第120話 禁断症状

えー、こちら現場のエセ魔王です。


龍さんが黒い玉をゲロったと思ったら、なんか刃物が飛び散った後に、極光壁の黒いバージョンみたいなのになりました。

ちょっと何の技を使って、どんな方法で兵共を虐殺をしているのかわかりかねますね......とりあえず言えることは、龍さんはRPGの裏ボスっぽすぎるって事ですね。



ところ変わって明王さんも......なんか急に身体がパンプアップしましたね。

俺の投げた事故車両モドキをリサイクルして「危ないでやんす」を再演していました。

そして、現在は進撃の明王をしています。調査なんてできない兵団がぶっちぶち潰されています......えー、現場からは以上です......


それではスタジオにお返しします。





うん。なんかね、ファイナルなのに何作も出ているファンタジー世界にいそうな竜と、二作目からは竜がラスボスではないクエストの、エス〇ークが暴れているような絵面になっています。

些か凶悪すぎやしませんかね......



あ、うん。こっちも負けてられないんですね。余所見するなって言われても......

あっはい、わかりましたよ。殺りましょうか......えぇ、アレと比べちゃうと結構地味だけど、こっちもシコシコとKILL数を稼いでいかなないと面目が立たないですもんね。



「ねぇ......そう言えば、なんでそんなに俺に黒歴史を重ねたがるの?さっきの言動をもっとやれとか新手の拷問ですよね?」



そんな俺の心情なんて気にも留めてないらしく、更なる追加オーダーが入ってくる。

今日以降にアラクネさんたちと顔を合わせずらくなるやんけ......はい?これを言えって?


「それは......無理だね。うん。諦めよう。お願いだからもう止めよ?」


閉じ込められて悲しかったなぁって言われてもなぁ......


だからもう嫌やねん。ヒダリデウテヤみたいにやられても俺は乗らないからな!


..................。


..............................。


わかったよォォォ!!やるよ!やってやろうじゃねぇかよ!!



「手下だけにいいカッコをさせてはいかんな!我もいい所を見せるとしよう......」



くっころ。誰か俺を殺してくれ。



あ"ぁぁぁぁ!!もう嫌ァァァァ!!




羞恥に塗れた一撃。すかさず追撃。さらにもう一発......まだだ!まだ終わらんよ......倍プッシュだ!


【呪骨喰】を発動させながら、最後まで魔力たっぷりの【空断】を飛ばしていく。きっと俺の目は死んでいる。


ただ一つだけあった救いは、ギャラリーがブルってくれている事。人も、アラクネも。

冷静なヤツが一人も居ないのは助かる。



スパスパボトボトゴリゴリといった三種類の音+悲鳴が、刀、龍、明王以外には悪夢な戦場に響き渡っている。


アラクネらしさを出す為に、ケツらへんから黒糸を出して、それで大鎌を操り振るっていく。鎌強化のボーナスステージだ。無心で振ろう。



自業自得ちゃ自業自得な状況なんだけど、俺の精神はゴリゴリ削られていくし、敵の兵共は性癖がおかしいのしかいないし......

遠い場所に男アラクネの死体に突っ込んでる教国兵士がいる。多分糸を出す為の穴かなんかだと思う。



結論。

モフみが!!圧倒的にモフみが!!精神安定剤が足りていない!!


もうやだよこんな場所にいるの......早く終わらないかなぁ......



はァ!?ぬるいからもっと気合い入れてやれ!とか言うなァァァ!こんな時くらい優しくしてくれよ。

野郎の死姦を覗き見とか言うなァァァ!!


「あ"ぁぁぁぁぁぁぁぁァァァァ」



精神★崩壊



「全員死ねぇぇぇぇぇぇ!!俺のこの姿を見てしまったヤツらなんて、この世から全て消えろぉぉぉぉ!!」



鉄塊をぶん投げ、糸で切断し、斬撃を乱れ撃ちながら戦場を駆け巡る。


「黒龍よ!!上空から監視して戦場から逃げ出す奴を滅ぼせ!!」


黒歴史の目撃者は一匹たりとも逃がさん!!


「不動明王!!お前は好きに暴れろ!!逃げた奴は黒龍が対応する!!」


どんどん消していけ!!あはははははははッッ!!


不壊石の在庫処分セールはっじめるよー!凶悪な物を投擲するのって、かなりコスパのいい攻撃って俺気付いちゃった。


人は外、モフは内だ!


さぁ皆さんお逝きなさい。




◇◇◇




「なんとなく気付いていましたが......シアン様ヤバいですね......気軽に会話とかをしてしまってよかったのでしょうか......」


「......姫様は全く問題無いと思われます。今更態度を変えてしまう方が失礼でしょう。

問題はこっちですね......よく今まであの方の逆鱗に触れなかったと思います」


王女とメイドが話し合っている横で、問題の人物はダイフクと戯れていた。


「この子くらい能天気になれたら、とても楽になるんでしょうけど......わたしには難しいですね。羨ましいと言うか恨めしいと言うか......」


「陛下や王妃様ですらこの光景から目を逸らして、あんこ様方を見て和んでいますからね......私がこの駄メイドのフォローを致していきますが、もしもの時は姫様に仲介を頼むかもしれませんので、心の準備だけはしておいて下さいませ」


「えっ!?嫌ですよぉ.........」


王女は突然の宣告に涙目になる......

いつの時代も、トップと平の間に挟まれる様な中途半端な位置にいる権力者とは悲しいものである。


「いざという時にはお父様に頑張ってもらいましょう。あ、あんこ様!わたしと一緒にシアン様のご活躍を見守りましょう」


王女も心にのしかかる負荷に耐えきれなくなったのか、主人の暴れっぷりをしっぽを振りながら眺めるあんこに癒しを求めた。


「私にも......あぁ、遅かったですね。抱っこする事ができて羨ましいです......

ツキミ様とピノ様は何やらお話をされているご様子ですね。いいタイミングなので、お二方に抱っこしてもいいかダメ元でお願いしてみましょう......」


王と王妃の興味がダイフクに移ったこのタイミングを逃してなるものかと、素早い動きでピノとツキミの元へ向かったメイドさん。



頼んでみると、あっさり抱っこの許可が降りたようで、満面の笑みでツキミとピノを撫で始めた。


王女のストレス、20%Down。

メイドさんの心労、20%Down。

メイドの心労、変化なし。



◇◇◇




順調にもふもふは宝だと王族に浸透してきた頃、我らがエセ魔王の心は荒みきっていた。




「戦死したアラクネ兵士の胴体や脚......剛毛でチクチクしてそうだけど、広い目で見ればこれも分類的にはもふもふになるのかなー......うふふふふふふ」


そんな事を呟きながら黙々と教国の兵を葬っている。大鎌、刀、拳、糸を巧みに操って効率的に。

魔王モードで戦場に降臨してから一時間も経過していないのに、この体たらく。

それでもしっかりと殺る事は殺っているので、開始時は十五万だった兵士達は、現在二万程まで減っている。


「獣人を見てみたいなー......この世界の獣人ってどれくらいのケモ度なんだろう......

安っぽいコスプレみたいなケモ耳とケモ尻尾だけのなんちゃって獣人じゃないといいなー。いや、もう寧ろ二足歩行する獣って感じがいいな。あまり大きすぎず、服とか着て二足歩行しちゃったペットみたいなのがいい」


さすがに持ち主の精神状態がおかしくなっているのに気付いた骨喰さんは、現在黙っている。ノリノリで厨二ムーブ出来るほどの剛の者ではない人に、ソレを強要してはいけないと気付いたらしい。


悲しいすれ違いから始まったこの一連の流れは、骨喰さんが察して終わりを迎える模様。


「それはそうと......人間の頭部も、ある意味ではモフいと言ってもいいんだよな......」


しかし、こんな事を現在進行形で口走っている持ち主に対し、どう声を掛けていいかわからず、ただ只管沈黙を貫いている。


「あーっ!あんこに二足歩行の練習をさせるのもいいなぁ♪それと......ダイフクとツキミを縦に合体させてトーテムっぽくするのもいいかもしれない......これは要検討だ」


手の施しようがなくなるなる前に、この戦争が終わるのを祈っている骨喰さんであった。

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