第121話 神いるいる詐欺

 そして周囲には誰もいなくなった......



 骨喰さんは大人しくなっていたので、ここまでの虐殺で満足してくれたんだろう。たぶん。

 そして俺は今、とても穏やかな心を持ちながら激しい羞恥心によって目覚めた異世界最狂の黒歴史ホルダー。

 穴があったら引きこもりたい。


 残りのゴミ掃除はラスボス二体に任せて、俺は使徒(笑)の後処理に赴くとします。


「......はい。という訳で、君たちの兵隊は大部分が壊滅しました。どう?自信満々で巨大戦力を率いてやってきたのに、たった一人と二匹に敗北した今の気分は......ねぇショタコンのお姉さんと使徒(笑)の方々」



「あ、あんた何なのよ......なんであんたみたいにヤバい奴がアラクネの国なんかに肩入れしてるのよ」


 泣きながらそんな事を宣うショタ好き使徒さん。


「守護するに相応しい国だからだね。納得する見返りを貰えるから、俺は武力を提供する......それだけだよ」


「ならこちらがあなたに報酬を支払えば、今からでもこちらに付いてもらえるの?」


 えっ!?急に何を言い出すのかなこの人は。まさかメイドインアラクネに勝るような物を提供できると本気で思っているの?


「聞くだけ聞いてやるよ。そちらの提供できるモノが納得させられるモノだったら、そちら側に付いてもいいよ。本当に納得させられるならね。あーでも、不快にさせるような内容だったら、その時は......ね。」


 ゲスい提案や不快な提案が聞きたいワケではないので、先に釘を刺しておく。


「......貴方ほど強い御方なら、我が国に来たら全てが思うままです。金、女、権力......どうでしょうか?国も盗る事も可能でしょう」


 うん。とっても在り来り。なんか口調変わったし。あ、やべ。エセ魔王モード忘れてた......

 今更そんなもん貰っても重荷にしか感じないし、面倒でしかないよなー。

 きのこのマウンテンを購入したら、中身が本物のきのこだったような残念さだ。


「......興味無いな。あ!その前にお願いを聞いてよ。それを聞いてくれたら、返してあげるよ」


「私だけ......ですか?」


「うん。君だけ。どう?ここで死にたいなら他の人にこの話を持っていくけど?

 それなりに権力がありそうなのはここに転がっている三人だけだよね。ならそこの男にでも......」


「......私にやらせてください。何をすればいいでしょうか」


「そっか。じゃあ今生き残っている君らの味方を全て、武装解除させて一箇所に纏めてきて。逃げた、逃げようとした奴、従わない奴は殺して構わない......いや、殺せ。君より上位の者は殺さずに連れてこい」


「は、はい。わかりました......」


「これは忠告だけど、変な動きはしない方がいいよ。今君を縛っている糸を外して自由にしてあげるけど、それを首だけには残すから。

 変な動きをしたら首を落とす。遠隔でも余裕だからねー。切れ味はこの通り」


 糸をしっかり視認できる様にしてから、態とらしく指を動かして首の無い使徒(笑)の死体をバラした。


「とまぁこんな感じの切れ味の物が首に引っ付いてると思ってね。俺が想定しているよりも早く事が済んだらもう一人くらいは生かしておいてあげてもいいかな」


 ガクブルしていたショタコンが少し元気になった。

 落として落として、そこから何も無いと思わせておいてから餌をブラ下げられると、人って元気になるよね。

 でもその餌には、遅効性の毒がたっぷり入っているんだけど。


「全力で臨ませていただきます」


 そう言い残して走っていった。

 彼女には別に何も期待していない。途中で殺されようが、逃げようとしようがどうでもいい。


 まだ慣れていないから大したことは出来ないけど、ダイフクから貰った【千里眼】を使ってあの女を監視して、相手方の総大将を発見できればいいんだから。

 無防備になっている間は骨喰さんに守ってもらうから問題は無い。

 探知で個人を特定するとかは試したけど無理ゲーすぎた。愛するウチの子たちなら可能だったけど。




 そんな事を思っていたけど、そんなに時間は掛からなかったらしく、あっさり戻ってきやがった。

 一番偉い奴は案外近い位置にいたみたいなのと、予想以上に女が従順だったみたいで、武装解除した人の群れがわらわらと。女の気合いの入りっぷりを見る限り、ぶら下げた餌が効いているみたい。

 何かしらの連絡手段があったのかしらないけど、離れた場所にいるの者や、逃げ回っている者達も武装解除したっぽい。



 ......まぁ明王さんや龍さんには指示飛ばしてないから、追撃は止められない止まらない。離れた位置にいるヤツらは諦めてくれ。

 争いなんてそんなもんだし、侵攻の目的がただただクズいし同情なんて感情もない。


 これから俺が友好的な関係を築いてく国に対してそんな行動をしたのがいけなかったね。偶然っちゃ偶然だけど、こんな結果になった原因は、アンタらの崇拝する神の思し召しだよ。


 俺の元へ連れてこられた人数は、詳しくはわからんけど五千くらい?観察していると、その中で一際偉そうでゴッテゴテに装飾されたおっさんが喚き出した。


「汚らしい人の成り損ない如きが、神の代弁者である我らに抵抗していいなんて道理は無いぞ!早く我らを解放して貴様らは即刻自害し、我らの神に詫びろ!!」


 ......神ってなんなんだろうね。君らの行為を正当化する為の道具ではないよ。

 自害した魔物の死体を捧げて、それを詫びとして受け取る神なんていたら、それはただの邪神だろうに。


「神はどんな容姿をしていた?どんな声をしていた?どんな神託を授けた?人如きが神と対面できるの?ねぇそこんとこよーく教えてくれよ。

 神託のおかげでこの戦争を仕掛けたんだよね?信者がごっそり死んでいってるけど救ってはくれないのかな?」


 返答はよ!はよ!


「神の為に死ぬのは信者として当然だろうが!神はこの戦を見守ってくれている!必ず神罰が下るぞ」


「「「「おぉぉぉぉ!!」」」」


 感化されたクズ共がノってるけど、神罰が本当にあるなら既に俺は喰らうはずだし、お前らもガッツリ喰らってるはず。容姿等については触りもしていない。

 結論、神はいない。少なくともコイツらが信仰しているような邪神は。


「神罰上等!落とすんならさっさとヤれや!お前らの信仰している神ならきっとやってくれるはずだよな?

 こんだけ言っても何故神罰が来ないと思う?それはね、お前らの信じる神は国のトップが神を僭称しているからだよ」


 ......もう一押ししてみるか。


「じゃあ俺も貴様らの流儀に沿ってやってみるから。傍から見ると、君らはこんな風に映っているんだよー。

 魔族の神は仰られた!ここで教国のヤツらをぶち殺せと!!ノコノコとやってきた哀れな人間を皆殺しにせよ!!そう仰られたぞ!!」


 気持ち悪いよね。全てはこんな風に知恵を持ってしまった種族が、勝手に居もしない存在を、民衆を纏める為だけに利用しているだけなのに。


「これで、神の意志vs神の意志の戦だよ。所謂聖戦ってヤツだね。勝った方が神の意志の代弁者として相応しい。さぁ争おうか」


 積極的に黒歴史を重ねていくスタイル。この後しばらく引きこもるからいいもん......


「神を騙るとは......愚か者めっ!ぶち殺してくれるわっ!」


「お前らちゃんと自分のやってきた事を振り返ってみろよ......はぁ、今からここに居る全員を、誰からも干渉されない舞台に招待するからそっちで殺り合おうよ」



【空間隔離】でコイツら全員with俺を丸ごと隔離。

 しっかり意識してやるのは初だけど、膜を張ったり、壁を出したりといった前までのやり方よりはよっぽど出しやすかった。

 とりあえずドーム型をイメージしてやったけど、外から見たらどうなってるんだろ?


「お待たせ。空間を隔離したから俺が解除しない限り、十二時間はこの中に閉じ込められるよ。

 という訳で、この空間内で十二時間生き残ったヤツは生かしておいてあげる。さっき取引をした女使徒は、助けたい奴を一人を選んでこっちに連れてきて。そして絶対に大人しくしててね」


 なんか親の仇ってぐらいに教国の人達から睨まれてる女使徒は、中学生になりたてくらいの男の子を連れて戻ってきた。


「じゃあ約束通り、国に戻るまでは死なないようにしてあげるけど、その膜の外に出たら戦闘の意思ありと看做して攻撃するから」


 カーテンみたいな保護膜を張り、外側からの干渉から隔離。内側からは出れるから気をつけてね。


「ヤツを討ち取った者は使徒に任命してやる!敵は一匹の虫だ!殺せぇぇぇ!」


 使徒(笑)は人如きが任命できるんですね。さぁ聖なる戦の時間でございます。

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