第116話 みんな違ってみんな良い
大きな戦の前に、皆さん一丸となって強大な敵に挑んだ結果、強固な絆を手に入れていた。
これならどんな困難が立ちはだかろうとも、彼等はきっと立ち向かえるだろう......。
~アラクネ修行編完~
とまぁ、冗談はさておき。
......この状況、初めて会った時の王女さんたちを思い出すわぁ。
あの時と同じように、悶えている彼等に羊羹と緑茶を差し入れしていく。
羊羹は認知されているようで飛びついてきた。王族以外は。
王女さん......あんたまさか、王族には秘匿していたん?いやさ、別に自由にしていいって言ったから問題無いけど......
「まさかご存知ない?甘い物だから食べてみて。今度は普通に食える物だから、そんなに警戒しないでいいよ」
そう言ってから王女さんに近付き、小声で話しかける。
「まさか身内には羊羹隠してたの?」
YES!YES!YES!YES!
「自分の食べる分が無くなるから?」
YES!YES!YES!YES!
「王族以外の城にいる人にはちゃんと分け与えたの?」
NO!NO!NO!NO!
「一部の使用人とか兵士のみ?」
YES!YES!YES!YES!
......ふむ、目は口ほどに物を言うとはよく言ったものだ。
彼女は一言も発していない。もちろん俺には読心スキルなどはない。
腹芸素人の俺にもこんなに読み取られるって、王族として大丈夫なの?
動揺しまくりな現状でも口は羊羹を必死に貪っている。
「あんだけの量があっても足りなかった?」
YES!YES!YES!YES!
おーけー。この子は甘い物は別腹、それも異次元なタイプだ。
普段の食事よりも甘味を食べられるタイプ。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。
「とりあえず喋れや!まぁいいや。ムッチムチ王女にならないように気をつけてね」
YES!YES!YES!YES!
はぁ......ダメだコイツ。
ハムスターみたいになっている王女から目を逸らして王族の方を見てみると、皆さん嬉しそうに食べていたが、ご隠居が羊羹を食べ、緑茶を啜っているのがとても様になっていた。
◇◇◇
さて、これでこの国の中枢は精神力と魔力が鍛えられた筈だ。
王族以外は業務へと戻っていく、これから作戦会議やら何やらをすると意気込んでいた。
目はまだ光を取り戻せていなかったけど、仲間の大切さを思い出すことで、きっとダークサイドから救われるであろう(棒)
これだけで堕ちかけるとは軟弱者め。
「それで、シアン殿。貴重な物をあれほど大量に放出したのだ。感謝するが、此方は対価を支払えん。
どうすれば報いれるのかさっぱりわからないのじゃ。それで......何か希望とかはないか」
「いらん!!と、言いたいのが本音。勝手に在庫放出したのもあるし......アレ、まだ腐るほどあるんだよね......。何の苦労も無く手に入れられたから貴重と言われても、えぇぇぇ......って感じ。
でも、アラクネたちが絶対服従とか、負い目を感じて余所余所しくなるのも嫌だ......だから、俺が作って欲しい物を頼んだ時に、高品質な物を作って欲しいのと、この国に庭付きの一軒家が欲しい......かな?」
「それだけでよいのか?なんなら王位を譲るぞ」
「あ、それは本当にいらない。一番の望みは既に依頼してあるから、なんならその依頼に全力を注いでくれたらいいよ。建前とか体裁とかって本当に面倒だよね」
「わかった、家の希望とかがあれば考えておいてくれ。この戦が終わったら聞くからな」
「あいよー!それじゃヤツらが攻めてくるまでは自由にしてていい?白い鳥に強引に起こされたからちょっと寝たいわ......」
「うむ、それでは其方の仲間のいる場所へ案内させよう。すまぬな、この国をよろしく頼む」
「まかせろー。それじゃまた」
待機していたメイドさんに案内されて、未だにすやすや寝ているお嬢様たちの元へ。
「それではまた後ほど。本当にありがとうございます」
寝ているあんこを抱き締めて目を閉じる。ダイフク野郎は既に夢の中だった。
◇◇◇
目が覚めて時間を確認すると、寝始めてから二時間程が経過していた。マイエンジェルたちは俺の寝ている横でだらけている。
ちっこくて可愛い。寝起きからもみくちゃにされて、大変よろしかったです。
朝ごはんをあげながらざっくりと事情を説明。しかしダイフクが既にしていたみたいで、皆現状を理解していた。
あんこは俺が起きてからは、やけに俺の右手に自分の体を擦り寄せてきていて、よくわからんけど萌えた。愛してる。
今回は俺が表立って動く事、俺の取りこぼしたヤツらが抜けてきた場合に、王女さんや王族たちを守ってほしいって旨を伝える。
ごねた子一名、しょうがないにゃあ二名、任せろ一名。うん、ごめんね。
ごねた子を思いっきり甘やかしながら説得、事が済んだ後にも甘やかす事を約束させられた。俺にもご褒美だから全然おっけー!
別に皆で蹂躙してもいいんだけど、今回の俺は変装するけど人類の敵になる。
この子たちも次いでにそんなのに認定させる訳にはいかないので、今回はお留守番。頑張ってるとこを見ててほしい。痛々しい二つ名とかがこの子たちに付いて、それを広められたらたまったもんじゃない。
「あんこも、ピノちゃんも、ツキミも、ダイフクも......こんなに可愛くて愛くるしいのに、人類の敵だ!って思われたくないのよ。すぐ終わらせるから待っててね」
時間が来るまでこの桃源郷を味わい尽くすぞ!もっと撫でさせろ!もっと触らせろー!
◆◇◆
~side神の使い(自称)~
三人の老人、若者~初老くらいまでバラバラの年齢の男女が十二人、薄暗い部屋に集まっている。
教皇、教帝、天使長。
教国トップの三名であり、金と権力の亡者。
教皇は表の首領であり、No.2。悪どい面を隠すのが上手く、外面の良さを買われている。
教帝は裏の首領であり、No.1。冷酷無比な暴君。
天使長は粛清部隊の首領であり、No.3。金と暴力大好き。
シアンがコイツらの事を知ったら、「何この痛いヤツら」と言うであろうヤツら。
部屋の中にいる残りの男達は『十二使徒』と呼ばれる戦闘部隊のトップ達。天使長(笑)の駒だ。
人間の基準では高い戦闘力を誇っている。自分を天使と思い込んでいるヤベー奴ら。
「今回......我が教国が手に入れた“大規模転移装置”の魔力充填がやっと終わった。このタイミングで転移装置を手に入れられたのは神の思し召しである!私達に!!この世界の覇者になれと言っておられるのだ!!
忌々しい人間の成り損ない共を攻め落として滅ぼすぞ!奪え!殺せ!女は奴隷にして使い倒してやれ!!我らの意思は神の意志だ!!」
「「「おお!!」」」
教帝が叫ぶと、間を開けずに他が続く。
人間至上主義の彼等にとって、亜人や魔族は迫害の対象であり、人に成り損ねてしまったゴミ、神の失敗作だと本気で思っている。
「蜘蛛女の穴はどんな具合なのか気になるぜぇ!長よォ捕まえたヤツらは犯してもいいんだろォ?」
「よくそんな思考になりますね......別に構いませんが、私達に見えない所でヤってください」
「相変わらず好き嫌い激しいねェ......ヒヒヒ、燃えてきたぜェ!」
第一使徒がヤる気を出している。ストライクゾーンがガバガバであり、穴さえ有れば老若男女、人外、獣なんでもOKな狂人。
「相変わらず気色悪い......まだ子を成せない未成熟な女こそ至高だろうが」
「理解に苦しみますね。熟した女こそ世界の宝だろうに」
「お前らバカだなぁ。女王様なタイプが一番だろ」
「何もわかっていないのはお前もだろ。尻穴さえ使えれば他に穴などいらん」
......おわかりいただけただろうか?狂人共がこうして一致団結出来ているのは、奇跡的なまでに性癖が被っていないからである。
第二使徒=ペド野郎、ロリでギリギリ。
第三使徒=熟女好き。
第四使徒=ドM。
第五使徒=アナリスト。男もイケる。
六~十二も漏れなく異常性癖者共であり、こんなんが神の使いを名乗っているくらいに、イカれた国である。
リンゴ好きの死神が彼等のこの会話を聞き、残りの寿命を見たら、きっとこう言うだろう。
『やっぱり......人間って面白!!』......と。
※教帝は適当に考えました。表のトップと裏のトップってなんかいい響きですよね。
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