第105話 久しぶりの依頼
とりあえず哀れなお肉共の鮮度を落とさない為に、収納にしまっておく。
戦果は地面に記録していく。何が何匹あったみたいにしておけば、どれをどの子が獲ってきたかわかると思う。
この時点で完全敗北が確定している俺だけど、一匹仕留めているから特に焦りはない。初めての狩りで、探知に頼らずしっかり獲物を獲れたってのが大きいのかもしれない。
いっぱい獲物を獲ってきたあの子たちをいっぱい褒めて、上機嫌になったところを全力で愛でる。
それをすれば俺、そしてあの子たちも満足で、双方幸せになれる。この考えが見透かされていなければ。
何はともあれ、早く帰ってこーい!俺を寂しくさせすぎると、また変な行動をし始めるぞーい!!
◇◇◇
一時間後、ようやく戻ってきたマイエンジェルズ。
最初に戻ってきたのはチーム辛辣。
ちっこいボディなのに五メートルくらいのシカを引き摺ってきた。上にダイフクを乗せて。
俺の闇糸を真似たモノを巻き付けて引き摺ってきたらしいけど、そんなにパワーがあったんだね。
衝撃映像の十分後、チーム甘えんぼが帰還。お嬢様はちょっとむくれている......何があったの?
獲ってきた獲物は、巨大シカよりも一回り大きい......何だこれ?
獰猛そうなツラ構えのキツネ科なのかイヌ科なのかわからん生物を、氷で作ったソリに乗せて帰ってきた。
ツキミちゃんは、おっきくなったあんこの背中に乗っていた。羨ましい。
可愛くないからいいんだけど、やけにボロボロ。あんまりバイオレンスな事しちゃダメだよ。
そんな事を考えていた俺の思考を読んだのか、ツキミちゃんが経緯を説明してくれた。
獲物を探していたあんことツキミの前に現れたこのキツネ犬。
やけに興奮しているソイツにドン引きしていると、急にソイツがあんこに求婚。
......ほぅ。
断る→縋る→断る→縋るを繰り返して、あんことツキミがキレる。このループだったらしい。
異世界最強生物の一角にまで成長しているあんこのオラオラで無事死亡確定。
その時のあんこが、かなり怖かったらしい。
......まだこの子はお嫁に出さないよ。出してたまるものか!
紹介されたヤツに、お前なんかに娘は嫁がせんっ!だが、どうしてもと言うのなら......俺を倒してからにしろ!って一度は言ってやるんだ。
考えるだけで鬱になりそう......だけど、俺の知らない所で結婚云々は止めろ、マジで。クソ生物がっっ!!
まだイライラの治まっていないあんこを抱きしめて、精一杯宥める。ふふふっ、少し機嫌が直って可愛い。
一緒にツキミもなでなで。怖かったねー、あんこの怖いとこ見たら俺泣いちゃいそうだよ。
お嬢様の機嫌が戻ったので、結果発表のお時間。
あんこは今、俺の腕に抱かれています。
まずチーム辛辣。
太った鳥が四羽、デカいシカ一頭の計五体。
そしてチーム甘えんぼ。
太った魚が一匹、腐れキツネ犬一頭、デカいトカゲ一匹、キジっぽいのが二羽の計五体。
チームダメ男。
デカいイノシシ一頭......以上ッッ!!
あんなに張り切ってたのにイノシシ一頭だけかよ......って感じのマイエンジェルたち。
ㅤお願い、そんな目で見ないで。
とりあえず、俺の惨敗。
重さ勝負ならチーム甘えんぼで、美味しく食えそうな物勝負ならチーム辛辣、狩った頭数勝負ならドロー。
「皆頑張ったね、この勝負君たちはドローで、俺の一人負けだよ」
頑張ったの!と、誇らし気なお嬢様とツキミちゃん。
ドローなら仕方ないって感じのチーム辛辣の御二方。
誠心誠意御奉仕させて頂きます。
「なんか要望とかあったりする?叶えられる範囲の要望なら、何でも叶えるよ」
こんなセリフ、日本にいた頃に言われてみたかった。
さて、この子たちの反応はどうかなー?
・いっぱい甘えさせて
・いっぱい甘えさせて
・また何か一緒に作りたい
・ソッとしといてほしい
という訳で......はい、こんな意見が来ました。
要望を言ってきた順に表記しましたが、どの子がなんて言ったんでしょうねー。難問ですねー。
とりあえず、その願いを叶える前に、あの子たちに久しぶりのお仕事を依頼する事にしましょう。肉塊を食肉に加工しなきゃダメだからね。
あ、ダイフクごめん。もうちょっとだけこのまま一緒に居てほしい。
さぁ、メイドさんかもーん。
「山の中でごめんね。今大丈夫?」
「あ、はい」
いつも通り、急に喚びだされて困惑しているメイドさん。大丈夫なら問題無いね。
「お仕事の依頼をしたいんだけど、立て込んでたりはしない?」
「大丈夫ですよ。この時期は忙しくありませんし......」
「あっでも、後一月程で忙しくなりますね」
思い出したように付け足すメイドさん。よし、暇な今のうちに依頼をしてしまおう。
「えーっと、まず一つ目は解体の依頼。二つ目は例のプロジェクト......それを一気に推し進められるキーアイテムを入手したので、それの譲渡だね」
例のプロジェクト、そう言った瞬間に顔を綻ばせたメイドさん。緩むのはいいけど、話は最後まで聞いてね。
「最後に三つ目、最近ウチの子になった、このラブリーオウルちゃん達に似合いそうな装飾品作成の依頼。以上です」
「承りました。全ての依頼を完璧にこなしてみせましょう」
いつも冷静なこっちのメイドさんも、プロジェクトの魅力に飲み込まれていましたか。あんまはしゃいでるイメージ無いんだから、そのイメージを崩さないでほしい。
「それで......えーっと、解体してほしいモノがかなりデカくて量もあるんだけど......一旦送り返すから、大容量の収納袋を持ってきてもらっていい?あと、王女さんの甘味袋も」
「畏まりました。もう一度喚ぶ時には、もう一人のメイドも喚んで大丈夫ですので。十分後くらいにお願いします」
「了解。それじゃあまた後で」
メイドさんを送り還して、ダイフクにもう一度謝罪。
「ごめん、採寸とかが終わるまで待っててほしい。狩りとかして疲れてるのにごめんね。あんことピノちゃんとツキミもごめんね」
皆大丈夫だと言ってくれて嬉しい。助かるわ。
解体頼む用の肉達を収納から出して、お土産の甘味も用意。
時間になるまでまだ時間があるし、この子たちをいっぱい褒めて甘やかそう!
「あんなおっきい獲物を獲れて皆凄いね。俺なんて一頭しか獲れなかったのに」
よしよしと頭を撫でていく。この子たちの中の序列に従って順番に撫でていく。
なぜ俺の腕は二本しか生えていないのか......本当に増えたら困るけど、皆一緒に撫でてあげたいねん。
こんな事思っていると、なんかの拍子に生えそうで怖いから俺は考えるのをやめた。
変な事考えてないで、限られた時間を精一杯使い、この子たちが満足するまで撫でよう。
よーしよしよしよしー。可愛いですねー。
あーもう!もふもふ、すべすべ、ふわふわ、もちもち......四者四様、全部気持ちいい!!たまらん!!
◇◇◇
残念ながら時間が来てしまった......もう少し長めに時間を取ってくれてもよかったのに。
アラクネメイドさんたちを再召喚。いらっしゃいませぇぇぇぇ(やけくそ)
喚び出されたメイドさんは肉塊に驚いている。想像以上に多かったんだろうね、俺はちゃんと多いって言ったぞー。
「あ、あの......お手数ですが、袋に入れるのを手伝ってもらえませんか?入れる前に少し切り分けておかないと、解体場所の確保が難しいので......」
申し訳なさそうに言ってくるメイドさん。お願いしてるのはこっちだから、いくらでも手伝うよ。
「あー、大きさとか考えていなくてごめんね。解体素人だから、切り分ける部位とか指定してくれると助かる。
もう一人のメイドさんは、この子たちの採寸とかして作る物のイメージとかを固めておいてくれたら助かる」
そう指示すると、ニッコニコで駆け出していった。血なまぐさい解体よりも、合法的な触れ合いは嬉しいよね......ちくしょう!
「みんなー!今そっちに向かったのは、オシャレな装飾品とか作って貰うようにお願いした人だから、素直に従ってくれると嬉しい。でも、ちょっとでも危ない雰囲気を出してきたら、お仕置き程度はしていいからねー」
あんことピノちゃんは面識があるから大丈夫だろうけど、一応釘を刺しておく。
ツキミとダイフクは初対面だから少し心配になる。あの手触りを味わったら理性崩壊しそうだし、その時にガチ反撃されて殺っちゃったら目も当てられないし。
「あー、あんな風に言っちゃったけど......よかったよね?」
「殺されさえしなければ問題ありません。後はあの子の自業自得なので」
うーん、とってもいい笑顔。
「んじゃまぁ、さっさと解体しちゃいましょうか。終わったら新顔を紹介するし、許可さえ貰えればたくさん触れ合ってくれていいよ」
「ならば早く終わらせましょう!!」
俺の言葉で火の着いたメイドさんの指示に従って、淡々と肉を切り分け、袋へしまっていく俺。メイドさんのテンションが、すげぇ上がっていて笑えてくる。
最初に会った時以来のデキるメイドさん姿でした。あ、はい。手を止めてしまってごめんなさい。
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