦めて承認。

 この王様だいぶ砕けてきている。いい傾向だわ。


 どれくらいで建設が終わるのかはわからないけど、マイハウスが出来上がったらたまにワープポータルを使って遊びに行こうと思う。備え付けてくれる家具類は、多分めっちゃ気合い入れてくれると思うし。




 やっと解放されて現在は宛てがわれた寝室にきています。嫌味のない程度の装飾に、人間界では国宝にされそうな家具類。

 かなり気合いの入っている部屋で、国賓待遇の人を招く部屋なんだろう。


 風呂に入ってから全身を綺麗に洗ってから、メイドインアラクネの中でも最高品質だと言う大きなサイズのベッドにダイブ。

 これは人をダメにするタイプの寝具。これはヤバい。ずっと死蔵していた伝説の寝具セットの解放を早めようかと思うくらいに高級寝具は気持ちよかった。


 大きくなったあんこを抱き締めたり、ピノちゃんを撫で回し、鳥ちゃんズに顔を埋めたりを、眠気が来るまで楽しんだ。

 ......途中で王族が乱入してきて、愚痴を言われたりして邪魔されてしまった事などがあったけれど、ウチの子たちがめっちゃ癒してくれたので満足です。



 そして夜寝る時は珍しく全員ベッドに入ってきてくれた。メイドインアラクネの品質の良さが為せる技なのか知らないけど、家族団欒の雑魚寝がとても嬉しかった。

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